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最終章:新たな国王の誕生
1:共謀
しおりを挟む城では、夜通し捕らえた民たちへの尋問が行われていた。
「今のところ、"飲食店や道で知らない人物に声をかけられ、金を貰って言われた通りにやっただけ"だと、殆どの者が口を揃えて言っております」
「指示内容は?」
「ただ"陛下の居場所を知っていると言えば良いと。具体的に尋ねられたら適当な場所を言い、そのうち事が起これば退散すれば良い"そう言われていたそうです」
第三部隊隊長の報告にアダムはため息をつく。
「爆発騒ぎについては?」
「はい。広場に通した民の集団のうち三人が広場内の三箇所で同時に爆発させました。三人共、『爆発さえさせれば家族に手は出さない』と見ず知らずの輩に急に脅されたそうです」
「民の集団やその爆発騒ぎで城内を混乱させ、警備が手薄になった隙に一気に民たちの中に紛れていた輩が城内へ侵入してノートを探した、ということだな」
「はい、そのようです」
「尋問を続けろ。指示した人物や陛下の居場所に繋がる情報が何かわかるかもしれない」
「はっ!!!」
隊長が下がった後、アダムはグリーフに会うために地下牢へ出向いた。
「この浅はかな計画を知っていたのか?」
地下牢は民たちで一杯のため取調室に入れられていたグリーフは、椅子に座って手足を縛られている。
顔は諦めたような顔で仏頂面をしている。
「いいえ」
グリーフの前に座ったアダムの質問に、グリーフは表情を変えずに答えた。
「グリーフ騎士団統括代理、ただいまをもって我が国の騎士団から除名する」
こちらも表情を変えずにグリーフを真っ直ぐに見て言ったアダムに、グリーフは表情を崩した。
「あなたにそのような権限はないはずです」
アダムを睨み付けていうグリーフに、アダムは淡々と答える。
「それが、その権限が私に生じたのだよ」
グリーフは目を見開く。
「ローイ・アン・サンブルレイド」
アダムの発したその人物名を聞いた時、グリーフは目を見開いたまま唾をゴクリと飲み込んだ。
「繋がっていたのか?」
「……」
"コンコン"
沈黙の取調室に、ノックをする音が響くとともに入って来たのはイーサンだった。
「兄上、ただいま戻りました。大体の経緯はオーウェンから聞きました。私も同席しても宜しいですか?」
「ああ、お帰り。早かったな。そうだ、尋問はイーサンに任せるよ」
淡々と笑顔でそう言うアダムに、イーサンは自分の過ちを思い出しグッと奥歯を噛んだ。
「……はい」
アダムが座っていた席にイーサンが座り、真正面からグリーフを見る。
「共に酒を酌み交わしたあの日以来ですね。あの時はお恥ずかしい姿をお見せしてしまい、申し訳ありませんでした」
グリーフは何も言わず、無表情にイーサンを見ている。
「騎士団統括になりたいのですか?」
「……」
「いつからローイ様と繋がっているのですか?」
「……」
「父が亡くなった日の予定をローイ様に伝えましたか?」
そこで初めて、グリーフの眉がピクッと上がった。
イーサンは無表情のまま続ける。
「反応がありましたね。まさか疑われるとは思っていませんでしたか?」
「……何のことだか意味不明過ぎただけだ」
アダムも口を挟む。
「イーサン、どういうことだ?」
「ティガレストへ行った際に情報を入手しました。父が亡くなった頃に、怪我をした元騎士がローレルと名乗りやって来たそうです。特徴などからローイ様と思われます。そもそも父の死には不審な点もあり、俺は納得していませんでした」
「はっ、そんなことで勝手に色々結びつけて……随分短絡的な思考だな。お前は国王には向いていないな! すぐに俺に言ったこともバラすし、度胸も野心もない」
グリーフは嘲笑い、イーサンを挑発した。
