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孤児院編
012 私のスローライフな一日
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皆様はどうお過ごしでしょうか?
私は新しい土地でスローライフ生活が始まり、平凡な日々の訪れが来るかと思うと胸が躍ります。
なんだか変な表現ですね。
それくらいには、新しい生活を楽しみにしているという事です。
新しい生活の舞台は、とある国の首都にある小さな孤児院。
でも、周りに住む人もなく、閑静で貧しくも静かな住宅街のある区画に、私は住んでいます。
「親方ァ! この家は壊しちまって良いんですかい!!」
「うるせぇ! 今大事なところなんだ!! 孤児院から外壁までの家は全て取り壊しだ!! 石畳も全部剥がしちまえ!!」
えぇ。本来はとても静かな住宅街のはずです。………でした。
祖国と言える国が、3ヵ国から同時に侵略を受けてあっさりと滅亡した国の亡国の貴族といえば、私クロムウェルでございます。
厨ニ病全開の方には、少々羨ましい肩書きかと思われますが、えぇ、これでも一応、死の覚悟と運命を乗り越えて、新しいスローライフ生活を手に入れることが出来ました。
「ねぇ、お兄ちゃん。お兄ちゃんのお花に私もお水をあげてもいい?」
「お兄ちゃんのお花は何色の花が咲くの?」
「兄貴! 花なんかより食べれる物を育てようぜ!」
えぇ。孤児院という事で静かな生活というには、遠い世界だと覚悟はしておりました。
「クロム兄! カッコ良いから結婚してあげる!」
「お兄様は私のお兄様だと何度言ったら分かるの!!」
「ハッハッハ! 兄貴、そいつは兄貴のお金目当てだから止めておいた方がいいぞ!」
そうそう、一緒に生活するという事は家族のようなものだ。簡単であるが紹介しておこう。
まずは母と妹。そして平民になった今でも母の専属侍女と名乗り続けるストーカーのマリー。
そのストーカーをストーキングする報われないロック。
あ、ロックに関しては、孤児院内に住まずに、表向きは衛兵として雇用されて、孤児院の前に急遽作られた詰所兼自宅の小さな家に1人で住んでいる。
あれだ。門番その1に逆戻りした訳だ。
それだと可哀想なので、孤児院の前の犬小屋に住むペットのロックという事にしておこう。これなら家族扱いで大丈夫なはずだ。
ここまでが今までのメンバーで、新しいメンバーは7人。
元孤児院の院長をしていたエイシアさん。御歳不明。腰や膝といった関節を痛めていたが、孤児院の子供たちの為に働き続けていた心優しい女性だ。
他は孤児院に住む、親を亡くした孤児たち6人。男の子が1名。女の子が5名だ。
男の子がいなければ、完全にハーレム状態だったのだが、私はロリコンじゃないので残念でも何でもない。
そう! 断じてロリコンではない!!
