ブルー・クレセンツ・ノート

キクイチ

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混沌の秩序

アストレア#2

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────ククリ(人狼ルガルガルダーガ種、ルーノ族・長老メトセラ、ニダヴェリール宮廷特別顧問こもん


 ミクソリディアン=ティフォーニアは、リエル=ダ=イクストラ=エヌ=イスカリオテの処刑が実施された直後、彼女の両親であるアイオニアン=ゼディーとリディアン=ルーテシアの手によってニブルヘイムへ奪還された。

 その際、一切の痕跡も残さなかったため、ヨトゥンヘイム側は、ティフォーニアがまた逃亡したものと思い込み、ユグドラシルの内包世界の観測に躍起になった。捜索は難航し、ウルザブルン=マノ=ティウスの選定が行えなくなり、徐々にウルズ=マノスの数が徐々に減っていくことになった。

 対応に困ったヨトゥンヘイムは、ティフォーニアの不在をひた隠しにして、アルビオン・ルーノ族の実権を裏から掌握し、逃げ場のないアルビオン諸島の住民に対し、ほとんど奴隷に近い扱いをするようになっていった。

 ニブルヘイムで両親と再会したティフォーニアの心はとても危険な状態だった。両親とはいっても、ゼディーとは初対面で、ルーテシアとは、乳飲み子のころに生き別れていたため、長い間、自分を放置していた両親に対し、すぐに心を開くことは難しかった。
 幸運にも、リエルがティフォーニアの側に寄り添ってくれたことで、彼女の心の傷は少しずつ癒されていった。ゆっくりとではあるが、両親にも心を開けるようになり、初めて愛娘を抱いたゼディーは、涙を流して喜んだ。
 ルーテシアも同様だ。時間はかかってしまったが、親子3人の絆がようやく結ばれ始めたのだ。
 しばらくの間、リエルも含めた4人で生活し、心の休養をとった。
 その後、叔母のロクリアン=ルシーニア、自称叔父のドリアン=ルーク、エリューデイルなどとも交流できるようになり、ようやく、ほんの少しずつではあるが、未来と向き合えるまでに回復した。

 ゼディーとルーテシアの提案により、ユグドラシルの未来は、エリューデイルとリエルにサポートしてもらいながらティフォーニア自身に思い描いてもらうことになり、4つの外界は、ティフォーニアの政策に一切干渉せず、惜しみない支援を行うことになった。

 ルークとゼディーの調査によって、フリギアン=ギアの本質を秩序とするなら、ミクソリディアン=ティフォーニアの本質は混沌であることが判明した。ティフォーニアは、いかなる悪種に対しても、寛容に受け入れられる柔軟で剛健ロバスト世界龍オーヴァーロードだったのだ。

 我々は、〝生命の営み〟の舞台となる大地とは、生命達が挑戦する場所であり、混沌から始まる世界の中で、生命が試行錯誤し成長することこそが、生命の根源体自身の成長へとつながり、それが、やがて健全な生命の営みのサイクルを生み出すのではないかとの見解に達した。

 そして、それゆえに彼女の本質である混沌こそが、フリギアン=ギアが残した最後の遺産であり、メッセージなのだと理解するに至ったのだ。


 私は、ガルダーガ出身のルガルなので、ティフォーニアの心がもっと回復するまで、面会は自粛している。
 皆からは面会を勧められているが、まだ、彼女に顔向けできるだけの勇気がでないのだ。ラフィノス族と新都アストレアの準備が整ったら、あたらめて、彼女に面会させてもらおうと思っている。
 その代わり、私はティフォーニアと文通をしている。
 手紙のやり取りを通じ、彼女がとても多感で、上品で、お茶目な女性であることがわかった。

 彼女の心の回復は、順調のようだ。

 私は、彼女との〝出会い〟をとても楽しみにしている。
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