「……国王の資質がないことは認めます。しかし、父があの日あの道を通ることはわかっていた。一行に落石が落ち、崖から落ちて死亡したとのことだが、父の剣に血が付いていたのがどうしても納得いかなかった」
「落ちてすぐはまだ意識があり、金目の物も盗られていて、死ぬ間際に盗賊を切ったのだろうということになったではないか」
真顔で言うイーサンに、グリーフは変わらず馬鹿にした笑みを浮かべている。
「その点は私も腑に落ちていなかった。父がただの通りすがりの盗人に剣を抜くとは考えにくい。陛下も、父の命を奪い反乱を起こそうとしたのではないかと疑っていた」
昔を思い出しながら深刻な顔で言うアダムに、グリーフは饒舌だ。
「何も起こらなかったではないか」
「ああ、調べても何も出てこなかったし、実際何も起きなかった。だから、本当に不慮の事故だったのだろうということで納得するしかなかった」
グリーフは笑っている。
イーサンは眉を寄せて言った。
「父のこのような死の話を、それほど笑顔で出来るのですね。長年父に仕えていたのに……」
「今だから正直に言う。ローレル殿下が騎士団統括だなんて、納得がいっていなかった。本人はサンブルレイドで怪我をし戦場で使い物にならなくなったにも関わらず、陛下と結婚していきなり城へやって来てその地位について……。俺が実力はNo. 1だったのに」
偉そうにローレルを侮辱するグリーフに、イーサンもアダムも眉間に皺を深く刻む。
「だから、ローイ様と組んだのですか? 父は足を悪くして素速い動きは無理でしたが、剣は使えました。出来るトレーニングはずっと欠かさずしていたのです」
「はんっ!」
「一年ほど前ティガレストに来た時、その男は怪我をしていたそうです。本当は父を殺して国が揺いだ隙を狙って反乱を起こすつもりだったのではないですか? しかし、ローイ様の怪我で見送ることにした、または何か不都合が生じて遂行が困難になった。違いますか?」
「……」
グリーフは喋り過ぎたと笑顔を消して黙った。
「"現在は騎士団統括が不在で女王陛下も病を患っている。今が一度流れた反乱を再び実行する時だ。"そういうことですか?」
「……」
「それにしてはお粗末な計画ですね」
グリーフはだんまりを決め込んでいる。
イーサンとアダムは目を合わせた。
アダムはイーサンに一つ頷くと、グリーフへ提案をする。
「もし陛下を無事に返してくれたら、除名ではなく自主退職ということにしましょう。どうでしょうか?」
グリーフは下を向いたまま、考えているようだった。
「……私を逃して下さるということですか?」
「ああ、私の話に乗るのなら、自由にしよう」
「……では、お受けいたします」
こうして、グリーフを自由にした。もちろん、近くまでは同行者も一緒だ。
「俺が一緒に行きます」
「いや、イーサンはすぐにヴィクターの所へ馬を飛ばしてくれないか?」
グリーフへの同行を申し出るイーサンに、アダムはすぐに指示をする。
「えっ?」
「今回の城での騒ぎはお粗末すぎるし、雑魚ばかりを使っている。恐らく、この騒ぎに乗じて城を出る一行を尾行する計画だったのではないかと、さっき考え至ったのだよ。彼らは反乱を成功させるために、シャインブレイドが欲しいはずだ。ヴィクターとアシュリーが城に戻ったこともどこからか知られていてもおかしくない」
「……なるほど。ローイ様はそちらに居そうですね」
「ああ。私はヴィクターの所に応援部隊を送ってしまったのだ。しかも、目立たぬように少人数を。地下から向かっているためにシャインブレイドを手に入れた後、帰りの足がないと思ったのだよ……」
アダムは珍しく渋い顔をしている。
「では……急ぎます」
「ああ、イーサンの属している第四部隊を連れて、急いでくれ」
二人はしっかりと目を見合いガッチリと握手をした後、イーサンは走り去った。
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