11 / 19
11
しおりを挟む「制圧?!はっ?何を?!」
王は自身の手を目の前に出して、指にある筈の歴代の王たちが着けていたとされる指輪がないことに気付く。
「まさか?!」
そう言いながらゆっくりと頭に手を伸ばし、王冠がない自身の頭を撫でる。
バハムス王はこの事態に理解したのか、声にない悲鳴をあげる。
「父上!いや陛下!先程まで、確かにありました筈!」
そしてこちらに振り向いて魔王様をひと睨みしてから立ち上がり、誰が持っているか目で探す。
「貴様ら!どこにやった!いつだ!」
そんな慌てふためく王太子に、私はまた情報を開示する。
「もう私たちの手元にはありませんよ。次のアンデリック国王にお渡ししました。」
「何を……」
王太子、いや元王太子である第一王子は私が言っている意味が分からなかったようだ。
理解したくなかったのかもしれないが。
「あなたには1人、血の繋がった弟がいますよね。昔、適当な理由を付けて人間の国を追放した第二王子殿下のことですよ。彼に追放後、暗殺者を寄越したみたいですが……。実は彼、生きておりますよ。我々が保護しておりましてね。」
あらら、残念でしたね。
私は悪戯が成功した子供のように微笑む。
「あなた方の城にも先程、我が緋騎士団が制圧完了という報告が届きました。無論、死者は出しておりません。警備をしていた皆さん、とても協力的だったようですよ。」
「そ、そんな。」
元王太子は静かに膝から崩れ落ちる。
「心配しないで下さいね。あなた方は一応元王族ですから、特別に用意した屋敷に暮らしてもらいます。もちろん人族以外の監視は付きますが。」
問題を起こさずただ良い子に大人しくしてくれたら何もしません。
とりあえずは。
第一王子は下の地面をしばらく眺めて考え事をした後、決心が付いたのか膝に付いた土埃を払いながら立ち上がる。
「……契約書を出してくれ。王はあの通りのご様子だ。私が代わりに書こう。」
確かに、今のバハムス王は現実逃避をしているような虚な目をしていた。
「了解しました。では……」
そう言いながら、私は事前に用意していた契約書の紙を持ち、王太子のいる場所に持って行った。
――今思えば
この時すでに油断していた
この時、私自ら紙を私に持って行くのではなく
部下にでも任していれば
こんなことにはならなかった――
私は気付いたら倒れていた。
彼は隠していたナイフで私を数回刺したようだ。
数回といっても2回だが。
「――ディオン――なぁ……嘘だよな?お願いだ――っクソ、ダメだダメだ!ディオンしっかりしろ!」
私の近くには魔王様がいた。
私を優しく抱き抱えてくれているみたいだ。
出血が多いのだろう、視界がボヤけて何も見えない。
目が開いているのかさえも分からない。
魔王様は何か叫んでいた。
意識がぼーっとしているため、何を話していらっしゃるか聞き取れない。
普段あまりお話にならないあの魔王様が叫んでいるのに。
ドクンドクンと自分の心臓の鼓動音のせいで周りが聞きずらい。
魔王様の忠臣失格ですね。
「ふふはははははっ、あっははっはっは!ざまぁみやがれ魔族め!たしか、お前ら魔族は番が居なくなれば死ぬんだったよなぁー?あはははは!それにディオンスも悪いんだ。素直に俺の物になれば――ぅがあ"」
「黙れクズが。大人しくしろ。」
ああ。
身体中が痛い。
「よくも俺の番に――っ、俺の運命に手を出したな――簡単には殺さない。お前にはありとあらゆる絶望を味合わせてやる。」
刺されたところが熱い。
刺された?
