56 / 150
2章 領都
19 料理人(パン職人)
しおりを挟む
「まあ、風呂のことは後でミーナに説明してもらうとして今はパン作りに戻ろうか」
「そうですね。イーリスさん、夜ご飯の準備が終わったら一緒に入りましょう」
レイジとミーナには旅の間に風呂やらシャワーやらの説明はしてあるからミーナに任せておけば大丈夫だろう。
しかし、レイジとミーナはいつも通り完璧にパン生地を練っていくのだが、意外なのがイーリスだ。
彼女のパン生地はミーナを手本としているからなのか、ミーナの作った生地と遜色のないレベルで完璧だ。
……まあ、要するにこの中では俺の作ったパン生地が圧倒的にレベルの低いものとなっているのが浮き彫りになるだけなのだが。
「イーリス、初めてなのに完璧にできてるじゃないか。なあ、ミーナ」
「ミーナの目から見てもいい出来だと思います」
俺の目から見ればレイジもミーナもイーリスも完璧に見えるが、料理人の天職持ちのミーナからすればレイジの生地はまだ完璧とは言えないらしい。
そんなミーナの目から見てイーリスのパン生地はいい出来だというのだから、本当にミーナのパン生地に迫る出来なのだろう。
「私、このパン作りが好きです。パンの生地に触っていると、力を籠める方向やその力加減が頭の中に入ってくるようで……」
天職を持たない俺にはそんな感覚はもちろんないのだが、ミーナのほうを見るとミーナもなんとなく腑に落ちないような顔をしている。
『個体名:イーリス・シェリルバイト 種族:人間 性別:女 年齢:十五歳 天職:料理人(パン職人) 食用:可 雑食性のために臭みがあることが多い。食用可能だが臭み取りに時間と手間がかかる。同種族の食肉は禁忌とされているので推奨はしない
ステータス 力:1 素早さ:1 頑健さ:2 器用:17 知力:6 運:1』
気になってイーリスを食材鑑定してみれば結果はこんな感じだった。
もちろん、貴族なので庶民に比べて高いステータスも気にはなるが、それよりも天職:料理人(パン職人)というのが異様だ。
いや、レイジも天職:剣士(二刀流)だから、こういう表記の天職だ有ること自体は知っているが、領主様に聞かされたイーリスの天職は料理人だけだったはずだ。
領主様にはパンを出しているのだから、料理人(パン職人)なんて言う表記だったのなら昨日の時点で俺に話を聞きそうなものなのだが……。
「イーリス、君の天職が何か君は聞いているかい?」
「? 料理人だと、そう教えられていますけど、違うのですか?」
「俺が鑑定してみた限りでは、君はパンに特化した料理人みたいだ」
正直、伝えるかどうかは悩んだのだが、自身の能力についてはできる限り把握しておいた方がいいだろうということで伝えることにした。
レイジの天職:剣士(二刀流)も、二刀流でしか能力が発揮できないわけではなくて、剣を使っている限りではそれが一本でも、あるいは短剣や大剣でもそれなりに使うことはできるらしい。
ただ、長剣と短剣の二刀を使って戦うのが一番しっくりくるし、自分の体の動かし方がよくわかるらしいのだ。
ということは、天職:料理人(パン職人)のイーリスも、パンに特化はしていても他の料理でもそれなりのレベルでなら習得は可能ということだろう。
「特化した……。マサト様には教会で教えられるのとは違う天職が見えているのですね……」
「俺自身が教会に行ったことがないので何とも言えないですが、この鑑定は神様に頂いたものなので信じていいと思いますけどね」
イーリスと話すとついつい丁寧な言葉になってしまうな。
教える立場だからある程度は砕けた口調で話すべきってのもわかるんだが、様付で呼ばれるとついつい反射で応えてしまうな。
「ミーナは普通の料理人でしたよね? イーリスさんとはやっぱり違うんですか?」
「詳しくは分からないけど、ミーナは料理に関しては全体的に天職の補正がかかるんだろうけど、イーリスはパンには補正が強くかかって、それ以外の料理では普通の人よりはできる程度の補正しかかからないんじゃないかな」
「僕の天職もそんな感じだからそうなんだろうね」
比較できる対象がいるからなんとなくでも、内容がわかるのは救いだな。
まあ、全然間違っている可能性も皆無ではないが。
「とにかく、イーリスはパン作りが得意ってことだな。それに、パン以外もこれから覚えていかなきゃいかないしな」
天職自体がこの世界特有というか、前の世界には知識としても存在していないものだから俺自身にもよくわからないんだよな。
いくらパンが得意でも、それだけ作っていればそれでいいとはならないし、最低限、スープやメインも作れるようになってもらわないと困る。
「そうですね、これまでこの食堂で作ってきたのもパンだけじゃないですし、今日の夜用に作るから揚げも作ってもらわないと困りますもんね」
「じゃあ、パン生地も出来上がったことだしレイジはパン生地をオーブンに入れた後はキラーバードのもも肉を一口大に切ってくれ。ミーナとイーリスには新しい料理のレシピを手伝ってもらうから」
「わかったよ」
「「はい」」
パウンドケーキはパンではないが、イーリスの天職は機能するのかな?
