ブルー・クレセンツ・ノート

キクイチ

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混沌の秩序

月の慈愛

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────ルフィリア(人狼ルガルルーノ種、英知の湖ミーミル守人もりと


 ニダヴェリールの月の獣ルーノ族ほど、多様で寛容、宴好きな人狼ルガル種は、どの外郭世界を探しても見つけられないでしょう。

 得意分野が明確に分かれている世界龍オーヴァーロードの中で、唯一、中庸な存在であり、万能性に秀でた、努力家で秀才肌、決して折れない魂を体現される、愛主あるじロクシー様こと、ロクリアン=ルシーニア様のご性格が、もっとも強く反映された種族こそ、我ら月の獣ルーノ族なのです。

 愛主あるじ、ロクシー様は、その生い立ちゆえ、世界龍オーヴァーロードとして、なにかに特化した能力に恵まれることはありませんでした。どれを取っても平均的で、外界からは器用貧乏とまで揶揄されていたこともある世界龍オーヴァーロードでした。

 彼女がフリギアン=ギアから引き継いだ役割は、外界から大地の生命の秩序を守るという漠然とした能力のみでした。
 それゆえ、彼女は、姉君ヘルヘイムの守護者として尽力しましたが、役割を果たすには、多くの能力が不足していました。
 しかし、彼女は嬉々として、微力な自分自身を受け入れ・向き合いながら、考え、悩み、多くの研鑽や試行錯誤を積み重ね、現在の堅牢なニダヴェリールへとご成長なされたのです。

 「ヘルヘイムへ通ずる最後の要所、ニダヴェリールの地をいかなる災いからも守り抜け」
 「必要ならば、積極的に討って出ろ」
 「災いの火種が小さいうちに徹底的に根絶やしにしろ」
 「疑わしきも見逃すな、徹底的に殲滅しろ」

という、彼女の勅命は、その先兵せんぺいとして生み出された、我ら月の獣ルーノ族、すべての心に刻まれています。

 図らずも、亜種として一時的に分化することになってしまった、アルビオン=ルーノ族アルビーノも例外ではありません。

 彼らの拠点が、大海の底に沈められてしまったと知った時、ロクシー様は、すぐさま彼らを呼び戻し、自身の傘下に加え、さらには、自ら先頭に立って、彼らアルビーノに最も適しているであろう大地を妥協することなく捜し、彼らにお与えになられました。

そして、「ユグドラシルから見放された上に、生まれて初めてきた外界の大地で暮さなければならなくなってしまった」という、彼ら自身がかかえる自虐的な心の傷を察し、彼らの目の前で、ニダヴェリール全土に対し、大号令を発っせられました。



「ニダヴェリールに、いま、白銀の同志が帰投した!
 彼らは、私自身が厳選し、涙ながらにギアへ送り出さざるを得なかった、ニダヴェリール史上、最高のシャーマンたちの末裔である!

 私は、彼らの帰投を心から待ち望んでいた!
 長らく叶わなかったその願いが、たった今、きょう、この時、叶ったのだ!

 これを祝し、今日、この日を、白銀の凱旋日と制定し、これより、毎年、この日は、ニダヴェリール全土を上げ、彼らの凱旋を祝うことを、ここに宣言する!

 そして、本日より1週間、休むことなく、彼らの歓迎の宴を執り行うことを我が勅命とする!

 漆黒の同志諸君に告ぐ! 
 白銀の英雄たちと宴を楽しむ勇気のある強者《つわもの》は、我の宮殿の大庭園に集結せよ!
 急げ! 白銀の英雄は少数精鋭だ! 早い者勝ちぞ!

 そして、白銀の英雄たちよ、覚悟しろ!
 貴様らは、この宴の主賓である! 
 これからニダヴェリール全土より、貴様らの同志が大挙して押し寄せるだろう。
 私から、貴様らへ最初の勅命は、漆黒の同志の歓迎を迎え撃つことである!
 これより1週間、一瞬たりとも休めるとおもうな!
 脱落した者は一人残らず、女子供おんなこどもとて、容赦なく黄泉路へ捨てる! 
 私の言葉に二言はない! 
 改めて言う!
 これは、ニダヴェリール、ロクリアン=ルシーニアの勅命である! 

 宴という名の戦と思え! 
 酒の牙、食物の爪を存分にふるって、初陣を飾って見せろ!

 さあ、戦の始まりだ! 
 漆黒の同志よ、白銀の英雄たちに向かって突撃せよ! 
 白銀の英雄よ、黄泉路に捨てられたくなければ、1ヶ月間、生き残ってみせよ!」


 その途端、大歓声とともに、漆黒の大群が、酒や食料を抱えて彼らを取り囲み、宮殿の大庭園は、文字どおり戦場となりました。


 実際のところは、争っていたのは漆黒の同胞同士で、圧倒的に数の少ないアルビーノを奪い合っていったというのが、正確な表現ですが……。

 この予期せぬ規模の大歓迎に、アルビーノたちは、皆一様に、泣きじゃくっていました。私たち、歓迎する側も彼らをみて、もらい泣きしていました。

 しかし、あの、ロクシー様の勅命ですので、本当に休ませてもらえず、1週間後の宴終了の合図とともにアルビーノたちは、皆、衰弱して倒れ、医療班が駆けつけました。

 幸い、この狂気の宴は、一人も黄泉路に放り出されることなく終わりました。
 私自身は、医療班として参加しておりましたが、無事に終わって、本当に安心しました。

 アルビーノたちは、この1週間を通じ、心から友と呼び合える中になる将来の親友や、将来の伴侶など、たくさんの出会いに恵まれたそうです。
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