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獣王との戦い
混乱の世界
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「荒らされた形跡はないな、何か盗られている訳でもないか」
予定よりも2日早く森の世界へと辿り着いたシン達は、ティナの描いた転移魔法陣からメリィの用意した拠点をくまなく捜索をした。
二手に別れて一通り捜索したシン達は執務室として使われていた場所へと再度集合していた。
拠点として使われていた建物は一切荒らされた形跡がなく、獣王についての報告を纏めていたと思われる書類などもそのまま残されている。
「シーナの木像も残ってたわ」
真っ先に奪い返されると考えていたシーナの木像も拠点に残されたままだった。
獣王の狙いがわからないまま沈黙していたシン達の居る建物に、何者かが訪れてくる。
「誰だ?」
警戒しながら扉を開いたシンの目の前には見知らぬ男が立っている。
頭部にはえた獣の耳を見つけたシンはすぐに森の世界の住人だと判断した。
「メリィさんから召集された者です」
メリィに確認を取るとその言葉が正しい事であると返答が返ってくる。
極炎鳥となったメリィはその頭部を縦に振る事で簡単な受け答えは出来る。
「今日の報告に来たのですが、よろしいですか?」
シン達の事は初めて見たのだろう。
最初は警戒していたようだが、メリィの姿を確認すると安心したように来訪の目的を話し始める。
メリィの部下と言う男の話は獣王についての報告が主であった。
その内容は以前リリアナから受けていた報告と、ほとんど変わりはなく、獣王に動きなしと言うものであった。
「お前は誰に報告に来たんだ?」
報告を終えた男にシンは確認するように質問する。
誰に報告に来たのかなど、リリアナに決まっているが、ロイズにすら忘れられている今、誰に報告する事になっているのか気になったのだ。
「誰にですか?本当はリリアナさんに報告に来たのですが」
「リリアナを知ってるのか?ならエルリックもか?」
「ええ、責任者としてリリアナさんが我々を纏めていますから」
報告に来た男はリリアナを知っている。
エルリックの事も当然知っていた。
訳のわからない事態にシンの頭は理解が追いつかない。
「アルファスは何をしている?」
シンは核心を突く質問をする事にした。
手っ取り早く、この事態の原因を作ったと考えている男の所在を確認する事にしたのだ。
「アルファスさんですか?今日も獣王の監視をしていますよ、僕もアルファスさんから情報を伝えるように言われてここに来たんですから」
男はシンの言っている意味がわからないと言った表情で答える。
それを聞いたシンもさらに混乱する事となった。
「わかった、報告ありがとうな」
事態の把握が出来ないシンは諦めたように男との会話を終わらせる。
何が起こっているのか、その事で頭がいっぱいであった。
「意味がわからないわ、何でロイズだけが覚えてないのよ?」
シンの会話を聞いていたユナも同じく頭を悩ませていた。
「わからない、でもアルファスが何かしたとしか思えない」
存在を消し去る事の出来るイグジステンス・イーターの能力がリリアナとエルリックに使われたとシン達は考えていた。
だが、今の所リリアナ達の存在を忘れているのはロイズだけである。
その事がさらに混乱を招いている。
「ナナはここにはいないのか?」
唯一イグジステンス・イーターの能力から逃れていると思われるのは、ナナ1人だ。
ナナの使用していたと思われる部屋はあるが、居場所がわからない。
「これは、私の予想なんだけど」
「何だ?」
「ナナの事だからこの拠点にずっと居たとは思えないわ」
ナナとの付き合いの長いユナは、ナナの事を1番理解している。
ナナの事ならジッとしている事はないとすぐに結論を出していた。
「たぶん、あの子が居ない時を狙われたのね。アルファスの能力はナナには効かないから」
シン達の知らない事ではあるが、ユナは完全にアルファスの狙いを読み切っていた。
アルファスにとって天敵であるナナが居ない時でないと、リリアナ達を襲う事は不可能だ。
「なら、ナナは今何をしているんだ?」
この事態を解決する為にはナナの力が必要不可欠であるとシン達は結論を出す。
「あの子の行動は予測出来ないわ。どこに行ったかまではさすがに私もわからないわよ」
ナナの考えている事を完全に読める者はいないだろう。
砂の世界に残ったクレアならユナよりも読めたかもしれないのだが、今いない者の事を言っていても仕方ないだろう。
「ナナを待ってみるか、あいつに聞いた方が良さそうだ」
報告ではアルファスは現在も獣王の監視についている。
敵が味方かわからない状況で下手に動く訳にはいかない。
もしまだ味方であるなら、シン達の行動次第では無意味に敵対する事になる可能性がある。
「とりあえずは2日待つ事にする。それでナナが帰って来ないなら、こちらから動く事にしよう」
リリアナ達の事が心配ではあるが、敵の動向を探る意味でも、一旦静観をする事にする。
