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第四章 嘘が誠となる時
14:記された真実③アシュリーを呼んだ本当の理由
しおりを挟むアシュリーとヴィクターが隠し通路を四つん這いで進んでいるその頃、城では騒ぎを起こした民たちが捕らえられ、城の中への侵入者たちも次々と捕らえられていた。
「皆、成人男性ばかりだね。全員地下牢へ入れ、それから一人ずつ話を聞いて行け。爆発騒ぎを起こした張本人はもちろん、その他も仲間の可能性がある。第一部隊は城の周辺警備を固めろ。第二部隊は城内に他に侵入者がいないかしらみ潰しに探せ。第三部隊は尋問を」
「はっ!」
アダムは各部隊の隊長へ指示を出したのだが、一番前で、一番大きな声ではっきりと返事をしたのはグリーフだった。
城での急な出来事であり、当然、現在騎士団トップであるグリーフに報告がいったのだ。
「……グリーフ騎士団統括代理、ちょうど呼び出そうと思っていたのだよ。聞きたいことがある。陛下の病について嘘の噂を流したな?」
「いえ、私はそのようなことはしておりません!」
アダムの突然の問い、それも隊長たちのいる前での質問にグリーフは驚いた顔をしつつも、即座に否定する。
そんなグリーフを見てアダムは冷たい瞳で言った。
「私たち5人兄弟に武術を教えて下さった師匠に、このようなことをすることになってしまい残念です。今は忙しいので、後でゆっくり話を伺います」
目を見開いているグリーフから目を離し、アダムは側にいた第三部隊騎士団隊長へ命令する。
「グリーフ騎士団統括代理を地下牢へ入れろ。他の民とは同室にせず、一人で」
「はっ! 了解致しました!」
「で、殿下! お待ち下さい!」
「話は後で聞きに行きます。素直に話してくれることを願っています。どうか、心の準備をなさっていて下さい」
そう言い残したアダムは、あとは隊長たちに任せてその場を去った。
(ヴィクターとアシュリーがいない。書斎かな?)
アダムが書斎へ戻る途中、あちこちで捕らえられている侵入者たちは、顔が黒かったりやたら笑っていたり、目を真っ赤にして泣いていたりした。
(エイダンだな……)
アダムはフッと笑いながら書斎へ到着したが、その頃には息が上がっていた。
「はぁ……はぁ……」
(これくらいで動悸がするとは……)
書斎の椅子に座って休み、床に散らばった本を見ながら思考を巡らせる。
(ここにも侵入者が入ったのか……。ノートが無事で良かった。ヴィクターとアシュリーは?……ひょっとして……)
アダムは気怠い身体を支えながら立ち上がり、エリザベスの机に行くと下の板を外した。
現れた空間に入ると、先は真っ暗だ。
しかし、室内の灯りが漏れ入る地面に大きな文字が書かれている。
"剣を探しに行く。ヴィ&ア"
(二人は隠し通路から脱出したのだな……馬もないだろう。応援を送ろう)
アダムは、ヴィクターの目的地へ地上から、目立たぬよう少人数の応援部隊出動の指示を出した。
そして再び、人払いをしてから書斎の椅子へ腰掛けた。
懐から取り出したノートを開く。
今度は飛ばさず、最初から一文字一文字読んでいく。
まだ描き始めて日が浅いため、数ページの記載しかない。
最初の謝罪のページを捲ると、アシュリーについて書かれていた。
その内容を読んだアダムは、フッと笑って独り言を呟く。
「病が嘘だとは思ってもいませんでしたが、アシュリーを呼んだ理由はそんなことだろうと思っていましたよ、陛下」
『アシュリーを城へ呼んだ本当の理由は、誰か王子と恋仲になり婚姻を結んでくれないかと思ったからよ。これほど素敵な女性なのだから、王子達の誰かが気に入るに決まっているわ!』
アダムは、エリザベスがアシュリーを王子達と積極的に接触させるのを、密かに訝しがっていたのだ。
「……期待通りになると良いですね」
そう呟くと、次のページに目を移す。
そこには、今ヴィクターとアシュリーが向かっているシャインブレイドの在処が示されている。
更にページを捲ると、そこに現れた文字を見て、アダムは目を見開いた。
「陛下は、次期国王と騎士団統括をもう決めていらしたのか……」
そして最後のページを見た時、アダムは更に驚愕した。
『アシュリーに物忘れの病を患っているのは嘘だと伝えた後から、時折違和感を感じるようになったの。
頭にもやがかかったようですっきりしないの。
そして、ついさっきのことが思い出せないことがしばしば出てきたわ。
うっかりした物忘れも……
私は、嘘が誠になったと悟ったわ。
自業自得ね。』
アダムはノートを手に持ったまま、しばらく動けなかった……
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