という説明をしている間に、「ガスッ! ゴッ! ゴトリッ! ズルズルズルズルッ!」という擬音が聞こえて、私以外の唯一の男の子が、とある女の子の手によって外に捨てられていったが、気にしないで貰いたい。
「お兄ちゃん! 院長先生を治してくれてありがとう!」
私たちがこの孤児院に、住み始めてまだ3日しか経っていないが、子供達にはすっかり懐かれた。
孤児たちに餌付け。ただそのテンプレートを忠実に守った成果だと思う。
「お兄様! 私も頭を撫でて下さい! 私が本物の妹です!!」
孤児たちの年齢は、当然成人している私より低いのはもちろんの事だが、妹よりも低い。
私はどのように呼ばれているかは説明しなくても問題ない通りだが、妹は「お姉ちゃん」と呼ばれてはいない。
つまりは田舎育ちのお嬢様は、都会の孤児たちと同レベルという訳だ。
「クロムウェル様。私の治療だけではなく、建物の修理までして頂いて申し訳ございません」
「あっ! 院長先生だ! もう元気になった? 遊べるの?」
「私はもう院長先生ではないのですよ」
子供たちが騒がしくしている中に、私に感謝の言葉を掛けながら近づいてきたのは、私たちが乗っ取る事になってしまった孤児院の元院長先生のエイシアさんだった。
エイシアさんは、子供たちを慣れた手つきであやしているが、興奮した子供たちの相手はやはり骨が折れるようだ。
「礼には及びません。共に暮らす以上は家族のようなものです」
「そうだよ! 院長先生!! 私がクロム兄のお嫁さんだから家族だよ!!」
「院長先生はクロムウェル様のお母様になったのよ」
そう、表向きは身体を壊したエイシアさんの代わりに孤児院の院長となっている。
あぁ、子供たちの発言は基本的にスルーだ。構うと物語が進まない。
「エイシアさん、母はあくまで名前だけです。私は子供たちに好かれている方こそ、院長に相応しいと思いますよ」
これは私の本音だ。さっきまで私に付きまとっていた子供たちが1名を除いて、エイシアさんの元に集まっているのだから。
「そうすると次期院長さんはクロムウェル様が相応しいという事かしら?」
私の発言に対して、和やかな雰囲気で少し茶目っ気に話を返してくれる。
エイシアさんの言葉どおりに、ずっと孤児院で子供たちと暮らすのも悪くないかとは思うが、それは無理だ。
おそらく次の子供たちはいない。
それほどにこの国は隣国である共和国の影響を受けているのだ。
民主制という時代の波が近づいているのか、それとも魔法というものが存在する異世界ではまた違う歴史になるのかは私には分からない………。
「そうですね。それも良いですね」
私は曖昧に返事を返す。
「そう、食事の用意が出来たのでお呼びにきたのでした。さあ、みんな食事にするので手を洗っていらっしゃい」
もうそんな時間か。周りがうるさかったので、時間の流れを感じなかったせいだろう。
「あら? 1人足りないようだけど?」
「あぁ、1人は外にいます。私が連れて行きますので残りの子供たちをお願いします」
先ほど余計なひと言の為に、頭を叩かれて気絶させられ、そのまま外に捨てられたロック2号を回収する為に、立ち上がる。
ロック2号というあだ名を付けている理由はそのうちに語ろう。
「親方さんはお食事はどうなさいますか?」
「あ、いや。申し訳ない。私はこのままクロムウェルの旦那が修理した箇所を見させてもらうつもりです」
ちなみに親方とは、オルフォース家が手配してくれた大工の棟梁だ。
私の前世の転生知識と魔法を使った大工仕事がよほどお気に召したのか、基本的に私の作業中は傍を離れる事はない。私はおっさんよりも綺麗な子に近くにいて貰いたいのだが、それもそんな遠くない未来に実現するだろう。
むしろ、他の仕事をして欲しいものであるが、今は気まぐれ草を栽培する用地作りの為に、空き家の解体作業だけしかやる事のないので、親方としての仕事はないのだろう。
エイシアさんと親方のやりとりを耳にしながら、親方が興味を持つきっかけになった修理した孤児院の扉を開ける。
すぐ横には、予想通りロック2号が気持ち良さそうに寝ていた。
手の平の上に魔法で小さな水球を作り、ロック2号の顔へとぶつける。
「つめたっ!」
「ほら、飯の時間だ。いつまでも寝てるんじゃないぞ。寝ぼすけめ」
「ちっ!ちげぇよ! あの凶暴女にやられたんだよ!!」
うん。知っているよ。見てたしね。それも今日だけじゃなくって他の日も含めて何度も。
「分かったから飯の時間だ。さっさと手を洗って来い」
文句をきゃんきゃんと言っているロック2号を急かしながら、食堂へと向かう。
「「いただきます!」」
私を含めて11人が食卓についているが、それでも食卓には空席があるほど大きな食卓で子供たちと共に食べる食事は、騒がしいけど確かにゆったりとした時間が流れているように感じる。
「うめぇ! 今日もうめぇよ! 兄貴!!」
まあ、騒がしく食べているのは1人だけなのだがな………。
こんなスローライフ生活も、最初から上手くいっていた訳ではない。
その事を含めて、私のスローライフ物語をとくとご覧あれ!!
