料理を作って異世界改革

高坂ナツキ

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5章 帝国

17 魚介

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「へー、これが帝国の海で獲れた魚か」

 食堂に運び込まれてきたのは手のひら大の魚で、鱗が緑色をしている魚と、ピンクの表皮を持つイカ、青色の海藻だった。
 他にも海にすむ獣や魔獣は多々いるらしいが、簡単に獲れる、継続的に獲れるという観点で考えるとこの三種類が該当するらしい。

「先生、どうですか?」

「うん、毒はなさそうだな。魚醤が作れるかどうかは試してみないとわからないけど」

 異界のレシピでは主に青魚で作られていた魚醤だけど、異世界だし、なにより鱗が緑って何魚になるんだ。

「そちらはわたくしの領分ですね」

「そうだな。イカのほうは塩辛を試すのと、あとはイカリングにしたりパスタに使ったりするか」

「こっちの植物はどうしますか?」

「出汁がとれるかどうかの確認と、あとはサラダに使ったりみそ汁に入れてみたりかな」

 とりあえずは出汁に使えるかの確認として、干してみるか。
 乾燥しても使えるようなら、海辺で干してもらって乾燥した状態で他の地域に持っていくっていうのが楽になるしな。
 ああ、魚とイカの方も干物になるかどうか確認するために一部は、海藻と一緒に干してみるか。
 干物になると使い道が限定されるけど、魔法使いの手を借りなくても運べるのと、保存食としても優秀だからな。

「じゃあ、今日はパスタにしますか?」

「そうだな。パスタとサラダを作ってみて、明日はイカリングとみそ汁、それに魚を焼いて食べてみるか」

 とりあえず、海藻サラダにするにしても鮮度が落ちれば味が悪くなりそうだからそっちは先に試してみるか。

「あと、全部太陽の元で干してみる加工方法を試してみるから、ミレーヌはその準備もお願いするよ」

「なにか必要なものがありますか?」

「あれば網かな? なければ戸板みたいなものを用意してもらえれば何とかなると思う」

 干物は太陽光だけでなく風が通り抜けるかどうかも重要だから、網みたいなものの上に置くのが一番いいのだが、帝城内に必要なさそうな網があるかどうかもわからないからなかったら板に載せて試してみるしかないな。
 食堂内の燻製室を使えば簡単に干物も作れるだろうけど、こっちはベーコンづくりで肉だらけだし、なにより燻製室なんてない帝国で作れなければ意味がないからな。
 燻製室のコピー自体はリヒトが技術者に作らせているみたいだけど、そっちは乾燥室はなしで燻製専門の小屋になるらしいからベーコンなんかの乾燥は陰干しがメインになるだろうな。

「皇帝陛下や関係各所に情報を流して何かないか探してみますね」

「ああ、あと干すための場所と人手もお願いするよ。せっかく作ってもその途中で鳥型の魔獣に狙われたらたまったもんじゃないし」

 普段ならレイジに頼むところだが、レイジは今、帝国兵と一緒に帝都から少し離れたところで魔獣狩りに行っている。
 ここ数か月でステータスの上昇した帝国兵の実力試しと、新たな魔獣や獣の肉が食べられるかどうかの確認のためだな。
 軍関係者からは俺の同行が求められたが、俺を運ぶための輸送手段の準備が大変なことと、レイジの魔獣鑑定でも毒持ちかどうかの確認が可能な点、それに料理関係者が俺が帝都から離れることを嫌がったことでレイジにお鉢が回った形だ。
 まあ、レイジもそろそろ畑関連の仕事ではやることがなくなってきたから、他のことで体を動かしたいって言ってたからちょうどいいタイミングだったのだろう。

「では、兵士の中で何人か見繕ってきますね」

「頼む。ミーナはこっちで今日の料理のための下準備だな。魚やイカは俺も捌くのが初めてだから手伝ってくれると助かる」

「もちろんですよ、マサトさん」
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