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魔族を助けるような女は聖女じゃないと言われ婚約破棄された私は、魔王と共に歩む事にしました
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「セイナ・ルー・クォヴーシ! 貴女は聖女なんかではありませんわ!」
私にそう告げたのは、一緒に人々を救ってきたはずの、ウーラ・ギ・リモノーンだった。
彼女は私にとって、心を通わせた友達だったのに。
どうしてこうなったのかわからない。
宇宙神殿の白亜の広間で、集まった人たちがざわめいている。
皆、この私に懐疑的な……いえ、否定的な目を向けている。
「驚いたよ……悲しいことだ」
ウーラの肩を抱きよせ、悲しそうに言う長身で金髪碧眼の男性。
私の婚約者、ダマサー・レイテリオン伯爵だ。
私が癒しのエーテル力……宇宙魔力が強力だと発覚して聖女として認定されたときに、私の婚約者として用意された宇宙貴族だった。
とても優しく、美しい青年だったが、その優しさは薄っぺらいものを常々感じていた。
だからだろうか。
「ウーラ、悲しかっただろう、つらかっただろう、しかしよくやってくれた。
君の勇気ある献身のおかげで、魔女の正体を暴くことができた。
君こそ真の聖女にふさわしい、ウーラ」
「ダマサー様……」
なんだろうか、この茶番劇は。
見ていても何の感情も沸いてこない。
「なぜ、私が聖女ではないと」
一応聞いてみる。
「決まっていますわ」
勝ち誇ったようにウーラが言う。
「これが証拠でございますのよ!」
空間に、宇宙ホログラムが投影される。
そこには、私が傷ついた者を癒している姿が再生されていた。
いつもの光景だ。
聖女という肩書き、称号などなくとも、誰かを助ける力があって、目の前に傷ついている誰かがいたなら、助けるのは当然でしょう。
だけど、ここに集った聖王国の重鎮たちにとっては、そうではないらしい。
「なんてことだ……」
「こんな……」
「ありえない」
「おぞましい……」
彼らは口々に嫌悪と否定を口にする。
「そう、この偽聖女……いえ、魔女は!
あろうことか、異教徒……
宇宙魔族を癒したのですわ!!」
宇宙魔族。
私たちが住む銀河の宙域とは別の座標に位置する世界、宇宙魔界に生息する宇宙種族だ。
宇宙魔界は、私たちの銀河の裏側、あるいは別次元、巨大な暗黒星雲の中に存在すると言われている。
宇宙魔族とは、不老不死にして邪悪、人を騙し裏切り惑わし、破壊と殺戮の限りを尽くす、絶対悪の存在であり、滅ぼさねばならない。
そう、銀河聖王国は言っている。
しかし私は知っている。
それは、嘘だ。別の宇宙、別の星に住む、別の種族――それだけなのだ。宇宙魔族は。
宇宙エルフや宇宙ドワーフ、宇宙ハーフフットなどと同じ、異種族だというだけにすぎない。
それを、なんでこの人たちはわからない――いや、わかろうとしないのだろうか。
宇宙魔族にだって、私たちと同じ赤い血が流れているというのに。
青い血なんて、蟹や海老、烏賊や蛸ぐらいなんだよ。
それも、ただヘモシアニンというタンパク質が血中酸素を運ぶから青いというだけだ。
邪悪だからとかそういうことではない。
「魔族には癒しの力は毒でしかないはず……」
「それを癒した、だと……」
「癒しの聖なる力ではないということか」
「なんと言うことだ!! 私たちは騙されていたのか!!」
いやいやいやいや。
癒しの力でダメージを食らうのは、アンデッドだよ。
あるいは、過剰治癒攻撃の場合かな。
どちらにせよ、完璧に間違っている。
だけど、この人たちはそんなことはどうでもいいのだろう。
結論は決まっている。
私は魔女だと。
その雰囲気に酔っている。
叩いていい相手がここにいる。だから思う存分正義を振りかざせるのだと。
「魔女め!!」
「魔女を吊せ!!」
「殺せ!!」
「殺せ!!」
「殺せ!!」
「殺せ!!」
「殺せ!!」
大合唱が聖堂を震わせる。
殺気が満ちていく。
白い宇宙装甲服に身を包んだ、宇宙トルーパー達がブラスターを構え、私を包囲する。
そして、一人の男性が群衆を割って現れる。
「おお、勇者様」
「宇宙勇者だ――」
「聖王国唯一にして最強の宇宙勇者、カーマ・セイン殿だ」
