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空の世界
進展と窮地
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「これが、リーガルの宝珠か?」
「そうだ。 はぁ、ようやく終わった。 全く手間ばかりを…」
「わかった、わかった。 文句なら後で聞くから、今は休ませてくれ」
「ちっ、まあ良い」
息絶えたリーガルを見つめ、地面へと倒れ込んだシンの腕の中には拳大ほどの大きさの真っ赤な宝珠がある。
数十匹にも及ぶリーガル討伐の末、ようやく手に入れた宝珠だ。
試行錯誤の上、何度も繰り返したリーガル討伐もようやく終わりも迎える。
浮遊島リーオンに辿り着いてからおよそ2日間狩り続けていたシン達の疲労は極限まで溜まっている。
それでもシンに対して苦言を言おうとするルーディの体力は驚くべきものがあるが、相手にしている余裕のないシンは長くなりそうな話を無理矢理切り上げる。
シンの態度に苛つくルーディだが、さすがに疲労はしていたのだろう。
素直に言葉を切り、シンと同じように地面に座り込む。
天使の象徴である白い翼には、汚れが付着しておりこれまでの2人の苦労が伺える。
「まず、一つ目だ」
世界樹の試練で心が折れてしまったリリアナに送る獅子の強心。
その素材を手に入れたシンは、思わずこの言葉を口にした。
空の世界に来た目的の内の一つをようやく手に入れたのだ。
感傷に浸るのも仕方ない。
聖別の日に別れた仲間達の行方はわからないが、収穫は大きい。
これで、空の証の入手に集中する事が出来る。
ダンテと言う想定外の協力者も現れた事で物事の流れはシンに傾いていると言ってもおかしくはない。
エウリスの影響が強い空の世界で、ノアの力を借りる事は難しいが、仲間達と合流する事もなんとかなるだろうとシンは考えている。
「腕輪の通信も使えないか」
獅子の強心を手にする事が出来ると仲間に通信しようと試してみるが、残念ながら失敗に終わる。
おそらくだが、仲間達とシンは相当離れた位置にいるのだろう。
既にノアのものとなった砂や森の世界ならばどこにいようと通信可能だが、この空の世界ではまだ無理な事だった。
「貴様には仲間がいるのだな?」
不意にルーディがシンに話しかけてくる。
貴様と言われあまり良い気分ではないので、いい加減名前で呼んで欲しいのだが、シンもルーディの事を名前で呼んでいない事に気がつきシンは指摘するのをやめ答える事にした。
「ああ、あんたとダンテとの関係とは少し違うけどな」
シンと仲間達の関係はあくまでも対等なものである。
上下関係にあるダンテとルーディとは違う。
「仲間は、良いものなのか?」
ルーディがここまでシンに問いかけてくるのは初めての事だ。
「そうだな。 仲間がいるのといないのじゃ全然違う」
もし、砂の世界で仲間達と出会わなければシンはここまで来る事は出来ていないだろう。
自分1人の力では限界がある。
これまでの旅で、その事をシンは強く実感している。
「そうか」
「何かあるのか?」
シンの答えに対するルーディの返事は短い。
いつも通りと言えばその通りだが、どうもシンには気になる事だった。
「私には仲間がいない。 私の性格は知っているだろう?」
「ダンテは、仲間じゃないのか?」
上下関係にあるとはいえ、ダンテとルーディは仲間と言っても差し支えないはずだ。
「ダンテ様は偉大なお方だ。 そんな方と私では仲間としてつりあわない」
「そんな事ないと思うけどな」
ルーディは考えすぎ、そうシンは感じている。
もしダンテがこの場にいたとしてもシンと同じ事を言うだろう。
「私には仲間どころか友人もいない。 何故なのかはわかっている。 私を知った者は皆私から離れていく。 ダンテ様は、唯一そんな私を認めて下さったお方。 仲間などと言う同等な関係になどありはしない」
ルーディにはルーディなりの考えがあるのだろう。
自身の性格が原因で人々が離れていく事も自覚しているようだった。
「気難しい、厳格、冷酷、そう言われていた私をダンテ様だけは面白いとおっしゃり、職を下さった。 その時から私の命はダンテ様の為に使うと決めている」
ルーディは過去に何かしらの痛みを受けているのだろう。
それを追求するのはシンには躊躇いがある。
「そうか、ならいつかダンテ以外にもお前を理解してくれる奴が現れるかもな」
「そんな事はない」
「あるさ。 世界は7つもあるんだぞ? そんな広い所にダンテみたいな奴が1人しかいない訳じゃない」
シンの言葉にルーディは目を丸くしている。
おそらくだが、他の世界の事など考えた事がなかったのだろう。
ダンテ以上の者はいないだろうが、他にもルーディを理解する者がいるはずだ。
「貴様は、何を知っているんだ?」
またもルーディは質問を言う。
会話が下手なルーディは、話の流れを読む事が出来ない。
どうしても急なものになってしまう。
「何も知らないさ。 だから今も困ってるんじゃないか? 仲間がいなきゃ何をするべきかもわからない」
仲間が道を示してくれるからこそ、シンは進む事が出来る。
この答えは長い旅を共にしてきた仲間がいるからこそ、言える答えだった。
「なら今の貴様は何も知らない赤子同然という事か?」
「さあ、それもわかんねぇな」
ルーディの返答にシンは苦笑いを浮かべる。
どうもルーディは話を誇張して受け取るらしい。
「そうか、なら貴様が仲間と合流するまで、この私が貴様の道を示してやろう」
「どういう意味だ?」
シンの問いかけにルーディは答えなかった。
返ってきたのは初めて見せる微笑みだけだ。
だが、相性の悪い2人の距離が縮まった事は確かな事だ。
何がきっかけなのかシンにはわからない。
答えはルーディのみが知っている事だった。
「リーガルの宝珠も手に入れた。 あとはまた貴様を抱えて飛ぶだけだな」
「はぁ、またあれが始まるのか」
浮遊島リーオンから空中都市ダンデリアへの移動はルーディの飛行によるもの。
リーガル討伐が終わってもシンの苦労はまだ終わらない。
**
「浮遊島リーオンには、このゲートから向かうんだ」
シン達がリーガルの宝珠を手に入れる前、エルリック達もそれの入手を目指し移動していた。
現在、案内役のグリンを先頭に浮遊島リーオンへ向け、浮遊島ステップにある巨大な門の前に辿り着いていた。
「不思議な門だね」
空の世界には各空中都市、もしくは浮遊島に移動用のゲートが設けられている。
これがあるという事は、人族がその場所に進出した証でもある。
巨大な門の内側は、白を基調として様々な色が入り乱れており、幻想的な感覚を与えてくる。
このゲートを潜ると設定された異なる門に移動する事が出来るのだ。
空の神エウリスが、空を飛べない人族の為に開発した魔導具でもある。
転移の魔術は、このゲートを参考にして作られたと言われている。
「じゃあ、行こうか」
門に見惚れるエルリック達を急かすようにグリンは歩き出す。
慌ててエルリック達は後を追うが、どこか違和感を感じていた。
焦り、もしくは急かすようなものをグリンから感じたのだ。
「ここが浮遊島リーオンなのかい?」
ゲートをくぐったエルリックは目の前の景色を疑った。
浮遊島リーオンに住むリーガルと言う魔獣を討伐しに向かったはずであるのに、何故かゲートで向かった先はどこかの施設の内部と思われる場所だ。
魔獣を討伐するならば、自然の中とイメージしていたエルリック達は虚をつかれた形である。
浮遊島リーオンの詳細は聞いていないが、魔獣が闊歩する場所ならばそう考えるのが普通だろう。
「そう、ここが君達を連れて来たかったところだよ」
エルリック達の疑問を無視してグリンは答える。
この場所こそがエルリック達を連れて来たかった場所と言うのだ。
「どういう意味だい?」
エルリック達とグリンの会話は噛み合っていない。
それがまた、グリンから感じる違和感を増長させる。
「君達がまた別れたのは予想していなかったね。 まさかあそこまで意見がわかれるとはね。 おかげで少し苦労させられたよ」
「何が、言いたい」
「答えは、もうすぐわかるよ」
エルリックの体に緊張が走る。
嫌な予感といいものは、大抵当たるものだ。
そしてそれは、別の者から知らされる事となる。
「グリン、遅かったな」
エルリックの体にさらに寒気が感じられた。
新たに聞こえてきた声に聞き覚えがある。
2度と聞きたくない、そう思っていた声だ。
