大人で子供な師匠のことを、つい甘やかす僕がいる。

takemot

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第四章 戦花の魔女

第107話 我ながら、いいセンスだと思うんだ!

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「魔女ちゃん、来たよ!」

「……その恰好なに?」

 二週間後。私の元に現れた彼女は、大きなバッグを肩にかけ、軍隊のような制服に身を包んでいた。

「ふふふ、いいでしょ。会社の制服でね。気に入ってるんだ」

 私の質問に、彼女は嬉しそうな表情でそう言った。確か、昔、彼女は軍人にあこがれていたはず。どうやら、その思いは今でも変わってないらしい。

「会社って……もしかして、就職したの?」

「うん。町の郵便会社にね」

「郵便会社……」

 そういえば、彼女と同じ服を着ている人を、町で何度か見かけたことがある。あの人たちは郵便屋だったのか。あまり気にしたことはなかったが。

「ってそんなことより」

 思い出したように、彼女は、バッグの中から一つの封筒を取り出した。そして、それを私に差し出しながら、笑顔でこう告げた。

「はい。計画書」

「………は?」

 私の口から、間抜けな声が飛び出す。彼女が何を言っているのか、さっぱり分からなかったのだ。

 彼女は、そんな私の手に封筒をグイグイと押し付ける。されるがままにそれを受け取り、中を確認する。中に入っていたのは、一枚の紙。取り出してみると、不思議なタイトルが目に入った。

「『森の魔女』計画?」

「ふふふ。どう? いい魔女名でしょ」

「いや。いろいろと意味が分からないんだけど。何? この『森の魔女』って」

「魔女ちゃんの新しい魔女名だよ」

「……どういうこと?」

 首を傾げる私。そんな私を見て、彼女はニコリと微笑んだ

「ボクなりにいろいろ考えたんだけどね。魔女ちゃんが言ってた、『お金が稼げて、かつ一人でのんびりやっていけるような仕事』っていうのを叶えるためには、こうするのが手っ取り早いかなって」

 そう言って、彼女は説明を始めた。

 彼女が考えた計画。それは、私の魔女名を町に売り出すことだった。名前が売れれば、仕事を依頼されることも増える。大通りで細々と商売をするよりもはるかにお金を稼ぐことができるのは明白。

「最初は、『戦花の魔女』っていう名前を売り出すことも考えたんだけどね。でも、それをやっちゃうと、軍とか戦争関係の依頼がばんばんやってくるからね。『一人でのんびり』の条件に合ってないなと思ったんだ」

「『戦花の魔女』って、そこまで有名だったの?」

「そりゃね。というか、あれだけ戦争で活躍しておいて、有名にならないわけないじゃん」

 胸の前で二つの握り拳を揺らしながら訴える彼女。冗談を言っているようには見えなかった。

 正直なところ、『戦花の魔女』は私の嫌な記憶の一つでしかない。有名と言われて嬉しく感じる人は多いのだろうが、少なくとも私は例外だ。

「ま、そんなわけで、魔女ちゃんの新しい魔女名を考えたってわけ」

「それが『森の魔女』?」

「その通り! 我ながら、いいセンスだと思うんだ!」

 キラキラと輝く彼女の目。その体は、上下に小さく揺れている。まるで、親に褒められることを待っている子供のよう。

 おそらく、名前の由来は、私が森に住んでいること……なんだろうけど……。

 …………

 …………

 反応しづらい……。
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