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朝
しおりを挟む「ん……」
目を開けると、布の擦れる音がして、体を起こした。
部屋には朝日が差し込んでいて、どうやらなにもなくあのまま寝てしまったらしい。
「ノア、おはよう。起こしたか」
気づいたエリクスがこちらに目をやってから、また身支度を整えていく。
「おはようございます……」
「今日は少し、帰りが遅くなる」
「外へ行くのですか」
「少し用事があってな」
エリクスは微笑むと、いつもの格好良い姿になって、部屋を出て行った。
エリクスの朝は、こんなにも、早かったのか。
それも含めたら通りで、夜の行為がないわけだ。
昨日のことを思い出して、納得がいった。
こんな生活なら、わざわざ性処理用の人間を雇う必要なんて、ないように思えるけど。いくら性欲が強かったとしても、発散する時間がないなら、使えないのだから不要だ。
そもそも、エリクスからはそんな欲自体を、あまり感じない。
だとしたら。
相手は本当に誰でも良くて、欲しかったのは性処理でもなんでもなく、ただ婚姻関係を結んだ人間、だった。
リアシュさんと結婚する未来を、潰すために。
すでに結婚したと言えば、それがたとえ両親の勧めであっても強行は出来なくなるだろうし、適当に捕まえた俺には、性処理用だと言っておけば都合が良い。
素性も分からず妻にしてしまえば、その権力を振るったりとなにをしでかすか分からない。
表上は別の妻がいて、お前はあくまで雑用。
最初からそう認識させておけば、妻だと舞い上がってなにかをされる可能性は少ない。
きっと、こういうことだったんだろう。
つまり俺は────
「まって。俺ってやっぱり、用済み……?」
リアシュさんとの結婚はなくなって、実際は性欲処理の目的はなくて……
俺がいなくなるとまたリアシュさんとの結婚の話が進むのだとしたら、俺って、ここでただ生きていれば良いだけ……?
それはなんとも平和で気楽で、少し、肩の荷が軽すぎるものだった。正式な彼の妻という面で見れば、かなり重いけど。
俺、毎日ご飯を食べて、大好きな読書をして……
本当に、こんな幸せな生活でいいんだろうか。これまでの生活とあまりにもギャップがありすぎて、冷や汗をかいた。
幸せに浸ったところで、この家が吹き飛ぶとか、ない?
幸せは長く続くものじゃない。
そう思っていたから、こわかった。
──コンコンコン
「はぁい」
ご飯の用意が出来たのかな。
いつもはエリックさんが名前を呼んでくれる。
小さな違和感に気づくことなく、扉を開けてしまった。
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