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砂の世界
処刑までの道のり
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「魔王様はいったい何がしたかったんだ?」
腕輪を取りに行ったのだと思ったら、何も持たずに帰って来た魔王にシンは問いかける。
出会ってから、何かと振り回され続けて、シンもゲンナリしていた。
「ちと面白そうな事になりそうだったからの。 お前を処刑場へ連れて行くぞ」
言葉通りシンを拘束し、放送塔から飛び降りるティナ。
高所からの落下に、不快な浮遊感を感じ萎縮したシンだったが、途中からその浮遊感が無くなりホッとした。
だが自らを抱え込んだティナを見て、驚きの声を上げてしまった。
落下が終わり、何やら空中に停滞したティナの背中から黒い翼が生えているのを発見したのだ。
「魔王様って空飛べるのか!」
「当たり前じゃ、魔王を人間と一緒にするでない」
空中を浮遊する魔術は無い。 ニグルの場合は風の魔術で似たような事をするが、あれは一時的な飛行で長時間の飛行は出来ないのだ。
翼を羽ばたかせ、処刑場へと向かうティナとシン。
その姿を見た王都の人達の間で、謎の飛行人間の噂が広がったのだが、それは今は関係の無い話だ。
「ふむ。 処刑場と言うより闘技場みたいだの」
ティナの言葉通り、辿り着いた処刑場は、中央に石材によって作られたステージがあり、観客席がそのステージを囲い込むように作られている。
観客席は高い壁の上に作られており、中から観客席へ上がるのは無理であろう。
「結局、魔王様は俺の味方なのか?」
行動の読めないティナに、直接確認するシン。 疑問も当然だ。
この魔王が味方であれば心強いが、どうも考えが読めない。
「味方と思って良いぞ? だが神の争いなどには興味が無い。 邪魔はせんが協力もせん。 他の事であれば手を貸しても構わんがな」
魔王は、代行者やノア達神の味方でなければ敵でもないという立場らしい。
正直この魔王が敵に回るのは厄介なので、中立という事を聞き安堵するシンであった。
「まあ、シンの事は気に入ったからの。 シン個人の事であるなら協力もしよう」
「ありがとうございます。 それでいつまで俺達はここで待ってるんです?」
「わからん」
後先考えずに行動するティナに、ため息を吐く。
地下牢で待つよりマシかと、考え直すシンであった。
*******
「魔王が処刑場へシンという者を連れ出したと報告が入りました!」
国王は報告を受け、歓喜した。 ようやく、ミアリス様のお役に立てると確信し喜んだのだ。
だがその国王を見る重鎮達の目は、呆れと哀れみが浮かんでいた。
「予定通り、処刑をする。 民への布告は終わったのか?」
「はっ! 期日にはほぼ全ての民が、処刑場へ集まるでしょう」
国王はシンを連れ出した魔王を味方と思っていた。
何故なら、シンの味方をするならば、そのまま連れ出してしまえば良かったのだ。
それをしなかった事で、魔王も所詮神には逆らえないと思い都合良く解釈したのだ。
だが魔王は神に怯えなどしないし、人間の言う事など聞く訳が無い。
誰もが知っていそうな事だが、窮地に立たされている国王にはわからなかった。
*******
「何故シンは所詮されるのです! 納得し兼ねます!」
「落ち着けエルリック」
王国軍軍事会議でエルリックは上官達の判断に納得せず、反論を行っていた。
本来ならエルリックは、まだ軍上層部の会議に出席出来ないのだが、シンの処刑を聞き無理矢理会議室へ入室したのだ。
「リーグ将軍ならわかるはずです! シンがこの王国の為どれだけの功績を残したのか! 共和国との同盟もシンの活躍あっての事です! それに皇国との戦争で、あの”風帝”ニグルを討ち取ったのもシンなのですよ!」
エルリックの言葉は正論だ。 誰もがエルリックと同じ考えをしている。
だが他でも無い国王の決定なのだ。 それを覆せる者は、まだこのラピス王国にはいなかった。
「エルリック、全員同じ考えを持っている。 そして、国王の判断に納得もしていない」
会議に出席していたリーグは、エルリックをなだめようとする。 だがエルリックの激昂は、なだめられた程度では収まらない。
「なら何故反論をしないのです⁉︎ 皆で反論をすれば、国王様にも通じるはずです!」
