【完結】城入りした伯爵令嬢と王子たちの物語

ひかり芽衣

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第二章 シャインブレイド

5:サンブルレイド領にて①ヴィクターとの再会

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「ここがサンブルレイドね。初めて来たわ」

イーサンと草原で話した翌日、アシュリーはサンブルレイドへ"エリザベスのおつかい"という名目で、ヴィクターに会うために出発した。

城からは馬車で丸五日の距離だった。
今日はエリザベスのおつかいを済ませたあと宿で一泊し、明日帰路へつく予定だ。

(初めて来たけれど、何と言うか……凄い場所ね)

アシュリーが圧倒されていると、声を掛けられた。

「アシュリーさん! すまない、出迎えるつもりだったのだが遅くなってしまった!」

ヴィクターは月の3/4はサンブルレイド公爵邸へ宿泊しているそうだ。
本日、馬車も屋敷へ到着した。
因みに残りの1/4は出先での宿泊で、城へは一~二ヶ月に一度戻っている。


「今、公爵様と奥様は出掛けていていないのだ。なので、さすがに客の俺が勝手に屋敷の中へは通せない。疲れているところに申し訳ないが、すぐに町へ行くのでも良いだろうか?」

少し慌てて小走りで登場したヴィクターは、前髪が上がっている。

(この間のようね……)

初めて会った庭園での、風に吹かれて上がった前髪を思い出すと同時に、アシュリーは急に胸の鼓動を感じた。

(あら? 動機がするわ。体調が悪いのかしら? 無理はしないようにしよう……)

そんなことを考えていると、まだアシュリーは一言も発していなかった。

「アシュリーさん?」

訝しがるヴィクターに、アシュリーは"ハッ"とする。

「あっ、ヴィクター第三王子殿下、本日は急な申し出に応じて下さりありがとうございます」

「……アシュリーさん、年を伺ってもいいだろうか?」

「えっ、あっ、はい、十七でございます」

アシュリーは、2m程の距離からアシュリーを見るヴィクターを見ながら答える。

「なんだ! やはり年下か!」

驚きと楽しさを入り混ぜた、明るい表情でヴィクターは言った。

(どうせ老け顔ですよー)

アシュリーは思わず頬を膨らましてしまう。
綺麗で整ってはいるが大人びた顔立ちにガリガリ身体が相まって、老けて見られがちなのもまた、アシュリーは気にしているのだ。

「はははっ! 女性に年齢を尋ねるなんて、失礼だったな!すまない。アシュリー、さあ行こう!」

アシュリーが拗ねていることに気付いたヴィクターは、楽しそうな笑顔でそう言って歩き始めた。
するとすぐに足を止め、まだ少し頬を膨らませているアシュリーを振り返った。

「あと、外でそんな長たらしく呼ばれたくない。俺のことはヴィクターでいい」

ケロッとそんなことを言うヴィクターに、アシュリーは驚いて駆け寄る。

「そっそのような訳には参りません! では、ヴィクター殿下では?」

「町で殿下なんて呼ばれたら面倒だ。俺はここでは騎士として生活しているのだ。今日は付き人も連れて来なかった。二人でこっそりと母上のお使いを済ませよう」

「えっ!? 付き人なしで良いのですか!? 王都でもない、この……」

アシュリーはそこで言い淀んだ。

「この治安の悪いサンブルレイドで……か?」

「……はい」

気まずそうに言うアシュリーに、ヴィクターはケロッと何でもない顔をしている。

(ヴィクター第三王子殿下はここサンブルレイドを大切に思っているようだから、悪く言って嫌な想いをさせていないと良いのだけれど……)

アシュリーの心配は杞憂だったようだ。
ヴィクターはアシュリーに、悪戯そうな顔で"ペロッ"と舌を出して見せた。

「治安が悪いのは事実だからな。本当は良くない。実は出掛けることは伝えていないのだ」

「えっ!? それはなりません!」

アシュリーの慌てる顔を見て、ヴィクターは笑顔でいう。

「町に住む付き人の奥さんが産気づいたのだよ。だから、君が来るのは延期になって、俺は屋敷にいるからそばに居てやれと言って帰したのだ」

「そうなのですね……」

アシュリーは、ヴィクターの優しさに心が温まるのを感じる。しかしすぐに冷静になる。

「では、私は出直します! 乗って来た馬車もありますし、本日は一度帰って出直すことといたします」

アシュリーは真面目な顔でそう言った。アシュリーは帰城後に予定があるため、滞在を伸ばすことは出来ないのだ。

(ヴィクター殿下に何かあったら大変よ……)

勿論その想いからの発言だったが、ヴィクターはその言葉を無視してアシュリーの腕を掴んだ。

「俺もまずまず腕の利く騎士だ。その辺の輩くらい一人で大丈夫だ。さあ、行くぞ!」

ヴィクターはアシュリーの腕を掴み、有無を言わせずにどんどん進んで行く。
アシュリーは口を真ん丸にあけて、頬を赤らめている。
掴まれた腕が熱くて仕方なかった。
そして何も言えずに、引きずられるようについて行くこととなったのだった。

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