ブルー・クレセンツ・ノート

キクイチ

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リインカーネーション

LiViNG iN A BOX#5

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────ククリ(人狼ルガルガルダーガ種、ルーノ族・長老メトセラ、ニダヴェリール宮廷特別顧問こもん


「失礼しまーす。母さんいる?」
 クラウソラスがやってきた。

「珍しいね。クラウが来てくれるとは思いもよらなかった。おいで」

 私は、クラウを抱きしめた。
 多忙なクラウには滅多に会えなのでとてもうれしい。
 用件は大体わかる。あの二人だろう。

「グラミアとオートクレールのこと?」

「やっぱり、分かってたんだ。まぁ、そうよね。
 どうしてあの二人、完全言語の基礎練習を猛特訓してるの? みんな驚いてる」

「それはよかったね。みんなのよいお手本になってるってことでしょ?」

「そうだけど、理由を教えてもらえないの。ただやる気が出ただけっていうし、絶対怪しいと思う。何を企んでるのかしってる?」

「クラウに差をつけたいみたいだよ?」

「オートクレールならわかるけど、グラミアはそんな理由であそこまで人が変わったように訓練なんてしない」
 相変わらず、クラウもグラミアに辛辣だ。

「私が知っているのは、最近、二人とも伸び悩んでいたみたいで、世界龍オーヴァーロードに完全言語の手ほどきをしてもらおうと二人でお願いに回ったら、レベルが低すぎるからもっと修行してから出直せって、全員から門前払いされて、ショックを受けてたってことだけだね」

「あの二人が門前払い!?」

世界龍オーヴァーロードからして見たら、いまのヴェルキエーレじゃ、片言も詠えてないのと一緒らしい。その現実をようやく理解したところかな?」

「……」

「クラウもショック?」

「うん……そんなに違うの?」

「ティフォーニアが詠うの見たことないの?」

「あるけど、まるで違うから。差がわからなかった」

「差を理解できないくらい差がありすぎってことじゃないの?
 君も基礎練習をしっかりやらないとオートクレールに賢者エルダーの座を奪われちゃうかもね。
 彼女すごいやる気だったから」

「もちろん、ちゃんとやってるわよ」

「クラウも刺激を受けたのなら、問題ないでしょ?」

「私もできることなら世界龍オーヴァーロードに師事したいけど、グラミアが門前払いって、どれだけ敷居が高いの?」

「私にわかるわけないでしょ? 人狼ルガルなのだし。
 ただ言えることは、世界龍オーヴァーロードの産声は、完全発声。
 ヴェルキエーレの産声は、通常発声ってことだね。
 最初からそれだけの差があるよ」

「すでにそこから違うのね……」

「自分で独自の理論を開拓していくしかないかも。あとは機嫌のいい時にそれとなく質問するといいかもね。できるだけ具体的に。彼らは常識のレベルがちがうから」

「具体的にか、あの二人の事だからざっくり聴いたんだろうな」

「そうかもね、クラウだったらなんとかできる?
 できそうなら、二人にクラウの交渉力を手札にして情報引き出して見たら?」

「そうね、探ってみる。
 でも、わからないことがあったら相談にきていい?」

「もちろん。むしろ、ここに一緒に住んでくれるとうれしい。ルシーニアも喜ぶ。毎日ここから出勤すればいいよね?」

「気持ちはうれしいけど、それは無理」

「ところで、ルシオーヌが全く来てくれなくて寂しいのだけれど、彼女を私のところで引き取って一緒に暮らしてもらえるよう調整してもらえないかな?
 もちろん種を増やすことについてはそちらに従うよ?」

「なにいってるの? だめに決まってるでしょ?」

「えー、寂しいよ。ルシオーヌくらいはちょうだいよ」

「ファルシオンは、次の面会で綺麗な光翼を広げるんだって頑張ってるよ」

「いい子だねー。じゃ、面会にきてくれたらそのまま引き取らせてもらうね。もう返さないから」

「だめ。みんな、面会に来てるじゃない。そんなに寂しがりやだった?」

「うん。寂しくて仕方ない。
 どうすれば、ルシオーヌを引き取れるかな? 本気で考えて欲しい」

「ファルシオンにたくさん子供産んでもらえば、余裕出るかも?」

「待ちきれないよ!」

「無茶いわないでよ、こっちが相談しに来たのにー」


 ……


 ドウシテコウナッタ?

