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獣王との戦い
神の力
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「シン、ちょっとだけ良いかい?」
サリスとの会話を終わらせたノアは、シンと念話を始める。
念話をすると言う事は、この会話を他者に聞かれたくないのだろう、他者と言うよりはサリスにである。
「ああ言ったけど、正直ここに来るだけでも相当な負担だ。サリスが支配するこの森の世界でも、ここは特別な場所、ボクが居るとはいえ油断しないでくれ。それにクラウが来ないとは限らないからね」
「わかった、基本は俺とメリィで防御。ユナとアイナが攻撃の形は変えない。俺達が防ぎきれないやつを頼む」
ノアは表情に出していないが、相応の力を消費し続けている。
いくら神とはいえ、他の神が支配する場所への干渉は簡単な事ではない。
神同士の戦いは、唯一神クラウ・ディアスにより禁じられている。
だが、今の相手は山の神サリスでなく獣王レオル・フリードだ。
先ほどのやり取りは、砂の世界でミアリスと戦闘になりそうになった時のような、クラウ・ディアスの干渉がない事をノアは確認したのだ。
「ノアぁ!ここで始末してやる!」
ノアが現れた事により、シン達の目的であるサリスの足止めも成功している。
サリスの瞳は、宙を舞うノアのみに注目しており、気配を消したエルリック達に気づいていない。
「サリス、ボクを倒したいならここまで来てみるんだ」
激情に駆られるサリスをノアはさらに挑発する。
ノアを滅ぼすべくサリスは進み出るが、それを許さない事がシン達の役目である。
「人間風情が、邪魔をするな」
冷気を溢れさせながら進むサリスを阻むように、ユナとアイナが立ち塞がる。
皇龍刀”契”に双紅蓮、オーガスが生み出した業物を持つ2人は、サリスが無意識に作り出す氷の障壁を斬り裂き、サリスへと肉薄する。
「ちっ小賢しい!」
アイナが切り開いた道をユナが進む。
真紅の刀を煌めかせ、サリスへ接近する。
自動で作動する氷の防御、通常では突破不可能に思える鉄壁の守りも、序列1位と4位のこの2人なら突破可能になる。
真紅の刀がサリスへと迫るが、それが直撃する事はない。
金属の撃ち合う甲高い音が鳴り、ユナの刀は行く手を阻まれる。
ユナの刀を防いだ物、それはサリスが創造した氷の剣である。
生み出した氷を極限まで圧縮したその剣は、皇龍刀ですら斬る事の出来ないほどの硬度を持っていた。
「えっ?ちょっと⁉︎」
サリスが生み出した氷の剣は、ユナの刀を受け止めるだけにとどまらない。
真紅の刀は氷の剣に接触している部分から、瞬時に凍結される。
「そのまま凍てつくか、貫かれ死ぬか、どちらが良い?」
離脱をしようとするユナだが、既に氷の侵食は手首まで進んでおり、サリスから離れる事が出来ない。
驚異的な速度で侵食が進む氷だが、ユナを襲うのはそれだけでない。
逃げ場なく周囲を覆うように氷の礫が作り出される。
「それはさせないよ」
ユナの周囲に展開していた氷の礫は、瞬時に消失する。
シンやメリィでは間に合わないと判断したノアによる妨害である。
「ユナ姉、堪えてください」
侵食する氷に向け、アイナは電圧のみを高めた雷撃を流し込む。
流し込まれた雷撃は、振動で侵食した氷をひび割れさせる。
「おりゃ!」
ひび割れ始めた氷をユナが蹴りを入れる。
ガシャンと音を立て崩れ落ちる氷を蹴り込んだ足が軽く凍結されるが、アイナがユナの襟を引っ張り離脱する。
「ユナ、無事か?」
「手をやられたわ、感覚がない」
氷の侵食を無理矢理脱出したユナの手は、皮膚が剥がれ、血を滴らせている。
