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今昔物語
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何十年ぶりだろう?
わたしは今、通っていた小学校の教室の、かつて自分が座っていたあたりに、また座っている。
「…」
ホッと呟こうとして思わず言葉を飲んだ。
わたしのまわりには、ぼんやりした人の形が四つ並んでいた。
彼らは口々に言う。
「世の中良くなった。わたしは算数だが、昔は数を数えることさえ大変だった。それが今はコンピューターの発達で計算どころか未来の予測まで可能になったんだ」
「私は国語だけど、昔はいちいち文字を鉛筆やペンで紙に書かなきゃならなくて面倒だったし、本だって紙の束だからかさばって重い。それが今は携帯電話の発達で電話の中で文字を打てるし本だって読めるんだ」
「私は社会だ。いやぁ世の中便利になった。交通ひとつとってもキャッシュカードや電子マネーが発達したおかげで改札はワンタッチだし高速道路もフリーパスだ。余計な人件費もかからなくなった」
「私は理科だが、遺伝子操作の発達でいろんな生物の複製が可能になった。病気も治せるし食糧だって作れるんだ。いやぁ未来は明るいね」
そして彼らは口を揃えてわたしに言うのだ。
「なのに人間はどうして昔は良かったばかり言うんだい?」
わたしがさっき飲んだ言葉だ。
わたしは今、通っていた小学校の教室の、かつて自分が座っていたあたりに、また座っている。
「…」
ホッと呟こうとして思わず言葉を飲んだ。
わたしのまわりには、ぼんやりした人の形が四つ並んでいた。
彼らは口々に言う。
「世の中良くなった。わたしは算数だが、昔は数を数えることさえ大変だった。それが今はコンピューターの発達で計算どころか未来の予測まで可能になったんだ」
「私は国語だけど、昔はいちいち文字を鉛筆やペンで紙に書かなきゃならなくて面倒だったし、本だって紙の束だからかさばって重い。それが今は携帯電話の発達で電話の中で文字を打てるし本だって読めるんだ」
「私は社会だ。いやぁ世の中便利になった。交通ひとつとってもキャッシュカードや電子マネーが発達したおかげで改札はワンタッチだし高速道路もフリーパスだ。余計な人件費もかからなくなった」
「私は理科だが、遺伝子操作の発達でいろんな生物の複製が可能になった。病気も治せるし食糧だって作れるんだ。いやぁ未来は明るいね」
そして彼らは口を揃えてわたしに言うのだ。
「なのに人間はどうして昔は良かったばかり言うんだい?」
わたしがさっき飲んだ言葉だ。
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