とりあえず、バターはあらかじめ室温に戻しておいてあるから、あとの材料を取り出すだけだな。
今回は初めてだし、普通の型、一個分の材料でやってみるかな。
「マサトさん、今回はショートブレッドの時と同じ小麦粉を使うんですね」
「ああ、今回作る料理は分量を間違えると焦げたり、生焼けになったりしやすいからきちんと分量を量るぞ」
まあ、ショートブレッドの時も量ってはいたが、何分量が量だったから、適当に増やしてた面もあるのだ。
「はい、用意してあるバターに合わせた分量にするんですよね」
「ああ、イーリスにもはかりの使い方なんかを教えながら、グラニュー糖と薄力粉を量ってくれ」
パウンドケーキは無塩バター、薄力粉、グラニュー糖、卵がメインの材料で、そこに塩やベーキングパウダーを微量加える。
二人が、指示通りの分量を量っている間に俺は、キラーバードの卵を溶きほぐしておくか。
一部のお菓子みたいに卵黄だけじゃなくて、パウンドケーキは全卵でいいから楽でいいな。
「マサトさん、量り終えましたよ」
「じゃあ、バターをホイッパーでよく練っておいてくれ。クリーム状になったらさっき量ったグラニュー糖を二回に分けて加えてくれ。一度に混ぜると分離したりするからちゃんと分けて入れてくれよ」
「「はい」」
「白っぽくなってきたらこっちの卵を三回くらいに分けて入れてくれ」
流石に二人とも料理人の天職持ちだから、指示さえしておけば細かく言わずとも何とかしてしまう。
っと、俺は薄力粉を篩うために、篩いを用意しておくかな。
あとはパウンドケーキ用の型だな。
食堂にはクッキングシートがあるからそれを使うが、ない場合は型に植物油かバターを塗ればいいのかな?
まあ、その方法でうまくいっても牛乳が手に入らないとこの世界では再現不可能だな。
一応、龍グルミから植物性の油は採れるのだが、何分量が少ないからな。
「まとまってきたみたいだから、薄力粉を振りながら入れてくれ。ゴムベラできるように混ぜて、粉っぽくなくなったら隙間が埋まるように型に数回に分けて入れてくれ」
あとは空気を抜いて、オーブンで焼くだけだな。
大量に焼くのならともかく、一本だけならレンジと一緒になってるオーブンで十分だろう、二人に任せている間にこっちも予熱しておくか。
よし、上手に入れられたみたいだから、中央がへこむように軽くならして、あらかじめ布巾をひいたところに少し高いところから型ごと落として中の空気を抜く。
多分、パウンドケーキの制作過程で一番楽しいのはここだろうな。
「今回は小さいオーブンで焼くんですね」
「お試しだからな。うまくいって大量に作るときにはいつものオーブンで作るつもりだ」
まあ、パウンドケーキは今まで食べてきた料理と比べてもカロリーの高い料理だからそんなに大量に食べないほうがいいのだが、カロリーとか栄養素とか話してもこの世界の人間は理解できないしな。
「イーリスはこの料理を作ってみて、さっきのパンの時みたいな手ごたえは感じたか?」
「そうですね、確かにやっているうちにこの料理はうまくいくような感じが心の中にある感覚があります」
「ミーナは?」
「ミーナもショートブレッドくらいにはうまくいくと思いますよ」
なるほど、ミーナは今まで作ってきた経験値から、イーリスは感覚的に成功する予感を感じるのか。
この辺が特化している料理人とそれ以外の違いなのかもしれない。
「そうですね。イーリスさん、夜ご飯の準備が終わったら一緒に入りましょう」
レイジとミーナには旅の間に風呂やらシャワーやらの説明はしてあるからミーナに任せておけば大丈夫だろう。
しかし、レイジとミーナはいつも通り完璧にパン生地を練っていくのだが、意外なのがイーリスだ。
彼女のパン生地はミーナを手本としているからなのか、ミーナの作った生地と遜色のないレベルで完璧だ。
……まあ、要するにこの中では俺の作ったパン生地が圧倒的にレベルの低いものとなっているのが浮き彫りになるだけなのだが。
「イーリス、初めてなのに完璧にできてるじゃないか。なあ、ミーナ」
「ミーナの目から見てもいい出来だと思います」
俺の目から見ればレイジもミーナもイーリスも完璧に見えるが、料理人の天職持ちのミーナからすればレイジの生地はまだ完璧とは言えないらしい。
