【完結】城入りした伯爵令嬢と王子たちの物語

ひかり芽衣

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最終章:新たな国王の誕生

11:その後②手紙

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アシュリーは、本当は王子たちに直接会って退職の挨拶をしたかった。

(けれどヴィクター国王陛下には会いたくないわ……。この顔を見られたくないし、私の決心も鈍らせたくない。だからと言って、何も言わずに行く訳には……。それに、ヴィクター陛下にだけ直接挨拶しないというのも失礼にあたるかしら……?)

そう思い悩んでいたアシュリーに、エリザベスは手紙を書くことを提案してくれた。

「王子たちは今皆んな忙しくしているから手紙にしたって、私が説明しながら全員に渡してあげるわよ? 私は今、時間があり過ぎるから、お仕事を貰えることは嬉しいの。病の進行を遅らすためにも、脳を刺激しなきゃね」

そう言って笑うエリザベスは、『自業自得』だと思っているようで、傍目から見る限りでは、すっかり自分の病を受け入れているようだった。
勿論内心は自分の変化に戸惑いがあるに違いないが……


アシュリーは、エリザベスのその申し出をありがたく受けることにした。




アシュリーがそっと城を去った日は、一面に菜の花が咲いていた。

「綺麗だわ……。さあ、ヴィクター陛下もとても頑張っていらっしゃるわ。いずれ領地を継げば会うことも避けられないだろうし、その時に胸を張って会えるように、私も頑張るわよ!」

アシュリーは馬車の中からどんどん遠くなって行く王都を見ながら、そう誓う。
しかし言葉とは裏腹に、一筋の涙が頬を伝ったのだった……




アシュリーが去った翌日、エリザベスは王子たちに手紙を配って回った。

「えっ、アシュリーは帰ったのですか! 挨拶も無しだなんて水臭いですね! ゆっくり話したかったのに……」

「だって忙しかったでしょう? 手紙を預かっているわよ。ところでアダム、あのノートを全部見たのは誰かしら?」

少し拗ねた顔で手紙を受け取ったアダムは、エリザベスの問いに目を丸くした。

「私とイーサンですかね?」

「何故ヴィクターとアシュリーは読んでいないの?」

「必要な部分は伝えましたよ?」

「アシュリーを呼んだ本当の理由は、必要なことではないと言うの?」

二人とも笑顔を崩さず、テンポの良い言葉のキャッチボールが続く。

「……出会いは与えられたのですから、あとは本人同士の問題ではありませんか? それに、私もアシュリーのことは良いと思っていたのですよ? わざわざ背中を押すようなことを二人に言わなくても良いかな……っと、思ったのです」

「……私は誰とは指定していないわ。あなたでもよかったのに……」

エリザベスは"はぁっ"とため息をつき、初めて眉を顰めた。

「それほどまで、アシュリーに城に残って欲しかったのですか?」

アダムは微笑みながら言う。

「元々素敵な子だと思っていたけれど、今回のことで私の思っていた以上だとわかったわ。あんな素敵な子をみすみす逃すなんて、私の息子たちは本当に男なのかしら?」

呆れながら言うエリザベスに、アダムは苦笑いする。

「アシュリーはすっかり一人の男にハートを鷲掴みにされていましたからねぇ。少し揺さぶってみましたが、私の出る幕は全くありませんでした。……から、悔しくて背中も押してあげませんでした」

「まあ! じゃあアダムを恨めば良いのね!?」

エリザベスは少しムッとした顔で言う。

「ははっ。母上に恨まれたくはありませんね。……二人を見守りましょう? 今後どう出るのか……。二人とも諦めてしまうようであれば、その程度だったということですよ」

エリザベスは納得が出来ないという顔で、「もう良いわ」と退室しようとする。

「母上、アシュリーがいなくなって寂しいでしょう? そばに置きたい者が他に居れば言ってくださいね。他にもしたいことなどあれば、何でも言って下さいね」

「それなら、私がまだ比較的しっかりしていられるうちにアシュリーの花嫁姿が見たかったわ。マーズに良い報告がが出来たのに……」

いつも毅然とした態度で掴みどころのなかったエリザベスは、女王という重圧から解き放たれたことに加えて病いも後押しし、だいぶ砕けた姿を見せるようになっていた。

「それで、誰がノートを全部見たの?」

「えっ……、私とイーサンだとさっき……」

「ああ、そうだったわね! うっかりしていたわ! じゃあ他の子たちにも手紙を渡さないいけないから失礼するわね!」

何事もなかったかのように、笑顔でそう言ってそそくさと去って行くエリザベスの後ろ姿を、扉が閉まるまでずっと、アダムは心配そうな顔で見送ったのだった……







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