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獣王との戦い
突然の裏切り
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「今日も変化はありませんか、わかりました」
シン達と別れ、森の世界に残っていたリリアナ達は随時、アルファスを軸にした獣王の監視を続けていた。
だが1ヶ月以上経った今でも獣王に動きはなく、先代の時と同じくユーギリア城の1部の部屋から出る事はしていない。
報告を終えたアルファスはそのまま部屋から退出する。
気配が消えた事からイグジステンス・イーターの能力を使ったのだろう。
先代の時の獣王と同じ人格がシーナの体を乗っ取っている為、これまでの獣王と行動が変わらないのは当たり前なのかもしれない。
だがあれほど大規模な反乱を起こされているのにも関わらず、何も対策のような事をしない獣王の行動にリリアナは疑問を持っていた。
仮にリリアナが獣王であるならば、反乱の原因をあぶり出し、何かしらの対応を行うだろう。
リリアナ達が起こした反乱はシーナの木像を入手する為の囮として行った行動だが、その事に獣王は気づいていなかったはずだ。
あの反乱から時間の経過した今であれば、その事に気がついているかもしれないが、気づいているのであれば、尚更何か行動を起こさない事に疑問を持つ。
リリアナでなくともあの時期から木像がなくなれば、反乱を起こしたリリアナ達の仕業であると考えられるだろし、首謀者として獣王に顔を見られているナナとメリィの捜索、捕縛を命じるはずだ。
シーナの木像を奪われた事に気がついていない場合でも、同じように反乱の首謀者としてあの戦いに参加した者全員を捕縛、もしくは処罰を下すだろう。
リリアナであればあの反乱に参加した200名を捕らえ、反乱の理由を問いただすはずだ。
だが獣王は何もしない。
その事から考えられる事は、メリィが獣化をしても獣王が負けなかった事から自身の実力におごり、また反乱をされても返り討ちにする自信を持っている事。
そうであればリリアナ達にとってもありがたい。
次の戦いでは前回参加しなかったシンとロイズ、アルファスも戦闘に参加出来るし、シンからの連絡ではSランク冒険者もこちらに向かうと聞かされている。
戦力的には充分と言えるだろう。
だがその可能性は低いとリリアナは考えている。
おごりを持つような者であれば森の世界の王としてここまで君臨する事は出来なかったはずだからだ。
反乱した者達を捕らえる訳でもない、自身の実力におごりを持っている訳でもないとなるならば、リリアナの考えられる可能性の1番高い答え、それは。
「獣王にとって、この木像は重要ではない?」
盗まれた事がわかっていて行動を起こさない、ならば考えられる事は、獣王にとってシーナの木像がなくてはならない存在でないと言う事だ。
重要ではないならば、前回この木像を奪った意味がないと考えられる。
シーナの精神はこの木像に封じられている事は間違いないと考えていたが、獣王を監視経過からもシーナの体を奪還する事が出来ないのかもしれない。
「リリアナ様、お食事をお持ちしました」
獣王について考えていたリリアナのもとにエルリックが食事を持って訪れる。
メリィの用意した拠点からリリアナは動く事をしていない。
偵察をアルファスに一任し、リリアナは情報整理とシンとの連絡に集中する事にしたのだ。
下手に動いて獣王の関係者と接触をする事を避ける意味もあった。
「シン様達は、アイナと言うSランク冒険者を連れて戻っている所だそうです。エルリックは鍛錬は順調ですか?」
ティナに教えられた魔槍飛燕流をエルリックは鍛え続けて来た。
獣王選定の時には4つしか使えなかった基礎の型を6つまで使用出来るまで成長していた。
「はい、シン達が戻るまでには基礎の型を全て覚えられたら良いのですが」
エルリックに才があるとはいえ魔気を扱う事は一朝一夕で出来る事ではない。
人間であるエルリックが魔族の技を使うには並大抵の努力では習得出来ない。
6つまでの基礎の型を習得したエルリックはここまでひたすらに己を鍛え続けていたのだろう。
その体つきはシン達と別れる前よりも大きく逞しくなっていた。
「シン様達がお戻りになれば、戦いが始まる可能性が高いです。その時にエルリックが活躍するのが楽しみですね」
砂の世界からの従者であるエルリックの成長はリリアナにとっても喜ばしい事である。
主従の関係を崩さない2人はこの期間で信頼関係を強めていた。
「ナナさんは、どこに行ったのです?」
自由奔放なナナは相変わらず自分のしたい事をしているようであった。
自重するように言ってはいるものの、聞いているようで聞いていないのがナナである。
「今日は世界樹の外に出てるみたいですね、リユーの肉が気に入ったみたいでしたので狩りに行ったのでしょう」
