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25.告白
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翌日の午後は、私の自宅の裏手にある堤防の手前で待ち合わせをした。
「昨日ぶり」
駆け寄ってきた斉藤くんに、手を差し出す。
「今日ぶりかもしれないけどな。会ってくれて、ありがとな」
「お礼なんて言わないでよ。私も会いたいんだから」
ぎゅっと握り返された手を軽く引っ張って、歩き出す。
天気は快晴。今が一番いい季節だ。
もう1週間くらい経てば、梅雨が来る。
でも、今日はちょっと暑すぎるな。
あっという間に、握りあう手が汗ばんでしまいそう。
私たちは階段坂を上ると、堤防道路を越えて、河川敷に敷かれた遊歩道をのんびりと西に向かって歩き出した。
なんてことはない、ただのお散歩ルートだ。たまにウォーキングしている人ともすれ違う。
でも、一緒にいられるだけで特別で、今日はどんなことを話せるかな、今までよりもっと仲良くなれるかなとドキドキする。
「昨日は、ごめんな」
「いいよー。麻衣も色々タイミング悪かったと思うし」
せめて、あと1ヶ月待ってほしかった。
「それで、さ。ちゃんと、言おうと思って」
「う、うん」
何をかは、お互いに言わなくても分かる。
今日は、そのために呼んだんだろうなと思う。きっと、寝る前にも今朝からだって、私のことを考えてくれていたはず。
なんて、思い上がりすぎ?
でも今くらい、自惚れたい。
私への言葉を考えてくれている斉藤くんの顔を脳裏に焼き付けておこうと、じっと見る。
「そんなに見るなって」
「今が人生で一番見るべき時でしょ」
「えぇー、まったく」
斉藤くんは、反対側の手でさっと顔の半分を隠した後、一呼吸置いて外し、私を見つめ返した。
「好きだ」
世界が止まった感じがした。
好かれていることは、分かっていた。
そんなようなことは、何度も言われていた。
もう、知っていたことだった。
なのに。
ずっと好きだった人が、私を好きだと言ってくれていると思ったら。
「え、ちょ、桜ちゃん!? な、あ、えっと、俺、ハンカチ持ってたかな」
涙が止まらなかった。
「ど、どうして。あれ、伝わってたよね」
斉藤くんが、丁寧に濃紺のハンカチで涙を拭ってくれる。
「私も、好きだよ」
慌てている彼に、泣きながらそう言った。
「うん。ありがとう」
よしよしと頭を撫でられる。
泣く予定なんてなかったのに、子供っぽく思われたかな。
「このハンカチ、洗って返すね」
そう言って遠慮なく受け取り、涙も鼻水もしっかり拭いて、バッグの中にしまった。
「いや、やるよ」
「え、もしかして私が使って汚いとか思った?」
「思うわけないだろう。好きだって言ってるのに。好きな女の子に自分のもの持っててもらうのも、いいじゃん?」
「いいんだ?」
「何気に男心分かってないよね」
「うーん、むしろ女心? ちょっと乙女チックだよね」
「はー。もうそれでいいや」
もう一度、どちらともなく手をつなぎ直す。
そっか、私、告白されたんだ。
人生初の、告白。
記念に、この風景を覚えておこう。
青い空。羊の群れのような雲。堤防をつなぐ橋に、ずっと続いていく遊歩道。
すぐ隣にいて、私と手をつないでいる高校二年生の斉藤優馬くん。
写真のように、ずっとずっと覚えていよう。
「私もね、大好きなんだよ」
少しでも斉藤くんに、私と同じようにこの瞬間を大事に思ってほしくて、もう一度言った。
「俺も、大好き」
握っている手に、ぎゅっと力がこもる。
これから先、どうなるんだろう。
いつまで好きでいてくれるのかな。
世の中の男女は、最初に恋人になった相手と絶対に結婚するわけじゃない。
どうして何だろう。
何があったら気持ちが冷めて、別れたりするんだろう。
こんなにまで、ずっと側にいたいのに。
「何、考えてるの?」
ずっと黙っていたからか、突然聞かれた。顔が近い。これが私たちの距離なんだな、と嬉しく思う。
「世の中の恋人が別れる理由について、考えてた」
「なんで今、そこを考えるの。まぁ始まった瞬間に終わりを考えるのは、らしいと言えば、らしいか」
「ずっと一緒にいたいからですー。だから、教えて。何で私を好きだって思ったの? 何をしたら別れたくなる?」
人の気持ちがどうしたら変わらないのか、確たるものはないのかもしれない。
