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オフセット・ノイズ
OFFSET NOiZE#5
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────ファ=ルシオーヌ=ティア=リオン(ヴェルキエーレ特異種、ニダヴェリール宮廷特務機関)
ヴェルキエーレは、ククリさんのおかげで下位種族の特殊発声が可能になった。
しかし、理由がわからない。
とりあえず、ミヅキの指導が最優先なので、今はミヅキ用の特殊言語の習得をガンバっている。
早くアラクネの特殊言語をマスターしてイサナギを体験して見たいところだが、重要な問題に気づいた。
「ねえ、ククリさん」
「なに?」
「僕にアラクネのイサナギは無理だとおもうんだ」
「どうして?」
「足の数が足りない。流水とか宗術とか完全に無理」
「……。いいところに気づいたね
あはは。ごめん、ごめん。人狼用ならいけそう?」
「ためしてみる」
「綺麗な発声だね。ファル・デバドス種って感じだ」
「あはは、変な表現やめてよ、笑いがこみ上げて集中できない」
「大真面目だよ? アルデバドスの発声にちかい」
「えー、なんか嫌だな。どの種族の発声が一番綺麗なの?」
「ルーノかな。ルルルのデータ参考にするといいよ」
「こんな感じ?」
「おお、ファルシオン・ルーノ種だね。
英知・浄化・呪詛もマスターしちゃいなよ。
あとで役に立つよ」
「わかった」
「さすがヴェルキエーレだね、余裕で習得しちゃうね」
「法術体系は理詰めな部分が多いから習得しやすいね」
「精霊術体系は難関だよね。私も苦労してる。ヴェルキエーレはすごいね」
「ククリさんの方がすごいよ。ルガルで精霊術体系に手をだしている時点でおかしいとおもう」
「高次元生命体だから無理ではなかったんだよね。
みんな無理だと思い込んでいただけ」
「ルガルの刹那のデータってどっかにまとまってる?」
「ここにあるよ。到達した人のデータはここに全部まとめてある。
世界龍みたいに直接狙うの?」
「うん、行けそうな気がした」
「やっぱり上位種からみるとイージモードなんだね」
「自分の領域では劣等生だけどね……」
「すぐ巻き返せるよ」
「あの3人は遠すぎる」
「でも、勝ったじゃん。例の発声」
「抜け駆けだもの。すぐ追いつかれる」
「ほんとにそう思ってる?」
「ちがうの? 結局あれなに?」
「オフセット・ノイズと名付けて見た」
「なにそれ?」
「あの3人がお腹の中にいた時に聞こえていた歌を少し調整したもの」
「えー? あんな変なの? もっと綺麗だと思ってた」
「実際はこれだよ。もっと綺麗」
「ほんとだ、とても綺麗だ。でもこれ、どうやって記録したの?」
「法術領域は耳コピして、精霊術領域はいろんなデータをもとに再現したの」
「完全言語をうたってたの?」
「完全言語ではないね、ただのノイズ」
「僕、聞こえなかったよ?」
「ヴェルキエーレの母体は全く同じオフセット・ノイズが流れてるから差分が生じないので聞こえない。別種族が母体になるから聞こえる。ただ、そうすると母体の固有発声が原点になっちゃうから、ヴェルキエーレの完全発声を原点にして再調整したのが例の発声」
「で、これがどう関係してくるの?」
「通常発声と完全発声の原点は同じなんだけど特殊発声の原点だけズレがあるの。しかも原点のズレが複雑に変化する。
ルークには文句言っておいた。
対策は無理と平謝りされた。
通常発声と完全発声があれば困らないからね。
特殊発声は高次元生命体としてオマケでついてきちゃったものだから重要視されてなかったみたい」
「完全発声のつもりで特殊発声をして調声してたから、ノイズがのって邪魔されてたのか」
「そういうこと、特殊発声を駆使したい場合は、自分のオフセット・ノイズを意識してコツを体で覚えるしかないね」
「でも、あの3人全然こないね。すぐ機材を借りにくると思ったのに」
「3人は完全発声に慣れちゃってるから、特殊発声で複雑なことするのはかなり難しいはず」
「なるほどね」
「でも、いつわかったの?」
「先日。ルシオーヌでいろいろ試したでしょ?
