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11.報告
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「やっと話が聞けるねっ」
楽しそうな顔で麻衣が言う。
帰宅時間までの休み時間は、ただの雑談に皆、徹していた。
楓の先月の視力検査が酷くて、授業中だけ眼鏡をかけることになった話や、麻衣が親戚の結婚式に行ってきた話、梅雨は好きじゃないなという沙月に、内側も外側も星柄の傘が欲しいという麻衣。
そんなどうでもいい雑談を、ずっとしていたかった。
「覚えていましたか、麻衣さん」
「なんで、敬語なのっ」
敬語じゃなくて、丁寧語だと思うけど、まぁいいや。
「別に、言いたくなければ、何も言わなくてもいいと思うけど?」
楓が坂を降りながら少しだけ前に出て、私に言う。
なんだかんだで、気遣いできるのが楓だ。
「うー、まぁ、桜が言いたくないのなら……無理強いはしないぃ」
ガクッと麻衣が項垂れる。
麻衣以外は、彼氏がいない。のろけるのは悪いと思っているのか彼氏の話は全くしないけれど、恋愛関係の話を今までもしたかったのかもしれない。
「私も気になるけど、冷やかされたくないよな。言いたくなければ、無理するな」
「沙月は、かっこいいね」
「同じこと言ってるのに、なんで私はかっこよくないのーっ」
「同意。最初に私が言ったのに」
沙月がかっこよすぎて褒めたら、2人に突っ込まれてしまった。
さて、どうしようか。
無理するなと言いながら、期待の眼差しをビンビン感じる。
「はぁぁぁぁ~」
わざとらしくため息をついて、人差し指を立てた。
「1つ、1つだけ報告します! それだけっ。それ以上は言わない、何も言わないからねっ」
「おぉ~っ」
沙月に拍手をされた。麻衣は何度も大きく頷き、楓はこちらをじっと見ている。
一度深呼吸すると坂の端っこに寄り、3人を手招きして絶対他の誰にも聞かれないようにしながら、呟くように言った。
「本がお互い好きだから気が合うかもとは思ってて……。素敵だなとは思ってはいたけど、それだけで、中学の時も何もなかったんだけど。で、昨日図書室で会って、たまたま帰りが一緒になったの。で、れ、連絡先だけ、聞いた。それだけ! それだけだからね」
顔が赤くなっているのが自分でも分かる。好きだと言っているようなものだ。それを自覚して、ますます赤くなる。
そして、なぜか目の前の3人も赤くなっていた。
「初々しい……尊い……可愛い。麻衣と、麻衣と結婚して下さい!」
「ぇ、何言ってんの、麻衣」
なぜか麻衣に両手を握りしめられ、キラキラした瞳で見られている。
「リア充、爆発しろ」
楓は赤くなりながらもそう呟き、「脈がなければ連絡先なんて教えない。今後に期待ね」と言い足した。
「応援するよ。めちゃくちゃ応援する」
沙月はそう言うと、私にますます近づいて、こそっと聞いた。
「で、相手は、本好きのSってことは、やっぱり……」
そう言いかけたところで、噂の斉藤くんが、私たちの横を通り抜けた。
ちらっとこちらを見た気がする。
私たちより後から来るのは珍しい。図書室に本を返すか借りるか、していたのかもしれない。
そっと麻衣が、斉藤くんの背中を指差して、小首をかしげた。
仕方なく、うんと頷く。
これは、3人への牽制でもある。
まだ何とも言えない関係だから、彼に対して何かを言ったり茶化したりしないでということ、その上で私が気になっているんだから私以上に仲良くならないでという、牽制だ。
だからきっと、そっと見守ってくれるはず。
知られたのは恥ずかしいけれど、ライバルが減って、2人きりになれるチャンスがきた時に邪魔されないのなら、これで良かったのかもしれない。
楽しそうな顔で麻衣が言う。
帰宅時間までの休み時間は、ただの雑談に皆、徹していた。
楓の先月の視力検査が酷くて、授業中だけ眼鏡をかけることになった話や、麻衣が親戚の結婚式に行ってきた話、梅雨は好きじゃないなという沙月に、内側も外側も星柄の傘が欲しいという麻衣。
そんなどうでもいい雑談を、ずっとしていたかった。
「覚えていましたか、麻衣さん」
「なんで、敬語なのっ」
敬語じゃなくて、丁寧語だと思うけど、まぁいいや。
「別に、言いたくなければ、何も言わなくてもいいと思うけど?」
楓が坂を降りながら少しだけ前に出て、私に言う。
なんだかんだで、気遣いできるのが楓だ。
「うー、まぁ、桜が言いたくないのなら……無理強いはしないぃ」
ガクッと麻衣が項垂れる。
麻衣以外は、彼氏がいない。のろけるのは悪いと思っているのか彼氏の話は全くしないけれど、恋愛関係の話を今までもしたかったのかもしれない。
「私も気になるけど、冷やかされたくないよな。言いたくなければ、無理するな」
「沙月は、かっこいいね」
「同じこと言ってるのに、なんで私はかっこよくないのーっ」
「同意。最初に私が言ったのに」
沙月がかっこよすぎて褒めたら、2人に突っ込まれてしまった。
さて、どうしようか。
無理するなと言いながら、期待の眼差しをビンビン感じる。
「はぁぁぁぁ~」
わざとらしくため息をついて、人差し指を立てた。
「1つ、1つだけ報告します! それだけっ。それ以上は言わない、何も言わないからねっ」
「おぉ~っ」
沙月に拍手をされた。麻衣は何度も大きく頷き、楓はこちらをじっと見ている。
一度深呼吸すると坂の端っこに寄り、3人を手招きして絶対他の誰にも聞かれないようにしながら、呟くように言った。
「本がお互い好きだから気が合うかもとは思ってて……。素敵だなとは思ってはいたけど、それだけで、中学の時も何もなかったんだけど。で、昨日図書室で会って、たまたま帰りが一緒になったの。で、れ、連絡先だけ、聞いた。それだけ! それだけだからね」
顔が赤くなっているのが自分でも分かる。好きだと言っているようなものだ。それを自覚して、ますます赤くなる。
そして、なぜか目の前の3人も赤くなっていた。
「初々しい……尊い……可愛い。麻衣と、麻衣と結婚して下さい!」
「ぇ、何言ってんの、麻衣」
なぜか麻衣に両手を握りしめられ、キラキラした瞳で見られている。
「リア充、爆発しろ」
楓は赤くなりながらもそう呟き、「脈がなければ連絡先なんて教えない。今後に期待ね」と言い足した。
「応援するよ。めちゃくちゃ応援する」
沙月はそう言うと、私にますます近づいて、こそっと聞いた。
「で、相手は、本好きのSってことは、やっぱり……」
そう言いかけたところで、噂の斉藤くんが、私たちの横を通り抜けた。
ちらっとこちらを見た気がする。
私たちより後から来るのは珍しい。図書室に本を返すか借りるか、していたのかもしれない。
そっと麻衣が、斉藤くんの背中を指差して、小首をかしげた。
仕方なく、うんと頷く。
これは、3人への牽制でもある。
まだ何とも言えない関係だから、彼に対して何かを言ったり茶化したりしないでということ、その上で私が気になっているんだから私以上に仲良くならないでという、牽制だ。
だからきっと、そっと見守ってくれるはず。
知られたのは恥ずかしいけれど、ライバルが減って、2人きりになれるチャンスがきた時に邪魔されないのなら、これで良かったのかもしれない。
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