捨てたいキミ、拾いたい僕。

ふじのはら

文字の大きさ
2 / 14

二話 水面

しおりを挟む
「悪い、、」
飲み込んだ水を吐いてゲホゲホと苦しそうな顔をしながらそいつは言った。
オレの差し出した腕につかまり陸へ上がってきたのだ。
「バランス崩した」
「いや、でもあんたさ、ー」
まだ苦しげな荒い息をする彼に、次の言葉が出ずにオレは沈黙した。

制服も何もかもずぶ濡れで黒い髪からポタポタと水滴が落ちている。さっきまで寝転がっていた草の上まで上がらせてオレはどかっとその場に尻をついた。
何度か深呼吸をして、自分の鼓動を聞く。濡れた服が気持ち悪かったが、気温が高かったせいか寒くはなかった。

「悪い、、人が助けに来るとか想定外だった、、はぁ、、やば、、俺何してんだろ、、」
肩で大きく息をしながら申し訳なさそうに目を伏せた彼は顔面蒼白で、自分の意思で飛び込んだ事を肯定している言葉にも気が付いていないようだ。

「なぁ、大丈夫?ー、、じゃなくない?」
「ー、、、あー、こんな全身濡れててどうやって帰るっつー話だよな」
ハハハと形だけ笑った口元が震えているように見える。
「じゃなくてさ。いや、それもそうなんだけど、、何かあんた大丈夫には見えないんだけど、、」
「んー、、いや、バランス崩しただけだって、、。暑さに弱いんだよ。ー」
「おい?」
「これどうやって帰ろ、、あ、ごめんな。あんたも濡れて」
「おいって!」
「この気温だからそのうち乾くかな、、こんなんじゃ帰れねーし、、、、帰れねーよな、、、」
適当に口を動かしていた彼の言葉がふいに途切れて、黙ったまま俯いた顎の先から雫がパタ、パタと草の上へ落ちていく。俯いていて目元は見えないが唇を固く引き結んでいる。

やがて彼はその場に腰掛けると伸ばした両腕の間に顔を埋め、「ごめ、、少し、放置してくんない、、」掠れた声でそう言った。

彼は暫く顔を伏せたまま肩を震わせていた。
オレは少し離れてぼんやりと川面を眺めて座っていることしか出来なかった。
こんな時にかける言葉なんか持ち合わせてはいなかったのだ。

オレは真っ青な空と、陽に反射してキラキラ光る水面を見つめながら、そいつの小さな嗚咽と自分自身の鼓動を聞いていた。


それが、オレ川原 朋紀かわはら ともきと、和倉 誉わくら ほまれが初めて出会った日だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

僕《わたし》は誰でしょう

紫音みけ🐾新刊2月中旬発売!
青春
※第7回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  交通事故の後遺症で記憶喪失になってしまった女子高生・比良坂すずは、自分が女であることに違和感を抱く。 「自分はもともと男ではなかったか?」  事故後から男性寄りの思考になり、周囲とのギャップに悩む彼女は、次第に身に覚えのないはずの記憶を思い出し始める。まるで別人のものとしか思えないその記憶は、一体どこから来たのだろうか。  見知らぬ思い出をめぐる青春SF。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...