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15.夏休み
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地元の花火大会。町の大半の人々が川辺に集まっていた。
川辺には出店やらで人集りがたくさんできていた。
花火を見るにはとても眺めの良い場所に、レジャーシートを敷いて座る京子と友達の香川有紀かがわゆうきの姿があった。
「それにしても京子変わったね」
「え?」
「中学の時は、男の子と話をするのも恥ずかしがっていたのに、今では長谷川君と友達になってるなんて……」
確かにそうかもしれない……。小学生の時は普通に友達もいたと思う。しかし、中学生になった頃から少しずつ、体格や声、思春期的な発言を聞くようになった頃から、男の子を意識するようになり苦手になっていた。
苦手と言っても嫌いなわけではないのだけれど……。
「……言われてみれば、そうかも」
しかし、明とは自然に話せていた。気さくな人柄のせいか、すぐに打ち解けた。
「それにさ……京子、大人っぽくなったし、綺麗になった」
「ええーっ!」
その時だった。ド、ドーンと花火の音が鳴り響いた。
「おっ始まったな」
たこ焼きと焼きそば、やきとりなどを買い込んだ明と明の友達が戻ってきた。
「ほれ京子。有紀ちゃんも」
そう言って渡されたのは缶ビールだった。
「えっ! これ! お酒じゃない!」
「京子ちゃん、もしかして飲んだことない?」
明の友達、同じ中学同級生の 吉良基樹きらもときが不思議顔をして言う。
「…………うん」
「じゃ、みんなで飲もうぜ」
そう言って吉良は、京子に乾杯するように缶と缶をぶつけた。
初めて飲むビールの味は苦かったけど、次第に口数が増え、中学校の思出話に花が咲き、久しぶりに心地よい気持ちになっていた。
花火の大きい爆音が、京子の心を打ちのめしてくれたのかもしれない……。
心の奥底に、ギスギスと重くて気持ち悪い感情は消えることなく残っているけれど、お酒と友達のおかげか、京子は少しだけ解放されたのだった。
*
お盆も開け。久しぶりに京子は学園に向かっていた。
昇降口から中に入ろうとした時の事だ。新校舎へと続く渡り廊下にいる人姿に目が留まったのだ。
「誠様!」
それはまぎれもなく、久しぶりに見かける誠の姿だった。
その姿を見て京子は固まった。
「誠様が……微笑んでいる?」
初めて見る顔。初めて見る表情だ!
見れば三島凪と、もう1人、凪に似た容貌の私服を着た女の子が一緒に並んで歩いていた。
3人で何やら親しげに話しながら歩いていたのだ。
(誠様が……笑う……なん……て)
誠にとって喜ばしいことのはずなのに、喜べない自分がいた。
「…………!」
誠のあの翳りのある瞳が気になった。寂しげな表情が気になった。
誰もが羨む美貌の容姿、家柄、全て……。完璧なまでの人なのに、何か欠けている……そんな、気がした――。
あの図書室で、毎日のように外を見つめていた誠……。私が見ていた、私が知っている誠はそうだった。
なのに……。今、微笑んでいる誠は誰……?
作り笑いには見えない。明らかに心を許している、そんな笑み、だった。
凪とは幼少の頃からの幼馴染だと聞く。
誠には、心を許せる人がいたと言うことだろうか?
今までの事は、私の考え過ぎだったと言うのだろうか?
(私は、誠様を慰めている……つもりだった?)
とんだ思い上がりもいいとこだ。
それこそ、痴がましい!
様々な思いが廻った。
「そうよ。誠様が微笑んでいらっしゃるのだから、喜ばしいことだわ……」
蟠りがあるものの、納得せざるおえないのだ。
(誠様……三島様と一緒にいらっしゃる、彼女は誰ですか……?)
川辺には出店やらで人集りがたくさんできていた。
花火を見るにはとても眺めの良い場所に、レジャーシートを敷いて座る京子と友達の香川有紀かがわゆうきの姿があった。
「それにしても京子変わったね」
「え?」
「中学の時は、男の子と話をするのも恥ずかしがっていたのに、今では長谷川君と友達になってるなんて……」
確かにそうかもしれない……。小学生の時は普通に友達もいたと思う。しかし、中学生になった頃から少しずつ、体格や声、思春期的な発言を聞くようになった頃から、男の子を意識するようになり苦手になっていた。
苦手と言っても嫌いなわけではないのだけれど……。
「……言われてみれば、そうかも」
しかし、明とは自然に話せていた。気さくな人柄のせいか、すぐに打ち解けた。
「それにさ……京子、大人っぽくなったし、綺麗になった」
「ええーっ!」
その時だった。ド、ドーンと花火の音が鳴り響いた。
「おっ始まったな」
たこ焼きと焼きそば、やきとりなどを買い込んだ明と明の友達が戻ってきた。
「ほれ京子。有紀ちゃんも」
そう言って渡されたのは缶ビールだった。
「えっ! これ! お酒じゃない!」
「京子ちゃん、もしかして飲んだことない?」
明の友達、同じ中学同級生の 吉良基樹きらもときが不思議顔をして言う。
「…………うん」
「じゃ、みんなで飲もうぜ」
そう言って吉良は、京子に乾杯するように缶と缶をぶつけた。
初めて飲むビールの味は苦かったけど、次第に口数が増え、中学校の思出話に花が咲き、久しぶりに心地よい気持ちになっていた。
花火の大きい爆音が、京子の心を打ちのめしてくれたのかもしれない……。
心の奥底に、ギスギスと重くて気持ち悪い感情は消えることなく残っているけれど、お酒と友達のおかげか、京子は少しだけ解放されたのだった。
*
お盆も開け。久しぶりに京子は学園に向かっていた。
昇降口から中に入ろうとした時の事だ。新校舎へと続く渡り廊下にいる人姿に目が留まったのだ。
「誠様!」
それはまぎれもなく、久しぶりに見かける誠の姿だった。
その姿を見て京子は固まった。
「誠様が……微笑んでいる?」
初めて見る顔。初めて見る表情だ!
見れば三島凪と、もう1人、凪に似た容貌の私服を着た女の子が一緒に並んで歩いていた。
3人で何やら親しげに話しながら歩いていたのだ。
(誠様が……笑う……なん……て)
誠にとって喜ばしいことのはずなのに、喜べない自分がいた。
「…………!」
誠のあの翳りのある瞳が気になった。寂しげな表情が気になった。
誰もが羨む美貌の容姿、家柄、全て……。完璧なまでの人なのに、何か欠けている……そんな、気がした――。
あの図書室で、毎日のように外を見つめていた誠……。私が見ていた、私が知っている誠はそうだった。
なのに……。今、微笑んでいる誠は誰……?
作り笑いには見えない。明らかに心を許している、そんな笑み、だった。
凪とは幼少の頃からの幼馴染だと聞く。
誠には、心を許せる人がいたと言うことだろうか?
今までの事は、私の考え過ぎだったと言うのだろうか?
(私は、誠様を慰めている……つもりだった?)
とんだ思い上がりもいいとこだ。
それこそ、痴がましい!
様々な思いが廻った。
「そうよ。誠様が微笑んでいらっしゃるのだから、喜ばしいことだわ……」
蟠りがあるものの、納得せざるおえないのだ。
(誠様……三島様と一緒にいらっしゃる、彼女は誰ですか……?)
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