鈍感宰相は寡黙な魔王様に付き従う

みけみけみっみ!

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「はっ!」

 
 私は目を覚まし、急いで起き上がる。
 

 急に動いたというのにさほど痛みがない……
 さっきと同じで、身体の節々が少々痛い
 理由としては、長いこと寝ていたからだろうが……

 ということは……
 さっきの出来事は夢ではなく現実であるということだろうか?

 それは嫌だ。
 嘘だと思いたい。

 私は周りを見渡す。
 私が今いる場所は私の寝室のようだ。
 書斎で寝ていた私をここまで誰かが運んでくれたのだろうか?
 
 
 それとも、さっきと今どちらとも夢の中なのか……
 その方が私にとってありがたいが。

 
 外が明るい。
 小鳥の鳴き声が外から聴こえてくる。
  
 さっきまでそこで寝ていたベッドの上には、たくさんの花が添えられている。
 あの、魔王様と思い出深いあの花が。

 
 デジャブ……


 私はベッドから離れて、今着てる上着をめくって腹部を一応確認する。


「やはり傷がないですね……」

 
 さっきと同じだ。
 傷は愚か、傷跡もない。

 
 私は自身の姿を確認するため、部屋にある等身大の大きな鏡の前に立つ。
 すると、さっき頭の上にあったあの角がないことに気がついた。
 

「あれ?確か先程あったはずですが……」

 
 そう言いながら、自身の頭部を両手で触って確認する。
 だが、触っても角は見当たらず、自身の艶のある髪をただ撫でてるだけでであった。

 おかしい……
 角なんて自身で引っ込めるとか、翼みたいにそんなコントロールなんてできない筈だし、私はそんな器用なことはできない。

 考えれば考えるほど、今が夢が現実かが分からず混乱してくる。

 私は深く考えることを放棄し、自身の頬をつねる古典的なやり方を試してみることにした。

 
「……いひゃいでひゅね。」

 
 ということは、今が現実ということでしょうか……
 身体の節々が痛いのは、現実での痛みを夢の中で体験しているかのように錯覚していたとか……

 
 私は上着を羽織り、とりあえず部屋から出て廊下に出てみる。
 キョロキョロと人を探して見回るが、さっきと同じで誰もいない。

 
 私はさっきと同じルート先である書斎室に向かう。
 もしかしたら彼がいるかもしれない。

 扉の前で私は一応軽く身だしなみを整えてから扉をコンコンと叩く。

 
「私です。ディオンでございます。」
 

 返事が来ない。
 そのまま扉を開けてみる。
 部屋の中には魔王様はいなかったが、そこには先程みた光景とは少し違っていた。
 未処理だろう大量の紙が机の上に置かれていた。

 ……ということは、魔王様はいらっしゃる?

 私は急いで隣の休憩室にも入ってみたが、彼はいなかった。


 魔王様に会えるのだろうか?
 どこかお出かけになっているのだろうか?
 
 それとも、今も夢を見ているのか?

 
 私は魔王様の私室に向かおうと踵を返すと――彼がいた。


 私は念願の魔王様に会えたというのに
 彼に会えたというのに

 私は軽くパニックになってしまった。
 しかも、その場で
 彼の目の前で
 私は自身の頬を両手でつねっている姿を彼に見せつけてしまった。

 
「……あっ」
 

 私は自身がやらかした事に気付いたが、もう遅かった。

 私は静かに頬から手を離し、とりあえず彼に微笑むことにする。
 今、私の顔は赤くなっていることだろう。
 本当は今すぐ彼に飛び付きたいし、抱きしめたいというのに。
 私は初手からやらかしてしまった。


 だが、魔王様は私と会ってから終始無言で、目を大きく見開いたまま固まっている。

 
「…………。」

 
 それに、魔王様はあの花を1本手に持っていたことに今気付いた。

 そしてその花が、パサッと静かに手から床に落ちていく。
 

「ああ……そういうことか……」
 

 彼は悲しそうに私に微笑みかけた。
 それは、彼が初めて見せる表情だった。


「いつの間にか……寝ていたのか……」


 そう言いながら彼は私に近づいて、ゆっくりと優しく私を抱きしめてきた。

 
「ま、魔王様?!」


 私は突然の魔王様の行動に驚き、心臓がドキドキしてきた。
 だが、必死に彼に声をかけても聞いている様子はない。、


「久しぶりにいい夢を見れているようだな……いつもは……あの時の場面だというのに……」


 そう言いながら、魔王様はぎゅっと少し強めに抱きしめてきた。
 まるで、お互いの間にある隙間をなくすようにピッタリと身体を寄せ合うように。


「あぁ……いい夢だ……このまま永遠に見続けられたらいいというのに……」


 彼からなにか不穏な言葉が聞こえてきたので、私は必死で彼の腕の中でもがき、彼の頬を両手で挟んで大声を出す。
 

「魔王様!夢ではありません!たぶんですが!」


 突然大声を出す私に驚いたのか、抱きしめる力が弱まった。
 だが、彼の瞳はまだ悲しく色褪せており光がないままだった。


「魔王様、失礼します!」


 そう言って、私は魔王様の頬を両手でつねる。


「痛みを感じますでしょう?ほら、現実ですよ。」

 
 彼の頬をつねってみても、顔が元々いいからか全然間抜けに見えなかったのが悔しい。


「…………」


 しかし、彼はただ私を見つめたまま固まってしまった。

 私はそっと彼の頬から両手を離して、少し彼から離れようと後ろに移動した時に彼がようやく動き出した。
 しかもまた彼は私を抱きしめてきて、また腕の中に戻ってしまった。


「よかった……本当によかった……」


 魔王様は感動しているのか、微かに身体が震えているのが抱きしめている私に伝わる。
 
 私はそっと彼の背中に腕をまわして、優しく抱きしめ返す。

 
「おはようございます……魔王様。」


 彼の腕の中はとても暖かかった。
 

 

 
 

 

 
 

 
 
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