そんなミーナの目から見てイーリスのパン生地はいい出来だというのだから、本当にミーナのパン生地に迫る出来なのだろう。
「私、このパン作りが好きです。パンの生地に触っていると、力を籠める方向やその力加減が頭の中に入ってくるようで……」
天職を持たない俺にはそんな感覚はもちろんないのだが、ミーナのほうを見るとミーナもなんとなく腑に落ちないような顔をしている。
『個体名:イーリス・シェリルバイト 種族:人間 性別:女 年齢:十五歳 天職:料理人(パン職人) 食用:可 雑食性のために臭みがあることが多い。食用可能だが臭み取りに時間と手間がかかる。同種族の食肉は禁忌とされているので推奨はしない
ステータス 力:1 素早さ:1 頑健さ:2 器用:17 知力:6 運:1』
気になってイーリスを食材鑑定してみれば結果はこんな感じだった。
もちろん、貴族なので庶民に比べて高いステータスも気にはなるが、それよりも天職:料理人(パン職人)というのが異様だ。
いや、レイジも天職:剣士(二刀流)だから、こういう表記の天職だ有ること自体は知っているが、領主様に聞かされたイーリスの天職は料理人だけだったはずだ。
領主様にはパンを出しているのだから、料理人(パン職人)なんて言う表記だったのなら昨日の時点で俺に話を聞きそうなものなのだが……。
「イーリス、君の天職が何か君は聞いているかい?」
「? 料理人だと、そう教えられていますけど、違うのですか?」
「俺が鑑定してみた限りでは、君はパンに特化した料理人みたいだ」
正直、伝えるかどうかは悩んだのだが、自身の能力についてはできる限り把握しておいた方がいいだろうということで伝えることにした。
レイジの天職:剣士(二刀流)も、二刀流でしか能力が発揮できないわけではなくて、剣を使っている限りではそれが一本でも、あるいは短剣や大剣でもそれなりに使うことはできるらしい。
ただ、長剣と短剣の二刀を使って戦うのが一番しっくりくるし、自分の体の動かし方がよくわかるらしいのだ。
ということは、天職:料理人(パン職人)のイーリスも、パンに特化はしていても他の料理でもそれなりのレベルでなら習得は可能ということだろう。
「特化した……。マサト様には教会で教えられるのとは違う天職が見えているのですね……」
「俺自身が教会に行ったことがないので何とも言えないですが、この鑑定は神様に頂いたものなので信じていいと思いますけどね」
イーリスと話すとついつい丁寧な言葉になってしまうな。
教える立場だからある程度は砕けた口調で話すべきってのもわかるんだが、様付で呼ばれるとついつい反射で応えてしまうな。
「ミーナは普通の料理人でしたよね? イーリスさんとはやっぱり違うんですか?」
「詳しくは分からないけど、ミーナは料理に関しては全体的に天職の補正がかかるんだろうけど、イーリスはパンには補正が強くかかって、それ以外の料理では普通の人よりはできる程度の補正しかかからないんじゃないかな」
「僕の天職もそんな感じだからそうなんだろうね」
比較できる対象がいるからなんとなくでも、内容がわかるのは救いだな。
まあ、全然間違っている可能性も皆無ではないが。
「とにかく、イーリスはパン作りが得意ってことだな。それに、パン以外もこれから覚えていかなきゃいかないしな」
天職自体がこの世界特有というか、前の世界には知識としても存在していないものだから俺自身にもよくわからないんだよな。
いくらパンが得意でも、それだけ作っていればそれでいいとはならないし、最低限、スープやメインも作れるようになってもらわないと困る。
「そうですね、これまでこの食堂で作ってきたのもパンだけじゃないですし、今日の夜用に作るから揚げも作ってもらわないと困りますもんね」
「じゃあ、パン生地も出来上がったことだしレイジはパン生地をオーブンに入れた後はキラーバードのもも肉を一口大に切ってくれ。ミーナとイーリスには新しい料理のレシピを手伝ってもらうから」
「わかったよ」
「「はい」」
パウンドケーキはパンではないが、イーリスの天職は機能するのかな?