「それは出来ないんだ。 この処刑は、国王の独断で決定されたラピス王国としての決定だ。 そんな横暴は許される事では無いが、その拒否権を誰も持っていないんだ」
反論は確かにあった。
だが国王は聞く耳を持たず、すぐさま自分で文書を作り上げ押印したのだ。
ラピス王国の公式の文書は全て国王の押印で作られる。 破棄もまた国王の押印だった。
一度作られてしまったら、もうその決定を覆せる者はいなかったのだ。
「リリアナ様ならば、シンの味方をして頂けるはずです! 私がリリアナにお話しします! お会いする許可を!」
王女であるリリアナに会うのも、本人の許可と上官の許可が必要だ。
隠し通路があるので、それを使えばすぐにでもリリアナに会えるのだが、兵歴も短く、末端に近い兵士であるエルリックはその存在を知らなかった。
「リリアナ様は、国王様から自室へと監禁されている。 何故か、誰にも会わせないようにしているようだ」
「そんな…」
リリアナへの謁見も許可されず、エルリックはその場を後にした。
だがエルリックは諦めない。 親友の不当な処刑など、見逃せる事など出来ないのだ。
それが例え、国への反逆になろうとも。
*******
「このぐらいでしょうか?」
リリアナは1人自室にて、処刑日の行動を考え、紙へと書き込んでいた。
相変わらず、シンの考えを完全に読みきれていないと感じていたリリアナだったが、その書き込まれた紙には箇条書きでミアリス、そして国王を陥れる為のリリアナの考えが、隙間なく書き込まれていた。
「これ以上は思い付きそうにありません。 ですがこれで上手くいくとは思えないのですが」
またも思考を開始するリリアナ。
敬愛するノアとシンの為、彼女は自分の価値を証明し、力にならなければならないのだ。
*******
「これより神への反逆者の処刑を開始する!」
音声拡声魔導具により、処刑場へと執行人の声が響き渡る。
その声に反応するように、観客席からも雄叫びが発せられる。
その声は声援、怒声、罵りなど様々な感情の乗せられていた。
兵士に連れられ処刑台へとシンは向かっていく、砂の世界の行方を左右する処刑が開始された。
腕輪を取りに行ったのだと思ったら、何も持たずに帰って来た魔王にシンは問いかける。
出会ってから、何かと振り回され続けて、シンもゲンナリしていた。
「ちと面白そうな事になりそうだったからの。 お前を処刑場へ連れて行くぞ」
言葉通りシンを拘束し、放送塔から飛び降りるティナ。
高所からの落下に、不快な浮遊感を感じ萎縮したシンだったが、途中からその浮遊感が無くなりホッとした。
だが自らを抱え込んだティナを見て、驚きの声を上げてしまった。
落下が終わり、何やら空中に停滞したティナの背中から黒い翼が生えているのを発見したのだ。
「魔王様って空飛べるのか!」
「当たり前じゃ、魔王を人間と一緒にするでない」
空中を浮遊する魔術は無い。 ニグルの場合は風の魔術で似たような事をするが、あれは一時的な飛行で長時間の飛行は出来ないのだ。
翼を羽ばたかせ、処刑場へと向かうティナとシン。
その姿を見た王都の人達の間で、謎の飛行人間の噂が広がったのだが、それは今は関係の無い話だ。
「ふむ。 処刑場と言うより闘技場みたいだの」
ティナの言葉通り、辿り着いた処刑場は、中央に石材によって作られたステージがあり、観客席がそのステージを囲い込むように作られている。
観客席は高い壁の上に作られており、中から観客席へ上がるのは無理であろう。
「結局、魔王様は俺の味方なのか?」
行動の読めないティナに、直接確認するシン。 疑問も当然だ。
この魔王が味方であれば心強いが、どうも考えが読めない。
「味方と思って良いぞ? だが神の争いなどには興味が無い。 邪魔はせんが協力もせん。 他の事であれば手を貸しても構わんがな」
魔王は、代行者やノア達神の味方でなければ敵でもないという立場らしい。
正直この魔王が敵に回るのは厄介なので、中立という事を聞き安堵するシンであった。
「まあ、シンの事は気に入ったからの。 シン個人の事であるなら協力もしよう」
「ありがとうございます。 それでいつまで俺達はここで待ってるんです?」
「わからん」
後先考えずに行動するティナに、ため息を吐く。
地下牢で待つよりマシかと、考え直すシンであった。
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「魔王が処刑場へシンという者を連れ出したと報告が入りました!」
