大人で子供な師匠のことを、つい甘やかす僕がいる。

takemot

文字の大きさ
135 / 164
第五章 弟子

第134話 忘れました

しおりを挟む
「弟子君。私からも聞いていいかな?」

 僕への説明を終えてしばらくした後。師匠が唐突にそう切り出しました。

「何ですか?」

「弟子君を誘拐した人たちなんだけど、何か言ってなかった? 例えば…………昔の私のこと、とか」

 その言葉に、僕は、今まで目をそらしていたことを思い出しました。師匠の正体。それが、『戦花の魔女』であるということを。

 師匠の顔に、もう先ほどの優しい笑みはありません。これまで見たことがないほどに真剣な、何かを覚悟したような表情が浮かんでいます。そして、その体は、ほんの少し震えていました。

「…………」

 無言で師匠を見つめる僕。そんな僕を見て、師匠は首を傾げます。

「弟子君?」

「…………」

 はあ。もっといい方法あると思うんですけどね。

「弟子君、やっぱり……」

「…………」


 まあ、不器用なりにやってみましょう。






「やっぱり、何か聞いて……」
「忘れました」






「……へ?」

 ポカンと口を開ける師匠。どうやら、僕の答えがあまりにも予想外だったようです。

「すいません。実は、あの人たちが何を言ってたのか、全く覚えてないんですよ。いきなり誘拐されて、しかもナイフを突きつけられてたっていうのが悪かったんですかね。ほら。人間って、嫌な記憶を無意識のうちに忘れようとするじゃないですか。僕もそのパターンなんだと思います」

 自分の口調が、ほんの少し早くなるのが分かりました。堂々と嘘をつくって、けっこう難しいものなんですね。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

ルーカスと呪われた遊園地(上)

大森かおり
児童書・童話
 このお話のつづきは、ルーカスと呪われた遊園地(中)に公開しました。ご覧いただく方法は、大森かおりの登録コンテンツから、とんで読むことができます。  かつて日本は、たくさんの遊園地で賑わっていた。だが、バブルが崩壊するとともに、そのたくさんあった遊園地も、次々に潰れていってしまった。平凡に暮らしていた高校二年生の少女、倉本乙葉は、散歩に出かけたある日、そのバブルが崩壊した後の、ある廃墟の遊園地に迷い込んでしまう。そこで突然、気を失った乙葉は、目を覚ました後、現実の世界の廃墟ではなく、なんと別世界の、本当の遊園地に来てしまっていた! この呪われた遊園地から出るために、乙葉は園内で鍵を探そうと、あとからやってきた仲間達と、日々奮闘する。

精霊の国に嫁いだら夫は泥でできた人形でした。

ひぽたま
児童書・童話
琥珀は虹の国の王女。 魔法使いの国の王太子、ディランに嫁ぐ船上、おいしそうな苺を一粒食べたとたんに両手をクマに変えられてしまった! 魔法使いの国の掟では、呪われた姫は王太子の妃になれないという。 呪いを解くために、十年間の牛の世話を命じられて――……! (「苺を食べただけなのに」改題しました)

下出部町内漫遊記

月芝
児童書・童話
小学校の卒業式の前日に交通事故にあった鈴山海夕。 ケガはなかったものの、念のために検査入院をすることになるも、まさかのマシントラブルにて延長が確定してしまう。 「せめて卒業式には行かせて」と懇願するも、ダメだった。 そのせいで卒業式とお別れの会に参加できなかった。 あんなに練習したのに……。 意気消沈にて三日遅れで、学校に卒業証書を貰いに行ったら、そこでトンデモナイ事態に見舞われてしまう。 迷宮と化した校内に閉じ込められちゃった! あらわれた座敷童みたいな女の子から、いきなり勝負を挑まれ困惑する海夕。 じつは地元にある咲耶神社の神座を巡り、祭神と七葉と名乗る七体の妖たちとの争いが勃発。 それに海夕は巻き込まれてしまったのだ。 ただのとばっちりかとおもいきや、さにあらず。 ばっちり因果関係があったもので、海夕は七番勝負に臨むことになっちゃったもので、さぁたいへん! 七変化する町を駆け回っては、摩訶不思議な大冒険を繰り広げる。 奇妙奇天烈なご町内漫遊記、ここに開幕です。

ママのごはんはたべたくない

もちっぱち
絵本
おとこのこが ママのごはん たべたくないきもちを ほんに してみました。 ちょっと、おもしろエピソード よんでみてください。  これをよんだら おやこで   ハッピーに なれるかも? 約3600文字あります。 ゆっくり読んで大体20分以内で 読み終えると思います。 寝かしつけの読み聞かせにぜひどうぞ。 表紙作画:ぽん太郎 様  2023.3.7更新

異世界子供会:呪われたお母さんを助ける!

克全
児童書・童話
常に生死と隣り合わせの危険魔境内にある貧しい村に住む少年は、村人を助けるために邪神の呪いを受けた母親を助けるために戦う。村の子供会で共に学び育った同級生と一緒にお母さん助けるための冒険をする。

わたしの師匠になってください! ―お師匠さまは落ちこぼれ魔道士?―

島崎 紗都子
児童書・童話
「師匠になってください!」 落ちこぼれ無能魔道士イェンの元に、突如、ツェツイーリアと名乗る少女が魔術を教えて欲しいと言って現れた。ツェツイーリアの真剣さに負け、しぶしぶ彼女を弟子にするのだが……。次第にイェンに惹かれていくツェツイーリア。彼女の真っ直ぐな思いに戸惑うイェン。何より、二人の間には十二歳という歳の差があった。そして、落ちこぼれと皆から言われてきたイェンには、隠された秘密があって──。

処理中です...