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26.好きの理由
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「そうだなぁ」
過去を思い出しているような、視線の定まらない顔で、彼が話し出した。
「最初は、桜ちゃんのエロさに引っ張られてるだけかと思ったんだよ」
「やはり、まずそこになりますか」
「まぁ、俺も男だから。あの桜ちゃんの妄想も、結構よく思い出しちゃってさ」
「だんだん耳が痛くなってきました」
「で、もっと見たくなって。でも最近、嫉妬も感じちゃって」
「あー」
よく知る場所での妄想だと勃つからとか言ってたけど、やっぱり嫉妬もあったらしい。
「分かってるんだよ。ただの妄想、オカズにすぎないって」
「う、言い方が辛い。穴があったら入りたいです」
「なんか、計算高いところとか、予想だにしない変な言葉が返ってくるところとか、全部好きだなって思ったし。それでエロいとかもう最高だなっていうか」
「褒められてる気がしないけど」
「こうやって何てことはない会話してても、楽しくて仕方ないんだ」
「そ、それは何より」
でも、精神的にダメージを食らった気がする。
「今のをまとめると、私がずっとエロくて計算高くて変な言葉返してれば好きなままかもねってことになる気がするんですが。そんなアレな感じの愛ということですか」
実は斉藤くんは、ニッチな趣味だったんだろうか。
「なんで、さっきから丁寧語なの」
「だって、エロスエロス言うから」
「エロスとは言ってないよ」
「そーゆう類のってこと! そもそもね、本来そこは漏れるはずのない砦だったはずで、服だって清楚系だし発言もエロスのエの字もないでしょ? エロくないの、私は」
「確かに、あの夢をもし忘れたら、エロくない人に見えるかもな。新発見だ」
「対外的には、エロくない人なの、私は」
「エロくないの?」
彼は私の前にさっと出ると、手をつないでいるのとは反対側の手で私の後頭部を押さえるようにして、キスをした。
触れて、離れて、見つめあうと、もう一度キスをする。
次は、もっと深かった。
唇を啄ばむようにキスをして、舌が入り込んで私の舌を舐める。
ぞわりと背筋を何かが這い上がるような感覚に震えると、口の中に熱い息が広がり、私の息も無意識に上がる。
「エロくないの?」
身体を離し、もう一度同じことを彼が聞いた。
「意地悪すぎる。あと、斉藤くんのがエロいと思う」
こんなところで深く口づけるなんて。
それに、よく考えると、現実世界ではファーストキスだ。
最初からディープって、どうなんだろう。
気持ちよかったけど。
「斉藤くんは、見られてると興奮する人なの?」
「そんな趣味はないよ。ちゃんと近くに人いないの確認したし」
「後ろは見てなかった」
「まぁ、いたらいたで」
「えー」
今度は私から手をつなぎ、また歩き出す。
あれ?
そういえば誤魔化されてない?
「それで、エロを抜いたら私のどこが好きなの?」
「……しつこいね」
「気になるんだってば」
「ゴミ箱漁った時に好かれてるって気づいちゃったのもあるかもなー」
そういえば、そういうこともあったな……。言われるまで忘れてた。
「好かれたら、好きになるって?」
「そんなもんだよ。ちょっといいなって思ってた女の子に好かれてるって分かったら、もうその子のことしか考えられない」
「身も蓋もないね。もっと素敵な女性に言い寄られたら、なびきそう」
「それはないよ。さっきも言ったけど一緒にいて楽しいし、完全に惚れた」
「そ、そうなんだ」
惚れられていたんだ。
結局、どこが好きなのかはよく分からなかったけど。
「それで? 俺のことは、どこが好きなの?」
そういえば、言ったことがなかったなと思い出す。
顔を見ると、期待半分不安半分といった顔だ。もしかしたら、ずっと気になっていたのかもしれない。
困った。どこだろう。
そういえば、突然好きの感情が降ってきて、どこが好きなのか明確なものはない気がしてきた。
「えー、えっと、中学の時からずっと好きで」
「話したこと、そんなになかったよね」
「隣の席で、たまにあったもん」
「たまに話せる男子だから、好きだって?」
「いやー……、お菓子作るの上手いよね」
「それは最近」
「あ、頭いいし?」
「頭よくてたまにしゃべられれば誰でもいいんだ?」
「そんなことはないよ」
斉藤くんが、ものすごく呆れた顔をしている。自分にあれだけ聞いておきながらと、思っているんだろう。
本当にその通りだ。
でも、好きの感情って、言葉で言い表せるものではない気がする。
……最初に聞いたのは、私だけど。
ここは、熱弁して誤魔化そう。
「あのね、優しいとこが好きって言っても優しい人だってたくさんいるし、頭だって、もっといい人はいくらでもいるでしょ? 人間で、他の人と比べてずば抜けて違うところがある人なんて、ほとんどいないの。好きの理由は、大体が言葉にできない、曖昧なものなの」
「ま、確かにな」
我ながら酷いなと思う私の主張をサラッと受け入れて、前を見た。私もつられて、前を見る。
橋のふもとまで来た。
柱の陰が、暗くなっている。
やっぱり、私、エロいのかもしれない。
人目がなさそうだと思うだけで、斉藤くんとあれやこれや、したくなる。
いや、きっとこれは恋のせいだ。
恋をしていれば、きっと誰でも人目のない暗がりに恋人と来れば、同じことを考えるはず。
「ね、斉藤くん」
「ん?」
「私たち、恋人なんだよね」
「うん。俺の可愛い恋人さん、さっきの続きをしませんか?」
手を、ぎゅっと握りしめあって、柱の陰に入る。
「……する」
手をパッと外すと、斉藤くんの両肩に乗せた。
恋人同士の距離だ。
魔法のラムネを食べて夢で会った時から、こんなに仲良くなれた。
「斉藤くんが、好き」
「うん」
「私を見る、そんな眼差しも、私の自分勝手な言葉を面白いって言ってくれるのも、ちょっとした気遣いとか、そーゆうのも好きだし、斉藤くんの全部が好き」
「俺も好きだよ。桜ちゃんがエロくてもエロくなくても」
「そこぉ?」
「桜ちゃんの、全部が好きだ」
斉藤くんの首にしっかりと手を回して、どちらからともなく唇をあわせる。
ずっとずっと、こんな幸せが続くといいな。
過去を思い出しているような、視線の定まらない顔で、彼が話し出した。
「最初は、桜ちゃんのエロさに引っ張られてるだけかと思ったんだよ」
「やはり、まずそこになりますか」
「まぁ、俺も男だから。あの桜ちゃんの妄想も、結構よく思い出しちゃってさ」
「だんだん耳が痛くなってきました」
「で、もっと見たくなって。でも最近、嫉妬も感じちゃって」
「あー」
よく知る場所での妄想だと勃つからとか言ってたけど、やっぱり嫉妬もあったらしい。
「分かってるんだよ。ただの妄想、オカズにすぎないって」
「う、言い方が辛い。穴があったら入りたいです」
「なんか、計算高いところとか、予想だにしない変な言葉が返ってくるところとか、全部好きだなって思ったし。それでエロいとかもう最高だなっていうか」
「褒められてる気がしないけど」
「こうやって何てことはない会話してても、楽しくて仕方ないんだ」
「そ、それは何より」
でも、精神的にダメージを食らった気がする。
「今のをまとめると、私がずっとエロくて計算高くて変な言葉返してれば好きなままかもねってことになる気がするんですが。そんなアレな感じの愛ということですか」
実は斉藤くんは、ニッチな趣味だったんだろうか。
「なんで、さっきから丁寧語なの」
「だって、エロスエロス言うから」
「エロスとは言ってないよ」
「そーゆう類のってこと! そもそもね、本来そこは漏れるはずのない砦だったはずで、服だって清楚系だし発言もエロスのエの字もないでしょ? エロくないの、私は」
「確かに、あの夢をもし忘れたら、エロくない人に見えるかもな。新発見だ」
「対外的には、エロくない人なの、私は」
「エロくないの?」
彼は私の前にさっと出ると、手をつないでいるのとは反対側の手で私の後頭部を押さえるようにして、キスをした。
触れて、離れて、見つめあうと、もう一度キスをする。
次は、もっと深かった。
唇を啄ばむようにキスをして、舌が入り込んで私の舌を舐める。
ぞわりと背筋を何かが這い上がるような感覚に震えると、口の中に熱い息が広がり、私の息も無意識に上がる。
「エロくないの?」
身体を離し、もう一度同じことを彼が聞いた。
「意地悪すぎる。あと、斉藤くんのがエロいと思う」
こんなところで深く口づけるなんて。
それに、よく考えると、現実世界ではファーストキスだ。
最初からディープって、どうなんだろう。
気持ちよかったけど。
「斉藤くんは、見られてると興奮する人なの?」
「そんな趣味はないよ。ちゃんと近くに人いないの確認したし」
「後ろは見てなかった」
「まぁ、いたらいたで」
「えー」
今度は私から手をつなぎ、また歩き出す。
あれ?
