大人で子供な師匠のことを、つい甘やかす僕がいる。

takemot

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第五章 弟子

第135話 師匠はこうでなくちゃいけません

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「いやー。ほんと困りましたよ。三日後にまた警察署で話をすることになってるのに。やっぱり駄目ですね、僕って」

 師匠は、僕に自分の正体を明かそうとはしませんでした。旅人さんに『戦花の魔女』について聞かれても、知らないふりをしていました。きっと、師匠にとってそれは、他の人に知られたくない過去なのだと思います。

「うーん。鍛え方が足りないんですかねー」

「…………」

 今回、偶然にも師匠の過去を知ってしまった僕。そんな僕が、「師匠は『戦花の魔女』だったんですね」と告げたなら、一体どうなるでしょうか。少なくとも、師匠が喜ぶなんてことにはならないでしょう。

 そして……。まあ、これはあくまで僕の希望というか……。思い上がりも甚だしい想像なんですけど……。もし、師匠が僕との関係を心地よく感じてくれていて、その関係を壊さないために自分の正体を隠していたのだとしたら……。

 僕は……。

「まあ、多分、あの人たちもお金目当てで僕を誘拐したんでしょうね。ほら。師匠って結構町では有名ですし。あの『森の魔女』ならお金持ちに違いないって考えたんだと思います。だからきっと、僕を誘拐した時も、そういう話ばかりしてたんじゃないですかね。覚えてはないですけど」

 師匠のことです。どうせ、僕が嘘をついていることなんてとっくに見破っています。それでも、僕は、嘘をつき続けるのです。師匠の弟子として。師匠のそばにいる者として。師匠が悲しむことのないように。

「……そっか」

 小さな、小さな、師匠の呟き。その顔に浮かぶのは、優しい笑み。すべてを悟ったような、温かさ。

「ねえ、弟子君」

 ああ、やっぱり。

「ちょっとお菓子が食べたくなったんだけど、食べていい?」

 師匠はこうでなくちゃいけません。

「本当に師匠は相変わらずですね」
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