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前編
しおりを挟むどうも! この度「村長の息子のラファエル様」から「公爵家の跡取りラファエル様」にクラスチェンジした。
ラファエル=ヴァランタインです。
いや~。人生って分からないものですね。
そうそう、自分の名前を聞いて前世の記憶で1つ思い出した事があります。
私はこの国の名前と第1王子殿下の名前で、この世界が乙女ゲームの世界だと知っていました。
え? なんで男なのに乙女ゲームの事を知っているか?
えぇ。まあ。姉や妹がいたって事はないです。……………………悪いか! 乙女ゲームが意外に面白かったんだから!! 乙女男子がいるなら、乙女ゲー男子がいても良いじゃないか!!
あっ。ちゃんと私はノーマルですよ?
とりあえず、その話はおいておいて。
この世界は乙女ゲームの世界です。ほぼ間違いはありません。
私は自分をモブキャラだと思っていましたが、違いました。
私は乙女ゲームの登場人物でした。
若くして公爵家を継いだ天才。ラファエル=ヴァランタイン。
攻略キャラの1人でした。
貴族社会に馴染めない孤高の天才(笑)が、同じく学園に馴染めない庶子のヒロインと意気投合してハッピーエンドになるらしいです。
この乙女ゲーのエンディングは、必ず「その後は、国は栄え、2人は平和に暮らしました。めでたし、めでたし」で終わっているので、何もしなくてもヒロインが勝手に誰かと結ばれて、平和な村長生活を続けられると思っていました。
まさか、公爵にクラスチェンジして攻略対象者になるとは、今まで夢にも思っていませんでした。
それにヒロインとの出会いとかってボッチ同士の恋愛ですよね?
しかも、庶民感覚の公爵に庶民感覚の公爵夫人が治める領地なんて、絶対に良い事ないですって!
「ラファエル様。成人して学園に入学するまで時間がないのですよ?」
「申し訳ない。マイアー侯爵夫人。マナーの授業の続きをお願いする」
現実逃避をしてみたものの、現実とは非常で、国から支援を受けて、みっちり地獄の教育を受けさせられている。
本来は10年くらい掛けて学ぶ事を1年足らずで学ばなくてはならないらしい。本気でありえない!
「ラファエル様は優秀ですので、恐らく成人と同時に現公爵より爵位を譲り渡されると思います」
あぁ。うん。父はお仕事に耐えられなくって、泣いてたからね。
領地経営自体は、本当に国に力を借りて何とか維持している感じかな?
あれだ。私が優秀じゃなくって、父がダメだから私に早めに引き継いで私に教育を集中させようって判断なのが良く分かる。若い方が学ぶの早いからね………。
「本来であれば夜会で、マナーの仕上げをしたいところではありますが、時間がございません。次は領地経営の先生からご指導がございます」
睡眠時間と食事の時間以外は、全て勉強だ。
前世の受験勉強でもこんなハードスケジュール体験した事ないよ!
そうして、作り上げられたのが、見た目はお貴族様! 中身は田舎者!! その名もラファエル=ヴァランタイン!!
………………人間が死なない限界ギリギリで調教されると、身体の方がしっかりと覚えてくれるようになるんですね。
マイヤー侯爵夫人の足音1つで、背筋が伸び、夜も眠れなくなりました!
さて、そんな血の滲むような努力の結果。
一夜城ならぬ一年公爵が出来上がり、無事乙女ゲームの舞台となる学園の入学に間に合った。間に合ってしまった!
父より爵位を譲られて、陛下に謁見した後の祝いの席では、本当に挨拶という言葉責めに苦しんだ。
後ろには、常にマイヤー侯爵夫人が控えているんだもん。逃げれない。失敗出来ない。休めない。の3重苦だったよ!
あれだ。
ラファエル=ヴァランタインという天才は教育係のマイヤー侯爵夫人によって作られた事は分かった。
学園にはマイヤー侯爵夫人が来ない為、そりゃ孤高という名のボッチになるわ。
謎が解けたね! やったね!!
「あのように田舎者丸出しだったラファエル様が立派になられて………」
うん。やっぱり最初は田舎者だと思われてたのね。間違いじゃないよ! 今も田舎者だからね!!
まあ、一応、祝いの席での対応が問題なかったという事でマイヤー侯爵夫人から無事合格を頂いた。
「マイヤー侯爵夫人。一年という短い間でしたが、ありがとうございました」
私にとっては恐怖の代名詞と言える相手ではあるが、お世話になった事に違いない。ならば、誠心誠意お礼は告げるべきだ。
「このご恩は、ヴァランタイン公爵として、必ずお返しします!」
屋敷に戻り、今までのお礼をマイヤー侯爵夫人へ告げた事で、マイヤー侯爵夫人に抱きしめられた。
「私は子供に恵まれませんでしたので、この1年は厳しく躾けてきましたが、あなたはその全てに応えてくれ。私は息子のように思っています」
………私に父はいたが母はいない。子供の頃に亡くなったと聞かされていたが、今の立場になってから逃げられていた事を知った。
ゆえに、私はこの世界で母の愛を知らない。
まあ、近所のおばちゃんたちから可愛がられた事はあったかな?
