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空の世界
サリスの役割
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「ひとまず、あの浮遊島に行く。 あの浮遊島に人族の気配はないが仕方無かろう」
当初、転移場所として指定していたのは人族が多く住む空中都市を予定していたのだが、こうなってしまっては仕方ない。
空の神エウリスによる突然の介入で予定を狂わされたとはいえ、命があるだけマシと言えるだろう。
「何か魔獣みたいなのが飛んでるけど大丈夫か?」
ティナが目指す浮遊島には、島を囲むように飛び交う魔獣の姿がある。
それぞれ獲物を探しているのか、時折急加速し島内へと向かっていく。
中には飛び交う魔獣同士で争っている事もあり、敗れた魔獣は、空中で数多の魔獣達が瞬時に食い千切り、わずかに残った肉や骨が延々と続く空を落下している。
傍目に見ていてもそこに行くのは危険だと察する事が出来る。
ティナとサリスは宙に浮く事が出来るとはいえ、身動きの取れない者達は多く、あの数を相手に庇いきるのは難しい。
「心配要らん、妾の魔気で魔獣共は近寄れん」
ティナが宣言すると背筋が凍え、震え上がるほどの威圧が発せられる。
味方である、その事すら忘れさせるほどのティナの魔気は一瞬にして空間を支配し、浮遊島を飛び交っていたはずの魔獣達は危機を感じ取り、各々住処に戻って行く。
魔の頂点に立つ魔王であるティナは、格下の者達をわざわざ相手にする事はない。
その気配だけで、大抵の存在は畏怖しその場を離れようとする。
ティナが現れた事で、浮遊島は静寂に包まれる。
未だ人族が進出していない浮遊島である為、未開の地であるが贅沢は言えない。
サリスが進言した通り、空から見る事の出来ない洞窟の中に入り込む。
湿った空気が肌に纏わり付き、ヒヤリと冷たい風が吹き付ける洞窟内に生物の気配はない。
「サリス、さっき言ってたのってどういう事だ?」
サリスがこの空の世界に同行した理由があると自ら言っていた。
その事が気がかりなシンはすぐに問いかける。
空がある限りエウリスの監視下にある現状は好ましくない。
それを打開出来るのならば、早急に対応したいところだ。
「私の力をもう忘れたのか?」
「力?」
「そうだ、私は生み出す事に長けた神だったのだぞ? この空しかない世界にも私は物質を生み出す事が出来る。 空を飛べないお前達とって私の力は必須だ」
サリスの力、それはシン達にとって重要なものだ。
生み出す事に長けているサリスは、空を飛べないシン達にとって問題になる浮遊島からの移動すら大地を生み出す事で可能にする。
「それに私が大地を生み出せば、空からの視界を防ぐ事が出来る。 ちょうどこの洞窟のようにな」
サリスは補足をするようにシン達の頭上に岩によって作られた屋根を生み出す。
こちらから空が見えなくなれば、それは必然的にエウリスの視界をふさぐ事となる。
人の多い場所では使用出来ないが、今回のように無人の浮遊島であれば問題ない。
「私がいる限り、エウリスの監視はある程度潜り抜けられる。 感謝するのだな」
相変わらず偉そうな態度をするサリスだが、今回ばかりは文句のつけようがない、
空を飛べないシン達は既にサリスに一度救われている。
ノアがこれを見越していたのかは不明だが、サリスがいる事でシン達は行動の自由を得られる。
「これからどうするんだい? こんな島じゃ情報は集められない」
シン達の目的は空の証の入手と獅子の強心の入手だ。
当初の予定では、空中都市で情報を集め獅子の強心から探し出すはずであったが、この島ではそれは不可能だ。
「移動するしかないよな、でもここはどの辺りになるんだ?」
「この地図にこの島の情報は載ってないねどうやらこれはあまり役に立ちそうにないな」
念のためと思い森の世界で購入した空の世界の地図だが、残念ながら役には立ちそうにない。
今現在いる島がどこの島なのかすらわからないのだから地図を見ていても仕方ない。
「何を心配している、私がいるのだ適当に進めばいいではないか」
旅の経験などないサリスが呆れたような顔をしながら言う。
シン達からしたらそのサリスに呆れる所なのだが、触れない方がいいと判断し、そのまま話し合いに戻る。
「どのみちここに留まっている訳にもいかないしな。 ティナの生命探知はどこまで範囲を広げられるんだ?」
「ふむ、やってみた事がないからわからんの、少し時間をくれるか?」
「ああ」
シンが考えたのは、ティナによる生命探知で人族を探し出し、その人族がいる浮遊島への移動である。
空の世界の人々は、進出した浮遊島一つ一つに移動用の魔導具を設置しているらしい。
その為、人族がいる所に行けば、他の人族の住む空中都市となった浮遊島への移動も可能だ。