 グラミアとクラウソラス、オートクレールの3名が相談にきたとき、たまたまルカティアの特訓中だったため、おかしなことになってしまった。
 
 私の部屋が、臨時の訓練所と化してしまったのだ。

 グラミアたちは、最初は見学だけだったが、娘たちがいることで、ルシーニアが来て、その結果、今の状況になってしまった。
 
 ヴェルキエーレの調律を崩すのはルシーニアがやっている。
 図らずも彼女たちの願いが叶ったようだ。

 さすがにヴェルキエーレの自己調律は早く、ルガルチームとは比較にならないサイクルで回っている。
 しかしながら、完全言語での干渉防御はとても難しいらしく、成長スピードは、ルガルチームのほうが圧倒的に早かった。

「はい、おつかれさま。お茶を入れたから反省会をしよう」

 ルガルチームとヴェルキエーレチームで別れて反省会が始まった。
 ヴェルキエーレチームの総括は、ルシーニアがやっており、容赦のない高度すぎる内容のダメ出しに3人が泣きじゃくるというのが恒例になってしまった。それでも付いて行っているようなので、さすがはヴェルキエーレといったところだろう。

「さて、ルカティアくん。今日のご感想は?」

「知覚については自信がついてきたけど、自己調律がまだ他の二人にくらべて遅いから理由を考えてみたの」

「答えはでたかな?」

「その……」

「なんでも言っていいよ。言いづらいことでもご自由に」

「調律が崩れた時に他の二人の状況と比較すると、私だけ崩れ方が違うように感じるの。体力や耐性、体質の問題かなとおもったけど、ルフィ姉と大差はないとおもうから、もしかして調律の崩し方が私だけちがうのかな? って感じたの。ククリさん、私だけ何か違うことしてる?」

「私がそんな意地悪をするとおもう?
 なんでも言っていいよ。言いづらいことでもご自由に」

「うん。わざと苦手な崩し方をしていると思う。毎回、感覚がまるで違うもの。
 毎回、対策をしているのに、それを見透かしたかのように違う崩し方をしているのがはっきりわかったの、私の勘違いじゃないとおもう」

「断言できる?」

「うん。断言できる」

「半分、正解。よく成長したね」

「半分?」

「うん。全員に同じことをしている。
 君が遅いのは君の自己調律が未熟だからではないよ、むしろルフィリアより断然早いはず。君は完全に崩されたあとの自己調律の訓練ばかりしていたからね」

「なにそれ? どういう意味?」

「他の2名の感想を聞いてからのお楽しみ。
 二人とも今日は久しぶりに感想を述べてもらうね。お待たせしました」

「では、ルフィリアの感想から」

「知覚の訓練に集中していたら、自分の調律が歪んでいく感覚が身についた気がしますね。嫌な感覚がした瞬間から自己調律を開始して、自分の調律がぶれないように対処していました。でも、ぶれないようにしているのに崩されるから、おかしいなっておもっていたのです。しかも今日なんかフェイント見たいのが混ざってくるんですもの、自分で自分の調律をおかしな方向に調整させるようなすごくいやらしい崩し方でしたよね? ほんとエッチなんだから」

「あはは。その様子だともう問題ないね。大正解。君はすでに上級編に進んでいたんだよ」

「リエルの感想は?」

「ルフィリアさんと同じですね。ただ、ガイゼルヘルに同じことされていたから、対応はできるつもりでした。だけど、自信満々でここにきてみたら、ククリさんにことごとく裏をかかれるんですよね。
 ククリさんはほとんど体力を消耗しないのに、俺がかってに自滅するように仕向けられているのがよくわかりました」

「あはは。ガイゼルヘルさんはどこまで本気出してくれたの?」

「わからないです。でも次回からは少しずつレベル上げてくれるっていってました」

「ようやく認められたって感じかな。戦闘種族ではないエリューデイルのほうが駆け引きはうまいから、先生がエリューデイルに交代した時は、人狼ルガルの戦士として認められたとおもっていいよ」

「そうですか、先は長そうですね。でも楽しみです」

「さて、ルカティアくん。追加のご感想は?」

「どうして私、気づかなかったの?」

「しらないよ。自己調律が遅いってことに頭がいっぱいで焦ってたんじゃないの?」

「ルフィ姉知ってたでしょ?」

「うん。気づくかなーって思って見守ってたけど、ククリさんが何も言わないから黙っていたの。でも、自己調律はとんでもなく早いわよ? それは自慢してもいいくらい。ルカは真面目すぎなのよ。小さいころはもっと柔軟で奔放だったのにね」