法術領域のノイズ聞いて、ピンときた。
ちょうど、母体が聞こえる歌のデータがまとまったばかりだったからね。
ティフォーニアが聞きたいって、うるさくてね」
「じゃ、ティフィーニアに感謝しないとね」
「だいじょうぶ、彼女の娘たちが恩恵を受けるからプラマイゼロ」
「ヴェルキエーレの特殊発声は役に立たないの?」
「そんなことないとおもう。最近の調査結果から判断すると、ヴェルキエーレのイサナギは、特殊発声でないと無理だと思うよ。
完全発声は追加の拡張機能だから、生命の根源体と深く結びついてないとおもう。いきなり完全発声版の体系を構築するのは難しい気がする。影の世界で完全言語を並列詠唱するって使い方が一番しっくりくるのかも。ルカは呪詛の法術体系を影の世界で拡張しているよ。すでに呪詛使いでは誰もついてこられない領域に到達してる。
最初は、下位種族と一緒で、特殊発声の発声軸の調査をして、移植することから始めるのがらくかも。
あくまでも知的生命体としての立ち位置で」
「なるほどね。オフセット・ノイズのことがわかったからもしかしたら比較的簡単に移植できるかもしれない。いままではどっちも難しいくて先に進めなかったから」
「自信が出てきたね」
「いまだけかも」
「期待してる。でも、完全発声の流水を見て見たいから、そっちもがんばってみて」
「えー、ハードル上げないでよ」
ヴェルキエーレは、ククリさんのおかげで下位種族の特殊発声が可能になった。
しかし、理由がわからない。
とりあえず、ミヅキの指導が最優先なので、今はミヅキ用の特殊言語の習得をガンバっている。
早くアラクネの特殊言語をマスターしてイサナギを体験して見たいところだが、重要な問題に気づいた。
「ねえ、ククリさん」
「なに?」
「僕にアラクネのイサナギは無理だとおもうんだ」
「どうして?」
「足の数が足りない。流水とか宗術とか完全に無理」
「……。いいところに気づいたね
あはは。ごめん、ごめん。人狼用ならいけそう?」
「ためしてみる」
「綺麗な発声だね。ファル・デバドス種って感じだ」
「あはは、変な表現やめてよ、笑いがこみ上げて集中できない」
「大真面目だよ? アルデバドスの発声にちかい」
「えー、なんか嫌だな。どの種族の発声が一番綺麗なの?」
「ルーノかな。ルルルのデータ参考にするといいよ」
「こんな感じ?」
「おお、ファルシオン・ルーノ種だね。
英知・浄化・呪詛もマスターしちゃいなよ。
あとで役に立つよ」
「わかった」
「さすがヴェルキエーレだね、余裕で習得しちゃうね」
「法術体系は理詰めな部分が多いから習得しやすいね」
「精霊術体系は難関だよね。私も苦労してる。ヴェルキエーレはすごいね」
「ククリさんの方がすごいよ。ルガルで精霊術体系に手をだしている時点でおかしいとおもう」
「高次元生命体だから無理ではなかったんだよね。
みんな無理だと思い込んでいただけ」
「ルガルの刹那のデータってどっかにまとまってる?」
「ここにあるよ。到達した人のデータはここに全部まとめてある。
世界龍みたいに直接狙うの?」
「うん、行けそうな気がした」
「やっぱり上位種からみるとイージモードなんだね」
「自分の領域では劣等生だけどね……」
「すぐ巻き返せるよ」
「あの3人は遠すぎる」
「でも、勝ったじゃん。例の発声」
「抜け駆けだもの。すぐ追いつかれる」
「ほんとにそう思ってる?」
「ちがうの? 結局あれなに?」
「オフセット・ノイズと名付けて見た」
「なにそれ?」
「あの3人がお腹の中にいた時に聞こえていた歌を少し調整したもの」
「えー? あんな変なの? もっと綺麗だと思ってた」
「実際はこれだよ。もっと綺麗」
「ほんとだ、とても綺麗だ。でもこれ、どうやって記録したの?」
「法術領域は耳コピして、精霊術領域はいろんなデータをもとに再現したの」
「完全言語をうたってたの?」
「完全言語ではないね、ただのノイズ」
「僕、聞こえなかったよ?」
「ヴェルキエーレの母体は全く同じオフセット・ノイズが流れてるから差分が生じないので聞こえない。別種族が母体になるから聞こえる。ただ、そうすると母体の固有発声が原点になっちゃうから、ヴェルキエーレの完全発声を原点にして再調整したのが例の発声」
「で、これがどう関係してくるの?」
「通常発声と完全発声の原点は同じなんだけど特殊発声の原点だけズレがあるの。しかも原点のズレが複雑に変化する。
ルークには文句言っておいた。
対策は無理と平謝りされた。
通常発声と完全発声があれば困らないからね。
特殊発声は高次元生命体としてオマケでついてきちゃったものだから重要視されてなかったみたい」
「完全発声のつもりで特殊発声をして調声してたから、ノイズがのって邪魔されてたのか」
「そういうこと、特殊発声を駆使したい場合は、自分のオフセット・ノイズを意識してコツを体で覚えるしかないね」
「でも、あの3人全然こないね。すぐ機材を借りにくると思ったのに」
「3人は完全発声に慣れちゃってるから、特殊発声で複雑なことするのはかなり難しいはず」
「なるほどね」
「でも、いつわかったの?」
「先日。ルシオーヌでいろいろ試したでしょ?
法術領域のノイズ聞いて、ピンときた。
ちょうど、母体が聞こえる歌のデータがまとまったばかりだったからね。
ティフォーニアが聞きたいって、うるさくてね」
「じゃ、ティフィーニアに感謝しないとね」
「だいじょうぶ、彼女の娘たちが恩恵を受けるからプラマイゼロ」
「ヴェルキエーレの特殊発声は役に立たないの?」
「そんなことないとおもう。最近の調査結果から判断すると、ヴェルキエーレのイサナギは、特殊発声でないと無理だと思うよ。
完全発声は追加の拡張機能だから、生命の根源体と深く結びついてないとおもう。いきなり完全発声版の体系を構築するのは難しい気がする。影の世界で完全言語を並列詠唱するって使い方が一番しっくりくるのかも。ルカは呪詛の法術体系を影の世界で拡張しているよ。すでに呪詛使いでは誰もついてこられない領域に到達してる。
最初は、下位種族と一緒で、特殊発声の発声軸の調査をして、移植することから始めるのがらくかも。
あくまでも知的生命体としての立ち位置で」
「なるほどね。オフセット・ノイズのことがわかったからもしかしたら比較的簡単に移植できるかもしれない。いままではどっちも難しいくて先に進めなかったから」
「自信が出てきたね」
「いまだけかも」
「期待してる。でも、完全発声の流水を見て見たいから、そっちもがんばってみて」
「えー、ハードル上げないでよ」
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