料理を作って異世界改革

高坂ナツキ

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1章 名もなき村

26 ステータス

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 さて、今日は村長に会ってかまどの作る場所を相談して、河原でかまど用の石を選定するかな。
 あとは川で採れる魚がいないかも確認して、パンの作り置きが少なくなってきたから時間が余ったら三人でパン作りをしてもいいかもな。

「マサト兄ちゃん、起きてるー?」

「マサトさん、朝ですよ?」

「起きてる起きてる、大丈夫大丈夫」

 いや、絶対にこの村の活動時間がおかしいだけで俺が朝に弱いわけではないんだ。
 例によって、二人は夜明け直後に食堂までやってきて俺のことを起こしてくれる。

 さて、まずは朝飯だが、ホーンラビットの肉はまだ使わないほうがいいからデビルボアだな。
 この肉を照り焼きにして緑菜と一緒にパンにはさんで照り焼きサンドみたいにするか。
 スープは味噌を使って緑菜の千切りを入れたみそ汁にしてみるかな。

 緑菜だらけだが、手軽に手に入って料理に時間がかからないのが緑菜だから仕方がない。

「レイジは、緑菜を千切り……細く切ってくれるか? ミーナは冷蔵庫からデビルボアの肉を取り出してくれ。パンにはさむからそのつもりで」

 レイジには半分に切った緑菜を渡し、俺自身は照り焼きのソースを軽く作っておく。
 ミーナが食材鑑定を使えるようになれば、ソースづくりなんかも任せられるんだが、異世界の調味料を口だけですべて教えるのは無理があるから当分はこの作業は俺がやるべき作業だ。
 とはいっても、よく使う醤油や塩コショウは難なく使っているので、いつかミーナも何も言わずとも使いこなすかもしれないが。

「マサト兄ちゃん、細さはこのくらい?」

「マサトさん、パンにはさむならロース肉でいいかな?」

「レイジ、そのくらいの細さで大丈夫だ。ミーナ、味が絡むようにしたいから小間切れの肉でいいぞ」

「「はーい」」

 とりあえず、鍋に水を張って沸騰させておく、みそ汁の出汁は鰹節だけでいいだろう。
 ミーナから受け取ったデビルボアの肉は油をひいたフライパンで炒めておく、熱が通ったタイミングであらかじめ作っておいた照り焼き用のたれをからめる。
 あとは余熱で照り焼きがとろみをもったら完成だ。

 沸騰した鍋は火を止めてから鰹節を入れる、数分経って鰹節がすべて沈んだらキッチンペーパーを敷いたざるを使って別の鍋に濾しながら注ぐ。
 注いだ出汁にはレイジに切ってもらった緑菜を入れてまた、火にかける。
 緑菜が柔らかくなったタイミングで火をまた止めて味噌を入れる。

 レイジとミーナにはパンを半分に切っておいてもらって、中になる方にバターを塗ってもらう。
 残しておいた緑菜の千切りとたれを適度にからめた小間切れ肉の照り焼きを挟んでいく。

「さ、二人とも完成したから食事にしよう」

 今回は手軽なものだから、食堂のテーブルは使わずにキッチン内の作業台で朝食とする。

「マサトさん、これもハンバーガーみたいなもの?」

「これは照り焼きサンドだな。肉をミンチにして焼いたものをハンバーグ、それをパンにはさんだらハンバーガーだ。それ以外にパンにはさむ料理はサンドって呼んでるな」

「へー、なんで、ハンバーガーだけハンバーグサンドじゃないんだろ?」

「さあなあ? 案外、初めに作った人がノリでハンバーガーって叫んだからとかかもしれないが、美味ければ名前なんていいじゃないか。照り焼きサンドも、このたれが照り焼きって名前だから、ハンバーグを使ったテリヤキバーガー、鶏肉を使った照り焼きチキンなんかもあるし、いつかは作ってみたいな」

「ハンバーグを作るなら僕も手伝うよ」

「ミーナはどの料理も手伝うからちゃんと教えてね」

 三人で照り焼きサンドにかぶりつき、みそ汁を飲む。
 照り焼きサンドには醤油、料理酒、みりんを使っているから他の洋食よりはみそ汁との親和性が高い。

「そうだ、照り焼きサンドにはこれを塗ってもうまいぞ」

 そう言いつつ、冷蔵庫からタルタルソースの瓶を取り出す。
 照り焼きと言えばタルタルソース、マヨネーズでもいいがやはりタルタルに含まれるピクルスの食感と酸っぱさがともすれば甘くなりすぎる照り焼きに合う。

「さっきまでも美味しかったけど、これをかけた後のほうが美味い」

「ミーナもこっちのほうが好きだな」

「スープのほうはどうだ? いつもとは違う調味料で味付けしてあるんだが」

「なんか、独特な風味がするけどこれも美味いよ」

「いつものスープとは違って工程が多かったよね。いつものスープよりしょっぱい感じだけど、千切りの緑菜にはこれのほうが合うかも」

 二人にとっては初めての味噌汁だったがそこそこ好評なようだ。

「そういえば、マサト兄ちゃん。村のみんなにはこのパンとかいつも使ってる調味料とかは分けてあげるのか?」

「あー、この食堂内にあるものは村に置いていくつもりはないんだ」

「そうなの? 塩コショウとか置いて行ってあげたら楽になると思うけど」

「二人には話しておくかな。実はこの世界は食べたもので能力が上がるっていうルールがあるんだ」

「「???」」

「レイジもミーナも俺と食事をするようになって、力が強くなったり足が速くなった自覚がないか?」

「……確かに、マサト兄ちゃんと会ってから力が強くなってる気がする」

「ミーナも、少し足が速くなったような気がする」

「肉は力が、斑芋は素早さが、緑菜なんかの野菜は器用さが上がるみたいだ。この村の住人は生まれてから死ぬまで野菜しか口にしないためか大人でも器用さは高いけど他の能力は低い状態になっているんだ」

「でも、それと村に調味料を渡さないのは何か関係あるの?」

「この食堂は神様からの贈り物だから、この食堂内にあらかじめ配置されているものはこの世界の人間の能力に影響を与えないみたいなんだ。だから、なるべくこの世界の食べ物だけで料理をしなきゃいけないのが一点。もう一つはこの食堂内にある調味料はこの食堂の外には持っていけないというものだ。料理に混ぜて持ち出す分には問題ないけど、調味料単体で外に持ち出すと食堂の外に出た時点で消えてしまうんだ」

 二人にステータスを鑑定してみれば一目瞭然だ。
 ステータス 力:1 素早さ:1 頑健さ:2 器用:12 知力:1 運:1
 こっちが初めて会った時のレイジで
 ステータス 力:1 素早さ:1 頑健さ:2 器用:10 知力:1 運:1
 こっちがミーナのステータスだった。

 ステータス 力:8 素早さ:9 頑健さ:2 器用:13 知力:1 運:1
 今はレイジがこれで
 ステータス 力:8 素早さ:9 頑健さ:2 器用:13 知力:1 運:1
 ミーナがこれだ。

 村長なんかの村の大人は器用さだけが三十を超えているから肉や斑芋を同じペースで食べ続ければ力や素早さもそのくらいには成長するだろう。

 頑健がかなり謎なんだよな。
 村人もみんな2にはなっているのにそれ以上になっている人には出会ったことがないんだよな。

「そっか、……あ、そのことも村のみんなには言わないほうがいいのかな?」

「まあ、村長とか調合師の人とかには村を出る前に軽く伝えるつもりだけど、他の人には確信のもてない情報だから言わないほうが無難かな」
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