純愛夢見エロス 〜夢の中で、ヤりましょう〜

秋風いろは

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3.翌日

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「んっふふふふふっ」

 起きると同時にバシッと目覚まし時計を止め、つい唇を押さえて気持ちの悪い笑い方をしてしまう。

 キスしちゃった!
 キスしちゃった!
 斉藤くんと、キスしちゃった!

 絶対に抱かれるって決めていたけど、キスだけでも嬉しすぎて小踊りしたくなる。

 どうしよう! 今日はずっと、無意味にニヤニヤ笑ってしまう人になってしまいそう。

「冷静に、冷静に」

 ニヤつく顔をパンパンと叩く。
 
「偶然だったのかなぁ。それとも本当にラムネの効果?」

 ラムネの瓶を、じっと見る。
 どちらなのかは分からない。でも、今日も隙をみて話しかけて、ラムネも渡せたら渡そう。

「頑張るぞ!」

 とりあえず、まずはトイレだ。
 拭かずに寝たから、まだきっと濡れている。

   *

「おはよう、築山さん」

 席に着くなり、隣の斉藤くんに話しかけられた。

「おはよう」

 夢でキスをしたせいか、いつもより緊張する。
 自然に自然に、と意識しながら私も挨拶を返した。

「昨日俺にくれた、快眠ラムネ、すごい効果だったよ」
「そ、そうなんだ。おまじない付きの、ただの駄菓子なんだけど、効果があったのなら良かったね」

 ちょっとだけ興奮した様子で話しかけられるからびっくりしたけれど、夢見がよかったらしい。
 偶然だとは思うけど、こんなに嬉しそうに話しかけられるなんて今まで一度もなかったし、すごく嬉しい。

「お陰で寝覚めもよくて、眠くもないよ」
「そっか、それならもう1個……」
「よかったら売っているお店、案内してくれないか?」
「え」

 まさか、そう言われるとは思わなかった。
 どうしよう。あのポップアップや商品を見たら、嘘だってバレちゃう。
 でも、一緒に行くなんて、デートみたいだし、そんなチャンス、もうないかもしれない。

「無理なら、諦めるけど」
「大丈夫! 一緒に行こ」

 あー、言っちゃったー。どうするの、私。どうしたらいいの。

「ありがとう。今日の帰りは無理かな。場所って遠い?」
「帰りの、乗り換えの駅近くだから、大丈夫だよ」
「なら、一緒に帰ってもいいか?」
「うん。じゃぁ、図書室で待ち合わせね」
「ああ」

 中学校が同じだけあって、彼とは家も同じ学区だ(場所は知らないけど)。電車と徒歩、合わせて1時間は会話できる。
 幸せで、どうにかなってしまいそう。

 でも、どうしよう。あのラムネ、まだあるのかな。売り切れていれば、見られないで済むのに。
 もしあったら、告白しているようなものだよ。

 帰りまでに、いい方法を考えなきゃ……。

   *

 そのまま、何も思いつかずに、放課後になってしまった。
 いつも一緒に帰っている友達には先に帰ってもらって、私は一人で、図書室に来た。

 ガラガラと扉を開けて、中に入る。

 図書委員のいるカウンターの横を通り、本棚を一つずつ確認していくと、すぐに目的の人物を見つけた。
 すらっとした長身がかっこいいなと思いながら、声をかけた。

「斉藤くん」
「ああ、早いね」

 彼が立っていたのは、心理学の棚だった。私を見るなり、持っていた本棚を棚に戻す。「夢分析」というタイトルだ。

「もう少し時間あるし、読んでていいよ。私も適当に本見てるから」
「分かった」

 もう一度、同じ本を取り出す彼を横目で見ながら、窓際へと向かう。図書室は3階だけあって、眺めがいい。下校中の生徒もたくさん見える。

 図書室じゃなければ、もっとお話しできるのに。

 『図書室では静かに』の貼り紙が憎らしい。

 お互い噂されても困るので、下校時間を皆とずらして帰るのは暗黙の了解だ。
 電車を少なくとも1本はずらさないと、クラスメイトの視線が痛すぎる。

 何となく、1冊のミステリー小説を本棚から抜き取った。
 大好きなミステリー作家の弟子にあたる人らしい。

 うーん、少し文章がライトだな。もう少し重苦しい方が好きだ。

 パタンと閉じて、また本棚へと返す。

 本当は、むしろ噂されたい。あの2人付きあってるのかなと思われた方が嬉しい。
 でも、聞かれたら否定しなくちゃいけないし、堂々と片想いだと言えるような度胸もない。

 1日でサクサクっと仲良くなって、その日のうちに付きあえちゃう魔法の駄菓子が売ってたらいいのにな。

 また、ぶらぶらと本棚を眺めながら、ゆっくりと歩く。
 画集でもめくっていようかな。
 ダリの画集、置いてないかな。

 この地域の電車は1時間に2本だ。
 1本目の電車が到着し、発車するだろう時間まで、私達は無言でお互いの存在を意識しながら言葉を交わすことなく過ごした。
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