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第一章 女王と五人の王子たち
6:第ニ王子イーサン①セリーナの意外な一面
しおりを挟むアシュリーがアダムを訪ねた翌日、エリザベスはアシュリーとセリーナを書斎へ呼んだ。
「セリーナ、アシュリーをイーサンに紹介したいの。イーサンを呼ぶのは簡単だけれど、せっかくだから城の案内をしながら、武術訓練場へ連れて行ってあげて欲しいの。今日は一日そこに居るらしいから。あの辺りは、普段は中々行かない場所だしね」
エリザベスは、いつものやや笑みを浮かべた顔で淡々と言う。
(イーサン様……今日は第二王子殿下とお会いするのね)
アシュリーにとって第二王子の記憶の中のイメージは、"大きい熊みたいな人"だった。
「はい、畏まりました」
セリーナはいつも通りの無表情で答える。
武術訓練場へ行く途中、珍しくセリーナから話しかけて来た。
「……アシュリーには、良い人はいるの……?」
普段無駄口を叩かないセリーナから意外な内容の話を振られ、アシュリーは驚いた。
思わずセリーナの顔を二度見してしまっていると、視線に気付いたセリーナは気まずそうに頬を赤らめた。
(えっ、可愛い!!!)
クールビューティーなセリーナの意外な一面にアシュリーがときめいていると、返事を促される。
「で、どうなの?」
「あっ、いいえ、おりません!」
「……そうなの……」
アシュリーの答えに、セリーナは明らかに落胆の色を見せている。
「……セリーナ様はいらっしゃるのですか?」
「えっ!? いっ……いないわ!」
何となく聞き返したアシュリーに、これまた意外な反応をセレーナはしたのだった。
(えっ……いるのね)
「何故、突然そのようなことをお尋ねになられたのですか?」
セリーナに想い人がいるのを心の中で確信しながら、アシュリーは尋ねる。
「……これから会うイーサン様はとても人気があるの。だから、うっかり好きにならないように気をつけた方が良いわよ!」
「えっ、そうなのですか? ……けれど、王子殿下相手にそのような感情を抱くような、そんな無謀なことはしませんよ」
「好きになる気持ちはどうしようもないわ! それに、想うだけなら良いじゃない……」
思わず興奮してそう言ったセリーナは、ハッと口に手をやっている。
(しまった)と思っているのが、よくわかる顔をしていた。
(恋とはそうゆうものなのね……)
恋愛経験のないアシュリーには未知の世界で、ボケっとセリーナを見つめてしまう。
そしてアシュリーは、取り敢えず受け入れておくことにした。
「わかりました。イーサン第二王子殿下のことを好きにならないように気をつけます」
(私の記憶の中は熊のイメージなのだけど……それほどまでに人気なのかしら? アダム殿下よりもってこと? 相手がアダム殿下なら、うっかり好きになる人が続出してしまうのも頷けるけど……)
そのようなことをアシュリーが考えていると、目的地に到着したようだった。
「ここよ。そしてあのお方が、第二王子のイーサン殿下よ」
今日は休日のようで、武術練習場で鍛錬しているのは数人だった。
その中で一番身体の大きい人を示して、セリーナは言った。
(やっぱり熊だ!!!)
アシュリーが口に出さなかった自分に安堵していると、横からため息が聞こえた。
「はぁ……。じゃあ、さっき言ったことには気をつけてね。私は帰るわね」
ため息と共にそう言い残して、セリーナはトボトボと、後ろ髪をひかれながら去って行く。
(セリーナ様は大変な相手に想いを寄せていらっしゃるのね……)
セリーナとイーサンは親戚の間柄だから、幼い頃から交流があったのかもしれない。
セリーナの後ろ姿を見送りながらアシュリーは、わからないなりに辛い恋なんだろうとセリーナの心痛を想像し、少し胸がギュッとなるのを感じたのだった。
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