ああ、刺されたんだった。
意識があやふやになってきている。
不味いな。
「セオドア、そいつをこっちに持ってこい――まずは」
「まお……さ、ま、傷……付けた、ら、殺し、たらダ……メですから、ね。それ、じゃ意味な……ゴフッ」
呼吸がおかしい。
息が吸えない。
喉から何かが溢れている。
それが原因で気道に空気が入らない。
だが言えた。
伝えれた。
「……っ、喋るな。それ以上は喋るな。――お願いだ。」
魔王様が堪えてくだされば
戦には発展しないはず
あとは、これをただの事故として処理してもらえればいいだけ
「ああ!聖魔法かけてるのに……出血がひどい……なんでよ!どうしてなのよ!どうして効かないの?!」
私が居なくても、代わりなんてすぐに見つかる。
しかも、人間みたいなひ弱な種族ではない者とか。
魔王様も理解してくれる筈だ。
「おい、アリカ!閣下の容体はどうなんだ?」
「……腹部に刺し傷2箇所、その内1つは内臓に貫通してる。……私のレベルが足りない……こういう時の聖女じゃないの神様。」
「……アリカは十分頑張ってる。」
「でも、このままだと宰相様は……。」
「……俺のせいだ。初めから平和的に解決などせずに――」
寒い。
不思議だ。
熱いのに寒い。
可笑しい。
「ふふっ。」
誰か私の頬を撫でている気がする。
「――お願いだ。俺を1人にしないでくれ。ディオンがいない世界では生きていけない。」
温かい。
「俺の……愛しい運命、ようやく見つけた俺だけの番。――1人は寂しい。なぁ、ディオン?」
このまま最期まで撫でてほしい。
0
あなたにおすすめの小説
妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。
藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。
妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、
彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。
だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、
なぜかアラン本人に興味を持ち始める。
「君は、なぜそこまで必死なんだ?」
「妹のためです!」
……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。
妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。
ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。
そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。
断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。
誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】
ゆらり
BL
帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。
着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。
凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。
撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。
帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。
独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。
甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。
※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。
★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 ★1000 Thank_You!!
転生先の第三王子はただいま出張中につき各位ご確認ねがいます!
梅村香子
BL
※本作はシリーズ作品の続編です※
「僕が……ラオネスに、ですか?」
ロベルティア王国の歩く災厄といえば、第三王子テオドール……そう、僕のこと。
前世の記憶がよみがえる前は、本当に最悪な王子だった。愚行を重ねて、父上から謹慎を命じられるほどに。
僕の中に現れた日本人男性の記憶と人格のおかげで、どうにか人生を軌道修正することができたんだけど、まだ自分への課題は山積み。
専属騎士で大好きな恋人のフレデリクと一緒に、王子として勉強の毎日なんだ。
そんなある日、長かった謹慎がとうとう終わったと思ったら、父上から湾岸都市のラオネスに行くようにって命じられたんだ。
王都から遠く離れた商業と海運の街。
クロード兄上が治める大都市ラオネス。
仲違いしてる兄上と会うのは少し不安だけど……初めて見る広い海や美味しい魚介類を楽しみにして、ラオネスに向かったんだ。
だけど、到着早々なんだか怪しい陰謀の影が見えはじめて……。
どうしようっ!
僕、また恐ろしい騒動に巻き込まれちゃうの!?
でも、僕には頼れる白銀の騎士がいるからね!
どんなことが起こっても、きっと二人なら乗り越えていける――!
元ぽっちゃり王子テオドールの第二弾!
ラオネス出張編ですっ。どうぞよろしくお願いします!
※表紙や挿絵にAIイラストを使用しています。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた
k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。
言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。
小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。
しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。
湊の生活は以前のような日に戻った。
一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。
ただ、明らかに成長スピードが早い。
どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。
弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。
お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。
あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。
後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。
気づけば少年の住む異世界に来ていた。
二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。
序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。
クールな義兄の愛が重すぎる ~有能なおにいさまに次期当主の座を譲ったら、求婚されてしまいました~
槿 資紀
BL
イェント公爵令息のリエル・シャイデンは、生まれたときから虚弱体質を抱えていた。
公爵家の当主を継ぐ日まで生きていられるか分からないと、どの医師も口を揃えて言うほどだった。
そのため、リエルの代わりに当主を継ぐべく、分家筋から養子をとることになった。そうしてリエルの前に表れたのがアウレールだった。
アウレールはリエルに献身的に寄り添い、懸命の看病にあたった。
その甲斐あって、リエルは奇跡の回復を果たした。
そして、リエルは、誰よりも自分の生存を諦めなかった義兄の虜になった。
義兄は容姿も能力も完全無欠で、公爵家の次期当主として文句のつけようがない逸材だった。
そんな義兄に憧れ、その後を追って、難関の王立学院に合格を果たしたリエルだったが、入学直前のある日、現公爵の父に「跡継ぎをアウレールからお前に戻す」と告げられ――――。
完璧な義兄×虚弱受け すれ違いラブロマンス
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる