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第三話 【記憶】
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大きくて暖かい背中におんぶされて小さな私はご機嫌だった。
パパとママが楽しそうに話をしながら、時折ママが私を覗き込んで微笑みかけてくれるのがとても嬉しい。
「ママみてー!今日ねーお絵描きしたの!」
「ホント?何描いたのかな?ママに見せて?」
クレヨンで描いた自信作をキッチンで忙しそうにしているママに突き出す。
「わぁ!さーちゃん上手!!この人はだあれ?」
「さーちゃん、おおじ様描いたんだよ!」
「王子様ね!素敵に描けてるね。今度さーちゃん姫も描いて見せてね。」
ママはいつも優しく笑ってくれて、幼少期の私はこれ以上ない愛情に包まれていた。
小さな頃から絵を描くのが大好きだった私は、小学校時代には漫画のような物を真似て描いてみたりしていたけれど、中学生になると本格的に描きたくなって美術部に入った。
毎日のように放課後は美術室で絵を描いて、陽が暮れる頃に帰る。
それは高校生になっても変わらなかった。
ただ、、
「石倉さん、ずっと好きでした。よかったら付き合って下さい。」
美術部の先輩、加賀谷部長に告白された。
「石倉、いつも描いてるその人、誰?」
皆が帰って2人だけになった美術室で先輩が言った。
「え?誰っていうことはないけど、、風景に少しだけ人物入れるのが好きなの。」
「ふぅん、、」
しばらく私が絵を描くのを椅子に座って眺めていたけれど、先輩は立ち上がると私の筆を持つ腕を握って軽く引く。
私が状況についていけないでいるうちに先輩の唇が私の唇に触れて、私の手から筆が滑り落ちた。私にとっても先輩にとっても初めてのキスをした。
この時に描いていた風景画は市の美術展で金賞をとり、私は顧問の先生に勧められるまま美大を目指すことになる。
たぶんこの頃が一番充実していて幸せで、まぎれもなく絵を描くことと共に私の青春があった。
高校3年、授業時間以外の殆どを美術室で過ごした。先輩は美大を受験せずに地域の大学に進学した。
私が美大受験に向けて、会う時間もないほどに絵を描いていたせいで先輩とはギクシャクしていた頃に、1年前に金賞をとった美術展の季節がやってきて、
「早苗、今年は俺の絵を描いてよ。」
そう彼が言うので、人物画に久しぶりにチャレンジしようという気になった。
ーただ、いざ描き始めてみると、
何か違う。情熱が湧かない。
違う。彼じゃない。
私が本当に描きたいのは彼じゃない。
しばらく悩んだ末に私は彼を描くのを諦めてしまった。
私の受験を邪魔しないように、となるべく私をそっとしておいてくれた先輩は、私が美大に入学すると同時に「好きな人が出来た」と私に別れを告げた。
美大の寮に入りパパやママとも離れてくらす。
少しのアルバイトと仕送りでやりくりしながら取りつかれたように絵を描きつづける日々。
誰かを好きになったりはしなかったし、誰にも絵を描く時間を邪魔されたくなかった。何かに追い立てられるように描いていた。
あの日、二時限目の講義に出るために、遅い時間に駅へ向かった。
試験に提出する絵を仕上げる為に、友だちに止められるのも聞かず毎晩睡眠時間を削って描いていた。
駅のベンチに座ってぼんやりしているうちに、ホームにいた女の子が手に握りしめていた画用紙が風に飛んだ。
ひらりと舞い上がった画用紙に、クレヨンで大きく人の顔が描かれていて、その顔はにこやかに笑っていた。
「あーーっ!ママの絵!!」
ひらひらと線路に落ちて、女の子は線路を覗き込もうとして母親に抱き上げられて泣いてしまう。
ホームに電車が近づくというアナウンスが流れる。
寝不足と疲れでぼんやりした頭のまま、立ち上がって線路の方へ近づく。誰かの顔が頭をかすめるけれどわからない。
私は線路に飛び降りて絵を拾おうとしたのだった。最後の瞬間、私はその人の名を呼んだ。
「◯◯」
ゆっくりと目を開く。暗い部屋。私を見下ろす零の心配そうな顔。
上体を起こして、まだぼんやりした頭のまま
「石倉早苗、、私の名前、石倉早苗。いつも絵を描いていた」
そう言うとママやパパの顔を思い出した。高校生の時に付き合っていた彼の顔も。最後に見た子供の絵も。私は不思議と泣かなかった。ただぼんやりと、記憶にある人たちの顔を思い出す。
そう、確かにあれは私の記憶で、私は何かにとりつかれたかのように短い人生を絵を描くことに捧げていた。
ふと零の顔を見る。
「私、、あなたを描いたことがある、、でも、なんで、、?」
少し混乱し始める私を零は腕を伸ばして引き寄せて、優しく自分の胸に抱く。
「どちらの名前で呼ばれたい?」
温かくて筋肉質な胸に抱かれて、頭上に彼の静かな声を聞いて、私は考える。
どちらの名前で呼ばれたい?どちらが本当の私、、?