青い髪の青年。
鍛え上げた細身の肉体。
その手にあるのは、光の刃を持つ勇者の杖、アエテイルケインだ。
「宇宙魔女、セイナ。
エーテルの導きと意思により、貴様をここに断罪する」
宇宙勇者カーマが、ヴゥン、とアエティルケインを起動させ、光の刃を私に突きつける。
ああ――
なんで、こんなことになったのだろう。
私は思い出す。
そうだ、私は――
◇
私は、宇宙スラムで生まれた。
親の顔は知らない。
スラムにある孤児院の前に捨てられ、そしてそこで育ったのだ。
色々あって聖女認定を受けた私は、宇宙モンスターとの戦いや、銀河帝国や銀河共和国、銀河諸王国、銀河通商連合との戦いの場にも駆り出された。
そして私は多くの命を救ってきた――
◇
そこは、未開惑星だった。
資源探索の調査団に同行することになった私は、宇宙トルーパーたちと共に森林を歩いていた。
だけど、私はトルーパーたちからはぐれてしまった。
昔からそうだ。私は方向音痴なのだ。
「こまったなあ……」
この星には宇宙モンスターが多い。
私がいないと、宇宙トルーパーさんたちが危険だ。特に今回は、新人のピカピカなトルーパーさんたちもいるのだ。
「……?」
なんだろう。
悲鳴が聞こえた気がした。いや……これは気のせいじゃない。
「助けないと」
私はその悲鳴の方向に向かい、かけだした。
◇
「……ありがとう」
私が助けたのは、初めて見た種族の人だった。
耳がとがっているが、宇宙エルフではない。
頭には、角が生えていた。
――宇宙魔族だ、始めて見た。
その傍らには、背骨がひしゃげた巨大な宇宙モンスターが倒れている。
宇宙魔族は宇宙モンスターを支配し操る、といった話は、どうやらデマだったらしい。
「君の力は……すごいな」
彼は、自身の体を見て言う。私が、宇宙ヒーリングで傷を治したのだ。
「ここまで早く、欠損箇所まで戻せるとは……」
「聖女、って言われてますし」
私は自己紹介する。
「聖女、か。聞いたことはある。人間の世界に時折生まれる、強力な癒しのエーテルを操る者。
まさか、自分の目で見ることになるとはね」
彼は複雑そうな顔をする。
それもそうだろう。
宇宙魔族にとって、聖女は――きっと、敵だ。
だけど、それがわかっていても、私は彼を助けずにはいられなかった。
「それで、私を切りますか」
私は彼に言う。
「まさか。出来るわけがないだろう。
そもそも君は私の命の恩人だ。
宇宙魔族の誇りにかけて、そんなことはできない」
そう彼は言ってくれた。よかった。
命が失われるのは、ごめんだから。
「君は、優しいな」
彼は言う。
そうだろうか。私は、当たり前のことをしただけだ。
「その当たり前を、出来ない者が多すぎるんだ」
「……それは」
悲しい話だと想う。
目の前の人を助ける。助けようとする。手をさしのべる。
ただ、それだけの事なのに。
この宇宙は、それすらも出来ない――許されない。様々な理由で。
なによりも、力不足で。
それが現実なのだと、彼は悲しそうに言った。
「でも……」
私は言う。力強く。
「私たちは出会えて、そして――殺し合ったりは、しなかった」
人間の聖女と、魔族。
不倶戴天の敵のはずだ。
住む世界が違う。住む宇宙も違う。
だけど。
「殺し合わない道も、ありますよ」
「それは、君だから言える理想論だな」
彼は言った。
「――だけど、悪くない。俺は好きだよ、その理想。君が言うなら、それは決して――夢物語じゃないんだろう」
そう言った彼の瞳は、とても優しかった。
そして私たちは、色々な事を話した。
お互いのこと。今までどうやって生きて来たか。ここには何故来たか。趣味、特技、好きな食べ物、そういった色々なことだ。
その話は、宇宙トルーパー達が私を発見するまで続いた。
気がつけば、彼の姿は消えていた。
彼の名前。
彼の名前は――
◇
「アスマ……」
ふと、彼の名前が口をついて出た。
ああ、そうか。
私は――
「撃てぇい!!」
トルーパーのブラスターが火を噴く。
しかし、その光弾が私に届くことはなかった。
「――え?」
私を守るように展開されている、宇宙魔法陣。
その薄い光の壁に、ブラスターははじかれていた。
そして、それを張ったのは――
「……アスマ」
あの、魔族の青年だった。
「なんで、ここに」