「ククリさん、もう一回だけやってもらっていい? 知覚は自信あるからいける気がするの? 駆け引きも自信あるしね」

「だめ。約束だからね」

「ケチ」

「……そうだね、次回から内容を変えよう」

「え? じゃあ私どうすればいいの?」

「いまのままで次に進めばいいよ」

「……」
 ルカティア、マジ泣きしそうだ。

「ごめんね、ちょっと意地悪しすぎた。
 でも、内容は変える。みんな必要なレベルまで到達したからね」

「私、上級編していない……」

「大丈夫、次に進んでも問題ないよ。どうしてもやりたかったら、ガイゼルヘルさんに喧嘩売ってくるといい」

「イジワル」

「あはは。順番は逆になったけど、今度は和声干渉にはいるね。でも、あっけなく終わると思うので、次回で最終回」

「え? おわりですか?」
 リエルが残念そうに呟いた。

「うん。きっかけはできたでしょ?
 ガイセルヘルさんは面倒見がいいから、たくさん教えてもらいな。何か聞きたいことがあったら面会制限の範囲内でいつでもおいで」

「はい、ありがとうございます。でも寂しいです」

「慕ってくれて嬉しいよ。次回もよろしくね」

「はい。よろしくお願いします」

「ルカティアは何か言いたそうな顔してるね?」

「本当に次回で和声干渉と干渉防御身につくの?」

「それは、君次第だよ」

「私だけすごく置いていかれているもの。最後ってすごく困る、続けられない?」

「大丈夫だよ、君は確実に成長している。
 ルフィリアはともかく、リエルは別格だから比較しちゃだめだよ?」

「でも、ルフィ姉にも置いていかれてるよ?」

「大して変わらないとおもうけど?
 和声干渉を身につけたら、ルフィリアと攻防してみれば自分の成長がわかるよ思うよ」

「ほんとに信じていいのね?」

「私はそう思うよ」

「わかった」



 ルカティアの特訓もついに最終日を迎えた。
 
「じゃ、順番に私に干渉をかけてみてね。リエルから」

「はい。あれ? もうかかった」

「次、ルフィリア」

「はい。えええええ? できちゃいました」

「次、ルカティア」

「うん。あれ? できた」

「もう一回、ルカティア」

「うん。なにこれ? あれ? なんで? どうなってるかまるでからない」

「おめでとう。みなさん卒業です。お疲れさまでした」

「なんで? ルフィ姉と練習したらうまくいかなかったのに」
 ルカティアは納得できないようだ

「じゃぁ、ルフィリアに試してごらんよ」

 ルカティアはルフィリアに和声干渉をおこなって調律を崩した。

「できてる! 説明してよ、納得できない」

「干渉防御で習得した知覚を持っていれば、コツを伝えられるの。
 こちらからも和声干渉して調律したの。
 気づかなかったのは、微調整で済んだから。
 最初に言ったでしょ? 干渉防御を習得すると干渉させるコツも一緒につかめるって。あとは、練習して精度を上げるだけだから、それくらい自分でやってね。
 ルカティア、質問ある?」

「どうして2回目はできなかったの?」

「私が干渉防御したから。
 ルカティアには、特別に、防御される感覚を教えてあげようとおもってね。
 文句ある?」

「……」
 なぜかルカティアが泣き出してる。
 私はルカティアを抱きしめて上げた。
 
「落ち着いた?」

「うん。できてよかった。でも干渉防御は?」

「できるようになってるから、ルフィリアなりルナディアなりにお願いして試せばいい」

「わかった」

「じゃ、お茶飲んで、ほっとしてからして解散だね」

 みんなにお茶を振る舞った。
 
「ルフィリア、ところで、ルナディアはどんな感じ?」

「かなり前にコツは掴んでいたようですね」

「実験台にされた?」

「ええ、でも全部抵抗したら、さっきのルカティアみたいに悩んでいたようです」

「意地悪な姉だ。じゃ、ルナディアの訓練は、ルフィリアができるかな?」

「どうしましょう、私忙しくて時間が取れません」

「それはこまったねー」

「……もう、私がやればよいのでしょ?」

「和声干渉は先をこされたから不満?」

「ううん、もっと大変なの先に身につけたから嬉しい」

「じゃ、仲良く教えてあげなよ。私はルナディアには教えないから伝えといてね」

「わかった。ククリさん、ありがとう」

 ルカティアも自信がついたようで安心した。


 あとはヴェルキエーレの娘たちだ。

 最初はどうなるかとおもったけど、ルシーニアは教えがいのある相手ができたことを楽しんでいるようだ。

 家族の団欒だんらんといった雰囲気ではないが、しばらくは、それに近い雰囲気に浸れそうなので、ちょっと嬉しい。

 何よりも私は眺めていれば良いだけなので、とても楽だ。

 ルシーニアに厳しくされている分、私が思いっきり甘やかしてやろう。

 そろそろ、時間かな? お茶を用意しておこう。
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