治癒薬により少しずつ回復を見せるが、極度の凍結により凍えつかされた手は感覚が戻らず、刀を握る事が出来ない。
「メリィの側にいるんだ。そうすればじきに治る」
ユナの肩にメリィを止まらせ、最前線から離脱させる。
「俺が前に出る。ノア、頼んだぞ」
シンの武器の特性上、近接戦闘での連携は苦手としているが、アイナであれば心配ないだろう。
剣による攻撃と魔術による攻撃、中距離型のアイナならば、多少サリスと距離が離れても問題ない。
「ノア、私が怖いのか? そんな人間共の影に隠れて、神として恥ずかしくないのか」
シン達に戦闘をほとんど任せ、後方に控えているノアに対し、今度はサリスが挑発をする。
「その人間に手間取ってる君は、神として情けないと思うけどね」
「貴様ぁ」
挑発したつもりが、ノアに言葉を返されサリスは激昂する。
ユナを一時戦闘不能にしたサリスだが、ノアの所まで辿りついていない。
神と言う事に誇りを持つサリスは、認めたくない事実だろう。
「ボクと戦いたいなら、この子達に勝ってからにするんだね。まあ、今の君には不可能だろうけど」
追い打ちをかけるようなノアの挑発で、サリスはシン達へと意識を向ける。
気迫の溢れるサリスに、シンは苦笑いを浮かべる。
こちらに目を向けさせるのは良いのだが、本気を出したサリスに攻撃されるのは、良い状況とは思えない。
サリスから溢れ出た冷気は、既に周囲一帯を氷結させるほど強まっており、氷狼の力を十分に引き出せる状態だ。
「なら、すぐに引きずり出してやろう」
獣王選定本戦、アルファスの仲間と対戦したシーナが、最後の一撃として放った氷狼の穿牙。
たった一撃で大地を抉り取るほどの氷狼の牙が、数十本にわたり生成される。
「あれはボクに任せてくれ」
氷狼の穿牙を一つずつノアは消滅させる。
だが、ノアよりも早くセレスの技が完成する。
「シン、残りを」
虚無の大鎌を氷狼の牙の群れへとシンは振りかざす。
数十本の牙は、大鎌の通り過ぎた直線上で消滅する。
「残りは我が、翔雷・天馬」
練り上げた魔力を雷へと変換させたアイナは、形のない雷を天翔る天馬へと形成し、空を駆け抜けるように氷狼の牙を破壊させていく。
「メリィ!」
氷狼の牙は、破壊されてもその破片がシン達を襲う。
ユナの掛け声を受けたメリィが、体を膨張させシン達を包み込むように氷の破片を溶かす。
「まだ、終わらんぞ」
氷狼の穿牙を打ち終えたサリスは、さらなる追撃をするべく氷の槍を生成する。
身長の倍以上ある貫通力を高め、形成させた氷の槍を、サリスは音速を超えた速度で投擲する。
「私が、やる」
メリィの翼に囲われた状況で、ナナはサリスとの間に分厚い鋼鉄の盾を創造する。
槍と盾、高い硬度を持つ物質の衝撃は、耳を塞ぎたくなるほどの高音と衝撃波を生み出した。
「ほら、次だ」
前の槍が完全に防がれる前に、サリスは次々と氷の槍を砲撃のように投げ込んでいく。
「ナナ、もう少し耐えてくれ」
サリスの怒涛の連撃に耐える盾に、ナナは魔力を絶える事なく注ぎ込む。
削られては再生されていく巨大な盾だが、サリスの猛攻は、その再生を上回る速度で繰り出されていく。
「よく耐えたね、ボクに任せるんだ」
瞑想を終えたノアは、ナナが創造した盾のある方向へ腕を向ける。
「シン達、惚けておらんで妾のもとに集まらんか」
これまで沈黙を保っていたティナだが、ノアの行動を見て、シン達を呼び寄せる。
何が起こるかわからない一同だが、素直にティナの指示に従う。
「シン達は妾が守っておるからの」
「ありがとうティナ」
シン達を包み込むように、ティナの魔気が展開される。
猛々しく、それでいて落ち着きを覚えさせるティナの魔気は、不思議な感覚である。
「サリス、その姿でボクに挑んだ事を後悔するんだね」
ノアの言葉は、サリスには届かない。
「世界は全て、無から始まり無で終わる。それを君に教えてあげよう」