「ナナが戻って来たら現状の確認。戻らなかったらアルファスの居場所に行く、その時は戦闘を頭に入れておいてくれ」
シンの言葉にユナとアイナ、ロイズが同意を示す。
だがティナのみが一同とは違う事を考えているようにシンには見えていた。
「ティナ、どうした?」
ティナの反応を見たシンは問いかけるが、ティナは言葉を選んでいるのか、中々答えを出さない。
「いや、少し疑問に思っての」
「何かあるのか?」
「シン達は目的を忘れておらんかの?」
ティナの問いかけにシンは答える事が出来ない。
答えられないと言うよりはティナの疑問の意味を探る事をしていた。
「まあ、良い。妾は気楽にしておるから、今の話も気にする事はないぞ」
気にしなくていいと言われても、今のタイミングで言われてはどうしても考えてしまう。
「ティナってなんだかんだで甘いわよね」
「ふむ、何の事だかの」
シラを切るティナに呆れたようにユナはため息を吐く。
ティナの甘い所は今に始まった事ではない。
「まあ良いわ、とりあえずナナを待つ事にしましょう」
ユナによって強制的に話し合いは終わりを告げる。
釈然としないシンだったが、この日に答えを出す事は出来ずに過ごす事となる。
ナナの帰りはいつになるか不明だが、アルファスの考えは彼女なしで探る事は出来ない。
ナナと早く合流出来るよう祈りながらシン達は眠りにつく。
**
「ちょっと、早く起きてよ」
翌日、睡眠をしていたシンはユナに起こされる事となる。
ナナが戻って来たのかと思ったシンだったが、ユナの表情が厳しい事を見て、眠気を吹き飛ばすように立ち上がった。
「どうした?」
「とにかく、こっち来て」
何が起きているのか確認したかったが、ユナは有無を言わせぬ態度でシンの手を引き、部屋の窓へと向かう。
カーテンを僅かに開け、外の様子を見るようにユナは指示をする。
「何が、起きてるんだ?」
「わからないわ、私もさっき知ったばっかりなのよ」
ユナの言葉と共にアイナ達もシンのもとへと集まる。
それぞれが武装を整えている所から、シンは自身もいつでも虚無の大鎌を取り出せるように戦闘準備を整える。
狭い室内で大鎌は不利になる為、出現はさせない。
「やあ、久し振りだね」
シン達の様子がわかったのか、1人の男が声をかけてくる。
音声拡散の魔術によりその男の声はシン達全員に聞こえて来た。
「何しに来た?」
声はかけてきた男、アルファスに返答をする。
だが目の前の光景から何が目的なのかは察する事が出来る。
「獣王様に刃向かう君達を、殺しに来たんだよ」
メリィの用意した拠点の周囲を、アルファスをはじめとした、前回獣王に戦いを挑んだはずのメリィの部下200名ほどの武装した集団が、シン達に向け武器を掲げていた。
予定よりも2日早く森の世界へと辿り着いたシン達は、ティナの描いた転移魔法陣からメリィの用意した拠点をくまなく捜索をした。
二手に別れて一通り捜索したシン達は執務室として使われていた場所へと再度集合していた。
拠点として使われていた建物は一切荒らされた形跡がなく、獣王についての報告を纏めていたと思われる書類などもそのまま残されている。
「シーナの木像も残ってたわ」
真っ先に奪い返されると考えていたシーナの木像も拠点に残されたままだった。
獣王の狙いがわからないまま沈黙していたシン達の居る建物に、何者かが訪れてくる。
「誰だ?」
警戒しながら扉を開いたシンの目の前には見知らぬ男が立っている。
頭部にはえた獣の耳を見つけたシンはすぐに森の世界の住人だと判断した。
「メリィさんから召集された者です」
メリィに確認を取るとその言葉が正しい事であると返答が返ってくる。
極炎鳥となったメリィはその頭部を縦に振る事で簡単な受け答えは出来る。
「今日の報告に来たのですが、よろしいですか?」
シン達の事は初めて見たのだろう。
最初は警戒していたようだが、メリィの姿を確認すると安心したように来訪の目的を話し始める。
メリィの部下と言う男の話は獣王についての報告が主であった。
その内容は以前リリアナから受けていた報告と、ほとんど変わりはなく、獣王に動きなしと言うものであった。
「お前は誰に報告に来たんだ?」
報告を終えた男にシンは確認するように質問する。
誰に報告に来たのかなど、リリアナに決まっているが、ロイズにすら忘れられている今、誰に報告する事になっているのか気になったのだ。
「誰にですか?本当はリリアナさんに報告に来たのですが」
「リリアナを知ってるのか?ならエルリックもか?」
「ええ、責任者としてリリアナさんが我々を纏めていますから」
報告に来た男はリリアナを知っている。
エルリックの事も当然知っていた。
訳のわからない事態にシンの頭は理解が追いつかない。
「アルファスは何をしている?」
シンは核心を突く質問をする事にした。
手っ取り早く、この事態の原因を作ったと考えている男の所在を確認する事にしたのだ。
「アルファスさんですか?今日も獣王の監視をしていますよ、僕もアルファスさんから情報を伝えるように言われてここに来たんですから」