そういえば誤魔化されてない?
「それで、エロを抜いたら私のどこが好きなの?」
「……しつこいね」
「気になるんだってば」
「ゴミ箱漁った時に好かれてるって気づいちゃったのもあるかもなー」
そういえば、そういうこともあったな……。言われるまで忘れてた。
「好かれたら、好きになるって?」
「そんなもんだよ。ちょっといいなって思ってた女の子に好かれてるって分かったら、もうその子のことしか考えられない」
「身も蓋もないね。もっと素敵な女性に言い寄られたら、なびきそう」
「それはないよ。さっきも言ったけど一緒にいて楽しいし、完全に惚れた」
「そ、そうなんだ」
惚れられていたんだ。
結局、どこが好きなのかはよく分からなかったけど。
「それで? 俺のことは、どこが好きなの?」
そういえば、言ったことがなかったなと思い出す。
顔を見ると、期待半分不安半分といった顔だ。もしかしたら、ずっと気になっていたのかもしれない。
困った。どこだろう。
そういえば、突然好きの感情が降ってきて、どこが好きなのか明確なものはない気がしてきた。
「えー、えっと、中学の時からずっと好きで」
「話したこと、そんなになかったよね」
「隣の席で、たまにあったもん」
「たまに話せる男子だから、好きだって?」
「いやー……、お菓子作るの上手いよね」
「それは最近」
「あ、頭いいし?」
「頭よくてたまにしゃべられれば誰でもいいんだ?」
「そんなことはないよ」
斉藤くんが、ものすごく呆れた顔をしている。自分にあれだけ聞いておきながらと、思っているんだろう。
本当にその通りだ。
でも、好きの感情って、言葉で言い表せるものではない気がする。
……最初に聞いたのは、私だけど。
ここは、熱弁して誤魔化そう。
「あのね、優しいとこが好きって言っても優しい人だってたくさんいるし、頭だって、もっといい人はいくらでもいるでしょ? 人間で、他の人と比べてずば抜けて違うところがある人なんて、ほとんどいないの。好きの理由は、大体が言葉にできない、曖昧なものなの」
「ま、確かにな」
我ながら酷いなと思う私の主張をサラッと受け入れて、前を見た。私もつられて、前を見る。
橋のふもとまで来た。
柱の陰が、暗くなっている。
やっぱり、私、エロいのかもしれない。
人目がなさそうだと思うだけで、斉藤くんとあれやこれや、したくなる。
いや、きっとこれは恋のせいだ。
恋をしていれば、きっと誰でも人目のない暗がりに恋人と来れば、同じことを考えるはず。
「ね、斉藤くん」
「ん?」
「私たち、恋人なんだよね」
「うん。俺の可愛い恋人さん、さっきの続きをしませんか?」
手を、ぎゅっと握りしめあって、柱の陰に入る。
「……する」
手をパッと外すと、斉藤くんの両肩に乗せた。
恋人同士の距離だ。
魔法のラムネを食べて夢で会った時から、こんなに仲良くなれた。
「斉藤くんが、好き」
「うん」
「私を見る、そんな眼差しも、私の自分勝手な言葉を面白いって言ってくれるのも、ちょっとした気遣いとか、そーゆうのも好きだし、斉藤くんの全部が好き」
「俺も好きだよ。桜ちゃんがエロくてもエロくなくても」
「そこぉ?」
「桜ちゃんの、全部が好きだ」
斉藤くんの首にしっかりと手を回して、どちらからともなく唇をあわせる。
ずっとずっと、こんな幸せが続くといいな。
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