revived

高坂ナツキ

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「……ほう。それはその男に恨みがあるからかね? 自分を殺した憎い相手に対してその恨みを晴らしたいからそんなことを言い出したのかね?」

 諒真の言葉にブライアンはいつになく真面目な顔をしてそう質問をする。

「……確かにそれも少しはあります。自分を殺した相手に対して何も思うところがないわけではありませんから。……でもそんな事より何よりも、こんな俺を命を懸けて守ってくれると言っている芦沢さんのことを守りたいんです」

 だからこそ、諒真はブライアンと同じくらいの真面目さでそう言い返す。
 もちろん諒真は自分の命を狙ったどころか自分の命を奪った人間に対して、恨みの一つも抱かないようなできた人間ではない。

 しかし、その恨みよりも咲良を守りたい気持ちの方が強いのだとそう伝えたかった。

「なるほどね。諒真君にとっては恨みを晴らすことよりも大切なことがあるんだね。……それで、咲良ちゃんの方はどう思っているんだい?」

「さっきお互いに決めたところですよ。私は命を懸けて諒真さんを守る。その代わりに諒真さんには私のことを命を懸けて守ってもらう、と」

「ふむ、仲のいいことだね。……まあ、咲良ちゃんがそう決めたのならワタシが口をはさむことではないだろうね」

「はい、私たち仲がいいんです」

 にっこりと有無を言わせぬ口調でそう断言する。

「では、研究所に向かって詳しい話と対策を練ろうか。そのあとに諒真君の訓練もしなくちゃならないしね」

 ブライアンは詳しく聞くのを諦めたのか、そう言うと二人に外に出るように促す。
 諒真はその指示に従おうとしてふと思い出す。

「いや、でもうちの鍵はどうするんですか? 壊して入ってきたんですよね?」

「ふふふ、諒真君は心配性だなあ。もちろんうちの所員がきちんと直して前以上の頑丈な鍵にするから心配は無用だよ」

 ブライアンは不敵な笑みを浮かべながら諒真の心配を打ち消す一言を発する。
 しかし、その一言に諒真の心配はむしろ増す。
 頑丈な鍵? 果たしてそれはまともなものであろうか? それより何より勝手に鍵を交換などして管理会社には怒られないだろうか? などと。

「ええと、勝手に鍵を交換したら色々と不都合が起きると思うんですけど……」

 先程咲良に常識的な話を無駄だと教えられてはいたものの思わずそんな常識的なことを言ってしまう。

「そんな事なら大丈夫さ。君たちの通っている学校はもちろんこのマンションにもうちの資本は流れているからね。でなければ、流石のワタシでも一日で咲良ちゃんを送り込んだりはできないよ」

 ブライアンならそれでも何とかしてしまいそうな雰囲気はあるものの、そのブライアンが大丈夫と請け合うのなら諒真自身はそれ以上追及することができなくなってしまう。

「……では行きましょう、諒真さん。やらなければならないことはたくさんありますから」

 話がまとまった雰囲気を察したのか咲良が諒真に話しかける。
 その言葉に頷きつつ諒真は二人のうしろについて家を後にする。
 マンションの前には一台の車が止まっており、三人はその車に乗り込むと研究所へと向かっていく。
 諒真にとっては研究所から帰るときに一度通った道。

 だけど、あの時とは諒真の胸に秘めた感情は違う。
 あの時には日常に帰る事しか考えていなかった。
 日常に変えることが最優先で自分から戦いに赴くことなど考えもしなかった。

 しかし、今はその戦いに自らの意思で赴こうとしている。
 それでもそれが自分の出した答えなのだとしたら覚悟も決まる。

(そうだ、自分自身で守ると決めたのなら守り切る。それだけを考えればいいんだ)

