ブルー・クレセンツ・ノート

キクイチ

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ラグ=ナ=ローク

DAS RHEiNGOLD#3

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────ミヅキ(アシダカ種、ルーノ族)


 ルフィリアさんの指導で、特殊発声という普通の発生とは異なる発声の練習をすることになった。

 正直なところ特殊発声というものが何なのかすらわからない。

 ミユキ、ハルカ、ユキリンはすぐに発声できるようになったが、私だけはうまくできなかった。

 困ったルフィリアさんは、3人に予定時間まで練習を継続するように伝えると、私をククリさんの部屋へつれていってくれた。


「失礼しますね。ククリさん。今よろしいですか?」

「うん。大丈夫だよ。ミヅキも一緒だね。困りごとかい?」

「そうなのです、ミヅキだけうまく発声できないのです」

「……ミヅキ、教えてもらった通りに発声してみてくれる?」

「はい」

「<特殊発声:……………>」

「うん。もういいよ」

「何かわかりました?」

「彼女、軸数おいね。ルガルの特殊発声の軸数よりおおい。しかも位相軸の種類がまるで違う」

「そういうことだったのですか。設計資料の更新ミスですかね……」

「その可能性大だね。イレギュラーってレベルじゃないからね。他にアシダカ種で孵化した子はいるの?」

「いえ、この子達、先輩追い抜いてしまったので、次の子が孵化するのはまだ一ヶ月くらい先になるとおもいます」

「そっか。アシダカ種は後期に設計された新種族みたいだから、かなり高性能になってるみたい。でもデネブは、特殊言語のこと考えずに、とにかく性能を上げまくったのだろうね」

「でもどうすれば?」

「私の知覚範囲だから、なんとかできるとおもう。休暇はいつ?」

「1週間後です」

「じゃ、それまでこの子だけ、練習時間になったら私の部屋に来るようにしてくれる?」

「わかりました。私はどちらに付き添えば?」

「あとで、詳細資料渡すから、3人の面倒をみてあげて」

「はい。では、今からお願いしてしまってもよろしいのでしょうか?」

「うん。そうしてもらえると、こちらもありがたい」

「では、ミヅキ、明日からここにきてね」

「はい」

「では、ククリさん、失礼しました。ミヅキがんばってね」

「おつかれさま」

 ルフィリアさんは行ってしまった。


 ……


 ククリさんは、お茶を入れてくれた。

「テーブル低くてごめんね、しゃがんでもらうとちょうどいいかも。辛くない?」

「ちょうどいいです。それにいつもこうやって休んでます」

「ならよかった。ちょっと待ってね。連絡済ませちゃうから」

「はい」

「ティフォーニア? 今大丈夫?
 うちのアシダカの娘だけど、ルガルの特殊発声よりも軸が多くて、種類がまるで違うんだ。
 この子向けの対応はできるのだけれど、つぎの子に応用できるかわからない。
 つぎのアシダカの子は早くても一ヶ月後だってさ。
 この子だけ、特別扱いするからね。
 ほかの3名は、すでに特殊発声できるようになって、訓練をはじめてる。
 同じペース育てたい。
 資料はいま送った。
 かなりちがうでしょ?
 デネブは、特殊言語をなにも考えずに性能あげることだけに夢中だったみたいだね。
 そこは大丈夫。私の知覚範囲に収まってるから対応できるよ。
 でも、応用はできないと思ってね。
 次の子どうする?
 同じだったらどうにかなるけど、さらに違っていたら全て面倒なんか見切れないよ? 一番人気だって聞いてるけど? 個体数が多いのでしょ?
 ミヅキが指導できるように育てろって? 互換性が確認できない以上は無理だとしか言えないよ。
 固有言語は一緒のはずだから、それが確定できれば汎用性を持たせられるけど、この子、最初の発声がすでに特別だから、今、この子の将来性を潰したくない。
 ミヅキはうちの娘だからね。アストレアのアシダカ種とは別に扱わせてもらう。
 そちらのアシダカ種は、ある程度個体数が揃ってから固有言語の調査にはいるね。
 とりあえず、デネブに資料が違う理由聞いてみてくれる? 
 でも、ミヅキは私のやり方で育てるから。
 もちろんデータは提供するけど、応用は効かないと思ったほうがいい。
 他の3人の娘は、大丈夫。うん。じゃ、よろしく。

 もしもし、ルシーニア? 今大丈夫?
 データ送るから、確認しておいて。
 ティフォーニアとの会話も一緒におくる。うん、よろしくね」

「ミヅキ、ごめんね、もうちょとゆっくりしててね。
 そこの端末はお客さん用だから、好きに触ってもらっていいよ」

「はい、お気遣いすみません」

「お茶のお代わりはそこにあるから、ご自由に。遠慮しないでね。もう家族なのだから」
 ほんとに気さくな人だな、ククリさんは。

「はい、ありがとうございます」
 変に気を使っても失礼なので、お茶のお代わりをいれて、端末を開いた。


 ……


「おまたせ、もう一回発声してくれる? 声は小さくていいから、できるだけながーくね」

「はい」

「<特殊発声:・・・・・・・・・・・・&@・・・*・・*・・・&あーーーーーー>」

「ストップ。それじゃ、もう一回」

「<特殊発声:あーーーーーー>」

「OK」

「発声できました。ありがとうございます」

「いえいえ。たまたま私が対応できる範囲だっただけだよ。本当にデネブの研究バカにも困ったものだ。とりあえず、君だけは今日から私の弟子になってもらうことにしたから、創作活動大変かもしれないけど、それ以外の時間はこの部屋にきてね。もちろん休憩時間と就寝はご自由にどうぞ」

「はい。よろしくお願いします。
 その……私だけ、変だったのでしょうか?」

「いあ、よくあることだよ。でも才能の目を潰されるのが大半。面倒をみられる人材が限られているからね。決まった枠に矯正されちゃうのさ。
 当面は、君しかアシダカ種がいない以上は、才能を潰すのはもったいないからね。
なので変とはおもわずに素敵な個性と思うべきだよ」

「はい、ありがとうございます、これからよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくね。ルフィリアに連絡しておくね。ゆっくりしていていいよ」

「はい」

「あ、ルフィリア? ミヅキは発声できたよ。データとティフォーニアとの会話送っておくから確認してね。それと、ミヅキだけは今日から私の弟子にするから。そうだね、特殊すぎて今のルフィリアだと持て余す感じだね。情報共有はするから、しっかり勉強しておいて。あと、ほかの3名の言語体系がまとまったから一緒に送っておく、それを使って訓練させてね。あと詳細の技術資料もつけておいたから、つぎから自分で移植出来るようにしておいてね。
 ルナディアとルカティアを使ってくれても構わないけれど、二人の指導は君がしてね。ひどくない。エッチでもない! でないと大切な4人娘がアストレアに没収されちゃうよ? いきなり物分りが良くなったね? あはは。じゃ、よろしく

 おまたせ、じゃ、訓練をはじめようか」

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