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探求⑤
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「次は仏教関係書からの記述ですが…後藤さん、大丈夫ですか?」
平井の心配の声がする。
後藤は川原の記述を聞くにつれ、これらが川原だけの問題ではなく、自分いや、自分と平井、あるいはもっと大きな範囲までに関係しているように思えていた。
何かおかしい。まだ何がどうかは分からないが、自分の存在が希薄になって行くような、めまいのような感覚を、後藤は覚えていた。
「あぁ、大丈夫だ」
それを言うのが精一杯だった。
「少し、外の空気を吸いましょう」
平井が後藤に配慮して言った。
「そうだな…」
立ち上がった瞬間、本当にめまいがした。
平井と並んで、署の表通りを歩く。
ビル街の通りは結構な数の人が歩いている。
先ほど聞いた、川原の記述が蘇る。
雑踏を眺めながら
「なぁ、平井君、この中の何人かは、この世に存在しないんだろうか?」
と、しみじみと聞いた。
「川原の記述ですか?」
「あぁ、あれがやたら気になるんだ」
「じゃ、すれ違う人ひとりひとりにぶつかってみますか?」
平井は茶化して言ったつもりだったが、後藤はそれを指摘せず
「その霊体は硬いのかな?それとも透けているのかな?」
と、かえって真顔で聞いて来た。
なんか変だと平井が思った時、ふと後藤が
「ところで、君は夕べ、ご飯のおかわりをしたか?」
と妙な質問をして来た。
なんでそんなと思いつつも生真面目に答えようと
「夕食ですね?えっと…」
言った瞬間、平井の口が固まった。
「え?」
平井はそれしか言えない。
「あれ?」
「オ?」
平井はまるで壊れたロボットのように、口を開けたまま目を剥いた。
ほんの一瞬だった。その後、何もなかったように
「夕べはパン食でしたから」
と答えた。
「あぁ、そうか」
後藤は頷きながら
(やはり私だけじゃない)
と思った。
通りのカフェで軽く休憩し、2人は署に戻った。そしてノートの分析を再開した。
「仏教関係の本の棒線部分は…」
平井の声が仏教論を語り始める。
【神のような偉大なもののシンボルは人の外にあるものではなく、人の内に存在すると考えるのが仏教である】
【人の中には10の世界がある。それらには上下階級のようなものがあり、下からそれぞれ「地獄」「餓鬼」「畜生」「修羅」「人」「天」「声聞」「縁覚」「菩薩」「仏」の名が付いている。その下から4つは「四悪趣」と呼び、上から4つは「四聖」と呼び、また下から6つを「六道」と呼ぶ。加えて下から3つは「三悪」と呼ぶ】
【仏には絶大な力があり、実体は宇宙に存在し、人の中の「仏」と交信することで、その人に超現実的な徳をもたらす】
「この記述部分ですね。そして川原の記述は」
【私が仏になれば、真の仏を呼べるということか…そのメカニズムはいったい何なのだ?】
「この疑問一点です」
「要するに川原は何かを望み、何かを得たいということに思えるな…」
と言いながら後藤は、すでに川原は何かを得、少なくとも後藤はじめ平井にまでその何かを振りかけているのではないかと思っていた。
「で、川原はそのメカニズムを解明したのか?」
後藤は聞いた。
「それらしき記述が次の本の所にあるんです」
平井は答えた。
平井の心配の声がする。
後藤は川原の記述を聞くにつれ、これらが川原だけの問題ではなく、自分いや、自分と平井、あるいはもっと大きな範囲までに関係しているように思えていた。
何かおかしい。まだ何がどうかは分からないが、自分の存在が希薄になって行くような、めまいのような感覚を、後藤は覚えていた。
「あぁ、大丈夫だ」
それを言うのが精一杯だった。
「少し、外の空気を吸いましょう」
平井が後藤に配慮して言った。
「そうだな…」
立ち上がった瞬間、本当にめまいがした。
平井と並んで、署の表通りを歩く。
ビル街の通りは結構な数の人が歩いている。
先ほど聞いた、川原の記述が蘇る。
雑踏を眺めながら
「なぁ、平井君、この中の何人かは、この世に存在しないんだろうか?」
と、しみじみと聞いた。
「川原の記述ですか?」
「あぁ、あれがやたら気になるんだ」
「じゃ、すれ違う人ひとりひとりにぶつかってみますか?」
平井は茶化して言ったつもりだったが、後藤はそれを指摘せず
「その霊体は硬いのかな?それとも透けているのかな?」
と、かえって真顔で聞いて来た。
なんか変だと平井が思った時、ふと後藤が
「ところで、君は夕べ、ご飯のおかわりをしたか?」
と妙な質問をして来た。
なんでそんなと思いつつも生真面目に答えようと
「夕食ですね?えっと…」
言った瞬間、平井の口が固まった。
「え?」
平井はそれしか言えない。
「あれ?」
「オ?」
平井はまるで壊れたロボットのように、口を開けたまま目を剥いた。
ほんの一瞬だった。その後、何もなかったように
「夕べはパン食でしたから」
と答えた。
「あぁ、そうか」
後藤は頷きながら
(やはり私だけじゃない)
と思った。
通りのカフェで軽く休憩し、2人は署に戻った。そしてノートの分析を再開した。
「仏教関係の本の棒線部分は…」
平井の声が仏教論を語り始める。
【神のような偉大なもののシンボルは人の外にあるものではなく、人の内に存在すると考えるのが仏教である】
【人の中には10の世界がある。それらには上下階級のようなものがあり、下からそれぞれ「地獄」「餓鬼」「畜生」「修羅」「人」「天」「声聞」「縁覚」「菩薩」「仏」の名が付いている。その下から4つは「四悪趣」と呼び、上から4つは「四聖」と呼び、また下から6つを「六道」と呼ぶ。加えて下から3つは「三悪」と呼ぶ】
【仏には絶大な力があり、実体は宇宙に存在し、人の中の「仏」と交信することで、その人に超現実的な徳をもたらす】
「この記述部分ですね。そして川原の記述は」
【私が仏になれば、真の仏を呼べるということか…そのメカニズムはいったい何なのだ?】
「この疑問一点です」
「要するに川原は何かを望み、何かを得たいということに思えるな…」
と言いながら後藤は、すでに川原は何かを得、少なくとも後藤はじめ平井にまでその何かを振りかけているのではないかと思っていた。
「で、川原はそのメカニズムを解明したのか?」
後藤は聞いた。
「それらしき記述が次の本の所にあるんです」
平井は答えた。
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