『無神の嘆き』
サリスの攻撃により、轟音と粉塵の舞い散る世界樹の頂上が、全てを無に帰す光により包み込まれる。
サリスとの会話を終わらせたノアは、シンと念話を始める。
念話をすると言う事は、この会話を他者に聞かれたくないのだろう、他者と言うよりはサリスにである。
「ああ言ったけど、正直ここに来るだけでも相当な負担だ。サリスが支配するこの森の世界でも、ここは特別な場所、ボクが居るとはいえ油断しないでくれ。それにクラウが来ないとは限らないからね」
「わかった、基本は俺とメリィで防御。ユナとアイナが攻撃の形は変えない。俺達が防ぎきれないやつを頼む」
ノアは表情に出していないが、相応の力を消費し続けている。
いくら神とはいえ、他の神が支配する場所への干渉は簡単な事ではない。
神同士の戦いは、唯一神クラウ・ディアスにより禁じられている。
だが、今の相手は山の神サリスでなく獣王レオル・フリードだ。
先ほどのやり取りは、砂の世界でミアリスと戦闘になりそうになった時のような、クラウ・ディアスの干渉がない事をノアは確認したのだ。
「ノアぁ!ここで始末してやる!」
ノアが現れた事により、シン達の目的であるサリスの足止めも成功している。
サリスの瞳は、宙を舞うノアのみに注目しており、気配を消したエルリック達に気づいていない。
「サリス、ボクを倒したいならここまで来てみるんだ」
激情に駆られるサリスをノアはさらに挑発する。
ノアを滅ぼすべくサリスは進み出るが、それを許さない事がシン達の役目である。
「人間風情が、邪魔をするな」
冷気を溢れさせながら進むサリスを阻むように、ユナとアイナが立ち塞がる。
皇龍刀”契”に双紅蓮、オーガスが生み出した業物を持つ2人は、サリスが無意識に作り出す氷の障壁を斬り裂き、サリスへと肉薄する。
「ちっ小賢しい!」
アイナが切り開いた道をユナが進む。
真紅の刀を煌めかせ、サリスへ接近する。
自動で作動する氷の防御、通常では突破不可能に思える鉄壁の守りも、序列1位と4位のこの2人なら突破可能になる。
真紅の刀がサリスへと迫るが、それが直撃する事はない。
金属の撃ち合う甲高い音が鳴り、ユナの刀は行く手を阻まれる。
ユナの刀を防いだ物、それはサリスが創造した氷の剣である。
生み出した氷を極限まで圧縮したその剣は、皇龍刀ですら斬る事の出来ないほどの硬度を持っていた。
「えっ?ちょっと⁉︎」
サリスが生み出した氷の剣は、ユナの刀を受け止めるだけにとどまらない。
真紅の刀は氷の剣に接触している部分から、瞬時に凍結される。
「そのまま凍てつくか、貫かれ死ぬか、どちらが良い?」
離脱をしようとするユナだが、既に氷の侵食は手首まで進んでおり、サリスから離れる事が出来ない。
驚異的な速度で侵食が進む氷だが、ユナを襲うのはそれだけでない。
逃げ場なく周囲を覆うように氷の礫が作り出される。
「それはさせないよ」
ユナの周囲に展開していた氷の礫は、瞬時に消失する。
シンやメリィでは間に合わないと判断したノアによる妨害である。
「ユナ姉、堪えてください」
侵食する氷に向け、アイナは電圧のみを高めた雷撃を流し込む。
流し込まれた雷撃は、振動で侵食した氷をひび割れさせる。
「おりゃ!」
ひび割れ始めた氷をユナが蹴りを入れる。
ガシャンと音を立て崩れ落ちる氷を蹴り込んだ足が軽く凍結されるが、アイナがユナの襟を引っ張り離脱する。
「ユナ、無事か?」
「手をやられたわ、感覚がない」
氷の侵食を無理矢理脱出したユナの手は、皮膚が剥がれ、血を滴らせている。
治癒薬により少しずつ回復を見せるが、極度の凍結により凍えつかされた手は感覚が戻らず、刀を握る事が出来ない。
「メリィの側にいるんだ。そうすればじきに治る」
ユナの肩にメリィを止まらせ、最前線から離脱させる。