私は新しい土地でスローライフ生活が始まり、平凡な日々の訪れが来るかと思うと胸が躍ります。
なんだか変な表現ですね。
それくらいには、新しい生活を楽しみにしているという事です。
新しい生活の舞台は、とある国の首都にある小さな孤児院。
でも、周りに住む人もなく、閑静で貧しくも静かな住宅街のある区画に、私は住んでいます。
「親方ァ! この家は壊しちまって良いんですかい!!」
「うるせぇ! 今大事なところなんだ!! 孤児院から外壁までの家は全て取り壊しだ!! 石畳も全部剥がしちまえ!!」
えぇ。本来はとても静かな住宅街のはずです。………でした。
祖国と言える国が、3ヵ国から同時に侵略を受けてあっさりと滅亡した国の亡国の貴族といえば、私クロムウェルでございます。
厨ニ病全開の方には、少々羨ましい肩書きかと思われますが、えぇ、これでも一応、死の覚悟と運命を乗り越えて、新しいスローライフ生活を手に入れることが出来ました。
「ねぇ、お兄ちゃん。お兄ちゃんのお花に私もお水をあげてもいい?」
「お兄ちゃんのお花は何色の花が咲くの?」
「兄貴! 花なんかより食べれる物を育てようぜ!」
えぇ。孤児院という事で静かな生活というには、遠い世界だと覚悟はしておりました。
「クロム兄! カッコ良いから結婚してあげる!」
「お兄様は私のお兄様だと何度言ったら分かるの!!」
「ハッハッハ! 兄貴、そいつは兄貴のお金目当てだから止めておいた方がいいぞ!」
そうそう、一緒に生活するという事は家族のようなものだ。簡単であるが紹介しておこう。
まずは母と妹。そして平民になった今でも母の専属侍女と名乗り続けるストーカーのマリー。
そのストーカーをストーキングする報われないロック。
あ、ロックに関しては、孤児院内に住まずに、表向きは衛兵として雇用されて、孤児院の前に急遽作られた詰所兼自宅の小さな家に1人で住んでいる。
あれだ。門番その1に逆戻りした訳だ。
それだと可哀想なので、孤児院の前の犬小屋に住むペットのロックという事にしておこう。これなら家族扱いで大丈夫なはずだ。
ここまでが今までのメンバーで、新しいメンバーは7人。
元孤児院の院長をしていたエイシアさん。御歳不明。腰や膝といった関節を痛めていたが、孤児院の子供たちの為に働き続けていた心優しい女性だ。
他は孤児院に住む、親を亡くした孤児たち6人。男の子が1名。女の子が5名だ。
男の子がいなければ、完全にハーレム状態だったのだが、私はロリコンじゃないので残念でも何でもない。
そう! 断じてロリコンではない!!
という説明をしている間に、「ガスッ! ゴッ! ゴトリッ! ズルズルズルズルッ!」という擬音が聞こえて、私以外の唯一の男の子が、とある女の子の手によって外に捨てられていったが、気にしないで貰いたい。
「お兄ちゃん! 院長先生を治してくれてありがとう!」
私たちがこの孤児院に、住み始めてまだ3日しか経っていないが、子供達にはすっかり懐かれた。
孤児たちに餌付け。ただそのテンプレートを忠実に守った成果だと思う。
「お兄様! 私も頭を撫でて下さい! 私が本物の妹です!!」
孤児たちの年齢は、当然成人している私より低いのはもちろんの事だが、妹よりも低い。
私はどのように呼ばれているかは説明しなくても問題ない通りだが、妹は「お姉ちゃん」と呼ばれてはいない。
つまりは田舎育ちのお嬢様は、都会の孤児たちと同レベルという訳だ。
「クロムウェル様。私の治療だけではなく、建物の修理までして頂いて申し訳ございません」
「あっ! 院長先生だ! もう元気になった? 遊べるの?」
「私はもう院長先生ではないのですよ」
子供たちが騒がしくしている中に、私に感謝の言葉を掛けながら近づいてきたのは、私たちが乗っ取る事になってしまった孤児院の元院長先生のエイシアさんだった。