少しの迷いの後私の口をついて出たのは、
「、、、朔希、、」
「おかえり。朔希。」
零は私を抱きしめる腕に少しだけ力を込めた。
朔希がふたたび眠りに落ちたあと、暗い通路を歩く2人の姿があった。
「朔希は全部思い出しましたか?」
隣を歩く男の半分ほどの背丈しかない七宝が見上げて聞く。
「現世のこと以外はまだ。現世でオレの絵を描いていた事に混乱してるようだった」
静かな零の声音。
「零、、大丈夫ですか?」
「、、、まぁこのまま魂が消えるのも悪くないさ」
「そんな事にはなりません!零、まだ時間はあります。」
「、、、とりあえず成仏は出来そうで良かったよ。」
その言葉とは裏腹にニコリとも笑わない零に七宝がおずおずと聞く。
「じゃあ本当に成仏させちゃうんですね。」
「ーまぁ隠しておくわけにはいかないからな。時間稼ぎもこれ以上は無理だろう。」
「そんな、、、」
心配そうに見上げる七宝の頭を零の大きな手のひらがくしゃくしゃとなでる。
「心配するな。まだ諦めてはいないさ。」
パパとママが楽しそうに話をしながら、時折ママが私を覗き込んで微笑みかけてくれるのがとても嬉しい。
「ママみてー!今日ねーお絵描きしたの!」
「ホント?何描いたのかな?ママに見せて?」
クレヨンで描いた自信作をキッチンで忙しそうにしているママに突き出す。
「わぁ!さーちゃん上手!!この人はだあれ?」
「さーちゃん、おおじ様描いたんだよ!」
「王子様ね!素敵に描けてるね。今度さーちゃん姫も描いて見せてね。」
ママはいつも優しく笑ってくれて、幼少期の私はこれ以上ない愛情に包まれていた。
小さな頃から絵を描くのが大好きだった私は、小学校時代には漫画のような物を真似て描いてみたりしていたけれど、中学生になると本格的に描きたくなって美術部に入った。
毎日のように放課後は美術室で絵を描いて、陽が暮れる頃に帰る。
それは高校生になっても変わらなかった。
ただ、、
「石倉さん、ずっと好きでした。よかったら付き合って下さい。」
美術部の先輩、加賀谷部長に告白された。
「石倉、いつも描いてるその人、誰?」
皆が帰って2人だけになった美術室で先輩が言った。
「え?誰っていうことはないけど、、風景に少しだけ人物入れるのが好きなの。」
「ふぅん、、」
しばらく私が絵を描くのを椅子に座って眺めていたけれど、先輩は立ち上がると私の筆を持つ腕を握って軽く引く。
私が状況についていけないでいるうちに先輩の唇が私の唇に触れて、私の手から筆が滑り落ちた。私にとっても先輩にとっても初めてのキスをした。
この時に描いていた風景画は市の美術展で金賞をとり、私は顧問の先生に勧められるまま美大を目指すことになる。
たぶんこの頃が一番充実していて幸せで、まぎれもなく絵を描くことと共に私の青春があった。
高校3年、授業時間以外の殆どを美術室で過ごした。先輩は美大を受験せずに地域の大学に進学した。
私が美大受験に向けて、会う時間もないほどに絵を描いていたせいで先輩とはギクシャクしていた頃に、1年前に金賞をとった美術展の季節がやってきて、
「早苗、今年は俺の絵を描いてよ。」
そう彼が言うので、人物画に久しぶりにチャレンジしようという気になった。
ーただ、いざ描き始めてみると、
何か違う。情熱が湧かない。
違う。彼じゃない。
私が本当に描きたいのは彼じゃない。
しばらく悩んだ末に私は彼を描くのを諦めてしまった。
