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5章 帝国
13 チーズ
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リヒトの通達が早かったのか、夜飯の準備を始めたころには農業担当の人がやってきた。
帝城内に畑を作る案も出てきているらしいのだが、関係各所に通達をするには時間がかかるため、初めは帝都近郊、皇帝の直轄領にある畑に作物を植えることにしたらしい。
流石に種を渡してハイ終わりでというわけにもいかないので、明日からはレイジが畑についての指導に行くことになった。
レイジは戦闘系の天職とはいえ、村にいたころは村長や他の村人の手伝いで畑仕事を手伝っていたから指導もできるだろうとのこと。
本人は聖王国でも似たようなことをやっていたから、多分大丈夫だろうとのこと。
「ふむ、やはりチーズはこの比率のほうが安定するようですね」
昼前からチーズ作りに精を出していたミレーヌは、チーズ作りに最適な比率を割り出したようだ。
一応異界のレシピにはチーズ作りのレシピも載っているのだが、流石に異世界の食材にそのまま適用できるものではない。
さらに言えば、今チーズ作りに使ってるのは前の世界で主流だったレンネットではなく謎の植物……比率から何から異界のレシピでは対応できないのも当然だろう。
「固まる前なのにわかるのか?」
「なんとなくこれが正解な気がするんですけど……」
「そっか、なら天職のおかげだろうな。一応、これからも定期的に作ってもらうけど、確定するまでは他の比率のも少しは作っておいてくれよ」
流石に天職がそう言ってるからと言って研究しないわけにもいかないからな。
多分、ミレーヌの感覚で正解なのだろうけど、他の比率でも作っておいてもらおう。
あとはリヒトに頼んで、温度と湿度が一定になるような発酵専用の部屋というか、小屋というかも作ってもらわないとな。
「マサトさん、お味噌とかの原料って弾丸大豆じゃダメなんですか?」
「ああ、あれね。枝豆として利用するにはいいんだけど、味噌とか醤油とかに使うためには結構固くならないといけないんだよ」
弾丸大豆は王国で発見した植物で、食堂では枝豆代わりに使われているものだ。
枝豆くらいの柔らかさの時はいいのだが、大豆として成熟すると空中に向けて豆を放出する性質があることから回収が難しい。
まあ、食堂内の畑なら神様の謎仕様で外に飛び出るということはないんだけど、通常の畑で収穫するとなると難しい植物の一つだろうな。
「そういえば、繁殖するときに飛ぶんでしたっけ」
「そうそう、数揃えるのに時間もかかるし帝国内で自生している豆を探した方がいいだろうな」
弾丸大豆は成熟するまで二年はかかるから、それまで味噌や醤油が作れないことになる。
食堂内に保管してある弾丸大豆の種苗や、畑で生育してる分を合わせても味噌や醤油を作るには心もとない数しかないしな。
「でしたら、わたくし方からも皇帝陛下に報告しておきますね」
「頼むよミレーヌ」
結局、帝国内で自由気ままに行動するわけにもいかないから、食材探しはリヒトに頼むしかないんだよな。
王国の時もジョシュアさんに頼んだりしてたし、似たようなものだけど。
「とりあえず、今は食材のことよりも今夜のご飯のことだな。帝城に持っていく分は昨日と同じ量でいいんだろ?」
「陛下からはそう聞いています。それとは別に余裕があれば上級兵の方の分もお願いしたいそうですが」
帝国軍のトップは皇帝が務めるらしいから、リヒトや第一皇子はいいらしんだが、第三王子は上級兵の一員ってことで結構他の人に羨ましがられているらしい。
上級兵自体もある程度の人数をまとめる、騎士団で言うところの団長や副団長に相当する立場らしいから、そこまで人数が多くないらしいし、作ってやるか。