私は言う。だって――ここは宇宙魔族にとっては敵地のど真ん中だ。
なのに、なんで。
「決まっている」
アスマは言った。
「君を助けるためだ、セイナ」
ああ――この人は、馬鹿だ。
私なんかのために。
「ほほう」
勇者カーマが、アスマを見て笑う。
「まさか、こんな大物がでるとはな」
「俺を知っているのか、勇者」
「ああ。宇宙魔界の十の魔王の一柱、剣の魔王アスマ・ダイウ。
手合わせ出来るとは光栄だ」
「俺は――戦うつもりはない」
「腑抜けたか、魔王!!」
カーマは、アエティルケインの光の刃を振りかざし、突進してきた。
アスマは、黒い光刃を持つ魔人の牙と呼ばれる武器で、それを受け止める。
「よせ、俺たちが無益な戦いをすれば、大変なこととなる!」
「魔王のせりふとは思えんなぁ!!」
よほど自分の力に自信があるのか、カーマは魔王相手に大口を叩き、笑いながら剣を振るう。
そして、その自信は確かなものだ。
剣の魔王であるアスマが防戦一方だった。
そもそもアスマは、最近になって剣の魔王の名を継いだ若者だ。彼曰く、世襲にすぎない――しかも本来の継承権一位だった姉が、駆け落ちして逃げたために継がされたのだと。
戦いが嫌いなのだ、彼は。
あの星にも、珍しい花があると聞いて探しにいっただけの、心優しい青年だ。
そんな彼が、宇宙魔族に生まれただけで。
魔王の一族に生まれただけで。
血で血を洗う戦いに身を投じないといけないなんて。
間違ってる。
間違ってる――
――――間違ってるなら、正さないといけない。
拳で。
「イヤぁっ!!」
私は、裂帛の気合いで、拳を眼前の宇宙魔法障壁に叩きつける。
聖なる力を拳に込めて。
その一撃で、障壁は粉々に打ち砕かれた。
「――セイナ!? よせ!!」
「な、なんだっ!!」
アスマとカーマが声を上げる。
「!! 撃ってくださいませ!!」
ウーラがトルーパーたちに号令をかける。
そしてブラスターが火を噴いた。
「イヤァ――ッ!」
私は息を吐き、そのブラスターの光弾を――全て、拳で打ち払った。
「な……!?」
トルーパーたちが声を上げる。
しかし、普通に考えたら造作もないことだ。
ブラスターで、私を狙って撃ったのだ。
だったら、それが私の拳に当たっただけ。
そして、ちょっと聖なる力を拳に込めただけだ。
あとは気合いでなんとかなる。それだけのことだ。
なお、弾いたブラスターは全て、トルーパーたちに当たっていた。
急所には当たっていないようだが、みんな倒れている。軟弱だな。たかだか光弾が当たっただけじゃない。
「ば……化け物か!!」
勇者カーマは、跳躍し、私に向かって光刃を振り下ろす。
「セイナ!」
アスマが叫ぶ。
大丈夫だよ、アスマ。
私は――
「なっ!?」
その光刃を、両手ではさみ、受け止めた。
「ば、馬鹿な!! 触れるもの全てを焼き切る。勇者の杖だぞ!!」
うん、確かにそうだね。めちゃくちゃ熱い。
だけど、火傷するそばから癒していけば、全く問題ない。単純な話だ。
「ば……化け物か」
カーマがつぶやく。だが、私はそれに答えない。
光刃を掴んだ手をひねりあげ、彼の手から落とす。
そして――
「イヤぁっ!!」
殴りつけた。
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ!!!!!!!!!!」
聖なる気合いを込めた私の拳は、十秒間に184発。
拳をひたすら、勇者の全身に叩き込んだ。
「イヤァァッ!!!!」
そしてとどめの一発。
宇宙勇者くカーマ・セインは、大聖堂の壁に叩きつけられ。めり込んだ。
「――癒されましたか?」
私は拳を突き上げながら、変なオブジェとなった勇者の残骸に語りかける。
死んではいない。
殴っている最中に何度か心臓が止まったが、その都度再生させた。
死者は蘇らない。
しかし、宇宙医学でも言われているが、死んだ直後なら蘇生は可能だ。
故に、死んでもその場で癒せば、死なない。
「ひ、ひいいいっ!!」
トルーパーたちが逃げるが、しかしだめだ。
空間に手を伸ばして遠隔ヒールを行う要領で、
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ!!!!」
殴る。
遠くにいるトルーパーたちも、私の拳によって次々と殴り飛ばされ、壁に突き刺さった。
大丈夫、死んではいない。
「ひ……ひいいっ!!」
残ったのは、私を裏切りあざ笑った、友達と婚約者、そして有象無象の人たち。
「大丈夫、殺しはしないわ」
私は言う。
「頼むから殺してくださいって泣きわめくようになるだけだから」
次の瞬間、私は元婚約者のダマサーの眼前にいた。
「ま、待ってくれセイナ。私は騙されて――」
「黙れ」
身を低く屈め、そして顎を打ち抜く。
そして、ダマサー・レイテリオンは、天井に突き刺さった。
「ち、違ういますわ、これは違うんです、そんな、ひいっ」
愛する男がシャンデリアみたいになるのを見て、ウーラは腰を抜かし、後ずさりする。
その床は、漏らした小水で塗れていた。
「ゆ、ゆるして……」
「だめです」
私の拳は、彼女の顔面を――
「もういい!! セイナ!!」
殴り飛ばそうとし時、私を後ろから抱きしめたのは、アスマだった。
「――アスマ」
「もういい。君が手を汚す必要はないんだ」
でも、私の手は、もう……
物理的に汚れている。返り血で。
洗えばきれいになるけど。
そもそも私、モンスター以外はまだ殺してないし。
というか、アスマを助けた時にモンスターを殴り殺した時が、私の殺戮処女喪失だったなあ。
「でも、もう私は――」
どのみち、聖女にはもう戻れない。
聖王国唯一の宇宙勇者を、壁の飾りにしたのだ。
全銀河から指名手配をくらってもおかしくない。
「一緒に、どこかに逃げよう。
君と共にいることが許されないなら、俺も魔王の座を捨ててもいい」
「アスマ……」
「君は強い。とても強い。だけど……俺は知っている。
君は、ただ強すぎるだけの、普通の女の子なんだ。
大きな力は人を狂わせる。
だけどそれでも――俺を助けるために飛び込んだ君の姿、あの時の顔。
それは、力に溺れた化け物のものなんかじゃなかった。
ただなにも考えで、誰かを助けようとしただけの、ただの女の子だった。
そこに、結果として――聖なる力があっただけにすぎない」
……。
それは、買いかぶりすぎだと想う。
私は、聖女として生きることしかできなくて、そしてそれすらもできなかった、ただのバケモノで。
「……」
あれ。
なんだろう。
私の頬に、熱いものが流れていた。
涙だ。
あと、天井から落ちてきた誰かの血だ。
こっちはどうでもいい。
「俺は君を――守ることは出来ないかもそれない。だけど、側で支えたい。ずっと。
だから、逃げよう。
宇宙魔界でもいい。それとも、誰も知らない外宇宙でもいい。
二人で――」
「アスマ……」
私は。
私を抱きしめている、その震えている手を、そっと握った。
「はい。私でよければ、一緒に」
◇
あの後。
立っている人間を全員殴り倒した。
ちゃんと手加減はした。
ごめんなさいすみませんでしたあなたこそが真の聖女でした許してください堪忍してください殴らないで、と命乞いする彼らだったが、もう遅い。
ここで殴らないでおいたら、私たちがどこに行ったか突き止められかねないので、殴って全員の意識を刈り取っておいた。
アスマが、眠りの魔術なんかは使えるといっていたけど、魔力は温存しておくべきだう。
殴るだけなら、こちらは何も消費しないりだし。
銀河聖王国の宇宙船をひとつ奪い、私たちは宇宙に出た。
「これから、どこにいこうか」
アスマは言う。
「宇宙は広いよ。俺は魔界育ちだから、こっちの宇宙はよく知らないけど」
「私もそう。自分の意志で星を出たこと無かったからね」
ずっと、どこに行け、ここに行けという命令に従ってきた。
だけどこれからは違う。
私は私の意思で、どこにでも行ける。
そして、人を助け、人を殴る。
「いや、殴らないでいいから」
「そう? でも、殴らないと解決しないことだってあるよ」
「それはそうだけどさ……なるべくなら、最後の手段にしようよ。剣も、拳も」
「うん。そうね」
暴力以外でも、やれることはきっとたくさんあるはずだ。
それでもどうにもならなかったら。初めて拳を振るえばいい。
最後の手段があると想えば、余裕をもって色々と出来るよね。
「……よし。ランダワープでもしてみようか」
アスマがナビコンピュータをいじる。
「どこにでるのかしらね」
「どこだっていいさ。君と一緒なら」
「うん、そうね、私の魔王様」
「ああ、いこうか――俺の聖女」
そして、私たちは――跳び去った。
これから二人の旅に何があるのか。
それはきっと――拳だけが知っている。
――――Fin――――
私にそう告げたのは、一緒に人々を救ってきたはずの、ウーラ・ギ・リモノーンだった。
彼女は私にとって、心を通わせた友達だったのに。
どうしてこうなったのかわからない。
宇宙神殿の白亜の広間で、集まった人たちがざわめいている。
皆、この私に懐疑的な……いえ、否定的な目を向けている。
「驚いたよ……悲しいことだ」
ウーラの肩を抱きよせ、悲しそうに言う長身で金髪碧眼の男性。
私の婚約者、ダマサー・レイテリオン伯爵だ。
私が癒しのエーテル力……宇宙魔力が強力だと発覚して聖女として認定されたときに、私の婚約者として用意された宇宙貴族だった。
とても優しく、美しい青年だったが、その優しさは薄っぺらいものを常々感じていた。
だからだろうか。
「ウーラ、悲しかっただろう、つらかっただろう、しかしよくやってくれた。
君の勇気ある献身のおかげで、魔女の正体を暴くことができた。
君こそ真の聖女にふさわしい、ウーラ」
「ダマサー様……」
なんだろうか、この茶番劇は。
見ていても何の感情も沸いてこない。
「なぜ、私が聖女ではないと」
一応聞いてみる。
「決まっていますわ」
勝ち誇ったようにウーラが言う。
「これが証拠でございますのよ!」
空間に、宇宙ホログラムが投影される。
そこには、私が傷ついた者を癒している姿が再生されていた。
いつもの光景だ。
聖女という肩書き、称号などなくとも、誰かを助ける力があって、目の前に傷ついている誰かがいたなら、助けるのは当然でしょう。
だけど、ここに集った聖王国の重鎮たちにとっては、そうではないらしい。
「なんてことだ……」
「こんな……」
「ありえない」
「おぞましい……」
彼らは口々に嫌悪と否定を口にする。
「そう、この偽聖女……いえ、魔女は!
あろうことか、異教徒……
宇宙魔族を癒したのですわ!!」
宇宙魔族。
私たちが住む銀河の宙域とは別の座標に位置する世界、宇宙魔界に生息する宇宙種族だ。
宇宙魔界は、私たちの銀河の裏側、あるいは別次元、巨大な暗黒星雲の中に存在すると言われている。
宇宙魔族とは、不老不死にして邪悪、人を騙し裏切り惑わし、破壊と殺戮の限りを尽くす、絶対悪の存在であり、滅ぼさねばならない。
そう、銀河聖王国は言っている。
しかし私は知っている。
それは、嘘だ。別の宇宙、別の星に住む、別の種族――それだけなのだ。宇宙魔族は。
宇宙エルフや宇宙ドワーフ、宇宙ハーフフットなどと同じ、異種族だというだけにすぎない。
それを、なんでこの人たちはわからない――いや、わかろうとしないのだろうか。
宇宙魔族にだって、私たちと同じ赤い血が流れているというのに。
青い血なんて、蟹や海老、烏賊や蛸ぐらいなんだよ。
それも、ただヘモシアニンというタンパク質が血中酸素を運ぶから青いというだけだ。
邪悪だからとかそういうことではない。
「魔族には癒しの力は毒でしかないはず……」
「それを癒した、だと……」
「癒しの聖なる力ではないということか」
「なんと言うことだ!! 私たちは騙されていたのか!!」
いやいやいやいや。
癒しの力でダメージを食らうのは、アンデッドだよ。
あるいは、過剰治癒攻撃の場合かな。
どちらにせよ、完璧に間違っている。
だけど、この人たちはそんなことはどうでもいいのだろう。
結論は決まっている。
私は魔女だと。
その雰囲気に酔っている。
叩いていい相手がここにいる。だから思う存分正義を振りかざせるのだと。
「魔女め!!」
「魔女を吊せ!!」
「殺せ!!」
「殺せ!!」
「殺せ!!」
「殺せ!!」
「殺せ!!」
大合唱が聖堂を震わせる。
殺気が満ちていく。
白い宇宙装甲服に身を包んだ、宇宙トルーパー達がブラスターを構え、私を包囲する。
そして、一人の男性が群衆を割って現れる。
「おお、勇者様」
「宇宙勇者だ――」
「聖王国唯一にして最強の宇宙勇者、カーマ・セイン殿だ」
青い髪の青年。
鍛え上げた細身の肉体。
その手にあるのは、光の刃を持つ勇者の杖、アエテイルケインだ。
「宇宙魔女、セイナ。
エーテルの導きと意思により、貴様をここに断罪する」
宇宙勇者カーマが、ヴゥン、とアエティルケインを起動させ、光の刃を私に突きつける。
ああ――
なんで、こんなことになったのだろう。
私は思い出す。
そうだ、私は――
◇
私は、宇宙スラムで生まれた。
親の顔は知らない。
スラムにある孤児院の前に捨てられ、そしてそこで育ったのだ。
色々あって聖女認定を受けた私は、宇宙モンスターとの戦いや、銀河帝国や銀河共和国、銀河諸王国、銀河通商連合との戦いの場にも駆り出された。
そして私は多くの命を救ってきた――
◇
そこは、未開惑星だった。
資源探索の調査団に同行することになった私は、宇宙トルーパーたちと共に森林を歩いていた。
だけど、私はトルーパーたちからはぐれてしまった。
昔からそうだ。私は方向音痴なのだ。
「こまったなあ……」
この星には宇宙モンスターが多い。
私がいないと、宇宙トルーパーさんたちが危険だ。特に今回は、新人のピカピカなトルーパーさんたちもいるのだ。
「……?」
なんだろう。
悲鳴が聞こえた気がした。いや……これは気のせいじゃない。
「助けないと」
私はその悲鳴の方向に向かい、かけだした。
◇
「……ありがとう」
私が助けたのは、初めて見た種族の人だった。
耳がとがっているが、宇宙エルフではない。
頭には、角が生えていた。
――宇宙魔族だ、始めて見た。
その傍らには、背骨がひしゃげた巨大な宇宙モンスターが倒れている。
宇宙魔族は宇宙モンスターを支配し操る、といった話は、どうやらデマだったらしい。
「君の力は……すごいな」
彼は、自身の体を見て言う。私が、宇宙ヒーリングで傷を治したのだ。
「ここまで早く、欠損箇所まで戻せるとは……」
「聖女、って言われてますし」
私は自己紹介する。
「聖女、か。聞いたことはある。人間の世界に時折生まれる、強力な癒しのエーテルを操る者。
まさか、自分の目で見ることになるとはね」
彼は複雑そうな顔をする。
それもそうだろう。
宇宙魔族にとって、聖女は――きっと、敵だ。
だけど、それがわかっていても、私は彼を助けずにはいられなかった。
「それで、私を切りますか」
私は彼に言う。
「まさか。出来るわけがないだろう。
そもそも君は私の命の恩人だ。
宇宙魔族の誇りにかけて、そんなことはできない」
そう彼は言ってくれた。よかった。
命が失われるのは、ごめんだから。
「君は、優しいな」
彼は言う。
そうだろうか。私は、当たり前のことをしただけだ。
「その当たり前を、出来ない者が多すぎるんだ」
「……それは」
悲しい話だと想う。
目の前の人を助ける。助けようとする。手をさしのべる。
ただ、それだけの事なのに。
この宇宙は、それすらも出来ない――許されない。様々な理由で。
なによりも、力不足で。
それが現実なのだと、彼は悲しそうに言った。
「でも……」
私は言う。力強く。
「私たちは出会えて、そして――殺し合ったりは、しなかった」
人間の聖女と、魔族。
不倶戴天の敵のはずだ。
住む世界が違う。住む宇宙も違う。
だけど。
「殺し合わない道も、ありますよ」
「それは、君だから言える理想論だな」
彼は言った。
「――だけど、悪くない。俺は好きだよ、その理想。君が言うなら、それは決して――夢物語じゃないんだろう」
そう言った彼の瞳は、とても優しかった。
そして私たちは、色々な事を話した。
お互いのこと。今までどうやって生きて来たか。ここには何故来たか。趣味、特技、好きな食べ物、そういった色々なことだ。
その話は、宇宙トルーパー達が私を発見するまで続いた。
気がつけば、彼の姿は消えていた。
彼の名前。
彼の名前は――
◇
「アスマ……」
ふと、彼の名前が口をついて出た。
ああ、そうか。
私は――
「撃てぇい!!」
トルーパーのブラスターが火を噴く。
しかし、その光弾が私に届くことはなかった。
「――え?」
私を守るように展開されている、宇宙魔法陣。
その薄い光の壁に、ブラスターははじかれていた。
そして、それを張ったのは――
「……アスマ」
あの、魔族の青年だった。
「なんで、ここに」
私は言う。だって――ここは宇宙魔族にとっては敵地のど真ん中だ。
なのに、なんで。
「決まっている」
アスマは言った。
「君を助けるためだ、セイナ」
ああ――この人は、馬鹿だ。
私なんかのために。
「ほほう」
勇者カーマが、アスマを見て笑う。
「まさか、こんな大物がでるとはな」
「俺を知っているのか、勇者」
「ああ。宇宙魔界の十の魔王の一柱、剣の魔王アスマ・ダイウ。
手合わせ出来るとは光栄だ」
「俺は――戦うつもりはない」
「腑抜けたか、魔王!!」
カーマは、アエティルケインの光の刃を振りかざし、突進してきた。
アスマは、黒い光刃を持つ魔人の牙と呼ばれる武器で、それを受け止める。
「よせ、俺たちが無益な戦いをすれば、大変なこととなる!」
「魔王のせりふとは思えんなぁ!!」
よほど自分の力に自信があるのか、カーマは魔王相手に大口を叩き、笑いながら剣を振るう。
そして、その自信は確かなものだ。
剣の魔王であるアスマが防戦一方だった。
そもそもアスマは、最近になって剣の魔王の名を継いだ若者だ。彼曰く、世襲にすぎない――しかも本来の継承権一位だった姉が、駆け落ちして逃げたために継がされたのだと。
戦いが嫌いなのだ、彼は。
あの星にも、珍しい花があると聞いて探しにいっただけの、心優しい青年だ。
そんな彼が、宇宙魔族に生まれただけで。
魔王の一族に生まれただけで。
血で血を洗う戦いに身を投じないといけないなんて。
間違ってる。
間違ってる――
――――間違ってるなら、正さないといけない。
拳で。
「イヤぁっ!!」
私は、裂帛の気合いで、拳を眼前の宇宙魔法障壁に叩きつける。
聖なる力を拳に込めて。
その一撃で、障壁は粉々に打ち砕かれた。
「――セイナ!? よせ!!」
「な、なんだっ!!」
アスマとカーマが声を上げる。
「!! 撃ってくださいませ!!」
ウーラがトルーパーたちに号令をかける。
そしてブラスターが火を噴いた。
「イヤァ――ッ!」
私は息を吐き、そのブラスターの光弾を――全て、拳で打ち払った。
「な……!?」
トルーパーたちが声を上げる。
しかし、普通に考えたら造作もないことだ。
ブラスターで、私を狙って撃ったのだ。
だったら、それが私の拳に当たっただけ。
そして、ちょっと聖なる力を拳に込めただけだ。
あとは気合いでなんとかなる。それだけのことだ。
なお、弾いたブラスターは全て、トルーパーたちに当たっていた。
急所には当たっていないようだが、みんな倒れている。軟弱だな。たかだか光弾が当たっただけじゃない。
「ば……化け物か!!」
勇者カーマは、跳躍し、私に向かって光刃を振り下ろす。
「セイナ!」
アスマが叫ぶ。
大丈夫だよ、アスマ。
私は――
「なっ!?」
その光刃を、両手ではさみ、受け止めた。
「ば、馬鹿な!! 触れるもの全てを焼き切る。勇者の杖だぞ!!」
うん、確かにそうだね。めちゃくちゃ熱い。
だけど、火傷するそばから癒していけば、全く問題ない。単純な話だ。
「ば……化け物か」
カーマがつぶやく。だが、私はそれに答えない。
光刃を掴んだ手をひねりあげ、彼の手から落とす。
そして――
「イヤぁっ!!」
殴りつけた。
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ!!!!!!!!!!」
聖なる気合いを込めた私の拳は、十秒間に184発。
拳をひたすら、勇者の全身に叩き込んだ。
「イヤァァッ!!!!」
そしてとどめの一発。
宇宙勇者くカーマ・セインは、大聖堂の壁に叩きつけられ。めり込んだ。
「――癒されましたか?」
私は拳を突き上げながら、変なオブジェとなった勇者の残骸に語りかける。
死んではいない。
殴っている最中に何度か心臓が止まったが、その都度再生させた。
死者は蘇らない。
しかし、宇宙医学でも言われているが、死んだ直後なら蘇生は可能だ。
故に、死んでもその場で癒せば、死なない。
「ひ、ひいいいっ!!」
トルーパーたちが逃げるが、しかしだめだ。
空間に手を伸ばして遠隔ヒールを行う要領で、
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ!!!!」
殴る。
遠くにいるトルーパーたちも、私の拳によって次々と殴り飛ばされ、壁に突き刺さった。
大丈夫、死んではいない。
「ひ……ひいいっ!!」
残ったのは、私を裏切りあざ笑った、友達と婚約者、そして有象無象の人たち。
「大丈夫、殺しはしないわ」
私は言う。
「頼むから殺してくださいって泣きわめくようになるだけだから」
次の瞬間、私は元婚約者のダマサーの眼前にいた。
「ま、待ってくれセイナ。私は騙されて――」
「黙れ」
身を低く屈め、そして顎を打ち抜く。
そして、ダマサー・レイテリオンは、天井に突き刺さった。
「ち、違ういますわ、これは違うんです、そんな、ひいっ」
愛する男がシャンデリアみたいになるのを見て、ウーラは腰を抜かし、後ずさりする。
その床は、漏らした小水で塗れていた。
「ゆ、ゆるして……」
「だめです」
私の拳は、彼女の顔面を――
「もういい!! セイナ!!」
殴り飛ばそうとし時、私を後ろから抱きしめたのは、アスマだった。
「――アスマ」
「もういい。君が手を汚す必要はないんだ」
でも、私の手は、もう……
物理的に汚れている。返り血で。
洗えばきれいになるけど。
そもそも私、モンスター以外はまだ殺してないし。
というか、アスマを助けた時にモンスターを殴り殺した時が、私の殺戮処女喪失だったなあ。
「でも、もう私は――」
どのみち、聖女にはもう戻れない。
聖王国唯一の宇宙勇者を、壁の飾りにしたのだ。
全銀河から指名手配をくらってもおかしくない。
「一緒に、どこかに逃げよう。
君と共にいることが許されないなら、俺も魔王の座を捨ててもいい」
「アスマ……」
「君は強い。とても強い。だけど……俺は知っている。
君は、ただ強すぎるだけの、普通の女の子なんだ。
大きな力は人を狂わせる。
だけどそれでも――俺を助けるために飛び込んだ君の姿、あの時の顔。
それは、力に溺れた化け物のものなんかじゃなかった。
ただなにも考えで、誰かを助けようとしただけの、ただの女の子だった。
そこに、結果として――聖なる力があっただけにすぎない」
……。
それは、買いかぶりすぎだと想う。
私は、聖女として生きることしかできなくて、そしてそれすらもできなかった、ただのバケモノで。
「……」
あれ。
なんだろう。
私の頬に、熱いものが流れていた。
涙だ。
あと、天井から落ちてきた誰かの血だ。
こっちはどうでもいい。
「俺は君を――守ることは出来ないかもそれない。だけど、側で支えたい。ずっと。
だから、逃げよう。
宇宙魔界でもいい。それとも、誰も知らない外宇宙でもいい。
二人で――」
「アスマ……」
私は。
私を抱きしめている、その震えている手を、そっと握った。
「はい。私でよければ、一緒に」
◇
あの後。
立っている人間を全員殴り倒した。
ちゃんと手加減はした。
ごめんなさいすみませんでしたあなたこそが真の聖女でした許してください堪忍してください殴らないで、と命乞いする彼らだったが、もう遅い。
ここで殴らないでおいたら、私たちがどこに行ったか突き止められかねないので、殴って全員の意識を刈り取っておいた。
アスマが、眠りの魔術なんかは使えるといっていたけど、魔力は温存しておくべきだう。
殴るだけなら、こちらは何も消費しないりだし。
銀河聖王国の宇宙船をひとつ奪い、私たちは宇宙に出た。
「これから、どこにいこうか」
アスマは言う。
「宇宙は広いよ。俺は魔界育ちだから、こっちの宇宙はよく知らないけど」
「私もそう。自分の意志で星を出たこと無かったからね」
ずっと、どこに行け、ここに行けという命令に従ってきた。
だけどこれからは違う。
私は私の意思で、どこにでも行ける。
そして、人を助け、人を殴る。
「いや、殴らないでいいから」
「そう? でも、殴らないと解決しないことだってあるよ」
「それはそうだけどさ……なるべくなら、最後の手段にしようよ。剣も、拳も」
「うん。そうね」
暴力以外でも、やれることはきっとたくさんあるはずだ。
それでもどうにもならなかったら。初めて拳を振るえばいい。
最後の手段があると想えば、余裕をもって色々と出来るよね。
「……よし。ランダワープでもしてみようか」
アスマがナビコンピュータをいじる。
「どこにでるのかしらね」
「どこだっていいさ。君と一緒なら」
「うん、そうね、私の魔王様」
「ああ、いこうか――俺の聖女」
そして、私たちは――跳び去った。
これから二人の旅に何があるのか。
それはきっと――拳だけが知っている。
――――Fin――――
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