国王は報告を受け、歓喜した。 ようやく、ミアリス様のお役に立てると確信し喜んだのだ。
だがその国王を見る重鎮達の目は、呆れと哀れみが浮かんでいた。
「予定通り、処刑をする。 民への布告は終わったのか?」
「はっ! 期日にはほぼ全ての民が、処刑場へ集まるでしょう」
国王はシンを連れ出した魔王を味方と思っていた。
何故なら、シンの味方をするならば、そのまま連れ出してしまえば良かったのだ。
それをしなかった事で、魔王も所詮神には逆らえないと思い都合良く解釈したのだ。
だが魔王は神に怯えなどしないし、人間の言う事など聞く訳が無い。
誰もが知っていそうな事だが、窮地に立たされている国王にはわからなかった。
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「何故シンは所詮されるのです! 納得し兼ねます!」
「落ち着けエルリック」
王国軍軍事会議でエルリックは上官達の判断に納得せず、反論を行っていた。
本来ならエルリックは、まだ軍上層部の会議に出席出来ないのだが、シンの処刑を聞き無理矢理会議室へ入室したのだ。
「リーグ将軍ならわかるはずです! シンがこの王国の為どれだけの功績を残したのか! 共和国との同盟もシンの活躍あっての事です! それに皇国との戦争で、あの”風帝”ニグルを討ち取ったのもシンなのですよ!」
エルリックの言葉は正論だ。 誰もがエルリックと同じ考えをしている。
だが他でも無い国王の決定なのだ。 それを覆せる者は、まだこのラピス王国にはいなかった。
「エルリック、全員同じ考えを持っている。 そして、国王の判断に納得もしていない」
会議に出席していたリーグは、エルリックをなだめようとする。 だがエルリックの激昂は、なだめられた程度では収まらない。
「なら何故反論をしないのです⁉︎ 皆で反論をすれば、国王様にも通じるはずです!」
「それは出来ないんだ。 この処刑は、国王の独断で決定されたラピス王国としての決定だ。 そんな横暴は許される事では無いが、その拒否権を誰も持っていないんだ」
反論は確かにあった。
だが国王は聞く耳を持たず、すぐさま自分で文書を作り上げ押印したのだ。
ラピス王国の公式の文書は全て国王の押印で作られる。 破棄もまた国王の押印だった。
一度作られてしまったら、もうその決定を覆せる者はいなかったのだ。
「リリアナ様ならば、シンの味方をして頂けるはずです! 私がリリアナにお話しします! お会いする許可を!」
王女であるリリアナに会うのも、本人の許可と上官の許可が必要だ。
隠し通路があるので、それを使えばすぐにでもリリアナに会えるのだが、兵歴も短く、末端に近い兵士であるエルリックはその存在を知らなかった。
「リリアナ様は、国王様から自室へと監禁されている。 何故か、誰にも会わせないようにしているようだ」
「そんな…」
リリアナへの謁見も許可されず、エルリックはその場を後にした。
だがエルリックは諦めない。 親友の不当な処刑など、見逃せる事など出来ないのだ。
それが例え、国への反逆になろうとも。
*******
「このぐらいでしょうか?」
リリアナは1人自室にて、処刑日の行動を考え、紙へと書き込んでいた。
相変わらず、シンの考えを完全に読みきれていないと感じていたリリアナだったが、その書き込まれた紙には箇条書きでミアリス、そして国王を陥れる為のリリアナの考えが、隙間なく書き込まれていた。
「これ以上は思い付きそうにありません。 ですがこれで上手くいくとは思えないのですが」
またも思考を開始するリリアナ。
敬愛するノアとシンの為、彼女は自分の価値を証明し、力にならなければならないのだ。
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「これより神への反逆者の処刑を開始する!」
音声拡声魔導具により、処刑場へと執行人の声が響き渡る。
その声に反応するように、観客席からも雄叫びが発せられる。
その声は声援、怒声、罵りなど様々な感情の乗せられていた。
兵士に連れられ処刑台へとシンは向かっていく、砂の世界の行方を左右する処刑が開始された。
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