「持っていくのは兵士の人たちに任せても大丈夫か?」
「帝城には食材を運ぶワゴンもありますから、運ぶのは問題ないですよ」
昨日のピザは保温も考えて俺が食堂を使って運んだけど、毎食毎食そうするわけにもいかないし何より、また俺を同行しようとする人が出てくるかもしれないと考えるとあまり顔を出さないほうがいいだろう。
グラタンはピザに比べても保温に優れてるし、食堂のある中庭から帝城内でそれぞれが普段食事をとっている部屋までもそこまで遠くないらしいし、兵士の人かメイドさんに持って行ってもらおう。
昨日は帝室が全員そろっていたが、あれは俺たちへの面通しもかねてのことで、普段はそれぞれの家族で食事をとってるらしいんだよな。
ミレーヌはリヒトと一緒に食事をするのも初めてで、これまでは母親と一緒に食べるのが普通だったらしい。
「じゃあ、わたしはホワイトソースを作っちゃいますね」
「ああ、頼むよ、ミーナ」
「わたくしはメイドたちに食事を運ぶ準備をするように言ってきますね」
「頼む。俺は具材を切っていくかな」
ミーナと数人の兵士にホワイトソースづくりを、ミレーヌにはメイドたちへの伝言をお願いして、レイジと残りの兵士、そして俺はグラタンに使う食材を切っていく。
ほうれん草やブロッコリー、あるいは魚介があれば味に幅ができるんだが、無いものは仕方がないので具材はラージキャロットと緑菜、斑芋を基本として、あとは帝都付近で獲れるらしい鳥型魔獣の肉を使う。
リヒトに確認してほしいと言われて確認した、帝都近郊で獲れる魔獣や獣の肉は牛、豚、鳥がいたがそのほとんどが食用可能。
毒持ちもいたが、爪や牙に毒があって毒腺のある周囲を避ければ食肉にするのも難しくはなかった。
面白かったのはこの国にいる魔獣や獣の多くは毛が長いことだな。
おそらくは帝国の気候に適応するためなのだろうけど、毛皮自体を手に入れるためにこれまでも定期的に魔獣や獣を狩っていたらしいので、肉を廃棄する手間がなくなる分料理に使ってくれるのはうれしいことだとか。
帝城内に畑を作る案も出てきているらしいのだが、関係各所に通達をするには時間がかかるため、初めは帝都近郊、皇帝の直轄領にある畑に作物を植えることにしたらしい。
流石に種を渡してハイ終わりでというわけにもいかないので、明日からはレイジが畑についての指導に行くことになった。
レイジは戦闘系の天職とはいえ、村にいたころは村長や他の村人の手伝いで畑仕事を手伝っていたから指導もできるだろうとのこと。
本人は聖王国でも似たようなことをやっていたから、多分大丈夫だろうとのこと。
「ふむ、やはりチーズはこの比率のほうが安定するようですね」
昼前からチーズ作りに精を出していたミレーヌは、チーズ作りに最適な比率を割り出したようだ。
一応異界のレシピにはチーズ作りのレシピも載っているのだが、流石に異世界の食材にそのまま適用できるものではない。
さらに言えば、今チーズ作りに使ってるのは前の世界で主流だったレンネットではなく謎の植物……比率から何から異界のレシピでは対応できないのも当然だろう。
「固まる前なのにわかるのか?」
「なんとなくこれが正解な気がするんですけど……」
「そっか、なら天職のおかげだろうな。一応、これからも定期的に作ってもらうけど、確定するまでは他の比率のも少しは作っておいてくれよ」
流石に天職がそう言ってるからと言って研究しないわけにもいかないからな。
多分、ミレーヌの感覚で正解なのだろうけど、他の比率でも作っておいてもらおう。
あとはリヒトに頼んで、温度と湿度が一定になるような発酵専用の部屋というか、小屋というかも作ってもらわないとな。
「マサトさん、お味噌とかの原料って弾丸大豆じゃダメなんですか?」
「ああ、あれね。枝豆として利用するにはいいんだけど、味噌とか醤油とかに使うためには結構固くならないといけないんだよ」