さすがのエウリスも多数の人族に紛れてしまえば、シン達の特定は難しい、そう判断したのだ。
それに出来る事ならこの世界にも詳しい者が必要だ。
サリスやティナも知識は持っているが、それは知識としてのみだ。
実際に経験している者からすれば、その程度では役に立たない。
世界情勢などの事も考慮しなくてはならない為、この世界に住む者を1人は味方にしておきたいのだ。
砂と森、これまでのこの2つの世界では、シンは秘密裏に侵入し、行動してきた。
しかし、今回は最初からエウリスに存在を知られながら行動しなくてはならない。
慎重さはこれまで以上に必要である。
それに、この世界には序列2位”天帝”ラドラス・エルドラスが空の代行者として存在している。
砂の世界に来ていたラドラスだが、今もそこにいるとは限らない。
相対してしまえば、戦闘は避けられないだろう。
前回の戦いの時のようにラドラスには翼がある。
この世界では、シン達は圧倒的に不利な状況で戦わなくてはならなくなるのだ。
「それと、一つだけ絶対に守ってもらいたい事がある」
「何よ?」
絶対に守らなくてはならないもの、そう口にしたサリスの表情は真剣だ。
シン達は固唾をのんで次の言葉を待つ。
「この世界では、絶対に天使には反抗するな」
「天使?」
「ああ、エウリスによって作り出された翼を持った人族の事だ」
「なんでそれに注意しなきゃいけないのよ」
サリスの言う約束、それを破りそうな者は1番にユナとナナであろう。
この2人は感情的になりやすく、行動が早い。
「この空の世界では、天使は神の次に尊い存在とされている。 その天使に逆らえば、この世界の住人から敵として認識されてしまう」
空の世界の発展は、エウリスのみならず天使の力もなくては成り立っていない。
天使は生まれながらに空の世界の住人から尊敬される存在だ。
この世界で、天使に逆らうという事は、全ての人族を敵に回す事になる。
「いいな? 絶対に天使には逆らうなよ」
サリスが言う事で、この言葉には重みが増す。
自尊心が高いサリスが、ここまで言う事はほとんどない。
それほど天使という存在に警戒しているのだ。
「わかったわ、特徴は翼を持った人族って事よね?」
「そうだ、なんの生物の翼かはその者によるが、大抵はこの魔王とは違う種類の翼だ。 まあ、魔族の翼はエウリスでも制御出来んと言う事だろうな」
ティナ以外の魔族と接触した事はないが、魔族の翼は大抵はティナと同じような翼だ。
羽根や鱗のついていない黒い翼は魔族の証でもある。
「まあ、天使には気をつけろ。 それだけ肝に銘じておけ」
サリスからの忠告はこれで終わりだ。
空の世界を旅する事は、シンの想像していた以上に自由度が少ない。
エウリスからの監視を潜り抜け、天使とは出来るだけ関わらない。
それが、シン達に課された最低限の条件である。
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中には飛び交う魔獣同士で争っている事もあり、敗れた魔獣は、空中で数多の魔獣達が瞬時に食い千切り、わずかに残った肉や骨が延々と続く空を落下している。
傍目に見ていてもそこに行くのは危険だと察する事が出来る。
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「心配要らん、妾の魔気で魔獣共は近寄れん」
ティナが宣言すると背筋が凍え、震え上がるほどの威圧が発せられる。
味方である、その事すら忘れさせるほどのティナの魔気は一瞬にして空間を支配し、浮遊島を飛び交っていたはずの魔獣達は危機を感じ取り、各々住処に戻って行く。
魔の頂点に立つ魔王であるティナは、格下の者達をわざわざ相手にする事はない。
その気配だけで、大抵の存在は畏怖しその場を離れようとする。
ティナが現れた事で、浮遊島は静寂に包まれる。
未だ人族が進出していない浮遊島である為、未開の地であるが贅沢は言えない。
サリスが進言した通り、空から見る事の出来ない洞窟の中に入り込む。
湿った空気が肌に纏わり付き、ヒヤリと冷たい風が吹き付ける洞窟内に生物の気配はない。
「サリス、さっき言ってたのってどういう事だ?」
サリスがこの空の世界に同行した理由があると自ら言っていた。
その事が気がかりなシンはすぐに問いかける。
空がある限りエウリスの監視下にある現状は好ましくない。
それを打開出来るのならば、早急に対応したいところだ。
「私の力をもう忘れたのか?」
「力?」
「そうだ、私は生み出す事に長けた神だったのだぞ? この空しかない世界にも私は物質を生み出す事が出来る。 空を飛べないお前達とって私の力は必須だ」
サリスの力、それはシン達にとって重要なものだ。
生み出す事に長けているサリスは、空を飛べないシン達にとって問題になる浮遊島からの移動すら大地を生み出す事で可能にする。
「それに私が大地を生み出せば、空からの視界を防ぐ事が出来る。 ちょうどこの洞窟のようにな」
