料理を作って異世界改革

3章 王都

18 出国

「もう一回聞くけど、二人は俺についてきて本当に良かったのか？　シェリルバイト領に残ってもよかったんだぞ？」

　王都から離れて、数日が経ってからレイジとミーナに聞いてみた。
　いやいや付いてきているわけじゃないことは分かっているが、どうしても気になったので確認してみたくなったのだ。

「マサト兄ちゃん、僕はマサト兄ちゃんに感謝してるんだよ。恩を返すまでは付いていくよ」

「マサトさん、ミーナはマサトさんに救われたんです。マサトさんが嫌と言っても付いていきますから」

　二人からの返答はこれだ。
　俺としては二人に助けられたことも多いから救われたとか、恩とか言われてもピンとこない。
　だが、二人が言うには俺がいなかったら二人はあの村のお荷物で、結婚もできずに使い潰されただろうということらしい。
　村長の性格からそこまでのことはなさそうだけど、腫物扱いというか、畑を与えられずに小間使いだったのは確かだからな。

「まあ、二人がそういうなら俺としても助かるよ。やっぱり二人がいると心強いしな」

　正直に言えば料理の技術を広める旅は俺一人でも可能だが、一人で黙々と旅を続けるのはきついからな。

「マサトさんの方こそお別れがいえなかったのにいいんですか？」

「お別れ……？　ああ、ランドールさん以外のシェリルバイト家の人たちとかか……まあ、いんじゃないか」

　一時とはいえ世話になった人たちだから、別れが言いたい気持ちも確かにあるが、シェリルバイト領を出た時点でもう会えないと思っていたしな。

「マサト兄ちゃん、ミーナは多分イーリスさんのことを言ってるんだと思うよ」

「イーリス？　イーリスには教えられることはだいたい教えたし、会う必要はないだろう。どっちかといえば、ロバートとかボブに王都の食材の調理法を叩き込みたかったな」

　イーリスはパン職人だから、王都の食材は使いこなせないだろうけど、ロバートとボブは普通の料理人だから爆弾米やホーンピッグの調理法を教えたかった。

「そうなんですね。まあ、マサトさんがそれでいいならミーナはいいんです」

　ミーナがやけにニコニコ顔になったがどういうことだ？
　イーリスとはミーナのほうが仲が良かったし、ミーナのほうが寂しがるならわかるけどな。

「まあ、領都の人間も村の人間も別れた時点で会えないものと思っていたからな、俺は」

　交通手段が徒歩か手懐けた獣くらいしかないこの世界では、会いたいと思ったからと言ってそう簡単に会うこともできない。
　だから、旅を続けて別れるということは二度と会えないことを覚悟しなければならない。
　とはいえ、レイジやミーナのように付いてくる人間もいるし、絶対の別れではないだろう。
　旅を続けていればまた会うこともあるかもしれないな。