122 / 150
5章 帝国
07 陥落
しおりを挟む
「あー、もう。わかりました、わかりましたよ。帝都についたらわたくしもマサト様のお手伝いをしますっ」
旅程を五日間、順調にこなして帝都が見えてくるころになって、ミレーヌが突然言い出した。
「どうしたんだ?」
「マサト様が毎食毎食、違う味付けの料理を作ってくださるのであきらめたというお話です」
ああ、そういえばこの旅程の間は積極的に醤油や味噌を使って味比べができるような料理にしていたんだよな。
流石に昼のサンドイッチは無理だったけど、それでもたまごサンドとカツサンドみたいな感じで二種類以上を出すようにしていた。
レイジが言うには帝国では牛型魔獣も豚型魔獣も鳥型魔獣もいるらしく、肉類には困らなかったからけっこういろんな料理を作ってたんだよな。
帝国は王国とは比べるまでもなく寒いから、聖王国同様クリームシチューとかの温かさが持続するような料理が人気だったな。
俺的には牛型魔獣……ロングヘア―バッファローの肉で作ったローストビーフがお気に入りなんだけど、レイジは食べ甲斐が無いっていうし、兵士のみんなはふにふにしてて頼りないって微妙だったな。
結構頑張って作ったんだが、普通に作ったビーフステーキとか豚カツのほうが人気なんだよな。
「確かにいろいろ作ったけど、別にミレーヌに手伝いをお願いするために作ってたわけでもないぞ。単に食材がいろいろ手に入るようになってきたから作ってたってだけで」
「そのお話はミーナさんからも聞きました。……ですが、思ってしまったんです。これから先、塩味だけで満足できるのかって……」
「あー、それはね~。やっぱり味付けが一種類だけじゃ飽きるよな」
「そうなんです。今までは塩味どころか生のお野菜や生の果物で済ませていて、ポーションで補っていたというのに……」
「結局人間っていうのは贅沢になれる生き物だからな。それしかないって知っていれば我慢できても、いろいろあるなら全部楽しみたくなるんだよな」
結局俺がこの世界でいろいろな料理を教えてるのもそれがあるからなんだよな。
俺は神様からもらった食堂で調味料が無限に使えるからいいけど、この先この世界に来た善人たちが質素な食生活だった場合絶望するだろうからな。
「だから、お手伝いすることにしたんですっ」
「まあ、手伝ってくれるならありがたいけどな」
「その代わりっ! わたくしが皇位に興味がないことを皇帝陛下に言っておいてほしいのですっ!」
「はっ? 自分の父親だろ? 自分で言えばいいじゃん」
「相手は皇帝陛下、いくら娘とはいえ第八皇女のわたくしが直接口をきける機会などそうそうありませんよ」
そんなもんなのか? ああ、確かに王国の王様は結構雰囲気あったし、あんな感じなら確かに簡単に話せないのもわかる……か?
結局この世界でまともに信仰があった偉い人って言うと、シェリルバイト家の人たちになるけど、あの家の人たちはそこらの平民よりも家族仲が良かったからな。
「別にいいが、ミレーヌが会えないのに俺が会う機会があるのか?」
「帝都についたら真っ先に皇帝陛下がお会いになりますよ。ウィリアム殿の話を聞いてマサト様の迎えに行けと言い出したのが皇帝陛下ですから」
「そーいや、なんでミレーヌが迎えに来たんだ? そこまで言うなら皇帝が来るのが筋では?」
「流石に危険がありますからね。……それに聖王国との国境はわたくしのお母様の出身地ですから」
なるほど、保護された国々が帝室にとって代わろうと考えていたとして、自分たちの血筋の人間は残しておきたいだろうからな。
「それに、皇帝陛下は皇帝陛下でいろいろとお忙しいですから、危険がなくてもこれたかどうかは……」
まあ、それもそうか。
ミレーヌが皇位を継ぐ可能性を考えるということは跡継ぎについて決定してないってことだし、仕事量は半端ないんだろうな。
「あと、多分、皇帝陛下がお会いになったら料理のリクエストが来ると思いますので……」
「ああ、それにかかりきりになるわけにはいかないけど、ある程度は作るよ」
王国では王家に囲われたら出国できない可能性が高かったから、王家に近寄ることはなかったけど、今回はそうはいかないだろうしな。
調味料を作るのに、ミレーヌの手伝いがあっても年単位の時間がかかるし、食材探しの面で考えても帝室に頼るのが一番だろう。
出国時の対策としては多めに料理人の天職持ちを確保しておけば大丈夫だろう。
王国とは違って、皇女のミレーヌが天職持ちだから、ある程度のレシピがわかればそれほど俺に対して執着はしないだろうし。