「俺が前に出る。ノア、頼んだぞ」
シンの武器の特性上、近接戦闘での連携は苦手としているが、アイナであれば心配ないだろう。
剣による攻撃と魔術による攻撃、中距離型のアイナならば、多少サリスと距離が離れても問題ない。
「ノア、私が怖いのか? そんな人間共の影に隠れて、神として恥ずかしくないのか」
シン達に戦闘をほとんど任せ、後方に控えているノアに対し、今度はサリスが挑発をする。
「その人間に手間取ってる君は、神として情けないと思うけどね」
「貴様ぁ」
挑発したつもりが、ノアに言葉を返されサリスは激昂する。
ユナを一時戦闘不能にしたサリスだが、ノアの所まで辿りついていない。
神と言う事に誇りを持つサリスは、認めたくない事実だろう。
「ボクと戦いたいなら、この子達に勝ってからにするんだね。まあ、今の君には不可能だろうけど」
追い打ちをかけるようなノアの挑発で、サリスはシン達へと意識を向ける。
気迫の溢れるサリスに、シンは苦笑いを浮かべる。
こちらに目を向けさせるのは良いのだが、本気を出したサリスに攻撃されるのは、良い状況とは思えない。
サリスから溢れ出た冷気は、既に周囲一帯を氷結させるほど強まっており、氷狼の力を十分に引き出せる状態だ。
「なら、すぐに引きずり出してやろう」
獣王選定本戦、アルファスの仲間と対戦したシーナが、最後の一撃として放った氷狼の穿牙。
たった一撃で大地を抉り取るほどの氷狼の牙が、数十本にわたり生成される。
「あれはボクに任せてくれ」
氷狼の穿牙を一つずつノアは消滅させる。
だが、ノアよりも早くセレスの技が完成する。
「シン、残りを」
虚無の大鎌を氷狼の牙の群れへとシンは振りかざす。
数十本の牙は、大鎌の通り過ぎた直線上で消滅する。
「残りは我が、翔雷・天馬」
練り上げた魔力を雷へと変換させたアイナは、形のない雷を天翔る天馬へと形成し、空を駆け抜けるように氷狼の牙を破壊させていく。
「メリィ!」
氷狼の牙は、破壊されてもその破片がシン達を襲う。
ユナの掛け声を受けたメリィが、体を膨張させシン達を包み込むように氷の破片を溶かす。
「まだ、終わらんぞ」
氷狼の穿牙を打ち終えたサリスは、さらなる追撃をするべく氷の槍を生成する。
身長の倍以上ある貫通力を高め、形成させた氷の槍を、サリスは音速を超えた速度で投擲する。
「私が、やる」
メリィの翼に囲われた状況で、ナナはサリスとの間に分厚い鋼鉄の盾を創造する。
槍と盾、高い硬度を持つ物質の衝撃は、耳を塞ぎたくなるほどの高音と衝撃波を生み出した。
「ほら、次だ」
前の槍が完全に防がれる前に、サリスは次々と氷の槍を砲撃のように投げ込んでいく。
「ナナ、もう少し耐えてくれ」
サリスの怒涛の連撃に耐える盾に、ナナは魔力を絶える事なく注ぎ込む。
削られては再生されていく巨大な盾だが、サリスの猛攻は、その再生を上回る速度で繰り出されていく。
「よく耐えたね、ボクに任せるんだ」
瞑想を終えたノアは、ナナが創造した盾のある方向へ腕を向ける。
「シン達、惚けておらんで妾のもとに集まらんか」
これまで沈黙を保っていたティナだが、ノアの行動を見て、シン達を呼び寄せる。
何が起こるかわからない一同だが、素直にティナの指示に従う。
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「ありがとうティナ」
シン達を包み込むように、ティナの魔気が展開される。
猛々しく、それでいて落ち着きを覚えさせるティナの魔気は、不思議な感覚である。
「サリス、その姿でボクに挑んだ事を後悔するんだね」
ノアの言葉は、サリスには届かない。
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