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3 決壊
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夕食の時間になり、家族みんなが集まります。お兄様は今日は用事があるみたいなので、お父様とお母様と私の三人で食事を取ります。
私の家ではできるだけ家族全員で食べることが決められています。一人で食べる料理はあまり美味しく感じないので、私にとっては嬉しいものです。
「フィー、これが陛下から渡された書類だ」
夕食を終えた後、お父様から書類を渡されます。今日頼んだものが今日に来るとは思わなかったのですが…
それに、許可が降りるとも思っていなかったのですが…
陛下たちももう諦めていたのかもしれませんね。
「陛下から、今まですまなかったなとお言葉を預かっている。それにこれはお詫びだとな」
もう一枚書類が渡されます。内容は……婚約を白紙にする旨が書かれてありました。また、第二王子殿下を支えてやってほしいとも書いてありましたが、そんなことはどうでもいいのです。これで私はあれを支える必要がないのですね。それだけでとても嬉しいです!
「フィーちゃん」
お母様が私の名前を呼んでいます。それだけです。それだけなのに背筋が凍りつくような圧力を感じます。顔はとても綺麗な顔立ちをしており、ニコニコとしているのに、とても怖いです。
「第一王子とあなたを婚約させてしまい、あなたが第一王子を嫌っていることは知っていました。けれども、私たちでは白紙に戻せなかったことは悪いと思っているわ」
王族との婚約を公爵家とはいえ、そうそう白紙には出来ないでしょう。そのようなことはお母様も知っているはずです。
では、なぜ今このような話を?
「けどね、フィー。今日何をしようとしたか聞いてもいいかしら?」
「えっ、はい。今日はいつも通りに過ごして、第一王子とそのお供を無視して、情報を得るために影を呼んで、陛下に言付けを頼みました」
「……その影を呼ぶのにあなたは何をしようとしましたか」
「それは、私に護衛がついていると確信したうえで、危なくなったら、助けに来るだろうと護身用の短剣で……」
ここまで自分で言って、お母様が怒っている理由に気付きます。お母様は私が確信があったとはいえ、自分で命を絶とうとしたことに怒っているのでしょう。
「え、えーと、お母様、これには私なりの考えがありまして…」
「ええ、わかっていますよ。あなたが考えなしにこんなことをするとは思っていません」
「そうです「ですが…」」
その後の言葉は続きません。疑問に思い、お母様の顔を見る。お母様が泣いていた。お母様だけじゃない。お父様も侍女たちもみんなが。
「…ですが、あなたは助けられなかったら、その時はその時だと思っていませんでしたか?」
「……」
確かに、私は最悪の想定はしていました。ですが家にはお兄様がいるので、後継問題は大丈夫だとも思っていました。お兄様があのお馬鹿さんたちの一員だったとしたら、私は同じことをしていたでしょうか?
「あなたが第一王子との婚約を嫌がっているのは知っていました。けれども、国のためにはあなたが王妃になるしかないと思っていました。けれども、あなたが無意識にでも死を選ぶくらい追い詰めていたのが、親として私は情けないです」
「い…え…」
否定しようとするが言葉が出てきません。なんと言ったら正解なのでしょうか。私が王子と結婚するのは義務だったので仕方がありません。違う。私が言いたいことはそうじゃない。私は国のためでなければ、死にたいと思っていのでしょうか?わからない。自分のことなのに何もわからない。
「要するに、お前が溜め込みすぎていることに気づかなかったことを全員が後悔しているってことだよ」
俺も含めてな。そう言ってお兄様が私の頭を撫でる。こうやって誰かに頭を撫でてもらうのも久しぶりで、暖かい。
「父上も今は落ち着いているが、影からの伝言を聞いた時には大変だったんだよ。宰相の仕事を辞めさせていただくと言って聞かなかくてさ。結局フィーの婚約の白紙をもぎ取って落ち着いたんだよ」
「アレン!喋りすぎだ。はあ、全く、フィー。私たちはあまり君のことを見れていなかったかも知れないが、愛しているのだよ。そこだけは疑わないでほしいし、何かあれば頼ってほしい」
私は第一王子に初めて会った日からあれには期待していなかった、できなかった。だからこそ、これから私一人でこの国を支えていかなければならないと思った。だから、だから、私は一人で生きられるように、誰にも頼らずに済むように生きてきた…つもりだった。
「今からでも一つ、お願いしてもいいですか…」
「ああ、もちろんだとも」
「抱き…しめてもらってもいいですか」
「ああ!」
お父様もお母様も私に抱きついてくれます。頭を撫でてくれます。心が暖かくなるのを感じます。
ピシッ
今まで閉じ込めていたものに亀裂が入る音がした。それからは涙が止めることができません。
「お…とおさま、おか…あさま、私ずっと…ずっと、第一王子との婚約が嫌でした。ですが、私がやらないとこの国がダメになると思ったら…我慢するしかなくて…」
「ええ」
「第一王子が何を言ってきても…気にしませんでした。この、国のためだと思って…我慢して…」
「ああ」
「これからは…一人なのだから、誰にも…弱いところは見せてはいけないと…そう思って…」
「「よく頑張ったな(ましたね)」」
「…は…い」
私の家ではできるだけ家族全員で食べることが決められています。一人で食べる料理はあまり美味しく感じないので、私にとっては嬉しいものです。
「フィー、これが陛下から渡された書類だ」
夕食を終えた後、お父様から書類を渡されます。今日頼んだものが今日に来るとは思わなかったのですが…
それに、許可が降りるとも思っていなかったのですが…
陛下たちももう諦めていたのかもしれませんね。
「陛下から、今まですまなかったなとお言葉を預かっている。それにこれはお詫びだとな」
もう一枚書類が渡されます。内容は……婚約を白紙にする旨が書かれてありました。また、第二王子殿下を支えてやってほしいとも書いてありましたが、そんなことはどうでもいいのです。これで私はあれを支える必要がないのですね。それだけでとても嬉しいです!
