鈍感宰相は寡黙な魔王様に付き従う

みけみけみっみ!

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「制圧?!はっ?何を?!」
 

 王は自身の手を目の前に出して、指にある筈の歴代の王たちが着けていたとされる指輪がないことに気付く。
 

「まさか?!」
 

 そう言いながらゆっくりと頭に手を伸ばし、王冠がない自身の頭を撫でる。

 バハムス王はこの事態に理解したのか、声にない悲鳴をあげる。

 
「父上!いや陛下!先程まで、確かにありました筈!」

 
 そしてこちらに振り向いて魔王様をひと睨みしてから立ち上がり、誰が持っているか目で探す。

 
「貴様ら!どこにやった!いつだ!」

 
 そんな慌てふためく王太子に、私はまた情報を開示する。
 
 
「もう私たちの手元にはありませんよ。次のアンデリック国王・・にお渡ししました。」


「何を……」
 

 王太子、いや元王太子である第一王子は私が言っている意味が分からなかったようだ。
 理解したくなかったのかもしれないが。


「あなたには1人、血の繋がった弟がいますよね。昔、適当な理由を付けて人間の国を追放した第二王子殿下のことですよ。彼に追放後、暗殺者を寄越したみたいですが……。実は彼、生きておりますよ。我々が保護しておりましてね。」


 あらら、残念でしたね。
 私は悪戯が成功した子供のように微笑む。


「あなた方の城にも先程、我が緋騎士団が制圧完了という報告が届きました。無論、死者は出しておりません。警備をしていた皆さん、とても協力的だったようですよ。」
 

「そ、そんな。」

 元王太子は静かに膝から崩れ落ちる。

 
「心配しないで下さいね。あなた方は一応元王族ですから、特別に用意した屋敷に暮らしてもらいます。もちろん人族以外の監視は付きますが。」

 
 問題を起こさずただ良い子に大人しくしてくれたら何もしません。
 とりあえずは。

 第一王子は下の地面をしばらく眺めて考え事をした後、決心が付いたのか膝に付いた土埃を払いながら立ち上がる。
 

「……契約書を出してくれ。王はあの通りのご様子だ。私が代わりに書こう。」
 
 
 確かに、今のバハムス王は現実逃避をしているような虚な目をしていた。


「了解しました。では……」


 そう言いながら、私は事前に用意していた契約書の紙を持ち、王太子のいる場所に持って行った。




 


 
 

 
 ――今思えば

 この時すでに油断していた
 
 この時、私自ら紙を私に持って行くのではなく

 部下にでも任していれば

 こんなことにはならなかった――



  



 

 
 
 
 私は気付いたら倒れていた。

 彼は隠していたナイフで私を数回刺したようだ。

 数回といっても2回だが。



「――ディオン――なぁ……嘘だよな?お願いだ――っクソ、ダメだダメだ!ディオンしっかりしろ!」

 
 私の近くには魔王様がいた。

 私を優しく抱き抱えてくれているみたいだ。

 出血が多いのだろう、視界がボヤけて何も見えない。

 目が開いているのかさえも分からない。

 魔王様は何か叫んでいた。

 意識がぼーっとしているため、何を話していらっしゃるか聞き取れない。

 普段あまりお話にならないあの魔王様が叫んでいるのに。

 ドクンドクンと自分の心臓の鼓動音のせいで周りが聞きずらい。

 魔王様の忠臣失格ですね。

 
「ふふはははははっ、あっははっはっは!ざまぁみやがれ魔族め!たしか、お前ら魔族は番が居なくなれば死ぬんだったよなぁー?あはははは!それにディオンスも悪いんだ。素直に俺の物になれば――ぅがあ"」

「黙れクズが。大人しくしろ。」
 

 ああ。

 身体中が痛い。
 

「よくも俺の番に――っ、俺の運命に手を出したな――簡単には殺さない。お前にはありとあらゆる絶望を味合わせてやる。」

 
 刺されたところが熱い。

 刺された?

 ああ、刺されたんだった。

 意識があやふやになってきている。

 不味いな。
 

「セオドア、そいつをこっちに持ってこい――まずは」

「まお……さ、ま、傷……付けた、ら、殺し、たらダ……メですから、ね。それ、じゃ意味な……ゴフッ」
 

 呼吸がおかしい。

 息が吸えない。

 喉から何かが溢れている。

 それが原因で気道に空気が入らない。

 だが言えた。

 伝えれた。
 

「……っ、喋るな。それ以上は喋るな。――お願いだ。」

 
 魔王様が堪えてくだされば

 戦には発展しないはず
 
 あとは、これ・・をただの事故として処理してもらえればいいだけ
 

「ああ!聖魔法かけてるのに……出血がひどい……なんでよ!どうしてなのよ!どうして効かないの?!」


 私が居なくても、代わりなんてすぐに見つかる。

 しかも、人間みたいなひ弱な種族ではない者とか。

 魔王様も理解してくれる筈だ。
 

「おい、アリカ!閣下の容体はどうなんだ?」

「……腹部に刺し傷2箇所、その内1つは内臓に貫通してる。……私のレベルが足りない……こういう時の聖女じゃないの神様。」

「……アリカは十分頑張ってる。」

「でも、このままだと宰相様は……。」

「……俺のせいだ。初めから平和的に解決などせずに――」
 

 寒い。

 不思議だ。

 熱いのに寒い。

 可笑しい。

 
「ふふっ。」
 

 誰か私の頬を撫でている気がする。

 
「――お願いだ。俺を1人にしないでくれ。ディオンがいない世界では生きていけない。」

 
 温かい。


「俺の……愛しい運命、ようやく見つけた俺だけの番。――1人は寂しい。なぁ、ディオン?」
 

 このまま最期まで撫でてほしい。
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