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知らない日
しおりを挟む「ッ……?」
立っていたのは見知らぬ男2人で、ぶら下げた手には鋭く光る刃物が見えた。
驚いて声も出ない間に、口をタオルで塞がれる。
……っ逃げなきゃ!
抵抗しようと暴れた時には遅く、襲ってきた睡魔に、意識が飛んだ。
「女はいなかったっすね」
「だが質の良い奴隷はゲットできたぜ。こいつは使用人か?」
「愛人じゃねぇの?」
「最近出来たらしい嫁を連れ去りたかったんだが……まぁこいつを売ればかなりの金にはなるだろう」
ガタゴトと揺れる体。身動きが取れなくて苦しい。
ハッと目を覚まして、叫ぼうにも、それは許されなかった。
足手首は縄で後ろ手に縛られていて、口はテープで塞がれている。
どこに、連れて行かれているんだ。
「愛人じゃあ身代金はいただけないっすかねぇ」
「女ならまだしも男だ。無理だろ」
身代金……?っ俺、まさか人質に攫われた……!?
この馬車は、一体どこに向かっているんだろう。暗闇の中、見当もつかなかった。
起きたことを悟られないように静かにして、2人の会話を盗み聞く。
しばらくすると走行が止まって、光が差した。
「っは。起きていたのか」
「やはりこいつ、顔が良いっすねぇ」
「嫁以外は好きにしていいって言われているんだ。一度使ってから売ればいい」
……使うって……
「……ッん゛」
山の中か、木々に囲まれた古い屋敷。
その敷地内にある倉庫のような場所に身を投げ飛ばされて、身体中が痛んだ。
「一先ず報告だ」
話す2人の後ろから、もう一つ、足音が聞こえてくる。
一体何人が……
「あ、リックさん」
「どうでしたか?報酬は……」
…………っあれ。俺、この声、聞いたことが……
「それが、嫁は見つかんなかったんすよ。代わりに愛人かなんかは見つけたんで、好きにしちゃっていいっすよね」
影から聞こえてくる、3人目の声。
その新しい人物が、古屋の中を覗き込んだ。
「……っ」
……エリック、さん……?どうして……
俺を見てもエリックさんは表情ひとつ変えずに、にこにことしていた。
一体なにが起こって……
「ええ。いいですよ。では私は、用がありますので」
う、うそ……ッ、助けてくれるんじゃ、ないの……っ?
まさか、エリックさん、悪い人……なの?
「腹減った~」
「先に飯食うか。夜の楽しみだな」
扉を閉められ施錠され、声が遠のいていく。
暗い、痛い、暑い。
どうして、エリックさんが……
散らばっている僅かな藁の上に身を置いて、助けがくることを祈った。
俺のことを探す人がいるかどうかも、分からないけど。
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