捨てたいキミ、拾いたい僕。

ふじのはら

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一話 青空

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オレはいまだにあの光景を忘れていない。
オレにとって2度目の高2の、あの暑い夏の光景を。


「あっつ、、」
とうに1時限目が始まっている時間だ。
急ぐ気も無く重い足取りで河原を歩く。まだ朝と言える時間にも関わらず、7月のその日の気温はもう30℃はあった筈だ。
久しぶりに着た制服のシャツの襟が暑くて酷くイラつく。

ーあぁ、駄目だ。行きたくねぇ、、。

オレは小高くなった河原の道から石の階段を降りて少し背の高い草の中へ入った。
学校まで歩けばまだ20分やそこらかかる距離で、朝の登校時間が過ぎてしまえば歩く生徒の姿もない。
学校の裏手へ続くこの川は幅は狭いが深いので魚釣りをする人がよくいる。
けれどその日は運の良い事に人の姿は見えなかった。

頭上にかかる橋の影になる場所を選び、草を踏むとカバンを枕に寝転んだ。
「ちょっと休憩」
日陰に寝転んでいればほんの僅かな風を感じた。オレは目を閉じてイラつく気持ちを忘れようとした。

遠くから小さな子どもの声や時々通る車の音がする、、風で揺れる草が首や腕にカサカサとあたったが不思議と心は落ち着いてゆく。

しばらくそうして草の中に寝転がっていたが、ふと時間が気になりスマホを見ようと目を開けた。
ふと頭上に視線をやったオレはそこから目を逸らすことができなくなってしまった。

ー同じ制服、、?あいつ何してんだ?

頭上の橋の真ん中あたりでたぶん同じ制服を着ている男が、下を覗き込んで川を見ている。何か探しているのか、上半身を橋の欄干から乗り出している。
オレはその視線の先が気になって草の中に身を起こして川面を見てみたが特に何かが浮いているわけでもなさそうだ。

斜め下から見上げるオレには、そいつの白いシャツとその背後に広がる一面の青空が眩しくて表情まではハッキリとは見えなかったが、不安定に身を乗り出している姿から何故か目を逸らすことが出来ないでいた。

やがてそいつは上半身を預けていた欄干に両手をつくとまるで鉄棒のやようにピョンと飛び上がり右足をかけた。

「ーおいっ!あぶなっー、、」
咄嗟に大きな声を上げたオレの方をそいつは一瞬見た。かなりの距離なのに、こちらを見た彼と目が合った気がする。

オレは息をのんだ。心臓が跳ね上がる。

そいつは落ちたんじゃない。意図して飛び降りた、、。

オレの目に、真っ青な空と真っ白なシャツと不思議な体勢で橋から離れた身体、そして一瞬オレを見た感情の無い表情を写真のように焼き付けて、そいつは川へ落ちていった。
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