「天帝、ラドラス・エルドラス」
序列2位、魔王ティナ・グルーエルとも対等に渡り合う男が、エルリック達に再び立ち塞がる。
「そうだ。 はぁ、ようやく終わった。 全く手間ばかりを…」
「わかった、わかった。 文句なら後で聞くから、今は休ませてくれ」
「ちっ、まあ良い」
息絶えたリーガルを見つめ、地面へと倒れ込んだシンの腕の中には拳大ほどの大きさの真っ赤な宝珠がある。
数十匹にも及ぶリーガル討伐の末、ようやく手に入れた宝珠だ。
試行錯誤の上、何度も繰り返したリーガル討伐もようやく終わりも迎える。
浮遊島リーオンに辿り着いてからおよそ2日間狩り続けていたシン達の疲労は極限まで溜まっている。
それでもシンに対して苦言を言おうとするルーディの体力は驚くべきものがあるが、相手にしている余裕のないシンは長くなりそうな話を無理矢理切り上げる。
シンの態度に苛つくルーディだが、さすがに疲労はしていたのだろう。
素直に言葉を切り、シンと同じように地面に座り込む。
天使の象徴である白い翼には、汚れが付着しておりこれまでの2人の苦労が伺える。
「まず、一つ目だ」
世界樹の試練で心が折れてしまったリリアナに送る獅子の強心。
その素材を手に入れたシンは、思わずこの言葉を口にした。
空の世界に来た目的の内の一つをようやく手に入れたのだ。
感傷に浸るのも仕方ない。
聖別の日に別れた仲間達の行方はわからないが、収穫は大きい。
これで、空の証の入手に集中する事が出来る。
ダンテと言う想定外の協力者も現れた事で物事の流れはシンに傾いていると言ってもおかしくはない。
エウリスの影響が強い空の世界で、ノアの力を借りる事は難しいが、仲間達と合流する事もなんとかなるだろうとシンは考えている。
「腕輪の通信も使えないか」
獅子の強心を手にする事が出来ると仲間に通信しようと試してみるが、残念ながら失敗に終わる。
おそらくだが、仲間達とシンは相当離れた位置にいるのだろう。
既にノアのものとなった砂や森の世界ならばどこにいようと通信可能だが、この空の世界ではまだ無理な事だった。
「貴様には仲間がいるのだな?」
不意にルーディがシンに話しかけてくる。
貴様と言われあまり良い気分ではないので、いい加減名前で呼んで欲しいのだが、シンもルーディの事を名前で呼んでいない事に気がつきシンは指摘するのをやめ答える事にした。
「ああ、あんたとダンテとの関係とは少し違うけどな」
シンと仲間達の関係はあくまでも対等なものである。
上下関係にあるダンテとルーディとは違う。
「仲間は、良いものなのか?」
ルーディがここまでシンに問いかけてくるのは初めての事だ。
「そうだな。 仲間がいるのといないのじゃ全然違う」
もし、砂の世界で仲間達と出会わなければシンはここまで来る事は出来ていないだろう。
自分1人の力では限界がある。
これまでの旅で、その事をシンは強く実感している。
「そうか」
「何かあるのか?」
シンの答えに対するルーディの返事は短い。
いつも通りと言えばその通りだが、どうもシンには気になる事だった。
「私には仲間がいない。 私の性格は知っているだろう?」
「ダンテは、仲間じゃないのか?」
上下関係にあるとはいえ、ダンテとルーディは仲間と言っても差し支えないはずだ。
「ダンテ様は偉大なお方だ。 そんな方と私では仲間としてつりあわない」
「そんな事ないと思うけどな」
ルーディは考えすぎ、そうシンは感じている。
もしダンテがこの場にいたとしてもシンと同じ事を言うだろう。
「私には仲間どころか友人もいない。 何故なのかはわかっている。 私を知った者は皆私から離れていく。 ダンテ様は、唯一そんな私を認めて下さったお方。 仲間などと言う同等な関係になどありはしない」
ルーディにはルーディなりの考えがあるのだろう。
自身の性格が原因で人々が離れていく事も自覚しているようだった。
「気難しい、厳格、冷酷、そう言われていた私をダンテ様だけは面白いとおっしゃり、職を下さった。 その時から私の命はダンテ様の為に使うと決めている」
ルーディは過去に何かしらの痛みを受けているのだろう。
それを追求するのはシンには躊躇いがある。
「そうか、ならいつかダンテ以外にもお前を理解してくれる奴が現れるかもな」
「そんな事はない」
「あるさ。 世界は7つもあるんだぞ? そんな広い所にダンテみたいな奴が1人しかいない訳じゃない」
シンの言葉にルーディは目を丸くしている。
おそらくだが、他の世界の事など考えた事がなかったのだろう。
ダンテ以上の者はいないだろうが、他にもルーディを理解する者がいるはずだ。
「貴様は、何を知っているんだ?」
またもルーディは質問を言う。
会話が下手なルーディは、話の流れを読む事が出来ない。
どうしても急なものになってしまう。
「何も知らないさ。 だから今も困ってるんじゃないか? 仲間がいなきゃ何をするべきかもわからない」
仲間が道を示してくれるからこそ、シンは進む事が出来る。
この答えは長い旅を共にしてきた仲間がいるからこそ、言える答えだった。
「なら今の貴様は何も知らない赤子同然という事か?」
「さあ、それもわかんねぇな」
ルーディの返答にシンは苦笑いを浮かべる。
どうもルーディは話を誇張して受け取るらしい。
「そうか、なら貴様が仲間と合流するまで、この私が貴様の道を示してやろう」
「どういう意味だ?」
シンの問いかけにルーディは答えなかった。
返ってきたのは初めて見せる微笑みだけだ。
だが、相性の悪い2人の距離が縮まった事は確かな事だ。
何がきっかけなのかシンにはわからない。
答えはルーディのみが知っている事だった。
「リーガルの宝珠も手に入れた。 あとはまた貴様を抱えて飛ぶだけだな」
「はぁ、またあれが始まるのか」
浮遊島リーオンから空中都市ダンデリアへの移動はルーディの飛行によるもの。
リーガル討伐が終わってもシンの苦労はまだ終わらない。
**
「浮遊島リーオンには、このゲートから向かうんだ」
シン達がリーガルの宝珠を手に入れる前、エルリック達もそれの入手を目指し移動していた。
現在、案内役のグリンを先頭に浮遊島リーオンへ向け、浮遊島ステップにある巨大な門の前に辿り着いていた。
「不思議な門だね」
空の世界には各空中都市、もしくは浮遊島に移動用のゲートが設けられている。
これがあるという事は、人族がその場所に進出した証でもある。
巨大な門の内側は、白を基調として様々な色が入り乱れており、幻想的な感覚を与えてくる。
このゲートを潜ると設定された異なる門に移動する事が出来るのだ。
空の神エウリスが、空を飛べない人族の為に開発した魔導具でもある。
転移の魔術は、このゲートを参考にして作られたと言われている。
「じゃあ、行こうか」
門に見惚れるエルリック達を急かすようにグリンは歩き出す。
慌ててエルリック達は後を追うが、どこか違和感を感じていた。
焦り、もしくは急かすようなものをグリンから感じたのだ。
「ここが浮遊島リーオンなのかい?」
ゲートをくぐったエルリックは目の前の景色を疑った。
浮遊島リーオンに住むリーガルと言う魔獣を討伐しに向かったはずであるのに、何故かゲートで向かった先はどこかの施設の内部と思われる場所だ。
魔獣を討伐するならば、自然の中とイメージしていたエルリック達は虚をつかれた形である。
浮遊島リーオンの詳細は聞いていないが、魔獣が闊歩する場所ならばそう考えるのが普通だろう。
「そう、ここが君達を連れて来たかったところだよ」
エルリック達の疑問を無視してグリンは答える。
この場所こそがエルリック達を連れて来たかった場所と言うのだ。
「どういう意味だい?」
エルリック達とグリンの会話は噛み合っていない。
それがまた、グリンから感じる違和感を増長させる。
「君達がまた別れたのは予想していなかったね。 まさかあそこまで意見がわかれるとはね。 おかげで少し苦労させられたよ」
「何が、言いたい」
「答えは、もうすぐわかるよ」
エルリックの体に緊張が走る。
嫌な予感といいものは、大抵当たるものだ。
そしてそれは、別の者から知らされる事となる。
「グリン、遅かったな」
エルリックの体にさらに寒気が感じられた。
新たに聞こえてきた声に聞き覚えがある。
2度と聞きたくない、そう思っていた声だ。
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