森の世界に来た当初に捕らえたリユーをナナは定期的に狩りに出ている。
自由なナナを拘束する事は良くないと感じたエルリックは、行き先だけは教えるように言い聞かせていた。
それに対してもナナは自分から言いだす事はないので、エルリックが朝食の時に聞くような形になっているが、大した苦労ではないのでエルリックは気にしていない。
「出来れば近くにいて欲しいのですけどね。獣王に動きはないですが、今後も同じとは考えられないですから」
エルリックがいるとはいえ、ナナは森の世界に残った面子の中で1番の強者である。
安全面でも彼女には残っていてもらいたい所だ。
「ナナさんはシンかユナさんしか言う事を聞かせられないですからね。仕方ありません。それにアルファスから異常なしと報告があったのです。心配はないでしょう」
ここまで動きを見せない獣王にリリアナも飽き飽きとしていた。
何もなければリリアナ達にとってシン達の到着を確実に待ってから行動を起こせる為、良い事なのだが、その結果油断してしまうのは仕方ないだろう。
気を引き締めているつもりだが、どこか何もないと決めつけてしまっている事は否定出来ない。
それだけ、ここまで何も起こっていないのだ。
「あと少しでシン様達も戻られます。それまで気を引き締めていきましょう」
食事を済ませ、エルリックが片付けを始める。
部屋の中にはリリアナ1人になるが、何も起こらない期間が長くなってしまった為、さすがのエルリックにも油断が出てしまった。
それを責められる者など、この中にはいない。
だが、部屋の中にリリアナ1人しか残らないと思っているのはリリアナとエルリックのみであった。
「全く、こんな奴らに負けたとは。我ながら情けないな」
リリアナしかいなかったはずの部屋に予想外の男の声が聞こえて来た。
「あなたは、アルファス。何故ここに?報告はもう終わったのではないのですか?」
突然姿を現したアルファスにリリアナは驚きを浮かべる。
何故?そういう疑問がリリアナの頭に次々と浮かんで来た。
「その質問に答える必要はないな」
「それでは困ります」
アルファスの態度にリリアナに緊張が走る。
これまで報告に来た時のアルファスとは明らかに違うのだ。
「あのナナとかいう奴が世界樹から出て行くのがやっとわかったからな」
ナナはアルファスのイグジステンス・イーターの能力が通用しない唯一の存在だ。
アルファスはナナの行動を常に監視していたと思われる言葉を言うと同時に、リリアナは察する事が出来た。
「獣王様に刃向かうとは、馬鹿な奴らだよ」
リリアナ達の何も起こらない日々は、突如として終わりを告げた。
シン達と別れ、森の世界に残っていたリリアナ達は随時、アルファスを軸にした獣王の監視を続けていた。
だが1ヶ月以上経った今でも獣王に動きはなく、先代の時と同じくユーギリア城の1部の部屋から出る事はしていない。
報告を終えたアルファスはそのまま部屋から退出する。
気配が消えた事からイグジステンス・イーターの能力を使ったのだろう。
先代の時の獣王と同じ人格がシーナの体を乗っ取っている為、これまでの獣王と行動が変わらないのは当たり前なのかもしれない。
だがあれほど大規模な反乱を起こされているのにも関わらず、何も対策のような事をしない獣王の行動にリリアナは疑問を持っていた。
仮にリリアナが獣王であるならば、反乱の原因をあぶり出し、何かしらの対応を行うだろう。
リリアナ達が起こした反乱はシーナの木像を入手する為の囮として行った行動だが、その事に獣王は気づいていなかったはずだ。
あの反乱から時間の経過した今であれば、その事に気がついているかもしれないが、気づいているのであれば、尚更何か行動を起こさない事に疑問を持つ。
リリアナでなくともあの時期から木像がなくなれば、反乱を起こしたリリアナ達の仕業であると考えられるだろし、首謀者として獣王に顔を見られているナナとメリィの捜索、捕縛を命じるはずだ。
シーナの木像を奪われた事に気がついていない場合でも、同じように反乱の首謀者としてあの戦いに参加した者全員を捕縛、もしくは処罰を下すだろう。
リリアナであればあの反乱に参加した200名を捕らえ、反乱の理由を問いただすはずだ。
だが獣王は何もしない。
その事から考えられる事は、メリィが獣化をしても獣王が負けなかった事から自身の実力におごり、また反乱をされても返り討ちにする自信を持っている事。
そうであればリリアナ達にとってもありがたい。
次の戦いでは前回参加しなかったシンとロイズ、アルファスも戦闘に参加出来るし、シンからの連絡ではSランク冒険者もこちらに向かうと聞かされている。
戦力的には充分と言えるだろう。
だがその可能性は低いとリリアナは考えている。
おごりを持つような者であれば森の世界の王としてここまで君臨する事は出来なかったはずだからだ。