「フィーちゃん」
お母様が私の名前を呼んでいます。それだけです。それだけなのに背筋が凍りつくような圧力を感じます。顔はとても綺麗な顔立ちをしており、ニコニコとしているのに、とても怖いです。
「第一王子とあなたを婚約させてしまい、あなたが第一王子を嫌っていることは知っていました。けれども、私たちでは白紙に戻せなかったことは悪いと思っているわ」
王族との婚約を公爵家とはいえ、そうそう白紙には出来ないでしょう。そのようなことはお母様も知っているはずです。
では、なぜ今このような話を?
「けどね、フィー。今日何をしようとしたか聞いてもいいかしら?」
「えっ、はい。今日はいつも通りに過ごして、第一王子とそのお供を無視して、情報を得るために影を呼んで、陛下に言付けを頼みました」
「……その影を呼ぶのにあなたは何をしようとしましたか」
「それは、私に護衛がついていると確信したうえで、危なくなったら、助けに来るだろうと護身用の短剣で……」
ここまで自分で言って、お母様が怒っている理由に気付きます。お母様は私が確信があったとはいえ、自分で命を絶とうとしたことに怒っているのでしょう。
「え、えーと、お母様、これには私なりの考えがありまして…」
「ええ、わかっていますよ。あなたが考えなしにこんなことをするとは思っていません」
「そうです「ですが…」」
その後の言葉は続きません。疑問に思い、お母様の顔を見る。お母様が泣いていた。お母様だけじゃない。お父様も侍女たちもみんなが。
「…ですが、あなたは助けられなかったら、その時はその時だと思っていませんでしたか?」
「……」
確かに、私は最悪の想定はしていました。ですが家にはお兄様がいるので、後継問題は大丈夫だとも思っていました。お兄様があのお馬鹿さんたちの一員だったとしたら、私は同じことをしていたでしょうか?
「あなたが第一王子との婚約を嫌がっているのは知っていました。けれども、国のためにはあなたが王妃になるしかないと思っていました。けれども、あなたが無意識にでも死を選ぶくらい追い詰めていたのが、親として私は情けないです」
「い…え…」
否定しようとするが言葉が出てきません。なんと言ったら正解なのでしょうか。私が王子と結婚するのは義務だったので仕方がありません。違う。私が言いたいことはそうじゃない。私は国のためでなければ、死にたいと思っていのでしょうか?わからない。自分のことなのに何もわからない。
「要するに、お前が溜め込みすぎていることに気づかなかったことを全員が後悔しているってことだよ」
俺も含めてな。そう言ってお兄様が私の頭を撫でる。こうやって誰かに頭を撫でてもらうのも久しぶりで、暖かい。
「父上も今は落ち着いているが、影からの伝言を聞いた時には大変だったんだよ。宰相の仕事を辞めさせていただくと言って聞かなかくてさ。結局フィーの婚約の白紙をもぎ取って落ち着いたんだよ」
「アレン!喋りすぎだ。はあ、全く、フィー。私たちはあまり君のことを見れていなかったかも知れないが、愛しているのだよ。そこだけは疑わないでほしいし、何かあれば頼ってほしい」
私は第一王子に初めて会った日からあれには期待していなかった、できなかった。だからこそ、これから私一人でこの国を支えていかなければならないと思った。だから、だから、私は一人で生きられるように、誰にも頼らずに済むように生きてきた…つもりだった。
「今からでも一つ、お願いしてもいいですか…」
「ああ、もちろんだとも」
「抱き…しめてもらってもいいですか」
「ああ!」
お父様もお母様も私に抱きついてくれます。頭を撫でてくれます。心が暖かくなるのを感じます。
ピシッ
今まで閉じ込めていたものに亀裂が入る音がした。それからは涙が止めることができません。
「お…とおさま、おか…あさま、私ずっと…ずっと、第一王子との婚約が嫌でした。ですが、私がやらないとこの国がダメになると思ったら…我慢するしかなくて…」
「ええ」
「第一王子が何を言ってきても…気にしませんでした。この、国のためだと思って…我慢して…」
「ああ」
「これからは…一人なのだから、誰にも…弱いところは見せてはいけないと…そう思って…」
「「よく頑張ったな(ましたね)」」
「…は…い」
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