私の受験を邪魔しないように、となるべく私をそっとしておいてくれた先輩は、私が美大に入学すると同時に「好きな人が出来た」と私に別れを告げた。
美大の寮に入りパパやママとも離れてくらす。
少しのアルバイトと仕送りでやりくりしながら取りつかれたように絵を描きつづける日々。
誰かを好きになったりはしなかったし、誰にも絵を描く時間を邪魔されたくなかった。何かに追い立てられるように描いていた。
あの日、二時限目の講義に出るために、遅い時間に駅へ向かった。
試験に提出する絵を仕上げる為に、友だちに止められるのも聞かず毎晩睡眠時間を削って描いていた。
駅のベンチに座ってぼんやりしているうちに、ホームにいた女の子が手に握りしめていた画用紙が風に飛んだ。
ひらりと舞い上がった画用紙に、クレヨンで大きく人の顔が描かれていて、その顔はにこやかに笑っていた。
「あーーっ!ママの絵!!」
ひらひらと線路に落ちて、女の子は線路を覗き込もうとして母親に抱き上げられて泣いてしまう。
ホームに電車が近づくというアナウンスが流れる。
寝不足と疲れでぼんやりした頭のまま、立ち上がって線路の方へ近づく。誰かの顔が頭をかすめるけれどわからない。
私は線路に飛び降りて絵を拾おうとしたのだった。最後の瞬間、私はその人の名を呼んだ。
「◯◯」
ゆっくりと目を開く。暗い部屋。私を見下ろす零の心配そうな顔。
上体を起こして、まだぼんやりした頭のまま
「石倉早苗、、私の名前、石倉早苗。いつも絵を描いていた」
そう言うとママやパパの顔を思い出した。高校生の時に付き合っていた彼の顔も。最後に見た子供の絵も。私は不思議と泣かなかった。ただぼんやりと、記憶にある人たちの顔を思い出す。
そう、確かにあれは私の記憶で、私は何かにとりつかれたかのように短い人生を絵を描くことに捧げていた。
ふと零の顔を見る。
「私、、あなたを描いたことがある、、でも、なんで、、?」
少し混乱し始める私を零は腕を伸ばして引き寄せて、優しく自分の胸に抱く。
「どちらの名前で呼ばれたい?」
温かくて筋肉質な胸に抱かれて、頭上に彼の静かな声を聞いて、私は考える。
どちらの名前で呼ばれたい?どちらが本当の私、、?
少しの迷いの後私の口をついて出たのは、
「、、、朔希、、」
「おかえり。朔希。」
零は私を抱きしめる腕に少しだけ力を込めた。
朔希がふたたび眠りに落ちたあと、暗い通路を歩く2人の姿があった。
「朔希は全部思い出しましたか?」
隣を歩く男の半分ほどの背丈しかない七宝が見上げて聞く。
「現世のこと以外はまだ。現世でオレの絵を描いていた事に混乱してるようだった」
静かな零の声音。
「零、、大丈夫ですか?」
「、、、まぁこのまま魂が消えるのも悪くないさ」
「そんな事にはなりません!零、まだ時間はあります。」
「、、、とりあえず成仏は出来そうで良かったよ。」
その言葉とは裏腹にニコリとも笑わない零に七宝がおずおずと聞く。
「じゃあ本当に成仏させちゃうんですね。」
「ーまぁ隠しておくわけにはいかないからな。時間稼ぎもこれ以上は無理だろう。」
「そんな、、、」
心配そうに見上げる七宝の頭を零の大きな手のひらがくしゃくしゃとなでる。
「心配するな。まだ諦めてはいないさ。」
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