男はシンの言っている意味がわからないと言った表情で答える。
それを聞いたシンもさらに混乱する事となった。
「わかった、報告ありがとうな」
事態の把握が出来ないシンは諦めたように男との会話を終わらせる。
何が起こっているのか、その事で頭がいっぱいであった。
「意味がわからないわ、何でロイズだけが覚えてないのよ?」
シンの会話を聞いていたユナも同じく頭を悩ませていた。
「わからない、でもアルファスが何かしたとしか思えない」
存在を消し去る事の出来るイグジステンス・イーターの能力がリリアナとエルリックに使われたとシン達は考えていた。
だが、今の所リリアナ達の存在を忘れているのはロイズだけである。
その事がさらに混乱を招いている。
「ナナはここにはいないのか?」
唯一イグジステンス・イーターの能力から逃れていると思われるのは、ナナ1人だ。
ナナの使用していたと思われる部屋はあるが、居場所がわからない。
「これは、私の予想なんだけど」
「何だ?」
「ナナの事だからこの拠点にずっと居たとは思えないわ」
ナナとの付き合いの長いユナは、ナナの事を1番理解している。
ナナの事ならジッとしている事はないとすぐに結論を出していた。
「たぶん、あの子が居ない時を狙われたのね。アルファスの能力はナナには効かないから」
シン達の知らない事ではあるが、ユナは完全にアルファスの狙いを読み切っていた。
アルファスにとって天敵であるナナが居ない時でないと、リリアナ達を襲う事は不可能だ。
「なら、ナナは今何をしているんだ?」
この事態を解決する為にはナナの力が必要不可欠であるとシン達は結論を出す。
「あの子の行動は予測出来ないわ。どこに行ったかまではさすがに私もわからないわよ」
ナナの考えている事を完全に読める者はいないだろう。
砂の世界に残ったクレアならユナよりも読めたかもしれないのだが、今いない者の事を言っていても仕方ないだろう。
「ナナを待ってみるか、あいつに聞いた方が良さそうだ」
報告ではアルファスは現在も獣王の監視についている。
敵が味方かわからない状況で下手に動く訳にはいかない。
もしまだ味方であるなら、シン達の行動次第では無意味に敵対する事になる可能性がある。
「とりあえずは2日待つ事にする。それでナナが帰って来ないなら、こちらから動く事にしよう」
リリアナ達の事が心配ではあるが、敵の動向を探る意味でも、一旦静観をする事にする。
「ナナが戻って来たら現状の確認。戻らなかったらアルファスの居場所に行く、その時は戦闘を頭に入れておいてくれ」
シンの言葉にユナとアイナ、ロイズが同意を示す。
だがティナのみが一同とは違う事を考えているようにシンには見えていた。
「ティナ、どうした?」
ティナの反応を見たシンは問いかけるが、ティナは言葉を選んでいるのか、中々答えを出さない。
「いや、少し疑問に思っての」
「何かあるのか?」
「シン達は目的を忘れておらんかの?」
ティナの問いかけにシンは答える事が出来ない。
答えられないと言うよりはティナの疑問の意味を探る事をしていた。
「まあ、良い。妾は気楽にしておるから、今の話も気にする事はないぞ」
気にしなくていいと言われても、今のタイミングで言われてはどうしても考えてしまう。
「ティナってなんだかんだで甘いわよね」
「ふむ、何の事だかの」
シラを切るティナに呆れたようにユナはため息を吐く。
ティナの甘い所は今に始まった事ではない。
「まあ良いわ、とりあえずナナを待つ事にしましょう」
ユナによって強制的に話し合いは終わりを告げる。
釈然としないシンだったが、この日に答えを出す事は出来ずに過ごす事となる。
ナナの帰りはいつになるか不明だが、アルファスの考えは彼女なしで探る事は出来ない。
ナナと早く合流出来るよう祈りながらシン達は眠りにつく。
**
「ちょっと、早く起きてよ」
翌日、睡眠をしていたシンはユナに起こされる事となる。
ナナが戻って来たのかと思ったシンだったが、ユナの表情が厳しい事を見て、眠気を吹き飛ばすように立ち上がった。
「どうした?」
「とにかく、こっち来て」
何が起きているのか確認したかったが、ユナは有無を言わせぬ態度でシンの手を引き、部屋の窓へと向かう。
カーテンを僅かに開け、外の様子を見るようにユナは指示をする。
「何が、起きてるんだ?」
「わからないわ、私もさっき知ったばっかりなのよ」
ユナの言葉と共にアイナ達もシンのもとへと集まる。
それぞれが武装を整えている所から、シンは自身もいつでも虚無の大鎌を取り出せるように戦闘準備を整える。
狭い室内で大鎌は不利になる為、出現はさせない。
「やあ、久し振りだね」
シン達の様子がわかったのか、1人の男が声をかけてくる。
音声拡散の魔術によりその男の声はシン達全員に聞こえて来た。
「何しに来た?」
声はかけてきた男、アルファスに返答をする。
だが目の前の光景から何が目的なのかは察する事が出来る。
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