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どうやら王女様は嫌われているみたいです
しおりを挟む(この青年に、私はどうやら嫌われてるっぽいわね…)
何やら考えるそぶりを見せたセイファーさんは、ため息をついた後、首を横に振ってから何を思ったのかニコリと私に微笑みかけた。
「……そんな顔をしている女性を放っておけるほど、俺は腐っておりませんよ。――貴女が知りたいこと全て、お教えいたします」
「え…でも、セイファーさんは私の事、嫌いですよね?」
「べ、別に嫌いではありません。ただ、以前の貴女は………」
私の率直の言葉に、セイファーさんは何やら罰が悪そうに口ごもってしまった。
どうやら言いにくい事を私はセイファーさんにしてしまったんだろう。
「セイファーさん、貴方が知っている私を教えて?どんな言葉も、全て受け入れるわ」
「そう、ですか…。なら、俺の知っている貴女をお教えします」
私が安心させるようにニコリと微笑んで、先を促すと――セイファーさんは言いにくそうに話し出した。
「―――という感じの態度でしたので、俺はあまり、王女様のことが得意ではありませんでした」
セイファーさんから聞いた王女様の印象は、誰から見ても人として最低な人だった。
侍女たちにはワガママ言い放題、騎士団に所属している者たちに対しては、野蛮だと愚弄していたらしい。
第一王女とあって、その態度を咎めることが出来ず、皆頭を抱えていたようだ。
しかも、第一王女としか聞かされていなかったが、国王と王妃――つまり、父上と母上の間には私しか子供がいないらしい。
父上は、この国の国王で、母上は隣国の王女だったらしく、どうやら私の地位はかなり高いらしい。
その上、父上には側室もおらず、跡取りが今現在私しかいないとのこと。
その為か、随分と甘やかされて育ったようだ。
(一人娘だから甘やかしちゃったのね…大事に大事に育てて、病で死んじゃったのは流石に可哀想だと思うけども…)
それでも、もっと常識を教えるべきだった。
「そう……私は、貴方にも他の人にも、迷惑をかけてしまったのね…今更謝ったところで許されるとは思っていないけど、ごめんなさい」
「――いえ、これから心を改めて頂ければ、十分です」
セイファーさんの言葉はどこかトゲが含まれていた。
それに、十分だと言いつつ、声は冷たく、態度もどこか余所余所しい。
「…やっぱり、簡単には許してもらえないわよね」
しょんぼりと顔を俯かせたら、なぜか自然と涙が溢れ出てきて…両手で拭うけども、涙は止まらない。
きっと、この涙は王女本人のものかもしれない。
(私が、貴方の代わりに…みんなに謝罪して許してもらえるように頑張るわ。だから、安心して見守っていて)
そう心で思ったら、自然と心が軽くなって、涙も止まった。
「アリシア王女様…その、大丈夫ですか?俺、貴方がされたことは本当に気にしていませんので…だからその、泣かないでください」
「私ったら…ごめんなさい。もう大丈夫です」
「俺の方こそ、冷たい態度を取ってしまい、申し訳ありません。どうやら貴女は本当に心を入れ替えてくれたんですね」
「え、ええ。だから、私がいけないことをしたら、叱ってもらえると嬉しいわ」
まだ本当のことを言うわけにもいかず、セイファーの話に合わせて頷いておく。
流石に私が、王女ではないなんて…まだ知り合ったばかりの人に言えるわけもない。
「王女様をお叱りに…?そんな恐れ多いこと、俺には……」
「いいえ、人間としてやってはいけないことやった時には、叱ってくれる人がいないと、人は変われないでしょう?」
「そこまで仰るんでしたら…善処いたします」
「フフ、ありがとう、セイファーさん。それから、私のことはアリアと、呼んでください」
さっきまで冷たい態度を取っていたセイファーさんとは思えないほど、どこか優しさを感じた。
きっと、根は優しく良い人なんだろう。
「……分かりました。では、アリア様と呼ばせて頂きます。私のことも、セイとお呼びください。親しい者はそう呼んでおりますので」
私の言葉に何を言っても無駄だと思ったのか、簡単に諦めてくれた。
しかも!愛称呼びを認めて頂けました!!
こんなカッコイイ人を愛称で呼ぶだなんて…誰かに勘違いされないかしら?
……まあ、誰も私のことなんて興味無いでしょうから、誰も気づかなそうですけど。
自分で言ってて虚しくなってきた……。
あんまりこんな事、考えない方が良いかな。セイにも迷惑掛けちゃうし。
「ありがとう、セイ。これから、よろしくお願い致しますね?」
「ええ、アリア様。……アリア様、一つだけ忠告させて下さい。私は今までの事を水に流しますが、他の者は私のように上手くいくとは限りません。そのことは、ご覚悟しておいてください」
「――ええ、覚悟はできていますわ。どんな言葉も、全て受け入れて生きていきます」
セイの言葉に胸が痛くなったが、気を引き締め、頷いた。
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