とりあえず、バターはあらかじめ室温に戻しておいてあるから、あとの材料を取り出すだけだな。
今回は初めてだし、普通の型、一個分の材料でやってみるかな。
「マサトさん、今回はショートブレッドの時と同じ小麦粉を使うんですね」
「ああ、今回作る料理は分量を間違えると焦げたり、生焼けになったりしやすいからきちんと分量を量るぞ」
まあ、ショートブレッドの時も量ってはいたが、何分量が量だったから、適当に増やしてた面もあるのだ。
「はい、用意してあるバターに合わせた分量にするんですよね」
「ああ、イーリスにもはかりの使い方なんかを教えながら、グラニュー糖と薄力粉を量ってくれ」
パウンドケーキは無塩バター、薄力粉、グラニュー糖、卵がメインの材料で、そこに塩やベーキングパウダーを微量加える。
二人が、指示通りの分量を量っている間に俺は、キラーバードの卵を溶きほぐしておくか。
一部のお菓子みたいに卵黄だけじゃなくて、パウンドケーキは全卵でいいから楽でいいな。
「マサトさん、量り終えましたよ」
「じゃあ、バターをホイッパーでよく練っておいてくれ。クリーム状になったらさっき量ったグラニュー糖を二回に分けて加えてくれ。一度に混ぜると分離したりするからちゃんと分けて入れてくれよ」
「「はい」」
「白っぽくなってきたらこっちの卵を三回くらいに分けて入れてくれ」
流石に二人とも料理人の天職持ちだから、指示さえしておけば細かく言わずとも何とかしてしまう。
っと、俺は薄力粉を篩うために、篩いを用意しておくかな。
あとはパウンドケーキ用の型だな。
食堂にはクッキングシートがあるからそれを使うが、ない場合は型に植物油かバターを塗ればいいのかな?
まあ、その方法でうまくいっても牛乳が手に入らないとこの世界では再現不可能だな。
一応、龍グルミから植物性の油は採れるのだが、何分量が少ないからな。
「まとまってきたみたいだから、薄力粉を振りながら入れてくれ。ゴムベラできるように混ぜて、粉っぽくなくなったら隙間が埋まるように型に数回に分けて入れてくれ」
あとは空気を抜いて、オーブンで焼くだけだな。
大量に焼くのならともかく、一本だけならレンジと一緒になってるオーブンで十分だろう、二人に任せている間にこっちも予熱しておくか。
よし、上手に入れられたみたいだから、中央がへこむように軽くならして、あらかじめ布巾をひいたところに少し高いところから型ごと落として中の空気を抜く。
多分、パウンドケーキの制作過程で一番楽しいのはここだろうな。
「今回は小さいオーブンで焼くんですね」
「お試しだからな。うまくいって大量に作るときにはいつものオーブンで作るつもりだ」
まあ、パウンドケーキは今まで食べてきた料理と比べてもカロリーの高い料理だからそんなに大量に食べないほうがいいのだが、カロリーとか栄養素とか話してもこの世界の人間は理解できないしな。
「イーリスはこの料理を作ってみて、さっきのパンの時みたいな手ごたえは感じたか?」
「そうですね、確かにやっているうちにこの料理はうまくいくような感じが心の中にある感覚があります」
「ミーナは?」
「ミーナもショートブレッドくらいにはうまくいくと思いますよ」
なるほど、ミーナは今まで作ってきた経験値から、イーリスは感覚的に成功する予感を感じるのか。
この辺が特化している料理人とそれ以外の違いなのかもしれない。
5
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる