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砂の世界
エルリックの戦い 2
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「何が起きている!」
唐突に光り出すエルリックの腕輪に、警戒をするギリオン。
先ほどから、ギリオンは訳のわからない事ばかり起こるこの若者との戦いに驚きを隠せない。
完全に諦めたと感じたエルリックからは死の直前に闘気が戻り、突き出された槍に恐怖した。
だがそれは杞憂に終わり、折れた槍はギリオンに届かなかった。
だが、またもトドメを刺そうとすると今度は若者のつけた腕輪が、その存在を主張するように輝きを増す。
ギリオンの理解を超えた現象に距離をとらざるをえない。
ほとんど勝利を手にしかけていた所からの出来事に、ギリオンは戸惑う。
だが、戸惑うギリオンを他所にエルリックは徐々に自分に起こっている事を理解し始める。
(これは、シンから貰った腕輪だ、それにこの声は使徒と言っている。そうか認めるとはシンの言ったノアという神に俺が認められたのか)
輝く腕輪に目を向けるエルリック、そして事態を把握するとまたもエルリックの脳内に直接声がかかる。
『ここでリリアナを失う訳にはいかないからね。君に力を貸そう、リリアナを救ってくれ』
リリアナを救う、その言葉からこの声の主がリリアナの味方だとわかった。
だがエルリックの槍は折れ、その左腕は使い物にならない。
『残念だがボクはまだ力が少ない、それにこれからボクの戦いがある。君に出来るのはその痛みを和らげる事ぐらいだ』
するとエルリックの左腕から痛みが消えてきた。
傷自体は治っていない。
しかし、痛みを感じなくなった事でまだ左腕は動く。
『その腕輪は持ち主の望む形になる、大事なのはイメージだ、賢い君なら造作も無いだろう?』
イメージ、その言葉にエルリックは頭を回転させる。このギリオンに打ち勝つ為の武器、当然槍だ、だがただの槍ではギリオンの速度についていけない。
(1本では防ぎきれない、だが2本なら!)
イメージするのは、2本の槍を手にする自分。
槍の長さは短めでいい、片手で扱う以上長い槍では邪魔になるだけだ。
腕輪がさらなる輝きを放つ、その光はどこまでも黒くそしてエルリックを覆い隠す。
光が収まるとエルリックの両手には槍が収まっていた。
突然の事にギリオンは慄く、あるはずの無い武器の出現に驚きを隠せない。
『無王の双槍、いい槍だ』
無王の双槍、そう称された槍は鈍く輝く黒色の槍。
そして、眩しく輝く白色の槍がエルリックの両手に握られた。
「っし!」
戸惑うギリオンにエルリックはすかさず黒の槍を突き出す、反応の遅れたギリオンだがその高速の槍はそれでもエルリックの槍を防ぐ。
だがエルリックは止まらない、もう片方の白い槍を薙ぐ。
その槍の斬れ味は凄まじく、ギリオンの鎧を軽々と斬り裂き、肉体に傷跡を残す。
「貴様!」
復活したエルリックにギリオンは反撃を放つ、敵に幻の槍を見させるほどの槍捌きは未だ健在だ。
だが、その槍の特性に気付いているエルリックは迷わない。
2つの槍を巧みに操りギリオンの槍を弾き飛ばす、黒い槍で受け止め白の槍でギリオンの槍を目掛け放つ。
槍の速度を極限まで速くする為、軽量化された槍は軽々と放り出される。
槍を無くしたギリオンだがすかさず腰の剣に手をまわす、だがその隙を見逃すエルリックでは無い。
一気に距離を詰め、その短めの槍をギリオンの喉に突き刺す。
だが、短めの槍はギリオンの喉を貫くには少し、長さが足りなかった。
浅く入った事が感触からわかったエルリックはもう片方の槍をギリオンへと突き立てた。
腹部の装甲を貫きギリオンの腹を割き内臓へと突き進む。
すでに動けないギリオンに喉へと突き立てた槍をさらに押し込む。
「はぁ、はぁ」
荒く息をするエルリック、新たな武器の2つの短槍を抜き取り片手でもつ。
静かに、そしてゆっくりと上がるエルリックの右腕、その拳は強く握られていた。
「う、うおおおおおお!」
エルリックの勝利、掲げられた右腕を見た連合軍は雄叫びを上げる。
ギリオンの敗戦を信じられないラーズ王国軍は、呆然とただ仰向けに倒れたギリオンを見つめていた。
「エルリック!」
だが、エルリックがその場で倒れ込む、慌てて駆け寄るエルリックの部下の兵士達。
「息があります!」
エルリックは生きていた。
しかし、その傷は深くもう立っているのは無理だった、一騎討ちの勝敗は決したが戦争は終わらない。
エルリックが倒れた直後、ラーズ王国軍は動き出す。
「今だ!攻め込むぞ!」
指揮官を失い、だがもう後には引けないラーズ王国軍は本陣に突撃を開始する。
エルリックの勝利の余韻に浸っていた連合軍は虚を突かれ進軍を押し留められない。
「リリアナ様を、お守りしなければ」
動かない体に力を込めるがエルリックは立ち上がれない、リリアナを守る為まだ戦いは続いている。
「隊長、我々にお任せを、我らもあなたの部下です、共にリリアナ様をお守りします」
エルリックの勇姿に部下達が立ち上がる。
共に訓練し共に戦場を駆け回ったエルリックの部隊は、隊長の役目を引き継ぎラーズ王国軍へと挑む。
「隊長の意志を継げ!ここは死んでも通さんぞぉ!」
雄叫びを上げラーズ王国軍に立ち塞がる。
エルリックに鍛えられた隊員達は一時敵の進軍を食い止める。
だが、数の力にはかなわない。
倒しても倒してもなだれ込む敵兵に、隊員達は次第に疲労し傷を負い1人また1人と倒れていった。
抵抗を続ける本陣の守護隊だが徐々に敵が本陣へと迫る。
リリアナを守る為、男達は気を吐くが本陣の陥落は時間の問題だと思われた
もうダメか、それぞれが諦めかけた時、それは現れた。
この戦場で誰よりも小柄な少女だった。
その手に持つ槍はその少女の背丈よりも長くその存在を主張する。だが小柄なその少女はこの戦場で誰よりも獰猛に、そして誰よりも凶悪な顔で戦場に降り立った。
「エールリーック!無事かぁ!」
「ア、アニーさん」
”暴君”アニーが戦場へと君臨する。
ブカブカの赤い長衣を翻し槍を振るう、突然の来週に戸惑うラーズ王国軍へその異名の意味を知らしめる。
ただひたすらに薙ぎ、突き、柄による殴打が繰り出される。
美しさなど欠片の無い、ただ敵を蹂躙するだけの戦いが始まった。
嵐のように敵を葬る姿はまさに暴君、刃向かう者には容赦せず破壊する。
目に付く者にも容赦せず破壊する。
その圧倒的な暴力に本陣を落とす為進軍していたラーズ王国軍は撤退を余儀なくされる。だが黙って敵を見送るほど暴君は甘く無い。
逃げ出す敵を背後から襲う、殴り、蹴り、斬り裂く。
迫り来る脅威にラーズ王国軍は瞬く間に壊滅させられた。
「エルリック、酷くやられたな」
ボロボロのエルリックにアニーが言う、だが返事をする力がエルリックには残っていない。
「お前はもう休んでろ、あの幻視槍を倒したんだ、もう十分だ。あとは私がここを守る」
その一言にエルリックは安心し眠りにつく
”幻視槍”ギリオン・トーラス、ラーズ王国最強の刺客に、王国軍の天才エルリック・ニールセンが友と師匠との約束を守り勝利した。
唐突に光り出すエルリックの腕輪に、警戒をするギリオン。
先ほどから、ギリオンは訳のわからない事ばかり起こるこの若者との戦いに驚きを隠せない。
完全に諦めたと感じたエルリックからは死の直前に闘気が戻り、突き出された槍に恐怖した。
だがそれは杞憂に終わり、折れた槍はギリオンに届かなかった。
だが、またもトドメを刺そうとすると今度は若者のつけた腕輪が、その存在を主張するように輝きを増す。
ギリオンの理解を超えた現象に距離をとらざるをえない。
ほとんど勝利を手にしかけていた所からの出来事に、ギリオンは戸惑う。
だが、戸惑うギリオンを他所にエルリックは徐々に自分に起こっている事を理解し始める。
(これは、シンから貰った腕輪だ、それにこの声は使徒と言っている。そうか認めるとはシンの言ったノアという神に俺が認められたのか)
輝く腕輪に目を向けるエルリック、そして事態を把握するとまたもエルリックの脳内に直接声がかかる。
『ここでリリアナを失う訳にはいかないからね。君に力を貸そう、リリアナを救ってくれ』
リリアナを救う、その言葉からこの声の主がリリアナの味方だとわかった。
だがエルリックの槍は折れ、その左腕は使い物にならない。
『残念だがボクはまだ力が少ない、それにこれからボクの戦いがある。君に出来るのはその痛みを和らげる事ぐらいだ』
するとエルリックの左腕から痛みが消えてきた。
傷自体は治っていない。
しかし、痛みを感じなくなった事でまだ左腕は動く。
『その腕輪は持ち主の望む形になる、大事なのはイメージだ、賢い君なら造作も無いだろう?』
イメージ、その言葉にエルリックは頭を回転させる。このギリオンに打ち勝つ為の武器、当然槍だ、だがただの槍ではギリオンの速度についていけない。
(1本では防ぎきれない、だが2本なら!)