反乱した者達を捕らえる訳でもない、自身の実力におごりを持っている訳でもないとなるならば、リリアナの考えられる可能性の1番高い答え、それは。
「獣王にとって、この木像は重要ではない?」
盗まれた事がわかっていて行動を起こさない、ならば考えられる事は、獣王にとってシーナの木像がなくてはならない存在でないと言う事だ。
重要ではないならば、前回この木像を奪った意味がないと考えられる。
シーナの精神はこの木像に封じられている事は間違いないと考えていたが、獣王を監視経過からもシーナの体を奪還する事が出来ないのかもしれない。
「リリアナ様、お食事をお持ちしました」
獣王について考えていたリリアナのもとにエルリックが食事を持って訪れる。
メリィの用意した拠点からリリアナは動く事をしていない。
偵察をアルファスに一任し、リリアナは情報整理とシンとの連絡に集中する事にしたのだ。
下手に動いて獣王の関係者と接触をする事を避ける意味もあった。
「シン様達は、アイナと言うSランク冒険者を連れて戻っている所だそうです。エルリックは鍛錬は順調ですか?」
ティナに教えられた魔槍飛燕流をエルリックは鍛え続けて来た。
獣王選定の時には4つしか使えなかった基礎の型を6つまで使用出来るまで成長していた。
「はい、シン達が戻るまでには基礎の型を全て覚えられたら良いのですが」
エルリックに才があるとはいえ魔気を扱う事は一朝一夕で出来る事ではない。
人間であるエルリックが魔族の技を使うには並大抵の努力では習得出来ない。
6つまでの基礎の型を習得したエルリックはここまでひたすらに己を鍛え続けていたのだろう。
その体つきはシン達と別れる前よりも大きく逞しくなっていた。
「シン様達がお戻りになれば、戦いが始まる可能性が高いです。その時にエルリックが活躍するのが楽しみですね」
砂の世界からの従者であるエルリックの成長はリリアナにとっても喜ばしい事である。
主従の関係を崩さない2人はこの期間で信頼関係を強めていた。
「ナナさんは、どこに行ったのです?」
自由奔放なナナは相変わらず自分のしたい事をしているようであった。
自重するように言ってはいるものの、聞いているようで聞いていないのがナナである。
「今日は世界樹の外に出てるみたいですね、リユーの肉が気に入ったみたいでしたので狩りに行ったのでしょう」
森の世界に来た当初に捕らえたリユーをナナは定期的に狩りに出ている。
自由なナナを拘束する事は良くないと感じたエルリックは、行き先だけは教えるように言い聞かせていた。
それに対してもナナは自分から言いだす事はないので、エルリックが朝食の時に聞くような形になっているが、大した苦労ではないのでエルリックは気にしていない。
「出来れば近くにいて欲しいのですけどね。獣王に動きはないですが、今後も同じとは考えられないですから」
エルリックがいるとはいえ、ナナは森の世界に残った面子の中で1番の強者である。
安全面でも彼女には残っていてもらいたい所だ。
「ナナさんはシンかユナさんしか言う事を聞かせられないですからね。仕方ありません。それにアルファスから異常なしと報告があったのです。心配はないでしょう」
ここまで動きを見せない獣王にリリアナも飽き飽きとしていた。
何もなければリリアナ達にとってシン達の到着を確実に待ってから行動を起こせる為、良い事なのだが、その結果油断してしまうのは仕方ないだろう。
気を引き締めているつもりだが、どこか何もないと決めつけてしまっている事は否定出来ない。
それだけ、ここまで何も起こっていないのだ。
「あと少しでシン様達も戻られます。それまで気を引き締めていきましょう」
食事を済ませ、エルリックが片付けを始める。
部屋の中にはリリアナ1人になるが、何も起こらない期間が長くなってしまった為、さすがのエルリックにも油断が出てしまった。
それを責められる者など、この中にはいない。
だが、部屋の中にリリアナ1人しか残らないと思っているのはリリアナとエルリックのみであった。
「全く、こんな奴らに負けたとは。我ながら情けないな」
リリアナしかいなかったはずの部屋に予想外の男の声が聞こえて来た。
「あなたは、アルファス。何故ここに?報告はもう終わったのではないのですか?」
突然姿を現したアルファスにリリアナは驚きを浮かべる。
何故?そういう疑問がリリアナの頭に次々と浮かんで来た。
「その質問に答える必要はないな」
「それでは困ります」
アルファスの態度にリリアナに緊張が走る。
これまで報告に来た時のアルファスとは明らかに違うのだ。
「あのナナとかいう奴が世界樹から出て行くのがやっとわかったからな」
ナナはアルファスのイグジステンス・イーターの能力が通用しない唯一の存在だ。
アルファスはナナの行動を常に監視していたと思われる言葉を言うと同時に、リリアナは察する事が出来た。
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