旅程を五日間、順調にこなして帝都が見えてくるころになって、ミレーヌが突然言い出した。
「どうしたんだ?」
「マサト様が毎食毎食、違う味付けの料理を作ってくださるのであきらめたというお話です」
ああ、そういえばこの旅程の間は積極的に醤油や味噌を使って味比べができるような料理にしていたんだよな。
流石に昼のサンドイッチは無理だったけど、それでもたまごサンドとカツサンドみたいな感じで二種類以上を出すようにしていた。
レイジが言うには帝国では牛型魔獣も豚型魔獣も鳥型魔獣もいるらしく、肉類には困らなかったからけっこういろんな料理を作ってたんだよな。
帝国は王国とは比べるまでもなく寒いから、聖王国同様クリームシチューとかの温かさが持続するような料理が人気だったな。
俺的には牛型魔獣……ロングヘア―バッファローの肉で作ったローストビーフがお気に入りなんだけど、レイジは食べ甲斐が無いっていうし、兵士のみんなはふにふにしてて頼りないって微妙だったな。
結構頑張って作ったんだが、普通に作ったビーフステーキとか豚カツのほうが人気なんだよな。
「確かにいろいろ作ったけど、別にミレーヌに手伝いをお願いするために作ってたわけでもないぞ。単に食材がいろいろ手に入るようになってきたから作ってたってだけで」
「そのお話はミーナさんからも聞きました。……ですが、思ってしまったんです。これから先、塩味だけで満足できるのかって……」
「あー、それはね~。やっぱり味付けが一種類だけじゃ飽きるよな」
「そうなんです。今までは塩味どころか生のお野菜や生の果物で済ませていて、ポーションで補っていたというのに……」
「結局人間っていうのは贅沢になれる生き物だからな。それしかないって知っていれば我慢できても、いろいろあるなら全部楽しみたくなるんだよな」
結局俺がこの世界でいろいろな料理を教えてるのもそれがあるからなんだよな。
俺は神様からもらった食堂で調味料が無限に使えるからいいけど、この先この世界に来た善人たちが質素な食生活だった場合絶望するだろうからな。
「だから、お手伝いすることにしたんですっ」
「まあ、手伝ってくれるならありがたいけどな」
「その代わりっ! わたくしが皇位に興味がないことを皇帝陛下に言っておいてほしいのですっ!」
「はっ? 自分の父親だろ? 自分で言えばいいじゃん」
「相手は皇帝陛下、いくら娘とはいえ第八皇女のわたくしが直接口をきける機会などそうそうありませんよ」
そんなもんなのか? ああ、確かに王国の王様は結構雰囲気あったし、あんな感じなら確かに簡単に話せないのもわかる……か?
結局この世界でまともに信仰があった偉い人って言うと、シェリルバイト家の人たちになるけど、あの家の人たちはそこらの平民よりも家族仲が良かったからな。
「別にいいが、ミレーヌが会えないのに俺が会う機会があるのか?」
「帝都についたら真っ先に皇帝陛下がお会いになりますよ。ウィリアム殿の話を聞いてマサト様の迎えに行けと言い出したのが皇帝陛下ですから」
「そーいや、なんでミレーヌが迎えに来たんだ? そこまで言うなら皇帝が来るのが筋では?」
「流石に危険がありますからね。……それに聖王国との国境はわたくしのお母様の出身地ですから」
なるほど、保護された国々が帝室にとって代わろうと考えていたとして、自分たちの血筋の人間は残しておきたいだろうからな。
「それに、皇帝陛下は皇帝陛下でいろいろとお忙しいですから、危険がなくてもこれたかどうかは……」
まあ、それもそうか。
ミレーヌが皇位を継ぐ可能性を考えるということは跡継ぎについて決定してないってことだし、仕事量は半端ないんだろうな。
「あと、多分、皇帝陛下がお会いになったら料理のリクエストが来ると思いますので……」
「ああ、それにかかりきりになるわけにはいかないけど、ある程度は作るよ」
王国では王家に囲われたら出国できない可能性が高かったから、王家に近寄ることはなかったけど、今回はそうはいかないだろうしな。
調味料を作るのに、ミレーヌの手伝いがあっても年単位の時間がかかるし、食材探しの面で考えても帝室に頼るのが一番だろう。
出国時の対策としては多めに料理人の天職持ちを確保しておけば大丈夫だろう。
王国とは違って、皇女のミレーヌが天職持ちだから、ある程度のレシピがわかればそれほど俺に対して執着はしないだろうし。
6
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる