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可能性⑦
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刑事のひとりが手を挙げた。
「怨みという点ですが、川原幸恵はどうなんでしょう?誰からも川原は人の怨みや妬みをかう人間でないと言われていますが、少なくとも幸恵は、川原のせいで子供を失ったという怨みがあるんじゃないでしょうか?」
「ということは君は、前のふたつと今回の事件は別物と言いたいんだね?」
花田刑事部長が言った。
「そうなりますね」
刑事は答えた。
「はい!」
別の刑事が手を挙げた。
「先ほど後藤刑事は、川原は幸恵を愛していると言われましたね?」
「はい、言いました」
後藤が応じると刑事は
「弁当の件もそうですが、川原が愛する者をいたぶる性癖があるなら、子供の殺害も、愛する者へのいたぶりになりませんか?」
と後藤に向けて言った。
「確かに考えられますが?」
後藤は刑事に先を促した。
「川原は当然、子供も愛したでしょう?
ならば自ら手を下していると思うのです。36年前もそうだと思うのです」
刑事の話の区切りを見計らって、先にノートのコピーを頼んでいた係から、出来たばかりのコピーが各自に配られた。
質疑は一旦中断し、刑事たちはコピーに目を通した。ここで後藤が断った。
「皆さんに渡したコピーは、川原の告白と36年前の事件記事のスクラップの箇所、それから川原凛の事件資料のみです。ノートの後半は調査途中ですのでここにはありません。悪しからず」
しばらく沈黙が続いた。刑事たちはコピー解読にに集中していた。
と、質疑の途中だった刑事が立ち上がった。そして
「一連の資料を見た限り、やはり私は川原がふたつの事件の犯人だと思います。川原にとって究極の愛情、いや、川原の愛が極まった時、彼は殺害という表現をとるように思えるのですがどうでしょうか?後藤刑事」
「実は私も、そう考えています、今のところ」
「今のところ?」
「そう、今のところです。なぜならまだ私たちはノートの全体を見ていないからです。それにUSBもありますから」
「なるほど、分かりました。ではここまでのこととして補足させて下さい。私は、特に凛の事件は、凛と幸恵両方への川原の究極の愛情表現だと思うのです」
「いいかね?」
刑事部長が質問した。
「では君は、川原の事件についてはどう考える?先の…うーん、あ、君だ」
部長は先に考えを述べた刑事を指差した。
「あの刑事…あ、名前なんだったかな?」
(またあの現象だ…)
後藤の目の前で一瞬、時間が止まっていた。ほんの一瞬。
「あ、あぁ、石田君、石田君だった。石田君の考えと同じで、川原幸恵の怨恨だと考えるか?」
剥いていた目が元に戻った部長が言った。
「正直言って分かりません。鑑識の調査結果でも犯人の痕跡は認められずと出ていますし、先の司法解剖の報告からは川原の自作自演としか考えられません。しかしみるみる出血する中で、ご丁寧にも刃物を大腿骨の裏側に、きちんと片付けるなんてことが出来るのか?ここは個人的に引っかかっています。ですからこの件に関しては、私は意見を保留します」
「分かった。ん…後藤君、話を進めてくれ」
部長は後藤を促した。
「怨みという点ですが、川原幸恵はどうなんでしょう?誰からも川原は人の怨みや妬みをかう人間でないと言われていますが、少なくとも幸恵は、川原のせいで子供を失ったという怨みがあるんじゃないでしょうか?」
「ということは君は、前のふたつと今回の事件は別物と言いたいんだね?」
花田刑事部長が言った。
「そうなりますね」
刑事は答えた。
「はい!」
別の刑事が手を挙げた。
「先ほど後藤刑事は、川原は幸恵を愛していると言われましたね?」
「はい、言いました」
後藤が応じると刑事は
「弁当の件もそうですが、川原が愛する者をいたぶる性癖があるなら、子供の殺害も、愛する者へのいたぶりになりませんか?」
と後藤に向けて言った。
「確かに考えられますが?」
後藤は刑事に先を促した。
「川原は当然、子供も愛したでしょう?
ならば自ら手を下していると思うのです。36年前もそうだと思うのです」
刑事の話の区切りを見計らって、先にノートのコピーを頼んでいた係から、出来たばかりのコピーが各自に配られた。
質疑は一旦中断し、刑事たちはコピーに目を通した。ここで後藤が断った。
「皆さんに渡したコピーは、川原の告白と36年前の事件記事のスクラップの箇所、それから川原凛の事件資料のみです。ノートの後半は調査途中ですのでここにはありません。悪しからず」
しばらく沈黙が続いた。刑事たちはコピー解読にに集中していた。
と、質疑の途中だった刑事が立ち上がった。そして
「一連の資料を見た限り、やはり私は川原がふたつの事件の犯人だと思います。川原にとって究極の愛情、いや、川原の愛が極まった時、彼は殺害という表現をとるように思えるのですがどうでしょうか?後藤刑事」
「実は私も、そう考えています、今のところ」
「今のところ?」
「そう、今のところです。なぜならまだ私たちはノートの全体を見ていないからです。それにUSBもありますから」
「なるほど、分かりました。ではここまでのこととして補足させて下さい。私は、特に凛の事件は、凛と幸恵両方への川原の究極の愛情表現だと思うのです」
「いいかね?」
刑事部長が質問した。
「では君は、川原の事件についてはどう考える?先の…うーん、あ、君だ」
部長は先に考えを述べた刑事を指差した。
「あの刑事…あ、名前なんだったかな?」
(またあの現象だ…)
後藤の目の前で一瞬、時間が止まっていた。ほんの一瞬。
「あ、あぁ、石田君、石田君だった。石田君の考えと同じで、川原幸恵の怨恨だと考えるか?」
剥いていた目が元に戻った部長が言った。
「正直言って分かりません。鑑識の調査結果でも犯人の痕跡は認められずと出ていますし、先の司法解剖の報告からは川原の自作自演としか考えられません。しかしみるみる出血する中で、ご丁寧にも刃物を大腿骨の裏側に、きちんと片付けるなんてことが出来るのか?ここは個人的に引っかかっています。ですからこの件に関しては、私は意見を保留します」
「分かった。ん…後藤君、話を進めてくれ」
部長は後藤を促した。
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