ダストボックス~紙に書き記した想い

示彩 豊

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#04

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 どうやら、金曜日の夜のことは気づかれていないようだ。安堵の息を小さく吐く。遼は毎週金曜日のサービスデーにアダルトDVDを借りに来て、日曜日に返す。だから週明けの月曜日は、いつもこうして彼の様子を窺うのが瑩の習慣になっていた。バイトがばれていないか、確認するために。
 遼はクラスの中で浮いていた。どこか影があり、自ら壁を作っているように見える。顔立ちや性格が特に悪いわけではないのに、瑩と同じような、近寄りがたい雰囲気を纏っている。時折、顔に小さな傷を作って登校してくることがあった。それも、彼がクラスに馴染めない一因なのかもしれない。
「おはよう、草木さん」
 教室に入ると、快活そうな女子生徒が声をかけてきた。グループの中心にいるような、明るいタイプの生徒だ。瑩はバイト先で客に向けるのと同じ笑顔を作り、当たり障りなく返事をした。
「おはよう」
 自分の席に着く。彼女たちと親しく話すことはない。声をかけられれば応じるが、自分から輪に入ることは避けていた。友達と呼べる存在は、いない。
 それは周りの生徒のせいではない。瑩自身が、意識的に距離を置いているからだ。親しくなりすぎれば、いつか秘密が露見するかもしれない。バイトのこと。そして、もっと暗い、過去のこと。
 瑩の過去には、深い傷がある。
 幼い頃、彼女は喘息持ちで病弱だった。家族旅行の計画はいつも瑩の体調次第で、両親は隠さずに不満を口にした。「瑩のせいで」。その言葉が、小さな棘のように心を刺した。
 そんな時、いつも慰めてくれたのは三つ上の姉、捺だった。『瑩が悪いの?違うでしょ』。優しく、聡明で、両親の自慢の娘だった姉。両親は捺を溺愛し、病弱な妹には無関心だった。
 姉の慰めの言葉は、いつしか瑩の中で屈折していった。見下されている。そう感じるようになった。才色兼備の姉と、病弱な自分。両親の愛情の差。歪んだ劣等感は、黒い感情となって膨れ上がっていった。
 中学一年生の、ある曇った日の午後。駅のホームで、瑩は衝動的に姉の背中を押した。理性を失っていた。ホームに滑り込んできた電車。悲鳴。騒然となる周囲。
 幸運にも、あるいは不運にも、その瞬間を目撃した者はいなかった。瑩は涙ながらに、しどろもどろに嘘をついた。「姉さんは落とし物を拾おうとして、足を滑らせて……」。事件は事故として処理された。
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