短い話たち

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長生き

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私は長生きしすぎて
とうとう最長寿者になってしまった
ということは
私の友だちは
もうみんな死んで
どこかに生まれ変わっているということだ
みんな死んだ時期はまちまちだから
バラバラの世代に生まれ変わってるんだろう
とにかく私の世代は
私だけのものになってしまったわけだ
さてと私は
私だけのこの世代をどうしようかな
そう考えながら眠ったら変な夢を見た
そこには私が住んだ家と
通った学校や店
友だちの家があるんだけど
人が誰もいない
そして何より
白と黒しか色がないのだ
そういう私も白と黒だけだった
茫然としながら私は
何かを握っていることに気がついた
手を開いたら
それは種子たちだった
なんの種子かは分からない
とにかく私は種子たちを蒔いてみた
するとみるみる発芽した
芽には色がついていた
鮮やかな緑色だった
たちまち双葉が開いた
私は驚いた
双葉の中から出て来たのは
とっくに亡くなった父母や
もう1人もいない友だちだった
みんな色がついている
そういう自分はと思って
自分の体を見回したが
やはり白黒のままだった
白黒だった風景まで
今は色がついている
なのに私だけ
白黒のままだ
父母や友だちは
私のある日の記憶の中で
記憶の通りの動きを
あの日の色のまましているのだが
肝心の私は老人の姿で
白と黒の体で
それをじっと見ているだけだ
唖然とした私の耳に
友だちの話し声が聞こえる
「あいついないね」
「まだ死んでないからな」
え?
私はここにいるぞ
見えないのか?
私は叫んだが
彼らには聞こえないようだ
それどころか父母までが
「あの子いないわね」
なんて言っている
たまらずウワっと叫んだ時
目が覚めた
体を見たら
私に色がついている
ところが私の周りには
あの頃の友だちや父母の
白黒写真が散らばっていた
そうか私は
これを見て
あの頃を思い出していたんだ
「じゃ、私は」
「死んだらそこに生まれ変わるのか?」
「じゃ、私は」
「また長生きして」
「同じ夢を見るのか?」
そういえばこの夢
何度も見たような気がする
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