エイシアさんは、子供たちを慣れた手つきであやしているが、興奮した子供たちの相手はやはり骨が折れるようだ。
「礼には及びません。共に暮らす以上は家族のようなものです」
「そうだよ! 院長先生!! 私がクロム兄のお嫁さんだから家族だよ!!」
「院長先生はクロムウェル様のお母様になったのよ」
そう、表向きは身体を壊したエイシアさんの代わりに孤児院の院長となっている。
あぁ、子供たちの発言は基本的にスルーだ。構うと物語が進まない。
「エイシアさん、母はあくまで名前だけです。私は子供たちに好かれている方こそ、院長に相応しいと思いますよ」
これは私の本音だ。さっきまで私に付きまとっていた子供たちが1名を除いて、エイシアさんの元に集まっているのだから。
「そうすると次期院長さんはクロムウェル様が相応しいという事かしら?」
私の発言に対して、和やかな雰囲気で少し茶目っ気に話を返してくれる。
エイシアさんの言葉どおりに、ずっと孤児院で子供たちと暮らすのも悪くないかとは思うが、それは無理だ。
おそらく次の子供たちはいない。
それほどにこの国は隣国である共和国の影響を受けているのだ。
民主制という時代の波が近づいているのか、それとも魔法というものが存在する異世界ではまた違う歴史になるのかは私には分からない………。
「そうですね。それも良いですね」
私は曖昧に返事を返す。
「そう、食事の用意が出来たのでお呼びにきたのでした。さあ、みんな食事にするので手を洗っていらっしゃい」
もうそんな時間か。周りがうるさかったので、時間の流れを感じなかったせいだろう。
「あら? 1人足りないようだけど?」
「あぁ、1人は外にいます。私が連れて行きますので残りの子供たちをお願いします」
先ほど余計なひと言の為に、頭を叩かれて気絶させられ、そのまま外に捨てられたロック2号を回収する為に、立ち上がる。
ロック2号というあだ名を付けている理由はそのうちに語ろう。
「親方さんはお食事はどうなさいますか?」
「あ、いや。申し訳ない。私はこのままクロムウェルの旦那が修理した箇所を見させてもらうつもりです」
ちなみに親方とは、オルフォース家が手配してくれた大工の棟梁だ。
私の前世の転生知識と魔法を使った大工仕事がよほどお気に召したのか、基本的に私の作業中は傍を離れる事はない。私はおっさんよりも綺麗な子に近くにいて貰いたいのだが、それもそんな遠くない未来に実現するだろう。
むしろ、他の仕事をして欲しいものであるが、今は気まぐれ草を栽培する用地作りの為に、空き家の解体作業だけしかやる事のないので、親方としての仕事はないのだろう。
エイシアさんと親方のやりとりを耳にしながら、親方が興味を持つきっかけになった修理した孤児院の扉を開ける。
すぐ横には、予想通りロック2号が気持ち良さそうに寝ていた。
手の平の上に魔法で小さな水球を作り、ロック2号の顔へとぶつける。
「つめたっ!」
「ほら、飯の時間だ。いつまでも寝てるんじゃないぞ。寝ぼすけめ」
「ちっ!ちげぇよ! あの凶暴女にやられたんだよ!!」
うん。知っているよ。見てたしね。それも今日だけじゃなくって他の日も含めて何度も。
「分かったから飯の時間だ。さっさと手を洗って来い」
文句をきゃんきゃんと言っているロック2号を急かしながら、食堂へと向かう。
「「いただきます!」」
私を含めて11人が食卓についているが、それでも食卓には空席があるほど大きな食卓で子供たちと共に食べる食事は、騒がしいけど確かにゆったりとした時間が流れているように感じる。
「うめぇ! 今日もうめぇよ! 兄貴!!」
まあ、騒がしく食べているのは1人だけなのだがな………。
こんなスローライフ生活も、最初から上手くいっていた訳ではない。
その事を含めて、私のスローライフ物語をとくとご覧あれ!!
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