サリスは補足をするようにシン達の頭上に岩によって作られた屋根を生み出す。
こちらから空が見えなくなれば、それは必然的にエウリスの視界をふさぐ事となる。
人の多い場所では使用出来ないが、今回のように無人の浮遊島であれば問題ない。
「私がいる限り、エウリスの監視はある程度潜り抜けられる。 感謝するのだな」
相変わらず偉そうな態度をするサリスだが、今回ばかりは文句のつけようがない、
空を飛べないシン達は既にサリスに一度救われている。
ノアがこれを見越していたのかは不明だが、サリスがいる事でシン達は行動の自由を得られる。
「これからどうするんだい? こんな島じゃ情報は集められない」
シン達の目的は空の証の入手と獅子の強心の入手だ。
当初の予定では、空中都市で情報を集め獅子の強心から探し出すはずであったが、この島ではそれは不可能だ。
「移動するしかないよな、でもここはどの辺りになるんだ?」
「この地図にこの島の情報は載ってないねどうやらこれはあまり役に立ちそうにないな」
念のためと思い森の世界で購入した空の世界の地図だが、残念ながら役には立ちそうにない。
今現在いる島がどこの島なのかすらわからないのだから地図を見ていても仕方ない。
「何を心配している、私がいるのだ適当に進めばいいではないか」
旅の経験などないサリスが呆れたような顔をしながら言う。
シン達からしたらそのサリスに呆れる所なのだが、触れない方がいいと判断し、そのまま話し合いに戻る。
「どのみちここに留まっている訳にもいかないしな。 ティナの生命探知はどこまで範囲を広げられるんだ?」
「ふむ、やってみた事がないからわからんの、少し時間をくれるか?」
「ああ」
シンが考えたのは、ティナによる生命探知で人族を探し出し、その人族がいる浮遊島への移動である。
空の世界の人々は、進出した浮遊島一つ一つに移動用の魔導具を設置しているらしい。
その為、人族がいる所に行けば、他の人族の住む空中都市となった浮遊島への移動も可能だ。
さすがのエウリスも多数の人族に紛れてしまえば、シン達の特定は難しい、そう判断したのだ。
それに出来る事ならこの世界にも詳しい者が必要だ。
サリスやティナも知識は持っているが、それは知識としてのみだ。
実際に経験している者からすれば、その程度では役に立たない。
世界情勢などの事も考慮しなくてはならない為、この世界に住む者を1人は味方にしておきたいのだ。
砂と森、これまでのこの2つの世界では、シンは秘密裏に侵入し、行動してきた。
しかし、今回は最初からエウリスに存在を知られながら行動しなくてはならない。
慎重さはこれまで以上に必要である。
それに、この世界には序列2位”天帝”ラドラス・エルドラスが空の代行者として存在している。
砂の世界に来ていたラドラスだが、今もそこにいるとは限らない。
相対してしまえば、戦闘は避けられないだろう。
前回の戦いの時のようにラドラスには翼がある。
この世界では、シン達は圧倒的に不利な状況で戦わなくてはならなくなるのだ。
「それと、一つだけ絶対に守ってもらいたい事がある」
「何よ?」
絶対に守らなくてはならないもの、そう口にしたサリスの表情は真剣だ。
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「天使?」
「ああ、エウリスによって作り出された翼を持った人族の事だ」
「なんでそれに注意しなきゃいけないのよ」
サリスの言う約束、それを破りそうな者は1番にユナとナナであろう。
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「この空の世界では、天使は神の次に尊い存在とされている。 その天使に逆らえば、この世界の住人から敵として認識されてしまう」
空の世界の発展は、エウリスのみならず天使の力もなくては成り立っていない。
天使は生まれながらに空の世界の住人から尊敬される存在だ。
この世界で、天使に逆らうという事は、全ての人族を敵に回す事になる。
「いいな? 絶対に天使には逆らうなよ」
サリスが言う事で、この言葉には重みが増す。
自尊心が高いサリスが、ここまで言う事はほとんどない。
それほど天使という存在に警戒しているのだ。
「わかったわ、特徴は翼を持った人族って事よね?」
「そうだ、なんの生物の翼かはその者によるが、大抵はこの魔王とは違う種類の翼だ。 まあ、魔族の翼はエウリスでも制御出来んと言う事だろうな」
ティナ以外の魔族と接触した事はないが、魔族の翼は大抵はティナと同じような翼だ。
羽根や鱗のついていない黒い翼は魔族の証でもある。
「まあ、天使には気をつけろ。 それだけ肝に銘じておけ」
サリスからの忠告はこれで終わりだ。
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