イメージするのは、2本の槍を手にする自分。
槍の長さは短めでいい、片手で扱う以上長い槍では邪魔になるだけだ。
腕輪がさらなる輝きを放つ、その光はどこまでも黒くそしてエルリックを覆い隠す。
光が収まるとエルリックの両手には槍が収まっていた。
突然の事にギリオンは慄く、あるはずの無い武器の出現に驚きを隠せない。
『無王の双槍、いい槍だ』
無王の双槍、そう称された槍は鈍く輝く黒色の槍。
そして、眩しく輝く白色の槍がエルリックの両手に握られた。
「っし!」
戸惑うギリオンにエルリックはすかさず黒の槍を突き出す、反応の遅れたギリオンだがその高速の槍はそれでもエルリックの槍を防ぐ。
だがエルリックは止まらない、もう片方の白い槍を薙ぐ。
その槍の斬れ味は凄まじく、ギリオンの鎧を軽々と斬り裂き、肉体に傷跡を残す。
「貴様!」
復活したエルリックにギリオンは反撃を放つ、敵に幻の槍を見させるほどの槍捌きは未だ健在だ。
だが、その槍の特性に気付いているエルリックは迷わない。
2つの槍を巧みに操りギリオンの槍を弾き飛ばす、黒い槍で受け止め白の槍でギリオンの槍を目掛け放つ。
槍の速度を極限まで速くする為、軽量化された槍は軽々と放り出される。
槍を無くしたギリオンだがすかさず腰の剣に手をまわす、だがその隙を見逃すエルリックでは無い。
一気に距離を詰め、その短めの槍をギリオンの喉に突き刺す。
だが、短めの槍はギリオンの喉を貫くには少し、長さが足りなかった。
浅く入った事が感触からわかったエルリックはもう片方の槍をギリオンへと突き立てた。
腹部の装甲を貫きギリオンの腹を割き内臓へと突き進む。
すでに動けないギリオンに喉へと突き立てた槍をさらに押し込む。
「はぁ、はぁ」
荒く息をするエルリック、新たな武器の2つの短槍を抜き取り片手でもつ。
静かに、そしてゆっくりと上がるエルリックの右腕、その拳は強く握られていた。
「う、うおおおおおお!」
エルリックの勝利、掲げられた右腕を見た連合軍は雄叫びを上げる。
ギリオンの敗戦を信じられないラーズ王国軍は、呆然とただ仰向けに倒れたギリオンを見つめていた。
「エルリック!」
だが、エルリックがその場で倒れ込む、慌てて駆け寄るエルリックの部下の兵士達。
「息があります!」
エルリックは生きていた。
しかし、その傷は深くもう立っているのは無理だった、一騎討ちの勝敗は決したが戦争は終わらない。
エルリックが倒れた直後、ラーズ王国軍は動き出す。
「今だ!攻め込むぞ!」
指揮官を失い、だがもう後には引けないラーズ王国軍は本陣に突撃を開始する。
エルリックの勝利の余韻に浸っていた連合軍は虚を突かれ進軍を押し留められない。
「リリアナ様を、お守りしなければ」
動かない体に力を込めるがエルリックは立ち上がれない、リリアナを守る為まだ戦いは続いている。
「隊長、我々にお任せを、我らもあなたの部下です、共にリリアナ様をお守りします」
エルリックの勇姿に部下達が立ち上がる。
共に訓練し共に戦場を駆け回ったエルリックの部隊は、隊長の役目を引き継ぎラーズ王国軍へと挑む。
「隊長の意志を継げ!ここは死んでも通さんぞぉ!」
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エルリックに鍛えられた隊員達は一時敵の進軍を食い止める。
だが、数の力にはかなわない。
倒しても倒してもなだれ込む敵兵に、隊員達は次第に疲労し傷を負い1人また1人と倒れていった。
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リリアナを守る為、男達は気を吐くが本陣の陥落は時間の問題だと思われた
もうダメか、それぞれが諦めかけた時、それは現れた。
この戦場で誰よりも小柄な少女だった。
その手に持つ槍はその少女の背丈よりも長くその存在を主張する。だが小柄なその少女はこの戦場で誰よりも獰猛に、そして誰よりも凶悪な顔で戦場に降り立った。
「エールリーック!無事かぁ!」
「ア、アニーさん」
”暴君”アニーが戦場へと君臨する。
ブカブカの赤い長衣を翻し槍を振るう、突然の来週に戸惑うラーズ王国軍へその異名の意味を知らしめる。
ただひたすらに薙ぎ、突き、柄による殴打が繰り出される。
美しさなど欠片の無い、ただ敵を蹂躙するだけの戦いが始まった。
嵐のように敵を葬る姿はまさに暴君、刃向かう者には容赦せず破壊する。
目に付く者にも容赦せず破壊する。
その圧倒的な暴力に本陣を落とす為進軍していたラーズ王国軍は撤退を余儀なくされる。だが黙って敵を見送るほど暴君は甘く無い。
逃げ出す敵を背後から襲う、殴り、蹴り、斬り裂く。
迫り来る脅威にラーズ王国軍は瞬く間に壊滅させられた。
「エルリック、酷くやられたな」
ボロボロのエルリックにアニーが言う、だが返事をする力がエルリックには残っていない。
「お前はもう休んでろ、あの幻視槍を倒したんだ、もう十分だ。あとは私がここを守る」
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