でも、それが分かれば、別れる可能性は減るかもしれない。
私は、じっと彼の返答を待った。
「昨日ぶり」
駆け寄ってきた斉藤くんに、手を差し出す。
「今日ぶりかもしれないけどな。会ってくれて、ありがとな」
「お礼なんて言わないでよ。私も会いたいんだから」
ぎゅっと握り返された手を軽く引っ張って、歩き出す。
天気は快晴。今が一番いい季節だ。
もう1週間くらい経てば、梅雨が来る。
でも、今日はちょっと暑すぎるな。
あっという間に、握りあう手が汗ばんでしまいそう。
私たちは階段坂を上ると、堤防道路を越えて、河川敷に敷かれた遊歩道をのんびりと西に向かって歩き出した。
なんてことはない、ただのお散歩ルートだ。たまにウォーキングしている人ともすれ違う。
でも、一緒にいられるだけで特別で、今日はどんなことを話せるかな、今までよりもっと仲良くなれるかなとドキドキする。
「昨日は、ごめんな」
「いいよー。麻衣も色々タイミング悪かったと思うし」
せめて、あと1ヶ月待ってほしかった。
「それで、さ。ちゃんと、言おうと思って」
「う、うん」
何をかは、お互いに言わなくても分かる。
今日は、そのために呼んだんだろうなと思う。きっと、寝る前にも今朝からだって、私のことを考えてくれていたはず。
なんて、思い上がりすぎ?
でも今くらい、自惚れたい。
私への言葉を考えてくれている斉藤くんの顔を脳裏に焼き付けておこうと、じっと見る。
「そんなに見るなって」
「今が人生で一番見るべき時でしょ」
「えぇー、まったく」
斉藤くんは、反対側の手でさっと顔の半分を隠した後、一呼吸置いて外し、私を見つめ返した。
「好きだ」
世界が止まった感じがした。
好かれていることは、分かっていた。
そんなようなことは、何度も言われていた。
もう、知っていたことだった。
なのに。
ずっと好きだった人が、私を好きだと言ってくれていると思ったら。
「え、ちょ、桜ちゃん!? な、あ、えっと、俺、ハンカチ持ってたかな」
涙が止まらなかった。
「ど、どうして。あれ、伝わってたよね」
斉藤くんが、丁寧に濃紺のハンカチで涙を拭ってくれる。
「私も、好きだよ」
慌てている彼に、泣きながらそう言った。
「うん。ありがとう」
よしよしと頭を撫でられる。
泣く予定なんてなかったのに、子供っぽく思われたかな。
「このハンカチ、洗って返すね」
そう言って遠慮なく受け取り、涙も鼻水もしっかり拭いて、バッグの中にしまった。
「いや、やるよ」
「え、もしかして私が使って汚いとか思った?」
「思うわけないだろう。好きだって言ってるのに。好きな女の子に自分のもの持っててもらうのも、いいじゃん?」
「いいんだ?」
「何気に男心分かってないよね」
「うーん、むしろ女心? ちょっと乙女チックだよね」
「はー。もうそれでいいや」
もう一度、どちらともなく手をつなぎ直す。
そっか、私、告白されたんだ。
人生初の、告白。
記念に、この風景を覚えておこう。
青い空。羊の群れのような雲。堤防をつなぐ橋に、ずっと続いていく遊歩道。
すぐ隣にいて、私と手をつないでいる高校二年生の斉藤優馬くん。
写真のように、ずっとずっと覚えていよう。
「私もね、大好きなんだよ」
少しでも斉藤くんに、私と同じようにこの瞬間を大事に思ってほしくて、もう一度言った。
「俺も、大好き」
握っている手に、ぎゅっと力がこもる。
これから先、どうなるんだろう。
いつまで好きでいてくれるのかな。
世の中の男女は、最初に恋人になった相手と絶対に結婚するわけじゃない。
どうして何だろう。
何があったら気持ちが冷めて、別れたりするんだろう。
こんなにまで、ずっと側にいたいのに。
「何、考えてるの?」
ずっと黙っていたからか、突然聞かれた。顔が近い。これが私たちの距離なんだな、と嬉しく思う。
「世の中の恋人が別れる理由について、考えてた」
「なんで今、そこを考えるの。まぁ始まった瞬間に終わりを考えるのは、らしいと言えば、らしいか」
「ずっと一緒にいたいからですー。だから、教えて。何で私を好きだって思ったの? 何をしたら別れたくなる?」
人の気持ちがどうしたら変わらないのか、確たるものはないのかもしれない。
でも、それが分かれば、別れる可能性は減るかもしれない。
私は、じっと彼の返答を待った。
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