弾丸大豆は王国で発見した植物で、食堂では枝豆代わりに使われているものだ。
枝豆くらいの柔らかさの時はいいのだが、大豆として成熟すると空中に向けて豆を放出する性質があることから回収が難しい。
まあ、食堂内の畑なら神様の謎仕様で外に飛び出るということはないんだけど、通常の畑で収穫するとなると難しい植物の一つだろうな。
「そういえば、繁殖するときに飛ぶんでしたっけ」
「そうそう、数揃えるのに時間もかかるし帝国内で自生している豆を探した方がいいだろうな」
弾丸大豆は成熟するまで二年はかかるから、それまで味噌や醤油が作れないことになる。
食堂内に保管してある弾丸大豆の種苗や、畑で生育してる分を合わせても味噌や醤油を作るには心もとない数しかないしな。
「でしたら、わたくし方からも皇帝陛下に報告しておきますね」
「頼むよミレーヌ」
結局、帝国内で自由気ままに行動するわけにもいかないから、食材探しはリヒトに頼むしかないんだよな。
王国の時もジョシュアさんに頼んだりしてたし、似たようなものだけど。
「とりあえず、今は食材のことよりも今夜のご飯のことだな。帝城に持っていく分は昨日と同じ量でいいんだろ?」
「陛下からはそう聞いています。それとは別に余裕があれば上級兵の方の分もお願いしたいそうですが」
帝国軍のトップは皇帝が務めるらしいから、リヒトや第一皇子はいいらしんだが、第三王子は上級兵の一員ってことで結構他の人に羨ましがられているらしい。
上級兵自体もある程度の人数をまとめる、騎士団で言うところの団長や副団長に相当する立場らしいから、そこまで人数が多くないらしいし、作ってやるか。
「持っていくのは兵士の人たちに任せても大丈夫か?」
「帝城には食材を運ぶワゴンもありますから、運ぶのは問題ないですよ」
昨日のピザは保温も考えて俺が食堂を使って運んだけど、毎食毎食そうするわけにもいかないし何より、また俺を同行しようとする人が出てくるかもしれないと考えるとあまり顔を出さないほうがいいだろう。
グラタンはピザに比べても保温に優れてるし、食堂のある中庭から帝城内でそれぞれが普段食事をとっている部屋までもそこまで遠くないらしいし、兵士の人かメイドさんに持って行ってもらおう。
昨日は帝室が全員そろっていたが、あれは俺たちへの面通しもかねてのことで、普段はそれぞれの家族で食事をとってるらしいんだよな。
ミレーヌはリヒトと一緒に食事をするのも初めてで、これまでは母親と一緒に食べるのが普通だったらしい。
「じゃあ、わたしはホワイトソースを作っちゃいますね」
「ああ、頼むよ、ミーナ」
「わたくしはメイドたちに食事を運ぶ準備をするように言ってきますね」
「頼む。俺は具材を切っていくかな」
ミーナと数人の兵士にホワイトソースづくりを、ミレーヌにはメイドたちへの伝言をお願いして、レイジと残りの兵士、そして俺はグラタンに使う食材を切っていく。
ほうれん草やブロッコリー、あるいは魚介があれば味に幅ができるんだが、無いものは仕方がないので具材はラージキャロットと緑菜、斑芋を基本として、あとは帝都付近で獲れるらしい鳥型魔獣の肉を使う。
リヒトに確認してほしいと言われて確認した、帝都近郊で獲れる魔獣や獣の肉は牛、豚、鳥がいたがそのほとんどが食用可能。
毒持ちもいたが、爪や牙に毒があって毒腺のある周囲を避ければ食肉にするのも難しくはなかった。
面白かったのはこの国にいる魔獣や獣の多くは毛が長いことだな。
おそらくは帝国の気候に適応するためなのだろうけど、毛皮自体を手に入れるためにこれまでも定期的に魔獣や獣を狩っていたらしいので、肉を廃棄する手間がなくなる分料理に使ってくれるのはうれしいことだとか。
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