捨てたいキミ、拾いたい僕。

ふじのはら

文字の大きさ
6 / 14

六話 会話

しおりを挟む
オレと和倉が話す機会はふいにやってきた。ある寒い日だ。

「川原くん走んない日ー?」
玄関前に集合しながらクラスで隣の席の太一たいちがオレに手を振る。
なんとなく周りがダブってるオレの扱いに戸惑う中、オープンな性格の太一とその親友は普通にオレに絡んでくる。バカだけどオレの貴重な友だちだ。
「さすがに8キロはないわ。頑張れよー!」
手を振り返すと変な顔で応じてくるお調子者の太一を、もうひとりの友人の小松が引っ張って走り始める。
それを笑いながら見送っていると同じく走り始めたB組の中に歩いている和倉を見つけた。

「うーわ、やっぱやべぇわ。足首やってる。」
「はぁ?和倉、まさかおまえさぼんのー!?」
仲の良さげな男子達がふざけて和倉に絡むのを笑いながら片足でピョコピョコと器用にかわす和倉。相変わらず細っそりとした身体だがふざけて笑う姿は目を引くものがあった。高校生らしい子供っぽさと、大人びた表情を併せ持ち、友だちとじゃれあい時には悪態をつく。
真面目すぎず適当すぎず、すごく上手く自分の立ち位置を確立しているようで、感心するやら羨ましいやら、、。友だちとふざけ合う姿は絵に描いたような楽しい高校生活を送っているように見えた。

B組を笑顔で送り出すと和倉は片足を庇いながら玄関に入って来た。皆が戻るまで待機するためだ。

「めずらしーね、見学。」横に座った和倉に話しかける。
「昼休みにサッカーやって足ぐねったっぽい。すっげラッキー。ふはは」
和倉はB組のヤツらと居る時と同じ笑顔で笑った。

「川原は?よく体育休んでるよな?」
「うん、まぁ。走るのはちょっと。」
「ドクターストップって噂聞いた」
「えー、何オレ噂になってんの?ーまぁ、そっか、留年だし、体育ほぼ見学だし、有名人かぁ。」
「運動全部ダメなの?やるとどうなんの?」
「うーん、、無理すると、動けなくなったり?ちょっとした騒ぎになるかも。」
笑うオレにふと向き直って和倉はこわごわ口を開く。
「あの、、川に入ったり、、ってもしかしてやばいやつ?」
「あー、あの時の?まぁ、今思えば超ヤバいやつ。」
「え、、」
苦笑して頷く俺の顔を見たまま、和倉が不安そうな顔をした。

ーあ、俺の知っている和倉だ、、。
その不安げな表情に自分の知っている和倉を見出して、ホッとしたような心がザワっと不穏になったような、そんな不思議な感覚になってオレは慌てて笑う。
「まぁ、結果的に何でもなかったけど、もう川には入らんどくよ。」
「あー、うん、だね。」
和倉がオレの笑顔に少し安心したように表情を緩めて笑った。

「なんか話すの久しぶりだ。」
「だね。」

オレ達は友だちとは少し違う。廊下ですれ違っても委員が一緒になってもほぼ話すことはない。
オレ達の関係は、他の人に見せられないものを見てしまった同士。命を放り出そうとしたやつと命拾いしたやつの、正反対に引き合う糸のような、そんな関係かも知れない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

僕《わたし》は誰でしょう

紫音みけ🐾新刊2月中旬発売!
青春
※第7回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  交通事故の後遺症で記憶喪失になってしまった女子高生・比良坂すずは、自分が女であることに違和感を抱く。 「自分はもともと男ではなかったか?」  事故後から男性寄りの思考になり、周囲とのギャップに悩む彼女は、次第に身に覚えのないはずの記憶を思い出し始める。まるで別人のものとしか思えないその記憶は、一体どこから来たのだろうか。  見知らぬ思い出をめぐる青春SF。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...