 研究所に着く頃には夜も深まりあの男が宣言したリミットまで丸一日となった。

「さて、まずは夕飯をとりながら詳しい話を聞かせてもらおうかな。二人ともまだ何も食べていないみたいだからお腹もすいただろう?」

 ブライアンはまずは食事をとるべきだと主張する。
 その主張を裏付けるように車から降りた二人のお腹がなく。

「そうですね。確かにお腹もすきましたし何か食べたいです」

「だろう? この研究所には所員が外に出なくてもいいように食堂が併設されていてね。まあ、見てのとおりここは山の中だから食事できるところがないっていうの理由だがね」

 諒真がそう主張すると待ってましたと言わんばかりにブライアンは笑顔になる。

「そうですね、私もここにいた時には三食お世話になっていました」

「そうなんだ。おいしいの、芦沢さん?」

「そこそこですね。学校の食堂と同じくらいですよ」

 味はそこそこ、量はそれなりの学食と同レベルならびっくりするほどおいしいものは出ないだろうが食べられないレベルのものも出ないだろう。

「何を言っているんだい? ここの食堂は最高だよ、三ツ星レストランにも負けないレベルだと自負しているよ」

「所長は食堂を利用するよりもカップ麺で済ませている方が多いじゃないですか」

「研究に没頭するとつい時間を忘れてしまってね。しかし、あれはあれで簡単にできるし美味しいものだよ」

 要するにブライアンの舌はバカ舌らしい。

「さて、諒真君は何を食べるかね? 私はカレーにするつもりだが」

 研究所の食堂と言っても学食とシステムは変わらず食券を買って料理をもらう方式のようだ。

「私はお昼をラーメンにしたので夜は和定食にしますね」

「じゃあ、俺はカツ丼にしようかな」

 咲良が選ぶのを横目で見ながら諒真もメニューを決定する。
 すでに食事の時間が過ぎているからか、それとも研究所の所員は食事の時間も決まっていないのか食堂の中は閑散としており人の姿はまばらだった。
 三人はなるべく人のいない場所を選ぶと提供された料理を手に席へと着く。

「さて、では時間がかかってもいいから話を聞かせてもらおうかな」

 ブライアンの言葉を合図に咲良と諒真は今日の夕方に出会った男について話していく。
 咲良が職員室での用事を済ませると既に辺りは暗くなりかけていて最終下校時間に近かった。
 教室で鞄を回収して自宅へと帰ろうとしているところにあの男は現れたという。
 最初は先生のうちの一人か学校にやってきたお客さんかと思ったが、その考えはすぐに打ち砕かれる。

 なぜならばその男の右手には長大な日本刀が握られていたからだ。
 それになにより、その雰囲気が……気配が常人ではないと警告していた。
 咲良に気づいた男は三登諒真というガキを知っているかと聞いてきたらしい。
 何のために探しているのかという問いに、哄笑とともに殺すためだと言い切ったその男を諒真に合わせるわけにはいかないと考えた咲良は能力を使用して牽制した。

 しかしそれこそが最大の間違い。この世のものとは思えないほどの不可思議な光景を前にその男の笑いは一層激しくなった。
 怯むことなく咲良に襲い掛かってきた男の攻撃を咲良は冷静に能力を駆使して防ぎきる。
 その後は諒真の見た通りでどうにかこうにか逃げ切ることに成功した。
 そこまで話を進めるとブライアンはおもむろに口を開く。

「なるほど、咲良ちゃんも諒真君もお疲れ様だったね。やはり諒真君を襲った人物は能力者、それも相当な腕を持っているということだね」

「特別剣術に長けているという風ではありませんでしたけど、あれは明らかに人を斬り慣れているといった風でした」

「虚空から刃物を取り出す能力と言い、人を斬り殺すためだけに発現させた能力のようだね」

「そんなことあるんですか? ブライアンさんの話を聞く限り能力って死んだ時の状況を覆すものだと思っていたんですけど」

 ブライアンが最初に教えた能力者といい諒真自身が発現させた能力といいそういうものだった。

「ふむ、諒真君の言っていることはもっともだ。通常能力者は蘇りの原因に対して進化するように能力を取得する。でも、何事にも例外はあるんだ」
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