「ありがとうございます。マイヤー侯爵夫人」
それでも、この世界に生まれてから初めて感じる無償の愛情に、乙女ゲームのキャラクターではなく、村長の息子のラファエルでもない。
「マイヤー侯爵夫人の息子のラファエル=ヴァランタイン」として生きていくのも悪くないか。
我ながら単純だと思ったが、抱きしめられている今は、決して悪い気はしなかった。
それから程なくして、私は乙女ゲームの世界の学園生活の為に寮へと入った。
学園が始まってからも、毎週マイヤー侯爵夫人への手紙を書くのが日課になったのは私にとっては良い事だ。
ちなみに、父は田舎に帰って、隠居も兼ねて元の村で村長をしている。
父から逃げていた母は、新しい家族たちと少し大きな町で宿を経営していると聞いて、一度だけお客として顔だけは確認した。幸せそうだったので、事実は告げずにこっそりと支援だけしている。
領地経営については、この年で全てを学びきれていない為、学園に通っている間も含めて、王家が派遣した代官が代行してくれる事になっている。
………任期後はそのまま、ヴァランタイン公爵家で継続雇用できないかしら?
まあ、この乙女ゲームの世界の学園で、私がやるべき事は3つ!
まずは1つめは、ヒロインが他の攻略対象者と無事結ばれる事!
これはあれだ。
私の立場からするとヒロインと結ばれても不良物件の公爵家が完成するだけなので、それは避けないといけない。まあ、現在の状況でも傀儡公爵家っぽいけどね。
これは2つめになるのだが、領地経営に詳しい嫁さんを学園内で探す! もしくは、領地経営に力を貸してくれる家と政略結婚をする事!!
一番重要なのは、この2つめの内容だが、個人的には3つめの内容も重視したい。
3つめは、友人を作ること! ボッチはいやだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
まあ、私が元田舎者だと知れ渡っているので、群がってくるのはハイエナと肉食系のみで、目標達成の難易度が高すぎる気がしたが、意外なところで解決した。
「ラファエル。今日も大変そうだな」
「えぇ。実は中身が残念王太子殿下。見ていたなら助けて下さいよ。陛下から手助けするように言われているっておっしゃいましたよね?」
学園に通ってから分かった事だが、気安くなると村長の息子時代に仕事にしていたせいで、名前の前に肩書きを付ける癖がある事が分かった。
そして、そのせいで、なぜか王太子殿下に気に入られてしまった。
ちなみに、王太子殿下に気に入られた事で、完全に飢えた肉食系のお嬢様方に毎日群がられる。マジで生傷が絶えない程だ。
「何度聞いても、その親しみを込めた呼び方は心地よい」
私の発言に慣れたせいか、最近ではかなり親しくなった気がする。
だが………いつかドM王太子殿下と口に出しそうで怖くなるので、適切な距離を置きたいところではある。
「やっぱり友とはこうではなくってはな? 筋肉ダルマのアラン」
「………殿下。無礼者のラファエルの癖が移っております」
「ハッハッハッ! アランもしっかり移っているじゃないか!!」
アランも攻略対象者の1人だ。殿下の護衛も兼ねた代々武官の家系の伯爵家の子息だ。
当然、私の発言に眉をひそめるタイプだ。
「ラファエル。いくら学園内で1番勉強が出来るからと言っても、その癖を直さないと卒業後に社交界で苦労をするぞ」
「すまない。アラン。考え事をしていたりした時にとっさに出てしまうようだ。気をつけるよ」
私は癖が出てしまう以外は普通だ。その為、アランとは険悪な仲にはならないで済んでいる。
ゲーム中では関わり自体がなかったので、この関係が良いものなのかどうかは分からない。なんと言っても孤高の天才(笑)だったからな!
一応、殿下とアランという友人が出来たので、ボッチは免れたと思っている。
この事をマイヤー侯爵夫人に手紙で知らせたら、長期休暇中の特別再教育の招待状が届いたので、私の学園1年目の夏はヒロインイベントを回避出来そうだ。
「それよりラファエル。聞いたか? 宰相の息子が庶子の子爵家令嬢にうつつを抜かして、婚約者と婚約破棄をしようとしているのを」
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早いよ! ヒロイン!!
悪役令嬢の断罪劇は、卒業記念パーティーの会場だろ!!
なんで1年目の夏季休暇前にそんなところまでイベントが進んでるの!? あと2年半以上の月日はどこへ行った!?
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